パーフェクト・ゲーム (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 6-6)

  • 早川書房
3.68
  • (8)
  • (9)
  • (15)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 66
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151709562

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  ぼく自身『このミステリーがすごい!』に十年以上にも渡って年間ベストミステリ作品の投票&選評を提供している一人なのだが、これらの締め切りが例年秋である。長い間10月末締切だったのが最近では9月末締切とさらに早期化した。各出版社もこのベスト6選考に合わせる傾向があるらしく、その締切前に勝負球をぶつけてくる。なので締切後数か月はおとなしめの作品が連続するように見える。要するに、年間ベストを射止めるためには、締切ぎりぎりでは遅いし、締切後では翌年の選考となるから印象が薄れる可能性があるだろう。出版社も考えるのだろうな、と思う。ちなみに今年のベスト翻訳ミステリのベストは、2月に発売されたコスビーの『頬に哀しみを刻め』だった。ぼく自身この作品を一位に入れると2月の読了時点で決めていたので、実際その通りとした。

     さてそんなわけで年末近い秋の終わりから冬の初めにかけて、出版社はひとやすみ傾向にある。何が言いたいかというと、ぼく個人としては新刊という縛りから解放される期間なのだ。だから何が言いたいかというと、古い未読本(積ん読本?)を読む時間に、ぼくの大切な余暇を費やすことができる季節なのである。ということで、この作品を皮切りに古い作品を、ぼくの雑然とした書庫から漁って取り出す。その取り出した作品たちがこのマイロン・ボライターシリーズなのだ。そしてそこにいつも感じるのだが、判断は正しかったということ。この作家、このシリーズにおいて最早外れはない、ということなのである。

     とは言うものの、新作の合間に読むこれら未読の旧作たちは、一話完結のシリーズものでありながらお馴染みのキャラクターたちによるどこか連続性のある作品でもある。本作では、前作で失恋の憂き目に陥ったマイロンが、カリブ海で新たな新たな即席パートナーとラブロマンスのようなデカダンっぽい日々を空しくも楽しんでいるところに、ウィンが船で着岸、秘書のエスペランサが殺人容疑で逮捕されたから迎えに来たぞ、と宣告するところでスタートする。いつもながらの唐突ながらも早速の快進撃の予感。

     新たな局面を迎えた本書では、エスペランサ不在のオフィスの穴をご存じビッグ・シンディ(エスペランサの女子プロレス時代のタッグ仲間)が秘書として慣れない活躍(暗躍)ぶりを見せてくれるなど、オプショナルな楽しみも味わうことができる。さらに怪しげなオカマバーの潜入シーンが本書のダークなピーク(思いがけず韻を踏んでしまった)と言えるかもしれない。このダークなキャラたちはシリーズ次作である『ウイニング・ラン』でも印象的な活躍シーンを見せてくれる。さらにシリーズ外にまで飛び出して活躍するあのおばちゃん弁護士ヘスター・クライムスタインが、本作ではエスペランサを担当してくれるおかげ(無論ウィンの裏での手回し)で、圧倒的不利な状況でありながら読者としては何よりも心強さを覚えてしまう。この辺りの作者のサービス精神は、いつもながら最高なのだ。

     ちなみに順番はめちゃめちゃだが、ヘスター・ザ・おばちゃん弁護士にぼくが出会ったのは、『森から来た少年』。その後『唇を閉ざせ』で再会して以来、このキャラクターへの深い敬愛の念を覚えるようになった。本シリーズでも彼女は既に早いデビューを果たしていたというわけだ。頼り甲斐のある彼女は、存在感こそ明確に示してくれるものの、この作品の中ではまだまだ影の薄い存在である。それでいながら、あらゆる地平で繋がってゆくそうなコーベン・ワールドは、ファンとしては遊園地みたいで何だか楽しい。

     ちなみに『森から来た少年』の新刊続編『ザ・マッチ』が、先日、Amazonから手元に届いたところ。こちらは主人公ワイルドとヘスター弁護士のダブル主人公であるようだ。コーベンは昨年の『WIN』に続き、旧シリーズ・キャラを、時間を経た現在でも、まだまだぼくらを楽しませてくれそうである。つい、ニマニマ微笑んでしまう自分に改めて気づいた次第。うふうふ。ニマニマ。

  • スポーツ・エージェントのマイロンに超弩級のピンチが訪れた。共同経営者のエスペランサに、顧客の野球選手の殺害容疑がかかったのだ。しかも、なぜか彼女は口を閉ざしたままだった。マイロンは被害者がドラッグ・テストで陽性だったことに不審の念を抱く。再起を賭けて麻薬と手を切った彼がなぜ?やがてマイロンは、思いがけない彼自身の過去の秘密に踏みこむことに…絶対絶命のマイロンが捨て身の闘いを挑む注目作。

    シリーズ第6作。やや平板な仕上がり。

  • 図書館で。
    巻が進むにつれ、偽善的なマイロンが嫌いになっていく気がする。エスペランサもウィンもよくこれと付き合ってるよなぁとは思う。正直、そこまでするほどの人物とは思えないんだよなぁ…

    前回受けたダメージが大きすぎてすべてを投げ出し海外に逃避するのはまぁ良いとして。そこで仕事を投げ出すのは良くないよな。仕事を放りだすなら最低限の引継ぎはしないとイカン。親に心配かけるのはまぁ家族だし仕方ないけど、あれだけ少女漫画のヒロインのようにウダウダ言っていたジェシカの浮気を責めていたのに、フリーになった途端、降ってわいたような有名人と孤島でやりたい放題って…それはそれでどうなの?(笑)まぁ、自分は別れた後ですから、と言われればそうなんだろうけど。そもそも、そんなに都合よくお手軽な割にきちんとキャリアがある女性がいるってのがまぁご都合すぎる気が(笑)

    そして真犯人は案の定、女性。女性に対して何か恨みでもあるのかいな、このシリーズ。そしてシリーズを通して読んでいると、ウィンやマイロンは自分と敵対するごろつきを殺しているのに、なんでこの「殺人」だけは問題視されるんだろう?と首を傾げてしまうというか。バイアスがね。今回の犯人の「マイロンがすることは正義で、私のすることは悪なのか」と言うような問にソウダヨネーと頷いてしまいました。ホントにね。

    ビッグシンディの過去とか、割り切りが切ない。あ、そうか。マイロンが嫌いだなと思うのは表面上は物分かりの良い、今時の女性も男性も対等と言うような事を言っておきながら、結局は女性を外見で判断したり、ガールフレンドには郊外に家を買って子供を産み育てるビジョンを共有できなかったらすぐに別れる、みたいなところが鼻に付くんだろうな。将来のビジョンが違うなら別れた方が賢明だと思うけれども、そのビジョンを共有できない彼女側に問題がある、みたいに表現するところがなぁ。

    商売敵のヤングナントカってのも何故にこれほど執拗にマイロンを敵対視するのかわからないし。あ、もしかして恋愛感情なのかしら?(笑)ってぐらい執着していてなんだろうなぁという感じです。

  • シリーズ最高の完成度かな?
    コーベンの世界観がめちゃあらわれてると思う。

全5件中 1 - 5件を表示

ハーラン・コーベンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×