唐十郎Ⅰ 少女仮面/唐版 風の又三郎/少女都市からの呼び声 (ハヤカワ演劇文庫)

著者 :
制作 : 宮沢章夫(解説) 
  • 早川書房
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本棚登録 : 46
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151400469

作品紹介・あらすじ

岸田國士戯曲賞を受賞した代表作『少女仮面』、Bunkamuraシアターコクーンで上演(窪田正孝出演)『唐版 風の又三郎』他一篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ハヤカワ演劇文庫についに唐十郎が!名作長編「唐版 風の又三郎」のほか「少女仮面」「少女都市からの呼び声」の少女もの2作を収録。「風の又三郎」については以前単行本に感想を書いたので割愛(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B000J97I7A

    「少女仮面」は元宝塚スターの春日野が経営する喫茶店にやってきた少女・貝が、ヒースクリフ春日野の相手役としてキャサリンを演じるうちに春日野の狂気に触れる。

    「少女都市~」は、手術台の上で意識不明の男・田口の腹から、生まれなかった双子の妹の髪がみつかり、付き添う親友の有沢は戸惑う。意識不明の田口は夢の中で少女都市に住む妹の雪子がフランケ醜態博士にガラスの子宮に改造されているガラス工場から連れて逃げ出すも・・・。

    どちらもそれほど長くなく、唐戯曲の中ではわかりやすいほうだという印象。文庫『唐版 滝の白糸』に収録されていた「ガラスの少尉」という戯曲の設定が「少女都市~」と近かった。

    演劇文庫、唐十郎1となっているから続刊も期待していいのかしら? 帯は今ちょうど上演中の窪田正孝主演「唐版 風の又三郎」舞台(https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_kazemata/)の宣伝になっていたので、以前窪田くんもやった「唐版 滝の白糸」(つい最近、古い文庫で読んだけど)と、何度も上演されてる人気作「盲導犬」あたりを1冊にまとめてくれるといいな。あ、あと「ヴィニールの城」も!

  • 舞台観劇前なので「風の又三郎」は未読。「少女仮面」と「少女都市からの呼び声」の2作品だけ。

    少女仮面
    一見ちぐはぐに見える登場人物たちの会話だけど繰り返し語られているのは、観られるものとしての「肉体」、つまり他者から支配される「肉体」。自己が所有し、動かしているはずなのに自分のものではないというジレンマ。
    MCCの教科書に載っててもいいような身体論の物語でビックリした。
    もう一つのモチーフになっているのは「嵐が丘」。
    ヒースクリフとキャサリンに自己と奪われた身体をなぞらえて引用されている。

    少女都市からの呼び声
    昏睡状態にある男(田口)の精神世界で繰り広げられる一種の冥界下り。満州での従軍経験からガラスの身体に妄執するマッドサイエンティストフランケから妹雪子を取り戻そうとする男の物語と、現実世界における田口と親友有本、有本の婚約者の三者の関係が描かれる。
    少女仮面と同じように繰り返し身体論的なテーマが表れるが、ここで強調されているのは「性別」と「生殖」。
    現実パートがあることで田口の精神世界での出来事と有本に寄せる田口の感情が連動して考えることができる。
    田口の精神世界にガラスの子宮や雪子(女性)としての生というイメージを発現させたのは、やっぱり有本の存在が大きいのではないか。

    まだ又三郎を読んでいないので詳細は分からないが、オルフェウスの冥界下りがモチーフになっていることは知っているため、この3作品は冥界(少女仮面の舞台は地下にある喫茶「肉体」)への生者(少女貝・織部・田口)の侵入と脱出というストーリーテリングが共通していると云えるのかなあと思った。(貝については微妙?)
    人物の背景に第二次大戦の影がちらつくこと、焼け野原の東京への憧憬、そして身体論への言及は唐十郎の定番らしいので、今度は同著者の「特権的肉体論」を読んでみたい。


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著者プロフィール

劇作家・演出家・俳優・小説家。1940年東京生まれ。明治大学文学部演劇学科卒。62年劇団状況劇場を結成。67年に新宿花園神社境内に紅テントを立てて上演し、以後、唐の存在は60年代に開始されたアングラ・小劇場演劇を牽引する旗手となった。88年に状況劇場を解散、唐組を結成。横浜国大(1997~2005年)、近畿大学(2005~10年)でも教授を勤め、後続の若い世代にも強烈な影響を及ぼした。 

「2017年 『唐十郎 特別講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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