- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151400018
感想・レビュー・書評
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1949年に初演された戯曲。
セールスマンの仕事に誇りを持っていた主人公ですが、年老いて仕事もうまくいかなくなり、生活も苦しくなります。期待を押し付けた息子との確執や、先の見えない現実から逃げるように、過去の幻影が現れます。良いことばかりでなく、都合よく書き換えてきたであろう記憶も、思い出したくないことも。
このあたりの居心地の悪さは、きっと自分の若い頃には気づけなくて、もしかするとバカにしてしまったかもしれない。でも今は、強く共感しています。
70年以上前に書かれたと感じさせない作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
舞台を観たことをきっかけに、本気で読みました。
歳を重ねたせいか、ウィリーも、リンダも、ビフもハッビーも、なんだかまずいなあと思いながら読みました。ウィリー→ハッピー→リンダ→ビフの順にまずい…
でも、若い頃はそのまずさに気づかなかったし、この話の深さがわからなかった。
誰が悪いわけでもなく、現代にも通じる…
セールスは、資本主義に必要だが、人として生きることをやめさせてしまう…
そんな風に感じないで、セールスが天職の人もいるのでしょうが…
追記
ウィリーは本当はどうしたかったのか…
リンダがビルの話に乗らなかったことは責められないけれど…
こういう家族は今もあるでしょう。
ところで、読む前は「サラリーマン」の話と思っていたふしがあり…バカです… -
訳:倉橋健、原書名:DEATH OF A SALESMAN(Miller,Arthur)
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地味なマイプロジェクトとして、「ハヤカワ演劇文庫を読んでいこう」というのをこそっと立ち上げている。マイケル・フレイン『コペンハーゲン』から始め、2冊目として、ストレートプレイのあまりに有名な作品、『セールスマンの死』。
タイトルからして救いがない。開いても、本当に救いがない。年老いて仕事場からお払い箱にされつつあるウイリー。ハイスクールのスターだった長男。かさむ支払い。何もかも問題なく、約束されていたと思っていたはずなのに…と、現状と回想がぐるぐる回る。かなりのバッドエンドでも動じない私が珍しく、「どこかにハッピー要素がないものか」と心配するくらいに、本当に救いがない。青春の蹉跌の延長のようなまったく異質のような、お金を稼いだ経験のある人なら身に覚えのある(と思う)、痛さと空虚感がすみずみにまで充満して、言葉に詰まる。ことの顛末を見届ける妻にも、現実感のなさ、空虚感がありありと見てとれる。でも、そこには妙な充実感もあって、いちいち同意するとかしないとかではなくて、何も言えなくなる。
ミラーと同時代に話題を二分した劇作家がテネシー・ウィリアムズ。成功を夢見ていたのに、日々の暮らしに汲々として疲弊していく人々を描いたことでは、2人は共通しているけれど、ウィリアムズのほうがややファンタジックな設定を使うような部分もあるので、見た目はマイルドに感じる。ミラーはもっとどぎつく、素早い展開でこれでもかと痛さ、苦しさを真正面から突きつけてくるので、直接的な刺激も強い。心身ともに少しばかりタフでないなら、読むのはあまりおすすめしない。ある意味、R指定の劇薬作品だと思う。
巻末掲載の記録によれば、アメリカ初演が1949年、日本初演は1954(昭和29)年。戦争に負けなかったアメリカでは、この作品が理解される余裕があったとしても、解説でも触れられているとおり、日本が朝鮮戦争特需→高度経済成長とイケイケに突入する時代に紹介されたことになるので、いったい何のことを言っているのか理解されなかったんじゃないかなあ…と素人目には見える。今だったら、「こんなブラック加減、デフォルトですけど!」と言われてしまうかも。
興味がある、もしくは悲劇耐性をお持ちのかたには、ぜひ読んで脳内演出して楽しんでいただきたいと思う。優れたストレートプレイはもう、首都圏でしか見られなくなってしまっているように思うけれど、機会のあるかたには舞台も観ていただきたいと、地方在住の芝居好きとしては切に願っている。
読み終わったときに、先日読んだ、ウッドハウス『エムズワース卿の受難録』に出てくる、卿のバカ次男・フレディのことを思い出した。彼もアメリカでセールスマンをやっている。彼にはこの作品のようには消耗してほしくないなあ…彼なら大丈夫だと思ってはいるけれど。 -
冬木先生のお勧め本です。
ひとの死に対して、なぜという感情は常に付きまとうものだと思う。
なぜその人は死んだのか、という疑問なら簡単に解決できるけど。
癌だったから。事故にあったから。自殺したから。
でも、なぜその人が死なねばならなかったのか。なら話は少し変わる。
なぜ、よりにもよってあの人が癌にかからなければならなかった。
なぜ、よりにもよってあの人が事故にあわねばならなかった。
なぜ、よりにもよってあの人が自殺しなきゃならなかった。
なぜ、いったい何がそこまであの人を追い込んだ。
主人公のウィリーを殺したのは肥大した自意識と現実との落差だったけど。
なぜ途中で誰も気づかなかったのか。
息子が、ウィリーが死ぬ直前に気づいたように気づくことだってできたはずなのに。
ウィリーの葬式の後、妻は何度も繰り返す。
「あたし、どうしても泣けないの。私にはわからない。なぜあんなことなさったの?」
陰鬱な気持ちで本を閉じたら、そのとたんに知人が亡くなったという知らせがあった。
妻の気持ちがとてもよくわかった。
なぜ、と思っても思っても答えが返ってくることはない。
だから泣けないんだ。
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段々ときつくなっていく…。正直、ウィリーを過去の栄光にしがみつく不甲斐ない男だと思ってしまった。現実にいたらそれこそ厄介なおじさんってかんじ。
でもこうやって作品で昇華されると何ともやるせない。
舞台上でみたいと思った。 -
かつて敏腕セールスマンで鳴らしたウイリー・ローマンも、得意先が引退し、成績が上がらない。帰宅して妻から聞かされるのは、家のローンに保険、車の修理費。前途洋々だった息子も定職につかずこの先どうしたものか。夢に破れて、すべてに行き詰まった男が選んだ道とは……家族・仕事・老いなど現代人が直面する問題に斬新な手法で鋭く迫り、アメリカ演劇に新たな時代を確立、不動の地位を築いたピュリッツァー賞受賞作。
原題:Death of a salesman
(1949年) -
歩合だけで 隠退なさってしまった 海軍工廠しょう 農奴が水桶を 当時としては斬新だったフラッシュバックの手法で過去を挟みながら たいげんそうご大言壮語する内容空疎なアメリカ男を描いて らくはく落魄の老セールスマン 心の襞 女優マリリン・モンローと結婚していたことでも知られる
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この歳になってようやく理解できるようになった作品。
人生を浪費すれば、つけがまわってくる。
人生を甘くみれば、しっぺ返しされる。
盲信は不幸しか生まない。 -
40代以上の勤め人には、文章が痛い程刺さる。
特に混沌としたこの時代に相応しい内容ではないか。