ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫)

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  • 早川書房 (2004年5月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784151300820

感想・レビュー・書評

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  • 【ノンシリーズ】
    ポアロじゃない「ノンシリーズ長編」。

    全ての伏線が最後に一気に回収される。
    繋がりがないように思えたエピソードも全て
    関係している。

    偶然に起きる殺人なんてものはなく、たくさんの要素が絡まった時に殺人は起きてしまう。人間の心理を描いたクリスティーらしい作品。

    今回も犯人を当てられなかった。
    犯人がわかってからもう一度読み返すと、犯人の心理的な怖さをもっと感じられる。

    バトル警視は、ポアロのような灰色の脳細胞を持つ天才タイプとは違って、良いお父さんであり人間味がある。作中でポアロの話も出てきてニヤリとしてしまう。

    最初のエピソードが最後になって意味を持ってくる。そこにクリスティーのとてつもない巧みさと、格好良さを感じた。
    後からジワジワくる深い渋い作品。
    再読したらまた違う面白みがありそう
    ★4.5

    ◆あらすじ
    休暇を過ごす海辺のリゾート地に集まってくる多重三角関係の男女。そこには不穏な気配が漂う…

  • 自分へのクリスマスプレゼントでクリスティーを読む。事件が起きるまでの不穏な感じと歪んだ人間関係がいつもながら上手くて好み。やっぱり騙されちゃった。単にいい人だったバトル警視ができる仕事人であり良き父親であるのがわかったのも良い。

    • あやごぜさん
      111108さん。こんばんは♪
      “クリスマスプレゼントでクリスティー”。素敵です!
      こちらは、バトル警視ものなのですね。
      面白そうです...
      111108さん。こんばんは♪
      “クリスマスプレゼントでクリスティー”。素敵です!
      こちらは、バトル警視ものなのですね。
      面白そうですね。是非読んでみたいです~。
      2021/12/26
    • 111108さん
      あやごぜさん こんばんは
      コメントありがとうございます♪

      そうなんですよ〜攻略本とかでもけっこう高評価だったので間違いないだろうと‥
      結果...
      あやごぜさん こんばんは
      コメントありがとうございます♪

      そうなんですよ〜攻略本とかでもけっこう高評価だったので間違いないだろうと‥
      結果、クリスティーありがちパターンかも知れないけど、私好みの大好物でした(≧∀≦)
      バトル警視前面に出てる珍しさもあるので、ぜひお読み下さい。

      あやごぜさんはポアロのクリスマス読まれたんですね!いいですよね〜去年私も読んで〝血みどろ〟ぶりに満足感ありました。確かポアロが肖像画につけ髭をあてるシーンがあって思わず笑ってしまいましたww
      2021/12/26
    • あやごぜさん
      111108さん。ありがとうございます♪

      おお♪バトル警視の活躍も期待できそうで、楽しみです!
      はい。「ポアロのクリスマス」はクリス...
      111108さん。ありがとうございます♪

      おお♪バトル警視の活躍も期待できそうで、楽しみです!
      はい。「ポアロのクリスマス」はクリスマス時期を意識した“狙い読み”で、たっぷり堪能いたしました~。
      付wけw髭!確かに!ポアロが付け髭を買ってきた時点でなんか笑えますよね~( *´艸`)
      2021/12/27
  • 冒頭で、殺人事件を考えることについて、つまりこの小説の書き方について語られる。

    「殺人事件のニュースや小説を読む時、殺人事件の調査をする時、人々は殺人が起きたところから考え始める。しかし殺人は結果なのだ。因果関係はその以前から始まっている。あの目撃者がそこにいたのはなぜ?あの証人が嘘をついたのはどんな感情で?殺人事件に至るまでには、計画があり、多くの偶然により思いもかけない形が作られ、関係者となった人たち性質が影響して、殺人という”ゼロ時間”に集束するのだ。」

    物語の前半は、ある年の月に海辺の町ガルズポイントに集まることになった人々の事情、それまでにした経験が語られる。

     スコットランドヤードのバトル警視は、大柄で木彫りのような印象で、切れ者には見えないのだが警官としての素質は確かだった。今回も娘が学校でかけられた盗みの冤罪を晴らした。夏の休暇は家族と日程が合わず、少し遅い休暇を甥のジェームス・リーチ警部のいるガルズポイントで過ごすことにする。
     アンドリュー・マクハーターは、何もかもうまく行かず自殺しようとするが失敗した。その後思いもよらない縁で就職が決まった。そこで改めて彼の地、ガルズポイントで最後の休暇を過ごして自分を振り返ってみることにした。
     ガルズポイントの屋敷に老未亡人トレシアン夫人と使用人たちが住んでいる。今年の9月にはいつもと違った客が来ることになった。
     テニス選手のネヴィル・ストレンジは、亡トレシリアン氏の遺産受取人だ。彼の現在の妻は若く美しく派手なケイ。最初の妻オードリーを追い出して結婚した。なんと今年はネビルの今の妻ケイと、以前の妻オードリーが同じ時期にトレシリアン夫人の屋敷で過ごすことになった。
     オードリーは「白い幽霊のような印象」と言われる薄幸そうな女性。若いケイは自信家で自由気儘。「白雪ちゃんと紅薔薇ちゃん」と例えられたり、「目を引くのは間違いなくケイだが、眼の前にいない時に思い出すのはオードリーのこと」などと全く正反対だ。
     さらに、オードリーに思いを寄せる昔なじみのトーマス・ロイド、ケイに思いを寄せる若い美男子テッド・ラティマーも滞在することになった。絡み合った恋愛、遺産受取人問題で緊迫感に満ちたトレシリアン屋敷。
     そこへ、亡トレリシアンの旧友で、引退した名弁護士トリーヴが訪問してくる。共に過ごした夕食の場で、トレーブ氏はまるでその場の誰かに警告するかのような謎の物言いをする。
    果たして「犯罪を犯したが罰せられず逃げ延びている」人物がこの場にいるのか?そして改めて事件が起きるのか…?



    冒頭の「ゼロ時間」説明により、この小説は「殺人をスタートではなくて、そこに至る偶然や人間の感情から描き始め、殺人は結果として書きますよ」というものなのね、として読んでいきました。しかし実際に事件が起きてからは「あれ?普通の事件捜査小説だよね?」と感じました…が!しかし!終盤の謎解きでなぜこのような書き方をしたのか納得!!前半のガルズポイントに行く前の会話、体験が、ガルズポイントでの「ゼロ時間」に見事につながった!
    「あの時こんな経験をしたので、犯人はこのよう殺人を計画し、関係者はこのように行動・証言し、探偵役はこのように解決した」がピッタリはまります。そして登場人物たちは、見かけと実際の性質が違うような人が複数いるのですが、その人がなぜ本質と見かけが違うのかも納得です。
    やっぱりすごいなーアガサ・クリスティー。

    探偵役のバトル警視も良かったなあ。一見冴えない無骨なのに、捜査の勘も、懐の大きさも、考え方の柔軟性も超一流。彼はエルキュール・ポアロといっしょに捜査したことがあり「あのベルギー人ならどう考える?」なんて考えたりします。

    相変わらず「事件解決後、やたらにカップルが誕生する。たまに意外なカップル誕生」のクリスティーですが(笑)、今回も無事カップル誕生して終わりました(笑)

  • 文句無しに面白かったです。

    俗に、ノンシリーズと言われる本作。事件の解決は、ポアロのような名探偵ではなくバトル警視。解説によると、このバトル警視の登場自体は5作目。彼は、それまで地味な扱いだったのが、本作で華開いたとのこと。

    作中で、バトル警視がポアロの名前をあげて、意識的に違和感を嗅ぎ取って推理し、活路を見出すのがいいですね。ポアロの人柄や推理の仕方が出てくるので、一冊はポアロの登場する本を読んでおいた方がいいでしょう。自分は、一作目『スタイルズ荘の怪事件』を読んでいたのでイメージできました。

    物語は、老弁護士が推理小説を読むときの持論を語り出し、「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている - すべてがある点に向かって集約していく…クライマックスに!ゼロ時間だ。」というプロローグから始まります。

    内容はプロローグ通り、ある人物が相手を破滅させるために、用意周到に計画を立て、その計画がまさに行われる「ゼロ時間」に向けて進んで行きます。つまり、逆に言えば中々事件が起きないので、ミステリ好きの人には退屈かも知れない。その分、人物描写や心理描写が丁寧で、男女のいざこざからくる緊張感もあり、自分は飽きずにどんどん読み進められましたけどね。結局、犯人当てはハズレて、またしても騙されてしまいましたが、伏線の回収も見事でとてもいい終わり方でした。

    クリスティーは、まだまだ有名作品が多々あるので、他の本の合間に少しずつ読んで行きたいと思います。

  • ポアロじゃないクリスティも良い、一冊。

    金持ち老婦人殺害事件は金銭目的か?単純な事件に見せかけながらそこに至るまでの綿密、巧妙な計画、絡み合う人間模様、奥が深い人間心理を描き魅せるミステリ。

    ポアロはいない。けれど論理的に時に大胆に、決めたらとことん突き詰めていくバトル警視が良い。
    充分読者を魅了する面白さだ。

    殺人事件自体は物語の結末、つまりゼロ時間。
    これは実に言い得て妙。今、この瞬間にもゼロ時間へ向かって思いが集約しつつあるのか…。

    心に芽生えた些細な思いが人を変える怖さ、そこも味わえた満足な読書時間だった。

  • 『殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている-ときには何年も前から-数多くの要因とできごとがあって、その結果としてある人物がある日のある時刻にある場所におもむくことになる。』
    冒頭に語られる法律家の重鎮、ミスター・ドレーヴの言葉である。
    本書のストーリーは、この冒頭の言葉に凝縮される。

    物語は一見関係のないようないくつかの短いエピソードから始まり、しだいにメインキャストであるネヴィルとオードリーの元夫婦と、彼らを取り巻く様々な人間模様が描かれていく。
    二人はネヴィルの心変わりにより離婚し、ネヴィルはオードリーとは正反対のあでやかな美女、ケイを妻にした。本来であれば関わることのないはずの彼らだったが、ネヴィルの育ての親であるレディ・トレシリアンの家で二人が同じ時期に滞在することになり、物語は一気に不穏な雰囲気を帯びていく。

    オードリーは一切感情を表さないが、なにか強い気持ちを心のうちに抱えているように見える。一方、ケイはオードリーの存在が疎ましく、イライラが止まらない。さらに、オードリーの幼馴染で小さなころから彼女を愛するトマス・ロイド、ケイに思いを寄せているジゴロタイプの美男子、テッド、彼らをハラハラしながらも冷静に観察するメアリーなど、脇を固める登場人物も何かを引き起こしそうな危うさを秘めている。
    そんな中で起こってしまった殺人事件。真っ先に疑われたのはネヴィルだったが、果たして彼は本当に殺人を犯したのか、それともこれは誰かが周到に計画した罠なのか。

    本書の醍醐味は、なんといっても初めの方でさりげなく語られたエピソードが事件を解く思わぬきっかけとなるところである。物語自体はかなりダークで読後の爽快感は少なめだが、あのエピソードはこの結果を導くためだったのか、とパズルのピースがかちりとはまるような心地よさがある。
    また、本書の探偵役、バトル警視もいい味を出している。彼はクリスティーの他の小説にも何度か登場するが、どちらかというと地味な存在である。ポアロのように論理的で頭の切れるタイプでもない。しかし上辺の言葉や態度に惑わされず、相手をよく観察して実直に事件を解決に導く様は、ポアロとは違ったある種の安心感を与えてくれる。

    ポアロシリーズで最後に発表された『カーテン』と似た雰囲気をまとう本作。ダークなストーリー好みの人にお勧めである。

    • 111108さん
      b-matatabiさん、こんにちは。

      コメント送りたいと思いつつ遅くなってしまいました。
      この本確かに重い感じでしたね。ダークな雰囲気は...
      b-matatabiさん、こんにちは。

      コメント送りたいと思いつつ遅くなってしまいました。
      この本確かに重い感じでしたね。ダークな雰囲気は『カーテン』を思わせるものなんですね。だんだんと『カーテン』に近づきつつあるけど、読むの躊躇ってしまいます。
      2023/02/08
    • b-matatabiさん
      111108さん、おはようございます。

      私も返事がすっかり遅くなってしまいました。
      この本は『カーテン』が書かれた時期と近いみたいで...
      111108さん、おはようございます。

      私も返事がすっかり遅くなってしまいました。
      この本は『カーテン』が書かれた時期と近いみたいです。
      クリスティーの小説には戦争のことはほとんど出てきませんが
      戦争の暗い時代を少し反映しているのかもしれないな、なんて思いました。

      この本は、一応犯人以外は皆それなりにハッピーエンドを迎えましたが、全体を流れる重苦しい雰囲気はぬぐえないですよね。
      2023/02/22
  • しっかりした和食(横溝作品)が続いて洋食が食べたくなったので、久々にクリスティーを。
    ちょうど、”夏の終わりに読みたくなるミステリー”とtwitterで聞いたもので、海辺の館が舞台のこちらを選びました。

    殺人は事件が起きるはるか以前から始まっている――。
    ずばり、これが今作のテーマです。
    殺人犯がいかにして強い憎悪を抱き、どんな計画を立て、そして分厚い仮面の下にそれを隠してあたかも普通の人を装って生活する様を、我々読者に気取られないように書き切ったクリスティーの筆力はさすがとしか言えません。なかなか事件が起きないのに退屈させないのもすごい。
    事件が起きて、証言や証拠が集まって、探偵が皆を集めて「さて……」と言う。そんないつものパターンとは異なる読書体験に、脳の違う部分が刺激された気がします笑
    それにしても、犯人があの人だったとは……。
    それを踏まえて再読したら、そのサイコパスっぷりに背筋が寒くなりそうです。この作品の発表は1944年とのことですが、その時代にサイコパスや精神的DVといった要素を持つ人物を描くクリスティーは、どれほど時代感覚に優れていたというのか。。

    今作はノンシリーズとのことで、いわゆる探偵役を務めるのがバトル警視。
    娘とのエピソード(一見関係ないように思われる)で、すっかり夢中になってしまいました。
    派手さはないものの、堅実な捜査を重んじ、そして自身の直感も大切にする。
    そんなバトル警視から、ポアロさんへの言及があったのには思わずニッコリ。二人が共演する『ひらいたトランプ』、早速ぽちってしまいました〜♪

    犯人を追い詰める証拠の弱さと結末のラブロマンスはちょっと引っかかりましたが(トマス、いいところがないじゃないか!笑)、でも、これまで他人に傷つけられてきた二人だからこそ今後は幸せになってほしいな。
    真相を覚えているうちにぜひ再読したい一冊です。

  • バトル警視が探偵役を務める、シリーズにはならなかったシリーズと呼びましょうか。ポアロシリーズの一作に登場し、本書の中にも、ポアロのことを考えるシーンがあります。
    さて、不思議なプロローグです。ミスター・トレーヴによる「ゼロ時間」についての考察。自殺に失敗したアンガス・マクワーターのボヤき。たぶん犯人の、歪んだ精神で組み立てる完璧な殺人計画。バトル警視の末娘にかけられた窃盗の嫌疑…そこからバルモラル・コートで繰り広げられるサスペンス・ドラマ、遂に起こった殺人事件。でも、それは「ゼロ時間」に至るプロセスのひとコマに過ぎなかったと、ラストに判明するのです。ポアロのような名探偵が登場しないからこそ、スパッと解決ではない意外な幕切れになったのですね。なるほど…。

  • 「しかし、殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている」
    その殺人が巻き起こる「ゼロ時間」へ向けて、着実に進んでいく綿密な計画。中盤あたりまでは事件も起こらず、不穏な空気がじわじわと満ちていく人間ドラマが積み重ねられていく。そして、老婦人・トレシリアンの死で堰を切ったように溢れ出す人々の感情と事件の謎たち。そこからラストまで勢いに流されるまま夢中で読んでしまった。

    張り巡らされた伏線や、登場人物たちのちょっとした行動が「ゼロ時間」に向けて集約していき回収されていくのは素晴らしいの一言。ミステリとしての面白さに加え、キャラクターの心理描写も実に巧みでドラマへもミステリへも絶妙な味付けをしている。みんな怪しく思えてしまって、犯人は全然わからなかったな(笑)

    あと、好きな台詞が二つあるので紹介しておきたい。

    「ただそこにいるだけでいいのかもしれない─何かをするのではなく─ただある時に、ある場所にいるだけでいいのかも─ああ、うまく言えないのだけれど、あなたはただ─ある日、ある場所を歩いているだけでいい、それだけで何かとても重要な役割をはたすことになるかもしれない─たぶんあなた自身はそれとは気づかずに」

    「人にはたいていなんらかの欠点があるものだ。そしてたいていは、どんな欠点かは一目瞭然だ。子供が欲張りだったり、意地が悪かったり、弱い者いじめをする質だったりしたら、それは見ればわかる。しかし、おまえはいい子だった。とてもおとなしくて、やさしくて、なんの問題も起こさなかった。それでときどき心配になったんだよ。目に見えない傷があるものは、力が加わったときに壊れてしまう恐れがあるんだ」

    この物語を象徴するような台詞でもあり、それ自体もとても心に残る。人は目に見えるものばかり追ってしまうけど、こうして自分が気づかないものだったり、目に見えない部分にこそ見逃してはいけない何かがあるんだろうね。

  • だいぶ好きでした。人間関係の伏線回収と、オチが良かった!ゼロ時間、なるほどね、と思いながらスラスラと読み切りました。久しぶりのアガサクリスティ!さすがです。

  • 1944年の作品。
    バトル警視が活躍するサイコスリラーサスペンス。

    あらすじ
    有名なテニスプレーヤーのネビル・ストレンジは、再婚したばかりの美しい妻、ケイ・ストレンジと夏の休暇を養母のトレシリアン夫人の屋敷、ガルズポイントで過ごすことにした。だが、ネビルは別れた妻のオードリーストレンジも同じ時期に招待し、元妻と現妻に仲良くなってほしいと提案する。
    さらにケイ・ストレンジに想いを寄せるテッド・ラティマー、オードリーストレンジの幼なじみで、オードリーに結婚の申し込みをしようと決意しているトマス・ロイドも屋敷にはやってきて、ガルズポイントには居心地の悪い不穏な空気が流れていた。
    そんな中、トレシリアン夫妻の旧友だった弁護士のトリーブスが屋敷を訪れ、凶悪な殺人鬼の性質を持つ恐ろしい子供の話をする。そしてその次の日トリーブスは持病の心臓病で亡くなってしまう。
    さらに、トレシリアン夫人が何者かに撲殺される事件が起こる。
    ロンドン警視庁のバトル警視とその甥リーチ警部は殺人事件の真相を暴くために捜査を開始するー


    ポアロでもマープルでもなく、バトル警視が主人公の作品を読むのは初めて。
    シリーズ物が好きなのでどうかなー…と思って読み始めたら…
    なんだコレ…めちゃくちゃ お も し ろ い

    序盤、全然無関係かと思われた何げないエピソードが後半に生きてくる。
    様々に散りばめられた伏線が最後に全て回収されていく。
    すごい…見事としか言いようがない。アガサクリスティ様。
    マープルともポアロとも違うタイプのバトル警視は、天才肌ではなく地道に捜査をすすめてコツコツ考え犯人を追い詰めていく、いぶし銀のベテラン警部タイプ。松本清張の「点と線」の鳥飼刑事のような。娘の言葉からヒントを得るというところも似てるかも。
    ポアロは登場しませんが、バトル警視がもしポアロがここにいたら…などポアロを思い浮かべながら捜査をするところも楽しいです。

  • ノンシリーズ・バトル警視もの。

    “殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている・・・”
    この、冒頭の台詞の通り、本書は様々な要因を経て魔の瞬間・・そう、<ゼロ時間(殺人事件)>が起こるという構成になっております。
    一見、独立している数々の伏線が終盤で回収される展開は、クリスティーの卓抜した構成センスをまざまざと見せられた感があり、いやぁお見事ですね。
    前半の、三角関係ならぬ、四角・・いや五角関係ともいえる痴情の縺れも、さすがの人間描写で引き込まれます。
    そして、今回の謎を解くバトル警視は、ポアロのような天才的で華麗な推理を見せる訳ではないのですが、小さな違和感をコツコツ潰して真相に迫っていくという、この地道さも良いですね。
    犯人に関しては、ムーンサルトばりの捻りが利いていて「そうきたか!」という感じです。
    それにしても、クリスティー作品でたまに登場する“陽キャ系”の犯人って心がバグっているのか、サイコすぎて怖いですよね。
    そして、本作品のキーマンは何といっても“自殺しそこねた男”ですね。絶妙な絡み方でいい味出していました。彼には今度こそ幸せになってほしいですね。
    他の面々も“犯人”が退場した事で、収まるところに収まりそうです・・。
    と、いう訳で今回も堪能させて頂きました~。

    • 111108さん
      あやごぜさん こんばんは

      バトル警視、地道さがかっこよかったですよね。あと5話位書いてくれてたらTVドラマシリーズできたかも⁈

      痴情のも...
      あやごぜさん こんばんは

      バトル警視、地道さがかっこよかったですよね。あと5話位書いてくれてたらTVドラマシリーズできたかも⁈

      痴情のもつれの不穏感と“陽キャラ系”犯人の怖さ、あといい感じでカップル誕生か?というラストもクリスティーあるあるですが、私はけっこう好きです♪
      2022/01/09
    • あやごぜさん
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      いいですね~♪TVドラマ『警視・バトル』。バトル警視のいぶし銀の魅力(娘さんに神対応...
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      いいですね~♪TVドラマ『警視・バトル』。バトル警視のいぶし銀の魅力(娘さんに神対応なところもポイント高いです)は通好みなのかもしれませんが、個人的に彼の話はもっと読みたいですね。
      “クリスティーあるある”。私も好きです♪。そんなクリスティーワールドを堪能できて、幸せでした(^^
      2022/01/10
  • ノンシリーズ
    とても面白かった!途中までは今ひとつはなしのつながりがわからないと思いながら少しずつ読んだ。最後は先が気になって気になって、結局やめられず朝5時まで読んでしまった。
    ノンシリーズではあるが、バトル警視がポアロのことを思い出すところもよかった。
    クリスティーを読んであとでもう一度読み返そうと思った作品はいくつかあるが、実際に読了後すぐ読み返しているのは初めて。ストーリーが気になって急いで読んだところもゆったりと読み直している。

  • 「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっているーー」「すべてがある点に向かって集約していく…そして、その時にいたるーークライマックスに!ゼロ時間だ。そう、すべてがゼロ時間に集約されるのだ」
    アガサクリスティの作品の中でこれほど洗練された題名はそうあるものではない。殺人を結果と捉え、全ての出来事が行き付く先を“ゼロ時間”と表現した辺り、天才的としか言いようがない。また、序盤でタイトルでありキーワードとなる“ゼロ時間”が早々と紹介されるのも珍しい。よくポアロシリーズやその他の作品を読んで思うのだが、クリスティは出だしが実に自然で、「さあ、これから物語が始まるぞ!」という気がしない。それどころか、まるで登場人物の生活を覗き込んでいるかのような錯覚に陥る。だが、今回は違う。ゼロ時間というキーワードを軸に物語が展開していく。この事件におけるゼロ時間とは、いつか。普段のクリスティとは違った視点から読み進めていくことができた。題目と序盤。この作品において着目すべきは、この二点である。実に洒落ていて、格好良い作品だ。

  • 犯罪が起きた時がスタートではなく、様々な要素が絡まり合って収束する、ゼロ時間こそが全て。
    中学の時に読んで感銘を受けたクリスティ作品。
    改めて読み返したが、やはり素晴らしい!時代を感じさせない!
    惜しむらくは、訳が堅苦しくてややぎこちないところ…。

  • 「殺人は結果であり、物語ははるか以前から始まっている」当然と言えば当然だが、殺人が起こるまでを切り取るのは面白い。僕はクリスティがほとんどのトリックや構成を彼女の時代に生み出したと思っているが、今回も秀逸だ。
     バルト刑事シリーズもクリスティの中では有名だが、改めて読むと彼の人間性(無骨だが力強く優しさがある)に惹きつけられる。彼の娘の事件は確かに頭の悪い女教師の暴走だが、それに対してのリアクションがバトル刑事の魅力を思い出させてくれた。
     章が変わり、登場人物達の紹介が行われ、彼らは物語の舞台ソルトクリークに終結する。どの人物達も一癖も二癖めありそうな連中ばかり。これからどのように経過が進み、0時間に到達するのか。
     クリスティは人物描写、風景描写に定評があるが、今回も館の喧騒の中にいる様な気分になる程熱量を持った描写をしている。クリスティ作品として、動機で一番多いのはお金、愛憎だが、それでも数十の作品を通してオリジナリティ溢れる作品が多いし、今作もそれぞれの人物達の思惑がまるで渦の様に物語の世界を飲み込んでいる様だ。
     ネヴィルとケイの夫婦、元妻であるオードリー。不穏な事を打ち明けた後に亡くなった老弁護士。何かを匂わせて殺されるのはクリスティ作品ではよくあるパターンだ。
     真相が明るみになり、その後の結末はさすがクリスティと思わされるクオリティだ。
     自殺未遂を起こし、自分自身に嫌気がさしていたマクワーターという男性が、伏線を回収し、彼が生きている事に意味を見出し(冒頭で彼が看護婦から言われた千里眼的予言まで回収してしまうとは。また、彼が自分のポリシーを返して嘘をつく部分は温かい気分になった。)最終的に主人公の様になるのはとても良かった。
     クリスティは実は悪役はきちんと悪い奴で、不幸な登場人物達は最終的に幸せになる事が多い。
     今回も沢山の登場人物達が事件後幸せになるであろう事は、読後、爽やかな気持ちになれる要因だ。
     それにしても、犯人が実行を計画した「ゼロ時間」に向けてストーリーが集約していく様子は見事だった。

  • 人間関係のもつれと殺人ミステリーが上手に組み合わさっててすごい
    ミスタートレーヴがあっさり死んでしまったのは驚いたけど、最後まで弓で友達を殺したかもしれない子どもの話が頭に残っていて、いい味出してたなあと思いました

  • 殺人事件は始まりではなくて、物語の結末、つまりゼロ時間。

    館の老婦人が殺された。証拠が出揃い、犯人は明らかかと思われたがバトル警視には引っかかることがあった。スポーツマンと離婚した元妻と現在の妻、友人、親戚、使用人たち。人間関係を追った後に明らかになった真相とは——。

    クリスティーはナイルでもそうなのだが、殺人事件が起こるまでのストーリーが読ませる。作中でバトル警視も述べているように、多くの殺人事件を描いた物語は、まず殺人事件が起きてそこに探偵がやってきて、と始まる。しかし本来、誰かが人を殺すには、そこまでに至る物語がある。

    クリスティー作品は登場人物が多くてもその一人ひとりの顔がしっかりイメージできるのがすごい。今回も登場人物たちの動きに惹きつけられて一気に読んでしまった。

    最初の妻であるオードリーが語る自分の変化。追い詰められて、もう楽になりたいからやってもいない罪を自白しそうになる。現代でいえば精神的DVだろうか。この男女の関係は書かれてから半世紀を超えても新鮮に読むことができる。

    この物語の探偵役はバトル警視。ポアロほど個性が強いわけではないが、地道に捜査と考えを進ませていく。物証に乏しい今回の犯人を追い詰めるシーンは、読んでいてもハラハラする。なぜ出てきたのかわからなかった自殺未遂者の登場で一気に展開が進むのもすごいが、その後で彼が持ち出した決定的一打も綱渡りだったことを読んで、さらにクリスティーの筆力に感服。

  • 書店にマープルシリーズが無くて、でも今、クリスティーを読みたい!と手にした本作。自作ベストテンに挙げている作品と知り、意気込んで読み始めたが最初は序章ばかりと思ってしまい、なかなか興が乗らなかったけれども、ストレンジ夫妻が登場してからは大満足の読み応え。発表された1944年にサイコパスキャラが確立されていたなんて。。古い作品だからって推理が当たるとナメちゃダメです(私だけか)

    • 111108さん
      マープル禁断症状ですね笑!確かにちょっとブツ切れ感ある章立てかも。そうそう、この作品で改めてクリスティー作品のかっこよさげな奴はアブナイと認...
      マープル禁断症状ですね笑!確かにちょっとブツ切れ感ある章立てかも。そうそう、この作品で改めてクリスティー作品のかっこよさげな奴はアブナイと認識しました。
      2023/12/10
    • miyacococoさん
      111108さん、その通り禁断症状です~(笑)でもいずれマープルシリーズ読破してもクリスティーにはまだまだ面白い小説があるんだ~と実感出来て...
      111108さん、その通り禁断症状です~(笑)でもいずれマープルシリーズ読破してもクリスティーにはまだまだ面白い小説があるんだ~と実感出来て良かったです♪
      2023/12/10
  • 凄かった、凄かった。
    最後に一気に回収されていく複線。
    呆然としてしまう、あまりの凄さに。
    バトル刑事の娘さんの件までこう作用するとは…。
    ケイのヒステリックもネヴィルに影響されてたんだろうかとか考えてしまう。

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アガサ・クリスティの作品

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