終りなき夜に生れつく (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (2011年10月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784151310959

作品紹介・あらすじ

誰が言い出したのか、その土地は呪われた〈ジプシーが丘〉と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて……クリスティーが自らのベストにも選出した自信作。サスペンスとロマンスに満ちた傑作を最新訳で贈る。(解説:真瀬もと)

感想・レビュー・書評

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  • アガサ・クリスティのノンシリーズ。
    呪われていると噂が絶えない「ジプシーが丘」と呼ばれる土地に魅了された青年の物語。

    本編の3分の2ぐらいは、絵に描いたような信じられない逆玉婚の描写が続く。そんなに上手いこといく??って思っていると、終盤で事件が起きて、そこから驚愕の展開に移り変わる。

    クリスティが晩年に描かれた作品だけに、狂気に満ちた欲深い人間の描写には恐ろしいものを感じた。
    そして、真相を知った上で読み返してみると、初読とは違った解釈ができる表現や構成が随所にあって、上手いなぁと感嘆させられる。

    甘やかな喜びに生まれつく人と、終わりなき夜に生まれつく人。この対比のメッセージ性が印象深く、後悔とやるせなさを感じさせる読後感だった。

  • 【ノンシリーズ】
    攻略本でベスト3位、クリスティー自身が選ぶベスト10の中にも入っている作品。
    これはもう読むしかない。
    ポアロは出てこない「ノンシリーズ長編」

    ◆あらすじ
    呪われた「ジプシーが丘」。
    貧しい青年は大富豪の娘と結婚し、呪いの噂のある屋敷で結婚生活をはじめるが…。

    なかなか事件が起きないので、何のジャンルなのかさえわからないまま進む。
    もしかしてこれは『春にして君を離れ』みたいな感じかな?と思ったら急展開。
    そこからはすごいミステリーだった。面白い!
    まさに「クリスティの総決算」だった。
    読んだ後にもう一度最初の方から確かめたくなる。今までで1番怖かった。

  • ノンシリーズ。「僕」のラブストーリーに乗りきれず、図書館で借りては途中で断念を何度も繰り返して今回やっと読了。曰くありげな人達や天才建築家の建てた屋敷などにはわくわくしたのに‥『春にして君を離れ』同様、私には何とも苦い物語だった。

  • 作家や編集者に愛された早川書房社屋の喫茶「サロンクリスティ」がリニューアル | TimeOut TOKYO
    https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/saron-christee-021623

    終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫) | ダ・ヴィンチWeb
    https://ddnavi.com/book/4151310959/

    終りなき夜に生れつく | 種類,クリスティー文庫 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000011203

  • 住むものはみな不幸になるという呪われた土地<ジプシーが丘>に魅了されたマイク。彼はそこで出会ったエリーと結ばれ、その地に理想の家を建てるが─。ラブロマンスとサスペンスに満ちた傑作ミステリ。

    中盤までは不穏な空気はありつつもラブロマンスとして進行。もしかしてミステリじゃなかった?と油断した時に牙を剝くサスペンスの連続!ロマンスのドラマ性とミステリの融合が見事。甘やかな喜びに生れつき、終りなき夜へと落ちていく。終盤の展開には言葉を失った。タイトルの持つ意味が重すぎる。

    読み終わってみると、いろんな登場人物の言葉が胸に突き刺さってくる。サントニックスの悲痛な叫びが、エリーのふとした言葉が、心を抉る。
    「人は人生の大切な瞬間に気づかないものだ──取り返しがつかなくなるまで」
    これは誰もが抱く人生のテーマでもあり、それを嫌というほど伝えてくれる作品。『春にして君を離れ』が好きな人は特にお薦めかも。あの作品もなかなか抉られるけど、こっちはもっと闇が深い。ミステリとしても濃厚で、終盤の展開はまったく予想だにしないことになって言葉が出なかった。

  • 「春にして君を離れ」に地味にやられたので(褒めてる)同じくタイトルに惹かれた「終わりなき夜に生まれつく」を読んだ。読み終わってすぐの感想は「なにこれコワイ

  • 「名作」と名高いが、こういう話だとは思わなかった。ノンシリーズなのでいつもの探偵は出てこないし、事件も全然起きない。でも時折「ん?」と引っかかる違和感が散りばめられている。そして本当の恐ろしさは読後にやってくる。「あの台詞の意味って!」「あそこでもうわかってたのか⁉︎」と読み返さずにいられない。

  •  クリスティの長編小説。クリスティが自身のオールタイムベストに選ぶ程完成度の高い作品。
     クリスティの魅力が詰まった作品で、ロマンス、サスペンス、ミステリーと様々な要素を取り入れている。僕自身好きな作品で、学生時代は衝撃的な結末に目が覚めるまで時間がかかってしまったが、大人になってから読むとまた違った味わいがある。
     作品はロマンス的スタートになるが、どことなく不穏な空気が世界を包んでおり、決してジプシーヶ丘の呪いのせいだけではない。若い、金はなく仕事にも定着しない、しかし魅力的で何事も卒なくできてしまう男性マイクと大陸屈指の金持ちの女性エリーが運命的な出会いをし、素敵な土地に素晴らしい家を建てるという夢をかなえ、新婚生活がスタートする。しかし、全てはマイクの理想通りには進まず、エリーの関係者達とのやりとり、村人達とのコミュニケーション、彼女の友人グレタと思い描いたものとは違った生活が進んでいく。
     物語中盤まではマイクに感情移入しながらも彼ら夫婦の住む世界の寂しさ、いやらしさの様なものを感じながらページを捲るわけだが。やがて乗馬中の不幸な事故によりエリーが亡くなり合わせて連続しながら関わった人達が亡くなり。不幸の底で悲しみに耽るマイク。彼はとてつもない財産を引き継ぎ、大金持ちになる。アメリカでゴタゴタを処理し、ようやくジプシーが丘に建てた家に帰り着くのだが。
     以降、ネタバレになるが、
     ここまで人の欲や狂気を描いた作品はあまりみた事がない。人間が壊れていく様を犯人を主人公に当てる事により衝撃的に描いている。語り手が犯人という手法は「アクロイド殺人事件」にて使用しているが、当時は余りの衝撃にフェアかアンフェアかの大論争が巻き起こったと聴いている。そして、その前例を持った上で、改めて今作で語り手を犯人に据え、更にはその犯人に精神的な崩壊と狂気の組み立てを載せて進化している様に思う。ミステリーというよりもサスペンスに寄っており、最後数ページは息も詰まる独白になる。
     作中、エリーは誰からも愛されていない描写があるが、実は全ての登場人物達は(マイクとグレタを除いて)本当に彼女を愛し心配している様に思え、彼女が信じた二人こそ、彼女の破綻のきっかけになるという皮肉だ。
     クリスティは読みやすいミステリーも多いが、狂気じみた恐ろしい作品こそ、女史の作品の奥深さを味わえるものだと思っている。作中に事後の話はないがクリスティの作品には珍しく全ての人達が悲しみに暮れるであろう予測ができてしまう。
     今作はとてもスリリングで僕の中で(クリスティ作品で)TOP10に入る作品だ。もう一つくらい星を付けたい飛び抜けた作品だ。現代のサイコパスの様にただ殺人をして恐怖を与えるだけの作品とはかけ離れている大傑作だと思っている。

  • さっすがクリスティ!
    読ませる!
    そして、突然ひっくり返る。
    ちょっぴりアクロイド的?とも思ったけど、人の愚かさとか内面とか表現力がすごい。
    エリーとの出会いから始まる、マイクの一人語りだけど、端々で見られた齟齬は全て伏線!
    25年ぶりくらいにクリスティ作品、再読してみようかな。

  • クリスティにハマってしまったので2冊目。こちらもとても読みやすく、所々あるヒントを感じなら読み進めるのが楽しかったです。ラストは今回も人間の業のような、深みを感じるので良いなと思います。

  • 恐れ入った。最後までジャンル未分類のまま作品が進む。何を読んでいるのかよくわからない。ただし先が気になる、面白い。

    私のごくごく個人的な心情として「推理小説・ミステリー・サスペンスは読まない」というのがある。何故ならそういった類のものは「物語が始まる前から人が死ぬことが知らされてるようなもん」だから。展開上人が死ぬのは良い(よくない)としても、死が織り込み済みだと面白くないと思ってしまうから。だから、今回は前情報なしにクリスティの二冊目に手を出した。『春にして君を離れ』の感覚で。

    感情が揺さぶられるということは無かったが、冷静な感動があった。初めての感覚。

  • これは迂闊に感想を書けない。

    アガサ・クリスティーの「ノンシリーズ」。有名なのは『そして誰もいなくなった』だが、コレもなかなかのモノでした。

    読み出しは文芸物かと思っていたけど、やっぱりミステリー、しかもとびきりの……。

    素直に「良かった」です。

    • 古畑ぬん三郎さん
      ミステリじゃないけど『春にして君を離れ』もいいですよね。
      ミステリじゃないけど『春にして君を離れ』もいいですよね。
      2023/11/02
  • 新婚夫婦の嫁さんは友達とベタベタ。いくら同性とはいえ嫉妬する旦那。

    嫁さんは全部知っていたというのは鳥肌がたった。いつか舞台で見てみたい。

  • 呪われていると言われる土地に、念願であった家を建て住みはじめた新婚の二人。
    そして不幸が二人を襲う。
    展開の早いこと。
    その早すぎる展開に騙されました。
    自らベストの一つである作品と言っただけあります。
    やっぱりクリスティー女史はすごい。

  • 伏線も良き。
    タイトルが表す、物語の行き着くところがなんとも好き。
    クリスティーの作品をもっと読んでから、帰ってきたい。

  •  全く予想していない方向に裏切られた。抉るなあ。さすがクリスティー。クリスティーが自らのベストにこの作品を選出したというのにも頷ける。ストーリーとしての面白さもあるけど、それだけじゃない。何度も読み返したくなる作品だった。

    終わりなき夜の性質を、生まれ持ってしまった。
    自分はそれに気づかなかった。気づかずに、欲望に忠実に生きた。
    本当に大切なものと、欲望の区別がつかなかった。
    欲望を満たすために、大切なものを進んで壊してしまった。
    そして、終わりなき夜に沈んでしまった。
    一度、自らの手で、大切なものを壊してしまったら、そのことに関しては、もう取り返しがつかない。

    「わが終わりにわが始めあり」
    マイクが、新たな始まりを見つけていますように。終わりなき夜でも、この物語は終わったから。

     読み返したときに、「あの時が一番幸せで。」と言っているのが痛々しかった。こんなに悲しい意味が込められていたのか。と。

  • 年末年始に読むぞ!と選んだ本の一冊。

    中盤(何なら全体の2/3くらい)まで事件が起こらないため、ここから何が起こってどう解決するんだ!?と気になり一気に読了。
    所々「ん?」と思ったところがバッチリ伏線となり、鮮やかで予想もつかなかった結末に。タイトルの意味も納得。
    恋愛とサスペンスの混ざり具合が絶妙で、重くなりすぎたり甘くなりすぎない。結末はバッドエンドだったが読了後の余韻は暗澹たるものではない。

    アガサ・クリスティー作品で初めてポアロシリーズ以外を読んだが面白かった!

  • ここ最近であれば

    ありとあらゆるパターンが
    出尽くしているので

    こんな謎解きも
    あるかもしれない。

    でも、これが
    50年以上も前の作品と
    思えば

    当時の読者は
    どれほど驚嘆しただろう。

    やはり クリスティーは
    素晴らしい。

    前半は ちょっと退屈な
    メロドラマ風。

    一目惚れや
    身分違いの結婚など。

    でも、所々で
    なんとなく 引っかかる台詞
    気になる情景描写などが

    チクッチクッと
    針で刺すように
    顔を出してきます。

    いわゆる 伏線という
    やつですね。

    そして、二転三転するラストは
    いかにも
    クリスティーらしく

    人間性に重きを置いた
    結末となります。

    読者を いかに
    驚かせるかだけが目的の
    昨今のイヤミスなどと違って

    クリスティーの作品は
    独自の視点から
    人間性に切り込んでいく

    その過程が 丁寧に
    描かれているから

    自然な流れで
    結末まで 安心して
    身を委ねることが
    出来るんですよね。

    善には善の
    悪には悪の

    それなりの哲学が
    きちんと描かれているというか。

    クリスティー自身の
    お気に入りでもあったという

    『終わりなき夜に生れつく』

    タイトルがまた
    ドラマティックです。

  • 恩田陸氏オススメ本。怖いーめちゃくちゃ怖いよー。クリスティーはこういうの上手いんだよなぁ。「春にして〜」と似てるけど、こっちはミステリー寄り。でも、ゾワゾワするんだけどカラッとしてるんだよね(語彙力行方不明

  • 異色であり傑作

    クリスティにしては異色である。ミステリーだけでなく、ホラーっぽい雰囲気もある。そしてそのホラーっぽさを描くのがとても上手い。そして内容はと言うと、傑作である。終盤のトリックを読んでほとんどの読者が驚愕すると思われる…

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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