テネシー・ウィリアムズ しらみとり夫人・財産没収ほか (ハヤカワ演劇文庫 6)

  • 早川書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151400063

感想・レビュー・書評

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  • 映画『佐々木、イン、マイマイン』の劇中劇「ロング・グッドバイ」をフルで読みたくて手に取った。訳のバージョンが違ったようで、私が一番好きだった「お前は今、過ぎてゆくものたちをぞっとする思いで見つめてるんだ」という台詞がこの本では「運ばれてゆくガラクタのなかに昔の思い出を見つけて楽しんでるんだろう」ていう表現だけでなく意味まで微妙に違う訳になっていてややしょんぼりしたものの、収められている短い戯曲7篇には、どれも明るい話ではないのに不思議と心慰められた。私は犬猫にあまり興味がなく、SNSで猫の可愛い画像が流れて来ても「無」の境地でスクロールする人間だが、猫と青年の恋を描いた「風変りなロマンス」は、そんな私の心さえほんのり温かくしてくれた。心温まるいい話ってことじゃない。そこに描かれる哀しみやよるべなさがわかるから、心の温度がかすかに上がるのだ。
    あと、古い訳の古めかしい言い回しが逆に新鮮で生き生きと感じられ、戯曲って面白いのかもと今更気づけた。
    作家テネシー・ウィリアムズにも俄然興味が湧いたので、続けて代表作をいくつか読んでみようと思う。いきおいでシアタークリエで上演中の『ガラスの動物園』のチケットまで取ってしまいました。

  • 幻想的で静かな『ガラスの動物園』と現実主義的で熱狂的な『欲望という名の電車』というテネシー・ウィリアムズの対照的な2つの代表作の間を埋める戯曲集。この戯曲集を読むと、繊細さと乱暴さが同時に現れるテネシー・ウィリアムズの複雑な作家性がよく分かる。

  • 一幕劇で短いものは20ページ弱のものからですが、テネシー・ウィリアムズの魅力が凝縮されており、「ガラスの動物園」や「欲望という名の電車」より読み応えがあって面白いくらいでした。初期から後期にかけての作風を概観できるのも魅力です。

    特に後期のスランプ時に書かれた「東京のホテルのバーにて」は、著者の分身とも言える芸術家が登場し、作品を生み出す時の苦しみが生々しく告白されています。それに加えて磨きぬかれた言葉の掛け合いも最高でした。

  • 10位
    題は『しらみとり夫人』。
    表題作のテーマは『欲望という名の電車』と同じく、「嘘を嘘といってなんになる?」というもの。
    新しい文庫、ハヤカワ演劇文庫の一冊です。

    作者については、変に思われるかもしれないけど、黒柳徹子『トットのマイ・フレンズ』を読んでほしい。たった一回だけ会ったテネシー・ウィリアムズは、先入観とはまるで違う人だった。どちらが本当なのか……。このスケッチ自体がテネシー・ウィリアムズ的なんだから。

    早川書房はハヤカワepi文庫に続き、意欲的な文庫を精力的に送り出しています。
    そういえば、早川書房の雑誌には「ミステリマガジン」「SFマガジン」のほかに「悲劇喜劇」というのがあったんでした。

    戯曲の文庫なんていう儲かりそうもない文庫を出す方針は大いに応援したい。装丁もシックだしね。

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著者プロフィール

1911-1983。アメリカ合衆国ミシシッピ州生まれの劇作家。約60の戯曲と2冊の詩集を出版している。1944年に『ガラスの動物園』がブロードウェイで大成功を収め、1948年には『欲望という名の電車』で、1955年には『熱いトタン屋根の猫』でピューリツァー賞を受賞している。

「2019年 『西洋能 男が死ぬ日 他2篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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