春にして君を離れ (クリスティー文庫 愛の小説シリーズ)

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  • 早川書房 (2004年4月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784151300813

作品紹介・あらすじ

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。

みんなの感想まとめ

人生の選択や愛の本質に迫るこの物語は、主人公ジョーンがバクダッドからイギリスへ帰る途中での出来事を通じて、自らの人生を振り返る姿を描いています。彼女は家族に恵まれながらも、内面的な葛藤に直面し、過去を...

感想・レビュー・書評

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  • ミステリー以外のアガサ・クリスティは初めて読んだけどめっちゃ面白い!というかこれ以上があるの?ってぐらいよかった。

    ジョーンの主観視点だけど、彼女に自分を投写して読むんじゃなくて、主観を俯瞰で見るような不思議な感じ。
    彼女がいつ気づくのか、気づいたとしてロドニーは受け入れるのかって色々予想してたけど、この終わりはあまりに残酷だと思えた。
    エピローグ手前に彼女がどっちの自分を選択するのかにかなりハラハラした!
    汚いものを見ないでさえいれば、それは存在しないし関係ないものとして徹底してないものとするジョーンに寒気がしました。ここまで非人間的選択しかしないのかとブラックすぎて笑えて仕方なかった。愛ゆえにといちいち頭につけて言うその傲慢さ、私がいなければあなた達は堕落し、道を踏み外し、幸福にもなれなかったのよと言い聞かせてくる。そりゃ嫌われるわ(笑)
    こんなに恐ろしい主人公は初めてかも、あなたのためなのよ……怖い……
    エイヴラルが言う皮肉には爆笑しました(≧▽≦)

  • 読んでいるあいだ恐ろしくて仕方なかった。そして最後のジョーンの選択は悲しかったのと同時に、心のどこかでやっぱりな……と思う私がいた。人は簡単に変われないんだ。

    結婚して子どもが生まれて。そうなった時、女性なら一度は夫のために良い妻、子どものために良い母親になりたいと願うのではないだろうか。でも、この「ために」というのが曲者になってくると私は思う。あなたの「ために」私はこれだけ頑張ってるのよ。あなたの「ために」こうすれば良いと思うよ。この「ために」が真綿で首を締めるように、じわじわと家族関係を蝕んでいく。相手のために頑張りたいと思っていた気持ちが、いつの間にか自分が良い妻、良い母親でいる「ために」と意味がすり替えられていることに気づかない。

    ジョーンが夫ロドニーに意見を通せば、彼は「じゃあいいよ。きみの好きにするさ」と呟く。
    「わたしたちのように幸せな家庭って、そうざらにあるものじゃないのに」と笑えば「きみは本当にそう思ってるのかい、ジョーン?」と問われる。
    子どもたちからも「お母さんって、誰のこともぜんぜんわかっちゃいないって気がするんだ」と言われる。
    それでもジョーンは自分は幸せだということを微塵も疑わない。そして自分が幸せなら当然、家族も幸せだと思っていると固く信じてるはず。

    ジョーンは、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中、汽車を待つ数日間をひとりで過ごすことになる。そこでロドニーとの夫婦関係、3人の子どもたちとの親子関係について振り返ることになるのだが、自分が夫や子どものことを何一つ知らなかったことに気づく。彼らの過去の言動の真相を知らずに過ごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだと思い知るのだ。
    ジョーンはロドニーを幸せにしてあげなかったと彼に謝りたいと切に願うのだが、結局ロドニーと再会した彼女は、今までのまま、あいかわらずのジョーンに戻ってしまう。彼女は聖者にはなれなかった。

    ロドニーはそんなジョーンを受け入れる。
    「プア・リトル・ジョーン」
    かわいそうな・リトル・ジョーン
    ひとりぼっちのリトル・ジョーン
    でも私はロドニーもひとりぼっちだと思う。彼の場合は自らその道を選んだといってもいいんじゃないだろうか。ジョーンの心のうちに踏み込むことが、実は怖かったんじゃないだろうか。

    ジョーンは幸せな生活に戻ったけれど、ロドニーは自ら幸せを手放した。もし、ロドニーが自分の望む幸せを手に入れたなら、ジョーンは幸せになれたのだろうか。
    私は何だか重い荷物を彼らから引き継いでしまったようだ。そんな、ずんと沈んだ気持ちになりながら読み終えたのだった。

    • nejidonさん
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      私もこの小説はしみじみと怖いのですよ。
      ホラーでもミステリーでもないのに、読んでる間も読んだ後も怖い。...
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      私もこの小説はしみじみと怖いのですよ。
      ホラーでもミステリーでもないのに、読んでる間も読んだ後も怖い。
      何で分からないの?・・でも自分はどうなの?ひとのこと、言えるの?
      そんなもやもやと黒いものが湧いてきて、付き纏う。いやぁ怖いです。
      クリスティの作品では異色ですが、名作ですよね。
      とても素敵なレビューです☆
      2020/01/30
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは(*´∀`)♪

      この作品、いろんなブックガイドで紹介されているので、ずっと気になっていました。
      で、今...
      nejidonさん、こんばんは(*´∀`)♪

      この作品、いろんなブックガイドで紹介されているので、ずっと気になっていました。
      で、今回読んでみたのですけど……
      怖かった!本当に怖かったです。
      背後からヒタヒタと近づいてくる黒い影に呑み込まれそうになりました。
      まさにnejidonさんと同じような気持ちで、ジョーンのことと自分のことを思ってました。
      こんなに心を抉られるような読後感は滅多に味わえないです。
      はぁー、クリスティってすごい、そして恐ろしい作家だわ。

      コメントありがとうございました♪
      2020/01/30
  • やだ…これ好きじゃない…
    言葉に表せない嫌な感じ。
    なんかもしかしたらこの主人公は自分なのかもしれないみたいなものが付き纏ってまとわりついてくる感じ。
    え…実際そうなのかな…
    そう思う時点で作者の思う壺にハマってるのかも…
    ミステリーでもホラーでもないけど、すんごい怖い。
    後味悪…

  • 基本に還ろう! ということで、超久し振りのアガサ・クリスティー。
    子供の頃は良く読んでいた気がするけど、ブグログ登録は初。

    ポアロもマープルも出てこない「ノン・シリーズ」

    不思議な怖さを感じさせるお話しでした。

    夫にも子供たちにも恵まれた主人公。次女の病気見舞いに訪れたバクダッドからイギリスへ帰る途中、テル・アブ・ハミドで不慮の事故により足止めをくらうことに。
    粗末な宿泊所以外は見渡す限り砂漠しかない環境に数日置かれ、自分の人生を振り返るのだが。

    しかし、彼女は間違っていたのだろうか。
    人間万事塞翁が馬、という言葉を思い出す。

  • 生涯気付かない人もいるだろう。気付いて苦しんだ、それで十分ではないかと思った。
    確かにジョーンの気質には嫌悪を覚える。生育歴のせいがあるにしても。なぜこんなにジョーンが嫌な人に描かれているのだろう。読むのが嫌にもなったが、中盤からのジョーンの心の葛藤の描写に引き込まれた。
    目の前の真実に直面する苦しみを避け生きてきた、という点ではロドニーも同じという気がした。似たもの夫婦ではないか。
    この夫婦、家族が特別とは思えない。よくあるというか。
    家族はなんら問題を抱えているものではないか。レスリーの考えである、重荷を分かち持たせる、これが出来れば理想なのでしょうが、なかなか難しい。誰かの比重が重くなりがちだと思う。

    その選択で、平穏に過ごす、いつも通りに。覆したところで。自分を認識でき、夫、子供を理解し、表面的には同じでも、心根は変わる。初め嫌だった人が、成長したようにも見え、歳を重ね安住の地を求めたのだと。
    ロドニーは気付かないまま、かもしれない。

    過去を回想する中年女性というところは同じなので、あなたの場合はどうですか、と訴えかけられてるようで苦しかった。自分の逃げてきたものを考えてしまった。胸に深く突き刺さった。
    人生の中で足止めをくらう時間があって良かった、と思えばいいのか。

  • 優しい夫と立派な子供に恵まれ、完璧な人生を築いたと疑わない主婦ジョーン。旅先で途絶えた足止め(孤立)のさなか、旧友ブランチとの一対一の会話から、彼女の記憶の再検分が始まる。
    一見、静かな女同士の世間話。しかし刃のように突きつけられる皮肉と揺さぶりはまるで上質な舞台劇のよう。読み進めるほどに見えてくるのは、彼女を取り巻く世界の狭さと、無自覚な支配欲だ。
    家事や育児をメイドやナニーに任せ、手に職を持たない裕福な彼女が全情熱を傾けたのは「家族の管理」。心の中では子供たちすら冷徹に裁きながら、表向きは「良妻賢母」を演じ続ける二面性にゾクッとさせられる。

    帰りの列車で出会うロシアの公爵夫人サーシャは、ジョーンの独善性やイギリス的上流中産階級特有の「無意識の押しつけ」を冷静に見抜く。「善意という名の鎧で人を殺す」という冷徹な分析。あれこそが物語の核心であり、読者の胸を打ち抜く瞬間だ。
    しかし、知性と率直さを持つサーシャの言葉すら「鼻につく」と切り捨て、日常へ戻っていくジョーン。彼女は結局、何一つ変わらない。

    「だったらここまで読んできたのは徒労なのか?」
    答えはノーだ。
    彼女が改心しないからこそ、この本は恐怖の鏡となる。「傷つかない心地よい嘘」を選び直す彼女の姿に、読者は「自分も無自覚に誰かを追い詰めていないか」と迫られるのだ。変わらなかったジョーンの代わりに、すべての学びは本を閉じた私たちの側に託される。

  • 48年生きてきて、これまでの人生をふと振り返る。
    優しい夫と結婚し子宝にも恵まれた。
    その子供たちもすくすく成長し、やがて親元を離れそれぞれの家庭を持った。
    それら全てが順風満帆。全てが理想通り。
    自分は勝ち組なのだと信じて疑わなかった、けれど…。

    旧友との偶然の再会から、これまでの自分の半生に疑問を持ったジョーン。
    自分の半生は、本当に勝ち組なのか。
    目の前の真実に、見て見ぬふりをしていただけではなかったか。

    自分に対する、夫や子供たちからの"真の"評価なんて、知らない方がいい。
    こんなの疑いだしたらきりがない。
    知らぬが仏、とはこのこと。
    下手なミステリよりずっとミステリアスな物語だった。

  • すごく深い作品だった。
    日常から離れた旅先、ひとり考える時間が膨大にある環境の中で、過去の出来事を反芻する主人公ジョーン。気がつかないふりをし目を背けてきたことを回想しながら、”変化”していくジョーンの内面の細かい描き方、やはり大作家ならではのもの!
    対して夫・ロドニーは、妻や子どものそれぞれの人間性を理解し大きく包みこむ冷静さを備えている一方、「愛する者のための勇気」を体現したレスリーに惹かれている。彼女がつぶやいた「汝がとこしえの夏はうつろわず」の意味は、私の知識不足のため最後までわからないままだが…。
    それまでの経過を束ねたような、深いラストシーンがいい。

  • 1930年代48歳のイギリス人女性、
    娘の病気見舞いの帰りの沙漠で足止めになり、滞在した宿で自分自身とこれまでの人生を見つめ直す
    自身の過去を回想し、人生に疑問をもち始める

    良い夫、良い子どもたち、よい生活に満足していると思い込んでた主婦が、旅先で知り合った学生時代の友人との会話が切っ掛けとなり、足止めされた沙漠で自身の過去を回想していく

    自身の内面や家族との本当の関係、愛の形に直面していく心理サスペンス

    主人公ジョーンは自分の内面を都合よく解釈して正しい行いをしていると信じ込んでる
    自分本位に、相手にとって何がよいことであるかを勝手に決め続けてた

    これまで誰についても真相を知らずに過ごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったから

    沙漠での回想が切っ掛けとなり
    "私という人間の真相"
    を悟るにいたる


    とても辛辣だった。

    夫や子どもたちは、ジョーンという人の性格、性質を見定めていて、
    本人ジョーンだけが自分は家族のためにやっていると思い込んでる。

    そして段々、"自分がしたこと"に気づいていく様に胸が苦しくもあった。なぜなら私自身にも自分本位な部分があり身に覚えがあるから。

    ジョーンのラストの選択は⋯私が思ってた方向とは違うことになってしまった。夫ロドニーに赦しを得て⋯終わりかと思ってた。

    ロドニーに会うまでに、帰りの汽車で公爵夫人と喋ったり、娘のエイヴラルに会ったりして、時間がかかりすぎて⋯しかも普段の生活が久しぶりに心地良くて、あの時に感じた強烈な体験も時間がたつと威力を失くしてしまい、家族との仲を修復する最後のチャンスを逃してしまった。

    プア・リトル・ジョーン

    「君はひとりぼっちだ。これからもおそらく。しかし、ああ、どうか、きみがそれに気づかずにすむように」

    夫の示唆するようにジョーンは歳を重ねると孤独になるかもしれない。

    だけど私は思う、この夫は優しくはないでしょう。
    自分の人生の選択をジョーンの助言通りにしたから疲れたといわんばかり、ジョーンとは違う雰囲気のレスリーという女性に気持ちを移したり、
    ジョーンのことを「朗らかで、有能で、せわしげなジョーン。自分に満足し、割り当てられた役割を巧みに果している。せいぜい28歳くらいにしか見えない、あいかわらずの若さだった。」と、彼女のいいところは受入れて甘えるけど、良くない所にはプア・リトル・ジョーンといって突き離してる。そして、ひとりぼっちに気づかずにすむようにって、気遣うふりしてるようにみえる。誠実に向き合ってはいないと感じた。


    この本はメアリ・ウェストマコット名義で発表されたという。アガサ・クリスティの名で本をだした場合、ミステリと勘違いして買った読者が失望するのではと配慮したものだったとのこと。

    そして1944年に出版されてる、今から80年ほど前!?
    今でも読める新鮮さ!
    訳も素晴らしいと思う!
    アガサ・クリスティってすごい!
    ミステリーじゃないのに夢中になって読んだ。
    他の本ももっと読みたくなった。

  • クリスティーのノンシリーズです。ミステリーではないので別の名前で出版されていた作品だそうです。なるほど、クリスティーの名を使わず出版されていたのはなんとなくわかりました。
    主人公ジョーンはかなり病んでますね。
    離れた土地から帰宅途中で足留めされ、辺鄙な土地で色々なことを回想していくのですが、とにかくその思考がかなり問題ありで。クリスティの性格描写は凄いです。最後までイライラさせられました。
    最後、エピローグでの旦那さんのセリフが、グサリと突き刺さりました。恐ろしさと悲しさと。

  • 先日読んだ攻略本より。主婦の回想という内容なのに読む手が止まらない。解説の栗本薫さん言うところ「苦い感動」と「哀しみにみちた慰安」の物語。クリスティの上手さを実感したがこの後味悪さよりやっぱり小気味良いミステリーですっきりしたいと思った。

  • アガサ・クリスティー読み直しキャンペーン第二弾です(いつ始まった?)

    ハヤカワ文庫のクリスティーは全部持っていたので(戯曲除く)全て読み直しとなります
    他にも角川の横溝正史、ハヤカワのディック・フランシスも全部持っていたし、カーもエラリー・クイーンもほとんど、その他にも古今東西のミステリーの蔵書(言い方!)がたぶん500冊は超えてたと思うんですよね
    結婚して家を出るとき実家に置いておいたんですがあるとき父親が突然田舎に中古住宅を買って引っ越すと言い出して(元の場所もそもそも田舎)連絡もなく全部捨てられちゃったんですよね
    しかも後で「たいへんだったんだぞ!」と怒られるっていう

    『引っ越してゴミに出され』なんちて

    さて『春にして君を離れ』です

    『ひらいたトランプ』に続いてクリスティーの王道からはちょっと外れるけど評価の高い作品を選ぶことでクリスティー通と思われたいという卑しい気持ちが煤けてますねw

    そして本作はミステリーではありません
    サスペンスですホラーです
    是非とも一度手に取ってこの恐怖に満ちた結末を体験してほしいです
    こーわっ!てなります震えます
    人は環境によって考えがころころ変わっちゃうってことなんでしょうが

    ただ自分はロドニーの方になんか自分を重ねちゃいました見ようによっては「優しさ」を隠れ蓑に延々と責任逃れをし続けた旦那様と言えます

    それにしてもクリスティーはやはり会話がいいですよね
    クリスティーは劇作家としても素晴らしい作品を残してますが、クリスティーに限らず脚本も手掛けていたり脚本家出身の作家さんて会話によって物語を進めるのが本当にうまいですよね

    クリスティー至極のサスペンスを是非!

    • 土瓶さん
      ひまわりめろんさん。なおなおさん。こんばんはー。

      って、びんこう……w?
      それはないですねー。謎のキャンペーンが功を奏したのでしょう...
      ひまわりめろんさん。なおなおさん。こんばんはー。

      って、びんこう……w?
      それはないですねー。謎のキャンペーンが功を奏したのでしょう。きっと。
      それにしても今ごろ平積みって凄いですね。
      さすがミステリーの女王!
      でも、内容は覚えてないのであまりハードルを上げられると後が怖いな。
      もしも期待外れな内容でも笑って許してくれますようお願いします。
      2022/02/25
    • なおなおさん
      土瓶さん、初めまして。
      "びんこう"の方からメッセージ、嬉しいです☆
      アガサ・クリスティの戯曲を読んでみたかったので、土瓶さんから情報をいた...
      土瓶さん、初めまして。
      "びんこう"の方からメッセージ、嬉しいです☆
      アガサ・クリスティの戯曲を読んでみたかったので、土瓶さんから情報をいただけて良かったです。
      ありがとうございました。
      「謎のキャンペーン」っていうワードも気に入りました〜(笑)

      追伸
      私も昔のハヤカワミステリ文庫の方が好きです。
      2022/02/25
    • ひまわりめろんさん
      『ねずみとり』の感想に続く…(身勝手)
      『ねずみとり』の感想に続く…(身勝手)
      2022/02/27
  • ジョーンの内省で自分に気付いていく過程と思い違いに気付いていない部分は共感できて面白かった。家に帰って日常生活に戻ると結局は、っていうところもわかる!

    子どものことは何でもわかっている、って自ら口にする母親って、毒親だわって思うけど、殺人事件のないアガサクリスティの作品で人間の闇を感じた。

    ロドニーとレスリーの部分は、何か起こるんじゃないかと、推理小説を読んでいるようにドキドキした。

    思わぬトラブルで幾日も帰宅できず、時間を持て余していたら、自分もジョーンのように家族や過去を振り返り反省すると思う。でもそういう機会がないことを祈る。

  • 『春にして君を離れ』を読み終えてまず感じたのは、これはミステリーではなく、人間の自己認識を描いた物語だということだった。アガサ・クリスティーと聞くと、どうしても殺人事件や巧妙なトリックを期待してしまう。しかし本作には探偵もいなければ本格的な謎解きもない。それにもかかわらず、読み終えたあとに残る衝撃は非常に大きく、人間という存在の怖さをここまで静かに描いた作品があるのかと驚かされた。

    主人公のジョーン・スカダモアは、世間から見れば理想的な人生を歩んできた女性だ。弁護士の夫を持ち、子どもにも恵まれ、自分自身も善良で常識的な人間だと信じている。物語の序盤では読者も自然とその認識を共有する。しかし旅先で足止めされ、一人きりの時間の中で過去を振り返り始めると、少しずつ違和感が積み重なっていく。夫との関係、子どもたちとの関係、友人たちとの関係。そのすべてが、ジョーンが思っていたものとは違う形で見え始める。

    本作の面白さは、過去の出来事そのものが変わるわけではないことだ。同じ出来事を振り返っているだけなのに、見方が変わることで意味がまったく変わってしまう。ジョーンはずっと「相手のため」を思って行動してきたつもりだった。しかし読み進めるうちに、その善意の中には自分の価値観を押し付ける傲慢さがあったことが見えてくる。本人は愛情だと思っていた。親切だと思っていた。正しいことだと思っていた。ところが周囲から見れば、それは息苦しさや支配として受け取られていたかもしれない。そのズレが少しずつ明らかになっていく過程には、サスペンス作品にも負けない緊張感があった。

    読んでいて特に印象的だったのは、ジョーンが決して悪人ではないことだ。むしろ世間にはジョーンのような人はたくさんいると思う。真面目で、善良で、家族のことを考えている。しかし人は、自分が善人だと信じているときほど、自分自身を客観視できなくなるのかもしれない。本作はそんな人間の弱さを容赦なく描いている。

    そして何より衝撃だったのはラストだ。物語の途中でジョーンは、自分の人生の真実にかなり近いところまでたどり着く。読者としては、ここから彼女が変わっていくのだと思う。しかし本作はそんな単純な成長物語ではない。ジョーンは真実を理解しかけながら、最後には再び自分にとって都合の良い認識へと戻っていく。自分の過ちを認めるには、その真実はあまりにも重すぎたのだろう。

    だから読後に残るのは爽快感ではない。むしろ不気味さだ。ジョーンは変われなかった。しかし読者は、ジョーンが見ようとしなかったものを見てしまった。その瞬間、この物語は他人事ではなくなる。自分もまた、気づかないうちに誰かを傷つけていないか。自分は本当に自分を理解できているのか。そんな問いが静かに残り続ける。

    『春にして君を離れ』は、事件の真相を暴くミステリーではない。人間が自分自身について抱いている幻想を暴く物語だ。人は他人を誤解する以上に、自分自身を誤解して生きているのかもしれない。その事実をこれほど静かに、そして鋭く突きつけてくる作品はそう多くない。読み終えたあとも長く心に残り続ける一冊だった。

    #2026年19冊目

  • 夫にも子供にも恵まれ、何不自由なく暮らす主婦ジョーンは、娘の病気見舞いに訪れたバグダッドからロンドンに帰る途中、偶然出会った同級生ブランチのひと言をきっかけに、人生のさまざまな場面を振り返る。
    バグダッドからロンドンまでは、実質7日間の旅。
    空は雲一つなく澄み渡り、見渡す限り金茶色の砂がどこまでも続く、そんな何もない場所でたった一人、回想にふけるジョーン。
    家族の幸福は、すべて私の手柄だったと。
    久しぶりに会った友人のブランチのことでさえ、かわいそうだと思っている。これこそ上から目線…
    けど、このような気持ちは、程度の差はあれど、誰もが持っていてもおかしくはないし、こんな人、決して少なくはないと思う。
    怖いけれど、ぞわぞわするけれど、ジョーンの感情がするすると入ってきて、夢中になっている自分がいた。
    人は自分の愚かさに気づいたとしても、よほどの聖人でなければそう簡単に変えることはできないのだろうか。
    そして、エピローグを読んで、夫婦のあり方について、人間関係について、さらに考えさせられてしまった。
    この本は、雑誌のコラムで紹介されているのを見て、ずっと気になっていたのですが、取り上げられる意味がわかるような気がします。

  • アガサ・クリスティーのメアリ・ウェストマコット名義のノンミステリ。
    本書を読んで「哀しい」と感じるか、「恐ろしい」と感じるかは個人差があるようだ。主人公ジョーンの立場で読めば「哀しい」し、ジョーンの家族の立場で読めば「恐ろしい」。読み終わって、私はとにかく「哀し」かった。

    優しい夫と可愛い子供に恵まれ、文句のない幸せを手に入れたジョーンは、結婚した娘の病気見舞いで訪れたバクダッドからの帰り道に思わぬ足止めを食らい、田舎の宿泊所で数日を過ごすことになる。最初はちょっとしたアクシデントを楽しんでいた彼女だが、何もすることがない田舎を歩き回るうち、次第にこれまでの人生を振り返っていく。

    散歩中や眠る前の布団の中で思いを廻らせることがよくある。私にとってその時間は、楽しいことを思い返すというよりは、もっとああできたのではないか、という内省の時間である。
    何も思い悩むことのなさそうなジョーンも、実は心の中にわずかな引っ掛かりがあり、思いがけず生まれた空白の時間にそれが一気に表出する。
    果たして自分は本当に夫に愛されていたのか、子どもたちは私を慕ってくれていたのか。
    この自問自答は恐ろしく、そして苦しい。けれど、クリスティーの圧倒的に読みやすい文章と、真実を導いていくミステリ仕掛けのストーリー展開で、苦痛なはずの自問自答を読む手が止まらない。

    ラストの彼女の決断には賛否両論あるだろう。ただ、どちらにしても、真実に気づいてしまった彼女はもう元の彼女には戻れないと思う。きっと彼女の周りの人間は、彼女の心の中で起こった変化に一生気づかないまま、彼女を憐れみの目で見続けるのだろう。彼女はそれを受け入れながら生きていかなければならない。それは決断した彼女自身の責任ではあるが、女性に選択の自由がなく、自立して生きていくことの困難だった時代背景を考えると、あまりにも哀しい人生である。

    2度の結婚を経ながら良質なミステリをコンスタントに書き続け、ミステリの女王としての立場を不動にしたクリスティー。彼女の心の内が垣間見えるメアリ・ウェストマコット名義のノンミステリは、読むのにエネルギーがいるが、避けては通れないシリーズである。

    • b-matatabiさん
      111108さん、コメントありがとうございます。

      ジョーンはわかっていないようでいて意外と敏感に感じ取っているんだな、と読んでいて思っ...
      111108さん、コメントありがとうございます。

      ジョーンはわかっていないようでいて意外と敏感に感じ取っているんだな、と読んでいて思ったんですよね。わかっていてわかっていないふりをするのはつらいだろうな、と。
      それと、ちらっと出てくるジョーンのお父さんとお母さんの話が印象的で。
      きっちりしていた父親とだらしない母親、父は母のだらしなさを本人に言うのでなく娘たちにがみがみ叱った、とあったので、ジョーンは反面教師としてそつなくこなそうと思うようになっちゃったのかな、と思いました。
      私もメアリ・ウェストマコット名義のものはなかなか手が伸びないのですが、少しずつ読んでいこうと思います。
      2025/09/13
    • しずくさん
      おはようございます、b-matatabiさんand111108さん

      本書を15年ぐらい前に、一回り上の読書家の知人から勧められて読んで...
      おはようございます、b-matatabiさんand111108さん

      本書を15年ぐらい前に、一回り上の読書家の知人から勧められて読んでいます。
      111108さんと似た感想で、どうして彼女が本書に傾倒したのかが分からずじまいで返しました。それから『春にして君を離れ』のタイトルを目にするたびに気持ちが疼いていました。
      111108さんのコメントを読んで私も同じだったのを思い出しました。そうそうモヤっとした感じが嫌だわーという感触。b-matatabiさんの感想を拝読して、いつかチャンスに恵まれたなら再読したいと思います。
      本書を勧めてくれた知人の年齢に私も近づいたし・・・

      2025/09/14
    • 111108さん
      b-matatabiさん、しずくさん、こんにちは♪

      b-matatabiさんの、ジョーンが「わかっていてわかっていないふりをする」ところ、...
      b-matatabiさん、しずくさん、こんにちは♪

      b-matatabiさんの、ジョーンが「わかっていてわかっていないふりをする」ところ、自分にもあるなぁと実感します!もう気がつかなかったことにして傷つきたくない、現実を見たくないって感じですね。それとジョーンの両親の話も、きっとそういう負の連鎖みたいなことだったんでしょうね。クリスティーのそういう仕掛け?に改めて気づくことできました。本当にありがとうございます♪
      しずくさんにおすすめされた方、b-matatabiさんのようにこの話のもっと深い所を感じ取ってたのかもしれませんね。ミステリーのようなわかりやすい刺激はなくても、自分ごとに引き寄せてみるといろいろ考えられる物語で、読み時があるのかもしれませんね♪
      2025/09/14
  • 幸せな家庭を築けたと信じる中年主婦が、旅を通じて自分を見つめ直し思考していく物語。さすがのクリスティで読みやすさ抜群、冒頭からの展開も面白く、若い頃ではなく主人公と同年代の今、読めて良かったです。人生は何が大事なのか、人生に正解はないのか、考えさせられます。

  •  アガサ・クリスティーがメアリ・ウェストマコット名義で発表した『春にして君を離れ(Absent in the Spring)』は、彼女の作家人生のなかでも特に内省的で、個人的色彩の濃い作品である。1944年の刊行当時、クリスティーは第二次世界大戦下という不安定な時代の只中にあり、50歳を超えて人生の折り返し地点を迎えていた。当時クリスティーはすでに「ミステリの女王」としての地位を確立していたが、その一方で、プライベートでは二度目の結婚生活を送りながら、自身の女性としての在り方や人間関係について内省的な時間を過ごしていた。
     物語は、旅の途中で孤立を強いられた中年女性ジョーンが、ふとした空白の時間のなかで自分のこれまでの人生を見つめ直すというシンプルな構造をもつ。しかし、回想するにつれて、ジョーンがこれまで信じてきた「良き妻」「良き母」としての自己像は、実のところ自己満足や独善に過ぎなかったという残酷な真実が明らかになっていく。
     クリスティーは本作について、自伝のなかでこう記している。「これは誠実に、真心を込めて書かれました。私が書こうと意図したとおりに書けた作品であり、それこそが作家にとって最も誇らしい喜びなのです(和訳)」(An Autobiography, Agatha Christie)。さらに同書で、「彼女(ジョーン)は絶えず自分自身に出会うことになる。ただし、それが自分だとはわからず、次第に居心地の悪さだけが募っていくのです(和訳)」とも語っている。
     興味深いのは、ジョーンが自己の欺瞞に気づきながらも、根本的な変化は起きず、再び日常へと戻っていくという結末である。ここでは、変わることの困難さ、人間の保守的な心理が淡々と描写されている。この静かな終幕が、読後に深い余韻を残す。
     『春にして君を離れ』には、謎も事件もない。それでも、心の奥底に潜む暗がりを見つめるという意味ではクリスティーの他のどの作品よりも深く刺さる読書体験を提供してくれる。映像化されていないこの作品は、クリスティーの知られざるもう一つの顔を見ることのできる貴重な一冊であり、ミステリの名声とは異なるかたちで彼女の文学的真価を物語っている。

  • 読み終わって、恐ってなった!
    アガサ・クリスティー作品ではあるが、
    殺人事件とか何も起きて無いんだけどಠ_ಠ

    家族の歪さをこれでもかと見せつけられた。
    家族を、夫を心から愛していると信じるジョーン・スカダモアの有りようが哀しいし、虚しい。
    本人は良き夫、良き子供たちに恵まれて理想的な家庭を手に入れたと自負しているのに、「知らぬは当人ばかりなり」といった具合に事実は全くの逆。それを段々に鋭く描き出しているから凄まじい!
    流石のクリスティーだな、と感嘆しました。

    砂漠の只中で一人、自身の内面を省みることしかやる事が無くなっていく描写が寒々とこわかった…
    汽車がやっと着いて、徐々に現実の生活に戻りながら利己的な自身をも取り戻していく様子も哀しい。人はそう簡単に変われやしないと分かってはいても。


  • アガサ・クリスティ、こんな小説も書くのですね。
    どうか、どうか、ジョージに救いを、と読みながら切に願うのは、自分が「ジョージ」だからなのだろうか…。
    ずっとドキドキしながら読み進んだ。

    こんな小説の書き方あるのか…という驚きと展開の面白さ、謎解きのスリルに、読み始めたら止まらなかった。

    こんな自分への気づきも確かにある。自分が自分の謎を解いていくミステリー。

    そして、謎解きだけで終わらないラスト。
    恐るべしアガサ・クリスティ。
    人間観察の鋭さに脱帽。まともに読んでないクリスティのミステリー群を読み直したいとも思う。

    あー、すごい小説ってまだまだたくさんあるのですね!

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著者プロフィール

1923年、東京に生まれる。東京大学西洋史学科卒業。翻訳家。『シェルシーカーズ」上・下『九月に』上・下(朔北社)『懐かしいラブ・ストーリーズ』(平凡社)、ハヤカワ文庫のクリスティー文庫(早川書房)、『子どものための美しい国』(晶文社)など児童書から推理小説まで幅広いジャンルの本を多数翻訳している。

「2022年 『ロザムンドおばさんの花束』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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