1998年アメリカ探偵作家クラブ賞、アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞
原題は『CHARM CITY』 (ボルチモアのニックネーム)
テス・モナハンは29歳、元新聞記者で現在は法律事務所で働いている。
強盗に襲われて入院した伯父スパイクから、老いたグレイハウンドのエスケイを預かった。
翌日、新聞記者ケヴィン・フィーニーと食事したテスは、彼から実業家ジェラード・ウインカウスキー(ウインク)の過去を暴く記事を書いたがボツになったことを聞かされる。
ウインクと彼の親友、ポール・トゥチはボルチモアにバスケットボール・チームを誘致しようとしている話題の人物だった。
しかし翌日、ボツになったはずの暴露記事(ロジータ・ルイスとの連名)が何者かの操作により掲載されてしまう。
テスの友人ホイットニー・タルボットの推薦により、テスは新聞社から2週間の契約で捜査を依頼される。
その矢先、自宅のガレージの車の中でウインクが一酸化中毒で死亡する。
30年前の商店主殺害事件に関係していることが報道された直後の自殺とみられた。
テスは編集副主幹のジャック・スターリングに頼まれて、ウインクの妻リーを訪れるが、そこにトゥチが現れる。
翌日、トレーニングジムに現れたトゥチは「関わるな」とテスを脅した。
ロジータには取材記事が名誉棄損で問題になり、出版社を解雇された過去があった。
テスは記事にあったウインクの家庭内暴力を、誰がロジータに話したのか調べ始める。
そこで、ロジータが証言者に金を払っていたことを知る。
金を使って情報を集めることは非合法ではないが、報道する前に裏取りをしなかったのだ。
家庭内暴力の被害者はミスター・タフガイで知られるウインクのほうだった。
それが世間にばれるのを恐れて、前妻に巨額の扶養料を支払っていた。
この一件を知った編集長は倫理観、判断、職業意識に欠けるとして、ロジータをクビにする。
スパイクは襲われる2日前に、テスの両親に腐葉土を十袋持ってきたという。
テスが腐葉土の袋を調べると、中からナンバーが入れ墨された犬の耳が出てきた。
突然現れた侵入者にテスは連れ去られるが、見張りの男の顔にエスケイのチェーンを投げつけて逃げ出し、警察に通報する。
<解決篇>
ホイットニーは、編集長がロジータの正体を暴き、組合に干渉されずにクビにするためにテスに捜査を依頼したことを告白した。
自分が利用されたことを知ったテスはホイットニーと決別する。
さらに、編集主幹のコリーン・レガンハートはテスに暴露記事を掲載させたのは自分だという。人間は知る権利があるから、と。
「ウインクは殺された」というロジータの言葉が気になったテスは彼女の家を訪ね、ロジータの死体をみつける。
警察は飛び降り自殺と判断した。
ウインクと彼の前妻は中学校の同級生だった。
リーはロジータに卒業アルバムを渡す前に前妻の写真が載っていたページを切り取って処分したと語った。
テスは、もしトゥチも同級生だったら、そのページに写真が載っていたのではないかと考え、スターリングに相談する。
フィーニーに取材させようとするが、スターリングに止められたので、テスは内緒でフィーニーにメールを送る。
トゥチとの待ち合わせ場所に着くと、スターリングは突然、テスに一撃をくわせた。
スターリングはウインクと同級生で、30年前に商店主を殺害した犯人だった。
父親が判事に話をつけ、少年院ではなく、陸軍士官学校へ行かせたのだった。
スターリングは「自殺が2件続くのはまずい、今回は殺されたことにする」と言い、テスに銃口を向けた。
そのとき、1台の4WDが止まり、現れたホイットニーが猟銃でスターリングを撃った。
メールを見たフィーニーが二人を仲直りさせて、記事もものにしようとホイットニーを連れてきたのだった。
退院したスパイクは、テスに狩猟クラブのビデオを見せる。
そこには走っているグレイハウンドを撃ち殺して、耳を持ち帰るシーンが映っていた。
スパイクは違法行為に我慢できず、監視カメラのテープを盗みだした。そのとき、エスケイも連れ出したのだ。
テスは狩猟クラブの顧客リストとビデオを編集長に渡し、ビデオを公表しないことを条件にフィーニーに記事を書かせることを承諾させる。
ビデオにはトゥチが映っていた。
一方、ホイットニーも同僚を撃ったことから、新聞社にいづらくなり、辞めて念願の東京に行く決心をする。
テスが「日付変更線の向こう側へ行って、いろんなことを私より早く知ることになるのね」と言うと、ホイットニーは「いつだってそうだったわ」と答えた。
<<アイスティー>>
テスのボーイフレンド、クロウのバンドが出演した<フローティング・オペラ>では、アルコールが禁止されていて、テスはラズベリー味のアイスティーを注文する。