愛の重さ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300912

感想・レビュー・書評

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  • 愛の重さは、愛すること、愛されること、これが同じ重さになるのが理想なのか。親対子、兄弟姉妹、夫対妻、どちらかが一方的に愛するだけでは破たんし、愛されるだけでも、愛するだけでも幸せにはならない。

    賢く愛くるしい兄、控え目でおとなしい妹ローラ、両親の愛は兄に傾きがち。妹はそこで葛藤する。だが兄は病気であっけなく死んでしまう。そこに兄に似た妹が生まれる。また両親の愛は妹に向かう。私は妹の死を願う。が家が火事になり、とっさに妹を助け出したことで、妹への愛に目覚める。

    主人公ローラは誰かに愛される事を願いながら、ずっと愛することで人生を生きてきた。親に愛されなかったと思い込んでいるローラ、妹をひたすら愛したローラ、それは不均衡な愛で幸福な結果にはならなかった。最後に愛し愛される男を配し、均衡な愛を授けた。

    妹シャーリーの結婚相手、押しが強く悪気はないが不誠実な男、の描写がクリスティの最初の夫アーチボルトを念頭においてるのか。妹に次に思いを寄せる思慮深い旅行家はクリスティの再婚相手の考古学者マローワンを思わせる。


    1956発表
    2004.9.15発行 2019.7.25第3刷

  • アガサ・クリスティのミステリ以外の作品。
    つまり普通の小説ですが、これは読み応えがある方。女性には面白いのでは。
    モンゴメリのエミリーブックスを思い出しました。
    ただいま再読中なので、またあとで加筆するつもり。

  • 両親からの愛情に飢え、盲目的に妹シャーリーを愛するようになるローラ。辛く息苦しい前半から、後半唐突に訪れるラスト。
    作品としての出来は唐突なラストによって落ちているとは思いますが、わたしはとても救われました。

  • 私の好きなミス・マープルやポアロは登場しないが、クリスティー特有の軽快な進め方で、とても面白かった。

  • Burdenって妹に対する重すぎる愛のことだと思ってた。しかし、ローラはシャーリーのために重荷を背負ったのだ。他の誰にもできない選択をして。
    その選択は誤っていたけれど、責めようもない。0か100かしかないような極端な生き方をやめて、ローラが勇敢にもやわらかく生きてゆけますよう。

  • 誰かを愛するということ、誰かに愛されるということ。二人の姉妹の人生の一部を覗き込みつつ、それぞれの愛の重みを描いたアガサ・クリスティーの名作。

    アガサ・クリスティーがもともと違うペンネーム、メアリ・ウェストマコット名義で執筆した6篇のうちの一つ。
    一番しっかり描かれたであろう愛はローラとシャーリーの姉妹愛なのだろうけれど、ローラと父母やシャーリーとヘンリーの愛についても描写があっていろんな形の愛があるよなと思いました。ただ、親子愛に関しては『春にして君を離れ』なんかでも触れた話だし、だいぶ軽めだった気もする。
    愛以外の描写でいうと、ローラとボールドックの友情に心温まった。

  • 愛の重さ
    アガサ・クリスティ

    メアリ・ウェストマコット名義のクリスティ小説⑥

    *☼*―――――*☼*―――――

    「娘は娘」と結構似てる。主要人物は大体誰かに当てはまった。

    ローラがシャーリーのことを過大に愛するのは、本当はやっぱり(原点に戻って)自分自身が1番愛されたかったのだろうなというのが第4部で分かる。と同時に、愛されることって重いなと初めて気付く。

    シャーリーがヘンリーのことをあまりよく知らずに結婚してしまったのは、「娘は娘」に続き魔の3週間で結婚を決めたから?(「三」が経過日によく使われる気がする)ローラが結婚に反対していたのは、ヘンリーの内側を見透かしていたのか。出会い当初は口数の少ない一途のイメージが、あっという間に薄情男になった。これが本性。そして離婚を考えた途端、ヘンリーはポリオに罹る。一生涯不自由な身体をシャーリーは見捨てるはずは無い。

    第3部でいきなりルウェリンという伝道師の目線に。第2部の後ヘンリーは亡くなり、シャーリーは再婚していたが幸せではなかった。キリスト教の伝道師ということで内容は信じるとか信じないとか、そうじゃなくて「知っている」とかなんとかかんとかで頭に入ってこず。

    シャーリーが亡くなり、遺品を届けにローラに会いに行ったルウェリンには未来が見えることがあり、実は幻のローラと会っていた。だからこそ運命の人?のローラは愛せたのか。ローラは愛に飢えてるので愛されたことが愛するきっかけになったのか。

    ヘンリーは薬を飲んだことを忘れる(多く飲んだら死に繋がる)、シャーリーは夫に告げずにお酒を飲みに出かけていた(交通事故は故意?)、という少しミステリーもあり。

    2022/07/21 読了(図書館)

  • アガサ・クリスティーがメアリ・ウェストマコット名義で書いた小説はどれも面白い。人間の本質を突いている。
    どの小説にも存在するのが、物語の登場人物を冷静に見て、的確なアドバイスする人物。今回はポールドック氏がその立場のようだが、ボールドック氏の発言にアガサ・クリスティーが考えることが凝縮されているように思う。

  • 2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。解説は馬場啓一(作家)。第二部までは普通(?)の小説。姉妹の愛し方愛され方とそれに伴う人格形成の物語として恐ろしいがとても理解できるお話。第三部は突然高尚な感じのお話が始まったような感じがして唐突に感じる。とはいえその部分が第四部、ラストに繋がる、のだろう。

    訳者あとがき 有

  • 原書名:The burden

    ローラ(一九二九)
    シャーリー(一九四六)
    ルウェリン(一九五六)
    初めのごとくに(一九五六)

    著者:アガサ・クリスティ(Christie, Agatha, 1890-1976、イングランド、小説家)
    訳者:中村妙子(1923-、大田区、翻訳家)

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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