忘られぬ死 (クリスティー文庫)

  • 早川書房 (2004年5月14日発売)
3.63
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784151300844

感想・レビュー・書評

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  • 【ノンシリーズ】
    ポアロが出ない「ノンシリーズ長編」

    男を虜にする美女のローズマリー。
    姉ほどは容姿に恵まれてない妹のアイリス。
    その他の登場人物も全員魅力的なので、物語に入り込んで感情移入してしまう。

    登場人物が少ないのもあるけど、登場人物表を見なくても初めて覚えられた。私でも覚えられるくらい人間ドラマが濃い。
    ストーリー展開が上手いので続きが気になって朝方まで読んでしまった。次の日キツイのでダメなやつ…(+_+)反省

    それぞれの回想パートで心情が語られる。
    表面上ではわからなかったけど、回想パートを読むとそれぞれに秘密を抱えていて、全員に動機があることがわかる。
    めちゃくちゃ好きなタイプで面白い!

    もう何度もやられてるのに今回もまたクリスティーに騙されてしまった。ミスリードが自然で超絶上手いので毎回騙されてしまう。

    毎回騙されて馬鹿だなぁと思うでしょうが、クリスティーは毎回パターンを変えてくる!
    「あぁ、これは○○の作品みたいにこの人でしょ!」と余裕ぶっていると、解決編でクリスティーに「あなたもまだまだね…」と言われている感じで、また次の作品を読みたくなる。
    毎回違う手法のミスリードで騙されるのが、嬉しいし楽しい。

    この作品のようにポアロが出てこない「ノンシリーズ長編」は、自分の評価でほぼ★5を付けていることに気が付いた。

    今まで読んだノンシリーズ長編と自分の評価
    『そして誰もいなくなった』★5
    『春にして君を離れ』★5
    『終わりなき夜に生まれつく』★5
    『ゼロ時間へ』★4.5
    『忘れられぬ死』★5

    ポアロが1人ずつ尋問する部分が、ノンシリーズでは登場人物の心理描写のページに使われているせいなのか、ポアロより人間ドラマが濃い。

    推理ものが好きな人は「ポアロシリーズ」。
    人間ドラマが好きな人は「ノンシリーズ」の方が好きなんじゃないかと思う。
    でも★10を付けた大好きな作品は全てポアロシリーズなので、どちらも甲乙つけがたい。
    (*´∀`*)今日は早く寝よう…。

    ◆あらすじ
    1年前に自殺した美しいローズマリー。
    その場にいた6人の男女全員に動機があった…

    ※解説本にも書いてあるけど、本の裏カバーのあらすじを見ないで読むのがおすすめです。
    先に見るとこの本の面白さが半減します。
    プロなのにそこ書いちゃうんだ…という感じ。
    クリスティーが気の毒。

  • 男を虜にする美女がレストランでの誕生会席上で自殺?夫や妹や愛人らが彼女を回想する中、一年後に同じ場所でパーティをする事になり‥。回想シーン長いかもと思ったがそれも作戦?後は怒涛の結末へ。クリスティー長編の醍醐味を味わえ楽しい。

  • ノンシリーズ。

    男性を虜にしてしまう美貌の持ち主・ローズマリーが、自身の誕生日パーティーの最中、毒を飲んで亡くなってしまいます。
    それから一年後、件のパーティーを催した同じ店に、(ローズマリー以外の)同じメンバーが集まった時、再び悲劇が起こってしまい・・・。

    "過去の事件と全く同じ状況下で第二の事件が起きる"という設定・・ん?これって、ポアロもの短編『黄色いアイリス 』と似てるんでねーの?と思ったら、やはり『黄色・・』の方が元ネタだったようですね~。

    ま、それはいいとして・・いやぁこれは面白かった!
    私の中では『杉の柩』と同様、"タイトル地味だけど、すこぶる秀作"な作品と言いたいです。

    まずはローズマリーが亡くなった時に居合わせた男女六人が、彼女についてそれぞれ回想していく構成なのですが、各自の思惑が交差していく中、ローズマリーの夫・ジョージがなんかやらかすのでは・・?という、不穏な雰囲気がMAXになったところでの第二の悲劇が!・・という、持って行き方がもう上手すぎて、クリスティー天才すぎるでしょ!と唸らされましたね~。

    因みに、今回は、クリスティー作品にちょこちょこ登場しているレイス大佐が真相解明にあたっていきます。
    で、彼と協力して捜査するケンプ主任警部が、あのバトル警視の後輩という設定もニヤリとしちゃいますね。
    ただ、レイス大佐が探偵役と思いきや、終盤で"あの彼"に、美味しいところを持っていかれてしまうってところも、何だかキャラが薄いレイス大佐たる所以なのかなと笑
    (いや、私は大佐を応援しておりますよ( ̄▽ ̄))

    真相については、"第二”の方は"そうだったのか!"という感じでしたが、ローズマリーの毒死の件はイマイチぼんやりしてしまったかな・・という印象で、その辺が若干残念な点でございます(もしかして、私の読みが浅いだけかもしれないですが・・汗)。
    とはいえ、クリスティーの人物&心情描写の巧さを存分に楽しみつつ、ミステリも堪能できるという、個人的に満足度の高い一冊でございました~。

    (※どうでもいい余談です・・・それにしてもヴィクターのだめんずっぷりは、【クリスティーだめんずランキング】の上位に食い込むこと間違いなしってくらい酷かったですね~・・多くを語れないのがアレですが、これは言及しておきたかったということで、失礼しました~(;´∀`))

    • ゆのまるさん
      あやごぜさん、こんにちは♪

      おっ、これはレイス大佐が出てくるんですね〜!
      ちょうど『ひらいたトランプ』を読み終わって、レイス大佐だけ出番が...
      あやごぜさん、こんにちは♪

      おっ、これはレイス大佐が出てくるんですね〜!
      ちょうど『ひらいたトランプ』を読み終わって、レイス大佐だけ出番が少なかったので物足りなかったところなんです。
      これまたタイミング良く、次は『杉の柩』を読むつもりだったので、その次に手にとってみたいと思います(⁠^⁠^⁠*
      2024/09/16
    • あやごぜさん
      111108さん♪

      あはっ ヴィクターについて言及するとネタバレに繋がってしまうので、
      スルーするつもりだったのですけど、ついGメン...
      111108さん♪

      あはっ ヴィクターについて言及するとネタバレに繋がってしまうので、
      スルーするつもりだったのですけど、ついGメンとしての(←?)血が騒いでしまいまして、摘発せずにいられませんでした~(;´∀`)
      ホント、こやつは111108さんの仰るように「根性悪ながら魅力的な危険な男」ですので、もう上位確定でやんす。

      レイス大佐は『ナイルに死す』で、ポアロの友人として協力していた記憶ですね。
      他にも『ひらいたトランプ』や、ノンシリーズでは『茶色の服の男』とか、何気にちょいちょい出ていて、確かに「いろんな方面から信頼厚い人物」的なポジションですよね~。

      ケンプ主任警部は、彼の登場シーンで「ケンプにはどことなく、あの老練の警部、バトルを思わせるところがある。事実、ケンプはかなりのあいだバトルの下で働いていた。」(←なので、いい人です!)
      と記述があったので、つい食いついてしまいました。
      我ながら、小ネタ(?)ばっかりに目がいってしまって、もっと謎解きの読解に注力しなきゃ・・と反省しております(´▽`;)ゞ
      2024/09/16
    • あやごぜさん
      ゆのまるさん コメントありがとうございます♪

      そうなんです~。ゆのまるさんがお読みになった『ひらいたトランプ』(ある意味"準レギュラー...
      ゆのまるさん コメントありがとうございます♪

      そうなんです~。ゆのまるさんがお読みになった『ひらいたトランプ』(ある意味"準レギュラー勢ぞろいって感じですよね)"では、ちょっと影の薄かった(?)レイス大佐が、本書では頑張っておりますよ~。
      是非、気が向いたら本書も読んでみて下さいね。

      お♪『杉の柩』を読まれるご予定なのですね~。
      個人的に好きな作品なので、ゆのまるさんのレビューを楽しみにしております~(*´▽`*)
      2024/09/16
  • ローズマリーが誕生パーティで毒をあおって死んでから一年。彼女が亡くなった時と全く同じ状況で関係者6名が集められる。そして乾杯の後、衝撃的な出来事が起こるのだった。

    クリスティの作品でよく用いられる「過去の殺人」がテーマである。
    物語は三篇に分かれていて、第一篇は彼女に対する6人の思いが一人ずつ描かれていく。ローズマリーは美しく男を惹きつける力を持っているが、中身がなく考えの足りない行動をする女性である。彼女の奔放な行動に振り回され、傷つき、追い込まれる者たち。誰が犯人でもおかしくないと思わされる。
    第二篇は彼女の夫ジョージがローズマリーを殺害した犯人を捜すためにパーティを催し、衝撃的な出来事が起こるまでが描かれる。
    第三篇は警察による関係者の事情聴取と解決編である。少しずつ隠されていた関係者たちの秘密が明らかになっていくが、真実は最後の最後まで謎のままである。

    すでに亡くなっているローズマリーが生きている登場人物の誰よりも印象深い。誰の心の中にもローズマリーの影がずっと尾を引いている。そして、この話の重要なテーマとなっているのが、彼女を中心とした男と女の不思議な関係である。次から次へと愛人をつくる妻を変わらず愛しつづける夫、危機に一心同体で立ち向かう夫婦。男女の関係に正解はないと思い知らされる。

    ラストシーンはどこか神秘的で美しい。謎の解明はやや駆け足な感じで少し消化不良だが、ラストの美しさで読後にすっと涼やかな風が通り抜けるような心地になる。時間をおいて再読したい話である。

  •  今作は僕がまだ読んでいなかったクリスティ作品の一つ。改めてクリスティの独創的なアイデアに衝撃を受ける事になった。
     過去作の感想でも述べているが、クリスティ作品の魅力の一つは序盤の構成力であり、その作品から目が離せなくなる様な仕掛けがとにかく秀逸だ。面白い作品の殆どは序盤から面白いし、スタートがつまらなければ最後まで読み終える事はストレスになってしまう。
     今作では、主要な登場人物それぞれが過去に起きた美しいローズマリーの死を回想し、それぞれの目線で彼女との関係ややりとりを明かしていく手法をとる。この時点でローズマリーの自殺とされた「死」が疑惑の残るものだと読者に浸透させ、彼女の夫のジョージや妹のアイリスの回想や焦燥を経て新しい事件への一連へと繋がって行く。
     登場人物それぞれがローズマリーを思い出し回想しながらオムニバスの様に進行して行くストーリーは見事に尽きると思うし、更にはそれぞれの目線から事件ご語られる事により全員に感情移入してしまい、誰が犯人であればこの作品は綺麗に締められるのかと終盤まで気持ちが高揚してしまった(笑)。実は序盤からある程度の予測はしており、クリスティが好む犯人像とエンディングがある為、ある程度犯人の目星をつける事はできる。しかし、当然フーダニットの魅力は損なわれていないし、衝撃感もありながら楽しむ事が出来た。
     トリックについてはある程度納得できるものでありながらも、映像がない中で単純にそうなるかなぁという部分もあるが、駐車場で自車と同じ車を間違えてしまう事がよくある僕にとっては、この様なトリックに騙されるだろうなぁと納得してしまった。
     少し勿体ないのは、探偵役が唐突に現れる部分で、それぞれの登場人物達をもったいぶった挙句、とある人物が探偵としての役割を受け持ち始めた瞬間は流石に笑ってしまった(探偵役はある程度明かしていても良かったと思う)あくまでレイスはレイスであり、彼が探偵役では無い事は彼が登場する他シリーズからも読み取れる。最後、真相が明らかになった後、ハッピーエンドの側面と、バッドエンドの側面が上手に構成されていた為、個人的にとても満足感のある作品だ。
     特にルシーラとルースの役割が見事だと思う。クリスティは年老いた女性、働く有能な女性の描写が上手く、この二人には特別思いやりをもってしまう。その他、政治家のファラデー夫妻、ルシーラの息子であり問題児のヴィクター、バトルを彷彿とさせる主任警部のケンプ、そして登場人物一覧に名前が挙げられない人々もそれぞれ魅力があり、何故存在しているかの役割が見事に果たされている。

  • 男たちを虜にしてしまう美女ローズマリー。彼女が自分の誕生パーティで毒を飲んでこの世を去って一年。彼女を回想する男女六人が一年前と同じ日、同じ場所に集まった時、新たな悲劇が始まる──。

    三部構成のメロドラマ×ミステリ。第一部がプロローグで、ローズマリーを回想する人々の独白を丹念に綴る。その量はなんと150ページ!事件の謎と一年後の悲劇に向けて、丹念に仕込みを重ねていく。誰もが怪しく、動機を持っている!単なる悪ではなく、誰しも邪悪へと転びうるという人間の弱さや危うさに心が抉られる。

    しかし本当に怖いのは、自分は善だと思い込んでいる人間が、その無知によって説得もできない悪となっていることだなと。影よりも強すぎる光の方が危険で迷惑だったりする。そして、その光は消えても、目を閉じればまぶたの裏側に焼きついているのだ!死んだローズマリーが常に場を支配している空気が凄まじい。

    衆人環視の中で、いかにして毒を盛ったのか。シャンパンの泡のように消えてはくれないこの鉄壁の仕掛けもなるほどと。ノンシリーズなので、有名な探偵たちは存在しない。誰が謎を解く役回りを果たすのかも見どころ。トリック自体はハッとさせられたものの、さすがに誰か気づかないか?!と思わなくもない(笑) ミステリ本筋以外の心理描写がさすがで、これを読んでも人を信じられますか?と言わんばかりの内容。そういう心の迷路を描いた作品として面白かった。

    p.182
    「成功した人間というのは、たいていは不幸なものだよ、それだからこそ、成功したともいえる──そういう連中は、なにか世の中が認めてくれるようなことを成しとげることで、自分自身を納得させないではいられないんだ」

  • アガサ・クリスティのノンシリーズは面白い。探偵が誰であるかわからないのでわくわくする。「気の利いたメロドラマとトリックの驚異の組合せ」と江戸川乱歩が評したのも納得。

  • 読み始めてすぐ、これ「黄色いアイリス」じゃない??と気づいたのだけど、上手く長編に仕立て直していて面白かった。
    あれは誰か気づかん…??というのは引っかかるし、真相は唐突に感じるものの、ミスリードが効いている。
    レイス大佐良かったなー!
    読み終えてから他の作品にも出ているのを知った。
    再会するのが楽しみ。

  • ミステリーを久しぶりに読みました。アガサ・クリスティの作品は初めて読んだのですが、とても面白くびっくりしました。最後まで犯人は誰か分かりませんでした。巧妙なトリックと伏線回収が素晴らしかったです。これを機に他の作品も読みたいです。

  • 全然犯人わからんかったな…と、読み終わって呆然とするような事件だった。クリスティーは絶妙に嫌味な人物と、こいつが怪しいのかもしれない…という不穏な空気を描くのがめちゃくちゃ上手いので、毎回きっちりと踊らされてしまう。悔しい、けど、その手腕があまりにも見事なので腹も立てられない。今回は特に、殺害方法すらもまったく予想がつかなかったのに、無事に解き明かされ犯人が暴かれた後、判明した動機で更にまた一回驚かされたので、本当に唖然とするしかない一作だった。

  • 何故姉は死んだのか、から始まるお話。
    読んでいて、なーんとなく違和感のあるお話だったのだが、最後まで読んで全て納得。犯人もトリックもここまで全く想像に及ばなかった作品は正直久しぶりであった。

  • クリスティーの中期ノンシリーズ。
    ミステリというより、どちらかというとロマンスメイン。

    最後が少し駆け足気味で、途中、散々含みを持たせたセリフとかは放置。もうちょっと解決編が長くても良かったのかなと。
    意外な犯人ではあったけど。。。
    うーん、読者が置いていかれる意外性というか、騙された!とはならない。

    あと、題名が間違いやすい笑
    「わすれられぬし」じゃなくて「わすられぬし」なのね。

  • ちょい役が黒幕(この悲劇は誰の責任かと言うとこの黒幕の母親=愚鈍なのに割とちゃっかりしていて息子を甘やかし放題で極悪人にした被害者の伯母に負う所大だと思う)で、従犯者の叙述はアクロイド殺しと違ってアンフェアでは…また如才なく世の中をよく知っている女性が、いくら魅力を感じたにしても初めて会った悪人の話にころっと乗るのは現実味がない気がする。
    ただし一人ひとりの登場人物の書き込みが丁寧にされていて読み応えがあり面白かった。ファラデー夫妻の顛末は結局筋と関係なかったけれど結構感動した。でも途中でアレクサンドラが「あの時それを知っていれば、今はもう手遅れ」と言っていたのは、小説の半ばごろでいきなり犯行の告白のようにも取れるけれどそれにしては露骨すぎるし何なのか頭をひねった。結局何のことだったのか回収がなかった。彼女の印象についてケンプ警部が昔のキリスト教の聖者についての独白が斬新でアガサって意外とこういう人だったんだと思った。女優にキャンセルを伝えたのも結局ルースだったのか、どういう目的があったのかよくわからない。アンソニーの設定はひねりすぎ、レイス大佐は映画「ナイル殺人事件」の軽妙洒脱な陽性キャラクターがちらついてちょっと違和感。
    夫を除くほとんどの語り手からディスられていたようなローズマリー(キャラクターとしては白昼の悪魔の被害者に近い)だったが、落ちたバッグ の偶然は、万霊節の夜に彼女の意思が働いたような、人生これからの妹を守り、代わりに自分を愛してくれた夫を呼び寄せたとも取れ、残された妹が姉の想いに応える結びがほんのりじんとくる。

  •  ルシーラ・ドレイクのようなお喋りなおばさんを身内に持ちたくないものです。

  • とても面白かった。アイリスに幸せになって欲しい。

  • 第一篇はローズマリーに対する登場人物それぞれの回想、第二篇は第二の事件発生まで、第三篇は事件の解決までという構成で最後まで飽きることなく読めて面白かった。
    すでに第一の事件が起きている所から始まるため第一篇から全員が怪しく見えるし緊張感があった。

  • アガサ・クリスティのミステリーは大胆なトリックではなく、微細な人間関係の描き様にこそ最大限の魅力である。本書忘られぬ死も登場する女性やロマンス模様に面白さがある。もちろんトリックも秀逸である。ポアロやミス・マープルのような探偵がいなくてもクリスティの作品は面白い。

  • 1945年発表。明確なシリーズものではないが、準レギュラーキャラクターが登場する。冗長気味のメロドラマから始まるので、いささか退屈か?と思ったが、中盤に入るとサスペンス色が増して一気に物語に引き込まれる。細やかな人間描写と、意図的に描かれていない部分の曖昧さが抜群にうまく、ミスディレクションも完璧。クリスティベスト常連も納得の傑作。

  • 2004年発行早川書房のクリスティー文庫。事件の原因は財産。これはクリスティーではあまり記憶にないのだが、そんな訳はないはず。登場人物が少ないのは助かります。読みなれていれば犯人は分かりやすいはず、という意見もあるようですが、私の場合後から考えればわかりやすい方かな、という程度です。

  • 若く美しく資産もある女性が自身の誕生パーティーの席上、
    青酸カリを飲んで死んだ。
    直前までの様子から、流感の予後の鬱病による自殺と認定された。
    やがて、彼女は殺されたのだと主張する匿名の手紙が彼女の夫のもとに届く。
    夫は彼女の妹の誕生パーティーと称して、彼女が死んだレストランに
    彼女の誕生パーティーの招待客たちをふたたび呼び集めた。
    その席上、第二の死が発生する・・・
    といった流れで半分ほどまで進む、ノン・シリーズの長編です。

    彼女年の離れた夫
    美しくもなく地味な彼女の妹
    彼女の夫の女性秘書
    彼女の愛人の政治家
    政治家を熱愛するその妻
    得体のしれない彼女の友人の男
    皆が彼女を殺そうとする動機を持っていたが、
    誰にも毒を入れる機会は無かった。
    という謎ですが、犯人にその職業の経験と俳優の経験があるといっても、
    やはり無理があるし、わざわざパーティーのときに殺す必要性も無いので、
    ちょっと・・・といった感じです。

    第二の死は、「落ちていたハンドバッグを給仕が机上に戻した」
    というだけで分かる有名なトリック?です。

    得体のしれない彼女の友人の男の正体と言動が
    ちょっと現実離れしている点が気になりましたが、
    小説としては読んでいて楽しめるものでした。

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著者プロフィール

中村 能三(なかむら・よしみ):1903-81年。福岡県生まれ。翻訳家。モーム、サキ、クローニンなどの文学作品からミステリ、SF、児童文学まで多くの訳書がある。主な訳書にクローニン『城砦』、モーム『要約すると』、『サキ短編集』、コリンズ『月長石』、クリスティー『カーテン』など。

「2025年 『シリウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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