ポケットにライ麦を 新訳版 (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (2020年8月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784151310409

作品紹介・あらすじ

会社社長の毒殺事件を皮切りに名家で起きた三つの殺人事件。かつて仕込んだメイドを殺されたミス・マープルの正義の鉄槌が下る!

感想・レビュー・書評

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  • ミス・マープル シリーズ ⑥

    「ポケットにライ麦を詰めて歌うは街の唄───」
    会社で毒殺された社長のポケットにはライ麦が詰まっていた。
    そして、マザーグースになぞられ連続殺人が起こる。被害者の一人であるメイドは以前ミス・マープルがしこみ、マープルのもとで働いていた。現場となる館にやってきたマープルの推理は。

    それぞれにクセがある登場人物達の怪しさ。鉱山をめぐる過去の因縁。そして、マザーグースになぞられる殺人の不気味さ。
    誰もが犯人のようで、誰もが違うような。事件に引き込まれました。

    今回、犯人を言い当て、すべての謎を解き明かしたマープルが力強くかっこいい。特に最後!
    そして、マープルに届いた手紙が哀れで切なかった。
    「でも、ほら、素敵な人でしょう」

  • 【マープル】
    マープルの「推理ではありません。事実です」という言葉が、カッコ良くて痺れた。
    編み物をしている優しいおばあさんの姿とは全く違う一面が見れた。

    今回の事件は私的なことも含まれているから、いつもは穏やかなマープルが静かに怒っている。だからカッコ良い。

    ラストがとても良かった。
    このラストのおかげでこの作品が心にいつまでも残る。最後の2行もとても印象的だった。

    愛読書の『アガサクリスティー完全攻略』著者の霜月さんが、この作品の解説者だった。
    数多いクリスティー作品の中から、自分の好きなタイプの作品を選べるのは霜月さんのおかげなので本当に感謝してます。

  • 悪辣な老社長とその金目当ての若い後妻、勘当された息子、謎めいた家政婦などいかにもな登場人物達の中で起きる連続殺人。ミス・マープルは突如現場に乗り込み、頭の切れるニール警部と共に見事事件を解決。必殺仕事人のようなマープルに惚れ惚れ。

  • 投資信託会社社長のレックス・フォテスキューが毒殺された。彼の邸宅「イチイ荘」で食べた朝食に毒が仕込まれたらしい。毒成分は、庭のイチイの実から抽出したと思われる。奇妙なことに、フォテスキューのポケットには大量のライ麦が入っていた。

    フォテスキューは高慢で高圧的な資産家。同居の家族はその資産に頼っているので、誰もが容疑者だ。
     妻のアディールは2年前に結婚した後妻で、若くて美人でセクシーでみんなに「私女よ!!私魅力的でしょ!!」と振りまいているような女。金遣いも荒く愛人もいる。
     アディールの愛人ヴィヴィアン・デュボアは、女たらしで女を扱ったり金を引き出すことには慣れている。
     長男で共同経営者パーシヴァルは堅物で気取り屋でチクリ屋で締まり屋で冷徹な嫌な奴でつまらん奴。最近は父親と会社経営のことで意見を違えていた。
     パーシバル夫人ジェニファは元看護師。身分違いの結婚により経済的には恵まれたが、フォテスキュー一家にも、金持ち暮らしにも馴染めず、家裁を取り仕切る能力もなく、毎日愚痴を言うばかり。
     放蕩息子の次男ランスロット。危険と冒険を愛する大胆で魅力的な男だが、長い間父と仲違いしていた。レックスとパーシヴァルの不仲により呼び戻されることになった。
     ランスロットの妻は、アメリカ人で貴族の称号を得たパトリシア。二度の結婚で夫を不幸に喪ったが、聡明で優しい女性。冷たい資産家屋敷で召使にかしずかれるより、自分で家や庭を作ることが似合うような女性。
     レックスの娘のエレイヌは、恋人ジェラルドから政治的や社会的な考えを影響受けている。この家庭から出て自分のお金で自由にやりたいことをしたいと思っている。 
     そのジェラルドは、レックスから結婚を反対されてエレイヌから離れたが、レックスの死によりまた接近してきた。彼女と結婚すればそのお金で政治的社会的な夢を実現できるのだ。
     エフィ・ラムズボトム(エフィ叔母さん)は、レックスの最初の妻(子供たちの母親)の姉で、妹が死んでもそのままイチイ荘に同居している。辛辣で頑固で宗教布教に拘る変わり者。
     
    イチイ荘(「荘」と言ってもお屋敷なので、かえって嫌味っぽいネーミング)には使用人たちもいる。
     イチイ荘の家裁を取り仕切るメアリー・ダブは、まだ若いが非常に有能な女性。
     メイドのグラディスは、児童養護施設出身で、ロマンスに憧れて男に騙される「本当にバカな娘」と心配されたり馬鹿にされたりする娘さん。
     クランプ夫妻のうち、夫人は非常に優秀な料理人で、彼女を雇うために夫が執事として雇われた。

    警視庁からニール警部が派遣される。しかし連続殺人へと繋がってゆく。そして死体にはマザーグースの歌を思わせる仕掛けが施されていた。

    老婦人ミス・マープルは、被害者の一人と繋がりがあったことからイチイ荘へとやってくる。
    ニール警部はこの老婦人は信頼ができると見込み、捜査協力の申し出を受けるのだった。
    死体への装飾から、かつてレックスが詐欺を疑われた「クロツグミ鉱山」の存在が浮かび上がり…。

    ===
    我々日本人にはマザー・グースの歌はすぐ思いつかないので、見立て殺人のあたりは「ミス・マープルが言うならそうなんだよね」の範囲(^_^;)

    今度も大変意外な人物だった!
    アガサ・クリスティ推理小説は登場人物の特徴を読者に伝えているので、不可思議な連続殺人の犯人が意外な人物でも「こんな殺人を考え、こんなトリックをやりそうなのは誰か」を考えたらとても納得できますよね。

    犯人に騙された人、真相を知ったら苦しむ人に対してもミス・マープルの心遣いや、そんな犯人を許さない断固たる姿勢があるので、アガサ・クリスティー推理小説は安心して読めるんですよね。

    誰からも嫌われる富豪が殺され、容疑者たちも嫌な奴揃いという推理小説では、殺人事件により犯人以外は棚ぼた的に得をするのが嫌な感じーーー(-_-メ)なんだけど、ここでは嫌なやつに棚ぼたで財産がいかないのも良かった。

    アガサ・クリスティが「この人はこういう人」というさり気ないエピソードが良いですよね。
     「沸騰したお湯で紅茶を入れなさい」と繰り返し言われているのにテキトーに入れちゃう人。
     「私は愚痴も悪口は言いませんわ」って、それ愚痴・悪口だろうという退屈マダム。自分から動く度胸はない。
     経験も教育もチャンスなく、甘い言葉と本当の親切の見分けたつかず、騙されてばかり。こういう人いっぱいいたんだろうなあ…。
     一見非の打ち所のないかと思ったら…、な女性。褒められすぎる人も怪しいのね(^o^;

    そして一番最後。
    事件が解決して物語も終わりかなと思ったら、一番最後に手紙が読まれて、これが少し切なく、だからこそミス・マープルや警部たちの「悪は絶対許さない」という揺るぎなさにより犯人が暴かれて本当に良かったと思えます。

    アガサ・クリスティの事件真相に納得すること、捜査にあたる人たちの正義感で読了感は良いです。

  • ミス・マープルシリーズ。

    会社社長宅で起こった謎の連続殺人事件の真相に挑む物語。
    関係者である家族をはじめ家政婦、執事、メイドたち使用人もみな殺人動機がありそうで、とにかく全員が胡散臭い。
    事件の真相に関しては、想定外の人物が真犯人で驚いた。怪しい人物がたくさん登場してすっかり翻弄されてしまった。

    最後のマープル宛の手紙には切なくなった。もっと早くマープルの元へ手紙が届いていればどうにかなっただろうか。マープルの怒りと悲しみがじわじわ伝わってきた。
    そしてそんな怒り悲しみの次に起こるのは相反する感情"歓喜"。難解な事件の真相に辿り着けた喜びがマープルの体にみなぎる。それは探偵としての性なのか。最後の一文にゾクリとさせられた。面白かった。
    単なる品の良い老婦人ではないマープルの姿がとても印象的な作品だった。

    それにしても、マープルは何故事件が解決する前に一人帰郷してしまったのか。
    今回、事件現場に登場するのもかなり遅かったし。ミス・マープルシリーズということを忘れそうになった。

  • クリスティーのミス・マープル作品で、マザー・グースの童謡になぞられて起こった殺人事件。容疑者は大富豪一族の面々で一癖も二癖もあるなんとも怪しい人達。古典的なミステリーですが、ニール警部目線で物語りが語られているのでもう皆んなが怪しく思えてしまい…。まんまと作者に手玉にとられてしまいました。
    そして中盤、マープル登場で一気にストーリーは加速。最後までテンション保ったまま読むことができました。
    今回のお話では、ニール警部がとてもイイ働きをしていまして、普通この手のお話ですと頓珍漢な推理をして引っ掻き回す役だと思うのですが、彼は違っていました。ミス・マープルと組んでこの難事件に立ち向かう中々の切れ者。前半は色々振り回されましたが、マープルと組んだ後はいい感じに立ち回っていましたね。
    とても新鮮に感じました。

  • ミス・マープルのシリーズもの。
    マザー・グースのうたになぞらえた殺人が次々と起こる。
    登場人物それぞれが何か隠しているような様子。

    マープルは事件が起こった屋敷に途中から登場する形で現れ、捜査をする刑事の有能なアドバイザー的な役割を担う。

    どれだけたくさんミステリーを読んだとしても
    そこに潜む謎やその答えに正しく辿り着くことは
    たいてい無理。
    わたしの事件メモの中で
    早々に×印がついた人々(犯人から除外)が
    一番怪しい人たちだった。苦笑…。
    この、まんまとしてやられた感が楽しい。
    久々のクリスティ、良かったです。

  • ミス・マープルシリーズの初読みです。

    ある社長の毒殺事件が起きて、担当のニール警部が関係者に丁寧に尋問していき、全体的な構図が見えてくるが、未だ決定的なものは無い。
    この物語で彼女が登場するのは中盤からで、やっと現れたという感じでした。
    真面目に捜査してきたニール警部でしたが、最後はミス・マープルに美味しいところを持ってかれたみたい。ちなみに、ニール警部はよくある間抜けの刑事ではありません。彼の名誉のために。
    もうひとり、フォーテスキュー家の家政婦のメアリ・ダブのキャラがいいのと、裏の顔が分かるなどいいスパイスになっていた。

    普通の?老婦人が謎解きするこのシリーズも面白い。またひとつ楽しみが増えた。

  • マープルシリーズの中でも間違いなく名前が上がる本作。
    「でもマザーグースものか、馴染みないからな〜……」とあまり乗り気ではありませんでしたが、オススメされるのも納得。さすがの面白さでした!

    投資信託会社の社長が毒殺され、いつも通り疑いがかかる親族たち。
    それにしても、クリスティー作品を読むたびに「いい子だけど闇を抱えた長男、人に好かれる放蕩息子の次男、しっかりものの長女」というきょうだい構成は万国共通なのかなとしみじみ思います。私の兄たちがまさにそうなので……。
    閑話休題。
    今回はニール警部が捜査の指揮を取るということで、ミス・マープルの登場は中盤近くになってから。セント・メアリ・ミードからは遠く離れたお屋敷が舞台なので、うまく捜査に入れるか不安でしたが、そこはさすがの”おばあちゃん力”ですんなりと溶け込みます。コナン君と同じですね笑

    肝心の謎解きの方は相変わらず誰も彼も怪しく見える手法で、犯人にもビックリでしたが、もっと衝撃だったのはラスト一文。
    今回は育てたメイドが犠牲に……ということで事件に関わったミス・マープル。ただ、彼女を突き動かすのは正義感だけではないのだとまざまざ思い知らされました。
    ”何があったのか知りたい”そんな探究心の強さが、彼女をただのおばあちゃんではなく”ミス・マープル”ならしめているのですね。魅力的なのに少し怖い。そんな主人公に我々読者は惹かれてしまうんだろうなぁ。

  •  久しぶりの一気読み!冒頭超絶美人っぽいミス・グローヴナーを登場させておいて映像的に話に入り込ませるとすぐさま事件発生。そこから安定感あるニール警部が話を進めていく。最初の事件の余韻も冷めやらぬなか、次の事件が…このスリリングな展開は数あるクリスティ作品の中でもかなり秀逸な出来だと思う。

     ミス・マープルはかなり活動的。昔探偵大図鑑的なところで紹介されていたミス・マープルはロッキングチェアで編み物編みながら噂話から推理する、という感じだったと思うが、実際に読んでみると全く違いとても活動的でおしゃべり。実際のキャラの方がずっと魅力的。

     クリスティ作品の名作に劣らず、登場人物それぞれもまた魅力的。メアリ・ダブはこの人を主人公にしても面白い作品が出来そう。パトリシアはその悲劇的な運命を含めて儚い美しさが。

     ちょっと横溝正史的な雰囲気もありつつ、犯人だけでなくエンディングのエピソードもこれまた映像的。本を読んだのに映画を見たような感覚にされる素敵な作品でした。

  • 名作ミステリーというのがどういうものか考えるとそれは何度読んでも安心できる読後感があるものというのが私の中ではある。その名作とよぶにふさわしい作品の一つがこの「ポケットにライ麦を」である。
    まず題名がとても好き、とてもおしゃれで心を掴む。どんな話になるのだろう、どういう意味があるのだろうとワクワクする。
    マザーグースを用いた見立ての連続殺人、容疑者になる個性強めの一族、絡み合う謎を読み解いていくと一人一人の人間描写の素晴らしさを肌で感じる。「ポケットにライ麦を」の意味がわかるとき、マザーグースの意味がわかるとき、ゾワゾワとする。
    真犯人の犯行の手口や動機、それをマープルがどのように導き、そして解決に繋げていくか。ラストの終わり方の切なさ、悲しさ、怒り、そして喜びを肌で感じる一気読みになりました。

  • ミス・マープル作品
    穏やかな、日本人がパッと浮かぶ欧州おばあちゃん

    だがこのミス・マープルは違う
    恐ろしいほどかっこいい

    たった2ページだけマープルが語る
    不器量な小間使いグラディスの不幸な生立ち
    しかし、読者は共感する
    なんて不遇な子なのだと

    そんなグラディスの死体が見つかった

    マープルは列車に乗って現場へ向かう
    マープルは席に座り殺人事件を報じる新聞を静かに読む
    その横顔は憤怒に満ちていた

    か、か、かっけえええええええ
    おばあちゃんかっけえええええ
    復讐の絶対審判老婆爆誕
    怒りの推理
    そして全てが終わりマープルの家に手紙が届く
    そこで復讐の絶対審判老婆の物語は悲しみとともに終わりを迎える
    ホント、かっこいいおばあちゃん読みたかったらこれで。ドラマでしかマープル知らなかった…

  • この作品だけの話ではないけれど、アガサクリスティー、人物特に女性に対しての観察眼がすごい。お湯が沸いていないのに茶葉に注いでしまうような人、身の回りにきっと居たんだろうなと思わせられる。
    女は手紙を捨てたと言いながら後生大事に残しておく…と言った記述があったけれど、最後の最後でまさに重大手がかりとも言える手紙が出てきていた。伏線になってたんだなあという気づきがあった。

  • ミスマープルが活躍する有名なアガサ・クリスティの小説。クリスティーはやはり普遍的だと思わせてくれる。
    マザーグースの見立て連続殺人も相変わらずそそるし、登場人物ひとりひとりの性格やら立ち位置やらも。
    ただ、今、21世紀の読み物としてはどう?
    上流階級の方たちがメイドに指図して、料理人、執事は文句も言わず(陰口はさんざん言う)家政婦の存在価値もイマイチピンとこないし。例えば遺産で学校を造りたいというその大きさもわからない。株の暴落、高騰など腑に落ちる点もあるけれどお金持ちたちの生活全体も分からない。
    殺人の動機も感覚がズレているとしか思えない。その頃の60代70代がけっこうなお年取り扱いされていること自体、今と違うんじゃないかなと。
    普遍的な小説とは言えても、しかも楽しんで読み終えたけれどもなぜか言葉にすると欠点ばかりあげつらってしまう。

  •  投資信託会社の社長が、自室でお茶を飲みながら突然苦しみ出し、そのまま死亡するという事件が起きる。死亡原因を毒殺と断定した警察は同居の家族を疑い始めるが、そこに更なる悲劇が……。

     ミス・マープルもの。故人の若い妻、長男夫婦、未婚の娘、前妻の姉、執事、家政婦……と今回も登場人物イコール容疑者が盛りだくさん。知らず知らずのうちに先入観で読んでいて、ニール警部ともどもミス・マープルに見当違いと言われてしまいました。この本に限らず、クリスティーの作品はタイトルが本当に素晴らしいなと感心。

  • 昨日読んだマープルシリーズが懐かしくも面白くて、また、マープルさん。
    306ページのうち、何と彼女が現れるのは139ページ。世間知らずの老婦人のていで、事件現場の屋敷の使用人や遺族から巧みに話しを聞き出す。彼女は素人なのであくまで警部に捜査を任せないといけないが、どの作品も色々な警部が見事に彼女とバディを組んで解決に至るのが楽しい。

  • 会社社長の毒殺。遺体のポケットにはライ麦が。連続殺人はマザー・グースの唄に見立てて行われていく。死後に洗濯ばさみで鼻をつままれたメイド、彼女を知るミス・マープルは復讐の女神として屋敷に現れる!

    ぼくにとって初のミス・マープルシリーズ。海外文学でありながら、さらさらと読める文章が心地いい。ニール警部とマープルが捜査していき、屋敷に渦巻く人間関係の闇を事実で照らしていく。メイドの仇を討つために単身乗り込むマープルに痺れる。怒りを胸に秘めながらも柔軟に対話するところもすごい。

    屋敷にいる誰もが何かを抱えている。こういう人間描写が抜群に上手い。見立て殺人をした理由。殺人の動機。明らかになった事実は息が詰まるほど苦しい。特にラストシーン。泣かせにくるだけではなく、あの演出で浮き彫りになる犯人の冷酷さへの怒りとのコントラスト。その切れ味の良さが印象深い。

    人を殺すだけでなく、人の心を殺す嘘。その怖ろしさ。言葉の裏側に潜む悪意に鳥肌が立った。最後に好きな言葉を引用して終わります。キレッキレなおばあちゃんコンビがいい味を出してた。

    「喜怒哀楽の感情が悪いとは言わないよ」ミス・ラムズボトムは言った。「わたしだって人並みにそういう感情は持っている。だけど、邪悪な心だけは許せない。邪悪な心は叩きつぶす必要がある」

    「わたしはかならず最悪の事態を想定します。悲しいことに、たいていそれが現実となるのです」

  • ミスマープルのカッコよさもさることながら、物語に出てくる人物ー特に女性ーの心情をうまく見せた物凄い作品だった。
    推理を披露し終えたあと、ミスマープルに届いた手紙とその手紙を読むミスマープルの描写はかなり印象的。今でも多くの作品で見られる、異性との求愛競争に負ける人間の虚しい人生に虚しく感じられる。

  •  初めてのミス・マープルシリーズ。マープルの存在感は割と控えめな印象を受けたが、マザーグースが題材のものってやっぱり面白い。そして誰もいなくなったを読んだ時のワクワク感を思い出して楽しかった。

     ただただ楽しくて一気読みしてしまった。結末に意外性もあって、単純にミステリーを楽しめる作品だったな。ただ、いつものことながら結構な突飛さがあるので、読者への謎解きの挑戦というよりは作者の発想を披露する場という感じはする。

  • マープルシリーズ長編6冊目。今回の捜査担当は優秀なニール警部で、マープルはいつも通り協力者として途中から参加する。ただ今回は誰かに頼まれて参加するのではなく、被害者と知り合いだったことから義憤に駆られて自主的に事件現場にやってくる。これまでと気合が違う。この作品はなんといってもラストがいい。

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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