アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)

制作 : 倉橋 健 
  • 早川書房 (2006年9月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151400018

アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 地味なマイプロジェクトとして、「ハヤカワ演劇文庫を読んでいこう」というのをこそっと立ち上げている。マイケル・フレイン『コペンハーゲン』から始め、2冊目として、ストレートプレイのあまりに有名な作品、『セールスマンの死』。

    タイトルからして救いがない。開いても、本当に救いがない。年老いて仕事場からお払い箱にされつつあるウイリー。ハイスクールのスターだった長男。かさむ支払い。何もかも問題なく、約束されていたと思っていたはずなのに…と、現状と回想がぐるぐる回る。かなりのバッドエンドでも動じない私が珍しく、「どこかにハッピー要素がないものか」と心配するくらいに、本当に救いがない。青春の蹉跌の延長のようなまったく異質のような、お金を稼いだ経験のある人なら身に覚えのある(と思う)、痛さと空虚感がすみずみにまで充満して、言葉に詰まる。ことの顛末を見届ける妻にも、現実感のなさ、空虚感がありありと見てとれる。でも、そこには妙な充実感もあって、いちいち同意するとかしないとかではなくて、何も言えなくなる。

    ミラーと同時代に話題を二分した劇作家がテネシー・ウィリアムズ。成功を夢見ていたのに、日々の暮らしに汲々として疲弊していく人々を描いたことでは、2人は共通しているけれど、ウィリアムズのほうがややファンタジックな設定を使うような部分もあるので、見た目はマイルドに感じる。ミラーはもっとどぎつく、素早い展開でこれでもかと痛さ、苦しさを真正面から突きつけてくるので、直接的な刺激も強い。心身ともに少しばかりタフでないなら、読むのはあまりおすすめしない。ある意味、R指定の劇薬作品だと思う。

    巻末掲載の記録によれば、アメリカ初演が1949年、日本初演は1954(昭和29)年。戦争に負けなかったアメリカでは、この作品が理解される余裕があったとしても、解説でも触れられているとおり、日本が朝鮮戦争特需→高度経済成長とイケイケに突入する時代に紹介されたことになるので、いったい何のことを言っているのか理解されなかったんじゃないかなあ…と素人目には見える。今だったら、「こんなブラック加減、デフォルトですけど!」と言われてしまうかも。

    興味がある、もしくは悲劇耐性をお持ちのかたには、ぜひ読んで脳内演出して楽しんでいただきたいと思う。優れたストレートプレイはもう、首都圏でしか見られなくなってしまっているように思うけれど、機会のあるかたには舞台も観ていただきたいと、地方在住の芝居好きとしては切に願っている。

    読み終わったときに、先日読んだ、ウッドハウス『エムズワース卿の受難録』に出てくる、卿のバカ次男・フレディのことを思い出した。彼もアメリカでセールスマンをやっている。彼にはこの作品のようには消耗してほしくないなあ…彼なら大丈夫だと思ってはいるけれど。

  • 冬木先生のお勧め本です。

    ひとの死に対して、なぜという感情は常に付きまとうものだと思う。
    なぜその人は死んだのか、という疑問なら簡単に解決できるけど。
    癌だったから。事故にあったから。自殺したから。

    でも、なぜその人が死なねばならなかったのか。なら話は少し変わる。
    なぜ、よりにもよってあの人が癌にかからなければならなかった。
    なぜ、よりにもよってあの人が事故にあわねばならなかった。
    なぜ、よりにもよってあの人が自殺しなきゃならなかった。
    なぜ、いったい何がそこまであの人を追い込んだ。

    主人公のウィリーを殺したのは肥大した自意識と現実との落差だったけど。
    なぜ途中で誰も気づかなかったのか。
    息子が、ウィリーが死ぬ直前に気づいたように気づくことだってできたはずなのに。
    ウィリーの葬式の後、妻は何度も繰り返す。
    「あたし、どうしても泣けないの。私にはわからない。なぜあんなことなさったの?」

    陰鬱な気持ちで本を閉じたら、そのとたんに知人が亡くなったという知らせがあった。
    妻の気持ちがとてもよくわかった。
    なぜ、と思っても思っても答えが返ってくることはない。
    だから泣けないんだ。

  • 初読

    うう。私の弱いやつ。
    「何者」にもなれなかった男達の物語。
    中年にこれはあかん、しみるわ。
    セールスマンじゃなくてもね。

    父と子、この境の曖昧さ。
    うん…凄く良く分かる。
    ビフとハッピーが分かつ感じもね。
    家族ってね…。そう、いい時もあったんだよ。

    でも、ほんの僅かに、ビフに希望を感じる読後感。

  • アーサーミラー 「セールスマンの死」 売れなくなっていく 高齢のセールスマンの自滅と苦悩を描いた演劇。

    私が、60歳過ぎて、事業に失敗し、過去の経験も通用せず、子供は生活力がなく、貯蓄も年金もない状況になったら、どうするか考えさせられた。主人公のようにやらないように、読書と専門能力のさらなる強化が必要と実感




  • どこまでも悲しい話だった。

  • 圧倒された。人生における選択、人生の意味など、今なお我々にとって新しいテーマ。

  • 2017/07/01

    舞台調で書かれた文章に、年老いた父親の幻覚が奇妙にマッチしていた。

  • 理想ばかり追い求め、現実をおざなりにしてきた家族の悲劇。
    後半になるにつれ息が詰まるようで、それなのにページをめくる手が止められなかった。
    すこし「下流の宴」に通じるところがあるかな、と思う。

  • 濃厚な味わい!やっぱこれは凄いな。

  • 複数回の映画化もある名作戯曲。書かれたのが70年前とは思えないほど、現代にも当てはまるテーマに驚く。救いのない話ではあるが、胸に突き刺さるものがある。

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