11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2005年12月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784151759512

感想・レビュー・書評

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  • ハイスミスの短編は、タイプの異なる独特な世界観がコンパクトに詰まっていて、とても面白かった。

    ハイスミスの魅力は何と言っても心理描写。
    主人公の頭の中を覗くように「なぜそんなことをしてしまうのか」が見えてきて、人間の本質が浮き彫りになる。

    最初は「この人ヤバい」と思っても、だんだん「でもそうなる気持ちも…」と共感してしまうこともあって、善と悪の境目がグラグラしてきてクセになってくる。

    私は頭の中で、不安や心配なことを自問自答して脳内反省会をしてしまう癖があるので、登場人物たちの不安や、それを必死に落ち着かせようとする姿に共感してしまった。

    これで自分が読むハイスミス作品は4冊目。『太陽がいっぱい』のリプリーのことをなぜ嫌いになれないのか…その理由が少しずつわかってきた気がする。

    『かたつむり観察者』★3
    カタツムリを愛して飼育した結果、ものすごい数に増殖してしまい…

    『恋盗人』★3
    隣人のポストから手紙を盗み読みし、隣人になりすまして勝手に…リプリーっぽい。

    『すっぽん』★5
    毒親が料理用に生きたすっぽんを買ってくると、11歳の息子はすっぽんを可哀想に思い、殺さないで欲しいと母に頼むが…。
    読後に善悪を考えてしまう作品で、いちばん印象に残った。

    『モビール艦隊が入港したとき』 ★3
    暴力的な夫を殺害した主婦が、逃亡先で不幸な人生を振り返る。彼女の行く末は…

    『クレイヴァリング教授の新発見』★4
    無人島で肉食の〇〇かたつむりに襲われる。
    カタツムリ版ジュラシックワールド。
    カタツムリが2作品も入ってるなんて。ハイスミスのカタツムリ愛が興味深い。

    『愛の叫び』 ★5
    孤独な老婦人二人。お互いを必要としながら暮らしているのに、相手が嫌がることをして悲しむ姿を見て喜ぶという、奇妙なハイスミスっぽい世界観。

    『アフトン夫人の優雅な生活』 ★5
    過激な運動に取り憑かれた夫を心配し、精神分析医に相談するアフトン夫人。医師が夫に会いに行くと、思いがけない展開に…

    『ヒロイン』★5
    念願の保母の仕事に就けたルシール。
    2人の子どもたちをあらゆる危険から命がけで守りたい。どうすればこの想いを雇い主の奥様に理解してもらえるか、ルシールは考えた…

    『もうひとつの橋』 ★3
    妻と息子を亡くした男が、不幸な家族や、貧しい少年に親切を尽くすが…

    『野蛮人たち』 ★3
    ご近所騒音トラブルは、国境も時代も超えて存在する。

    『からっぽの巣箱』 ★4
    謎の生命体「ユーマ」を目撃したことをきっかけに、主人公は過去の罪悪感と向き合うことになる。

  • ヴィム・ヴェンダース監督「PERFECT DAYS」(パーフェクトデイズ)にて、平山(役所広司)の妹の娘ニコ(中野有紗)が、平山の部屋の文庫本を読んで、
    「おじさん、わたし、この『すっぽん』って話好きかも。ヴィクターって男の子の気持ちがわかるっていう意味」
    母が迎えに来たとき、
    「おじさん、ねえ、おじさん。わたし、ヴィクターみたいになっちゃうかもよ」
    という場面が強烈だったので、積読を崩してみた。
    勝手に初読のつもりでいたが、実は「厭な物語」(文春文庫)で「すっぽん」のみ既読だった。
    再読してみて、確かにこの作品への言及は大きい要素だなと思った。
    また、他の短編も読んでよかった。
    作者が同性愛者で、雌雄同体のかたつむりへの興味が云々ということは知っていたが、「かたつむり観察者」、「「クレイヴァリング教授の新発見」が強烈に恐ろしい話で、むしろ笑ってしまった。
    また、「恋盗人」、「ヒロイン」、「からっぽの巣箱」のような主観の歪みというか偏りがポイントになる話も多く、好みだった。
    奇妙な話という点で藤野可織とか、謎動物が象徴になるという点で小山田浩子とか(特に「からっぽの巣箱」)を連想した。

    ◇序――グレアム・グリーン
    ■「かたつむり観察者」‘The Snail-Watcher’
    ■「恋盗人」‘The Birds Poised to Fly’
    ■「すっぽん」‘The Terrapin’
    ■「モビールに艦隊が入港したとき」‘When the Fleet Was in at Mobile’
    ■「クレイヴァリング教授の新発見」‘The Quest for Blank Claveringi’
    ■「愛の叫び」‘The Cries of Love’
    ■「アフトン夫人の優雅な生活」‘Mrs. Afton, Among thy Green Braes’
    ■「ヒロイン」‘The Heroine’
    ■「もうひとつの橋」‘Another Bridge to Cross’
    ■「野蛮人たち」‘The Barbarians’
    ■「からっぽの巣箱」‘The Empty Birdhouse’
    ◇解説 関口苑生

  • 映画『太陽がいっぱい』の原作であるトム・リプリーものなどで知られるパトリシア・ハイスミスの短編集。タイトル通り11作品を収録している。原題は“Eleven”(アメリカでは“The Snail-Watcher and Other Stories”として刊行)。原著は1970年刊、短編集としては最初のもののようだ(短編自体はずっと以前から書いており、例えば収録作の1つである「ヒロイン(The Heroine)」は1945年に発表されている)。日本での刊行は1990年、その後、2005年に改版されている。
    サスペンスやミステリとして評価されがちなハイスミス作品だが、本人はそう見られることを必ずしも快くは思ってはいなかったようである。
    本書に序を寄せたグレアム・グリーンは、ハイスミスを「不安の詩人("the poet of apprehension")」と評している。

    サスペンスといえばサスペンスなのだが、ドキドキ・ハラハラ、スリル満点、というのとは少々違う。
    登場人物たちは、少しずつ、ほんの少しずつ、常軌を逸していく。よくよく考えるとなんだかおかしいのだが、そう思う隙を与えないほど、一歩ずつ、徐々に道があらぬ方へ向かっていく。読者が気がついた時には、呆然とするような場所に連れていかれている。まったくの異世界というわけではない。遠いようで実は遠くない場所。あなたが、私が、もしかすると本当に到達するかもしれない場所。その紙一重の緊張感が、この不穏なハイスミス・ワールドを支えている。

    1作挙げるとすれば、「ヒロイン」だろうか。実質的な文壇デビュー作という。
    主人公のルシールは若い娘。若干、精神的に不安定なところがある。前にいた勤め先ではメイドとして働いていたが、今度は子供たちの保母として雇われた。子供が大好きで、働き者である。主人一家は親切で、子供たちもルシールのことを気に入ってくれた。
    美しい家。かわいい子供たち。恵まれたお給料。絵に描いたような幸福が訪れるはずなのに、そう、もうおわかりだろう、そうはならないのだ。
    幕切れのシャープさは本作品集で一番ではないか。

    「モビールに艦隊が入港したとき(When the Fleet Was In at Mobile)」も印象深い。暴力的な夫を「眠らせて」逃げ出してきたジェラルディーン。彼女がそんな羽目に陥ったのは、田舎のモンゴメリーから大きな港があるモビールに行ったからだ。工場で働こうとしたのだが、あきがなく、ウェイトレスとして働きだした。そのうち港に小さな艦隊がやってきて、町は水兵や士官であふれた。ジェラルディーンは、船で薬剤師として働くダグラスと恋仲になった。いずれ彼と結婚するつもりだったのだが、少しずつ不運が積み重なっていく。
    逃避行と回想が交錯する。ジェラルディーンはどこで間違えたのだろう。モビールに艦隊が入港したときには、彼女のその後の運命は決まっていたのかもしれない。

    「愛の叫び(The Cries of Love)」は一緒に暮らす老女2人の友情と確執。2人はひどく傷つけあいながら、なおもともに暮らしている。それはもう腐れ縁と呼ぶしかないのかもしれないが、あるいはある種の愛情であるのかもしれない。
    ハイスミスが同性愛者でもあったということを何となく思い出させる。

    絵画・木工を嗜み、ネコを愛したハイスミスだが、もう1つ、やや変わった趣味として、かたつむりの観察がある。1作目「かたつむり観察者(The Snail-Watcher)」、5作目「クレイヴァリング教授の新発見(The Quest for Blank Claveringi)」などにその観察眼が活かされている。いずれも十分にグロテスクに描かれ、さて、ハイスミスは本当にかたつむりを「愛好」していたのか疑念も生じるが、丹念な観察こそ「愛好」だと言われれば、それはその通りなのかもしれない。

    かたつむりではないが、「すっぽん(The Terrapin)」もぬめりとした手触りを感じさせる作品。思春期の少年ヴィクターと、息子への関心がどこか薄い母、そしてすっぽんの物語だ。
    この作品は、映画「PERFECT DAYS」(2023)の中で触れられている。主人公の姪、ニコが、自分もヴィクターのようになるのではないかと不安を覚えるのだ。この物語を読んで不安になる子であればおそらくヴィクターのようにはならないだろう。けれど、不安を覚える気持ちもよくわかる。そんな作品。

  • 変な言い方かもしれないが、上品でしっかりしたクラシックなホラーで心地いい。ちょっと長いが星新一みもある。短いスティーブン・キングみもある。

  • シャーリイ・ジャクスンから毒気を少しばかり抜きとり、世にも奇妙な物語をひとさじ足したような作品集。
    「すっぽん」は他の短編集で読んだことがあったけれど、ハイスミスの作風がここまでバラエティ豊かだとは!

    ヒッチコック風の「かたつむり観察者」、シャーリイ・ジャクスンみを感じる「愛の叫び」「野蛮人たち」、切ない読後感の「もうひとつの橋」が特に好き。
    日常に得体の知れないなにかが入り込み、もう今までの日々には戻れない...という「からっぽの巣箱」もよかった。
    ある事象が起きたときに、なぜか過去のやましい記憶を(ほんとうはなんの関係もないとしても)関連づけてしまう、不思議な感覚に共感を覚える。

    すっかり虜になってしまったので、ハイスミスの他作品も読んでみようと思う。

  •  職場に置いてあったキネマ旬報をペラペラめくっていると、ヴェンダース新作「PERFECT DAYS」の記事があった。その記事の中にこの本──とくに「かたつむり観察者」についての記述があり(どうやら映画の中で役所広司がこの本を手にするらしい)、それで興味を惹かれて読んでみた。記事の終わりに「読むのは勧めない」と書いてあったのも良かった。ヴェンダースがハイスミスの小説を自作の映画に登場させるのは合点がいく。「アメリカの友人」はハイスミスが原作(「贋作」「アメリカの友人」)だから(原作はアラン・ドロンで有名な「太陽がいっぱい」の続編らしいが関係ない)。

     図書館で借りて本を開くと、十一の物語の初っ端が「かたつむり観察者」で、おもしろく読んだもののあまりの生理的不快感でよっぽどもう閉じようかと思った。もしおもしろかったら買おうかなーと思っていたけど、どんなに面白くてもこんなキモすぎる話が載っている本買うのはよそうと決意して、次の「恋盗人」を読むと、うってかわって恋物語であったが、「これは俺じゃないかよ!」という胸の張り裂ける身体的な痛み──それはたとえるなら銀杏BOYZ「ナイトライダー」の歌詞からロマンチックさを剥ぎ取ったときの、自らに襲いかかる陰湿さの自覚……にまたも嘔気をおぼえ、「面白いけど買わない!」の気を強くした。この私の決意は、「クレイヴァリング教授の新発見」でいよいよ確固たるものになる。とかくキモチワリーー!!!!!!!!のである。未読の人のために内容は伏せるが、「またかよ!!!!!!」なのである。
     私は心配になる。ハイスミス女史はいったいどういうつもり、というか、どういう気持ちでこんな文章を書いてるのか?オエーーっとか自分でも思うのだろうか?それとも……。

     しかし、「ヒロイン」にぶちあたって、私は思いなおす。「この短編集を買わなければいけない。買って、手元に置かなければならない」。
    なぜか?あまりにも面白すぎる。あまりにも!面白すぎる!エクスクラメーションマークで文節を区切るほど面白い。だけどわかって欲しいのは、私はこの短編集を面白がりたくなんかなかったということ。先にも書いたけど「どんなに面白くても買いたくない」みたいな、イヤヨイヤヨの気持ちで読んでいたということ。大嫌いになりたいのに、そんな気持ちは既視感があった。何かに似ていた。
    あれだ!!「死ぬほど大嫌いな上司と出張先でまさかの相部屋に」シリーズである。何のシリーズなのかは書かないが、そういうシリーズというか、ジャンルがあって、べつだん好みでもないが、とにかくあの時の〈私〉の表情がおそらくはいま現在の私のそれだ。 実際、あらゆる表現の中から推敲した上で言葉をえらばずに書くか、私はこの本を読んでいるときになんというか小説におかされているような気分だった。私は人間の暗部、残忍さ、そして狂気を描く小説を避けるようにさいきんは読書をしていた。そういうものを否定したいのではなくて、今の私には、もっと明るくて、のんびりしていて、読む中で励まされる気分になることが必要であり、また志向していたからだ。暗くてキモいのなんか読みたかないよ、とそっぽを向く私にハイスミスの小説群は襲いかかってきた。私は恍惚としながら怯えていて、怯えている。こういう作品が好きだった、その自認から抗えなくなっている自分に。

     私はこの小説を手元に置くだろう。誰かに薦めることはよそうと思っている。それでも、私からもしもこの小説を勧められても、読まないで欲しい。私にまだ理性の残滓が残るうちの、これは忠告である。マジ面白いので読んだほうがいいよ。よかったら貸すよ。

  • 「もうひとつの橋」がよかったかな……。個人的には好きなのはあの2人のお婆ちゃんたち。次のチャンスを虎視眈々と狙う。

  • まど味わったことのないホラーでした。繊細さがあっていいなと思う

  • 映画「PERFECT DAYS」の主人公が読んでいたので読んでみたのだが、今までに読んだことがない感じの本だった。こんなに不穏でざわざわする本は初めてだった。感情移入できる登場人物は一人もいなくて、読むほどに登場人物との距離は離れていくようだった。
    かたつむりこわい。

  • 図書館の新着コーナーにあったので読んでみました。文庫本の出版自体は2005年です。映画「太陽がいっぱい」の原作者なんですね。狂気とか不可思議な世界は普段の生活の延長線上であり、その正気と狂気の境界のちょっと狂気側を描写したような作品群。いわゆる解決とかオチはなくモヤモヤとした余韻を味わえました。読みやすい一冊でした。

  • ハイスミスが1970年に出した短篇集。処女長篇『見知らぬ乗客』以前に書かれたものも含む。グレアム・グリーンの序文付き。


    ハイスミスって短篇もこんなに上手いのかと驚く(長篇もまだ『キャロル』しか読んでないけど)。ものすごく型がきっちりしているので展開は読めるのだが、スリリングな語り口に引き込まれ、不安を掻き立てられてしまう。津原泰水が自作『11』の解題で『ナボコフの1ダース』と一緒にこの『11の物語』を引き合いに出していたけれど、たしかにナボコフを連想させる技巧派だなぁ。
    しかし何が面白いって11作収録のうち2つもヒトがかたつむりに殺される話が入ってるとこ(笑)。普通サイズのかたつむりが大量発生して圧死させられる「かたつむり観察者」と、5m近い巨大かたつむりに噛み殺される「クレイヴァリング教授の新発見」でバリエーションがついているのもこだわりがすごい。読み終わったあと思わず〈かたつむり 歯〉で画像検索したら純粋に恐怖です。
    最後に収録された「からっぽの巣箱」も意思疎通がとれない生き物と一緒に暮らす不気味さを書いている。ここにでてくる「ユーマ」(UMA?)というイタチのような動物は高山羽根子『居た場所』の「タッタ」を思い出させる。「すっぽん」では動物側にシンクロした子どもが親を殺すし、ハイスミスはきっとヒトの生理で理解できないタイプの動物にオブセッションがあるのだろう。
    個々の作品だけではなく、短篇集としての並びもよい。同居している老女たちがお互いに嫌がらせして仲直りして、やっぱり嫌がらせを繰り返す「愛の叫び」から、妄想の“夫”の精神状態を医師に相談する「アフトン夫人の優雅な生活」を経て「ヒロイン」に達する流れは、それぞれ完結しているのに三つでひとつの作品のようでもある。中でも最初期に書かれたらしい「ヒロイン」が、集中でも一番すごいと思った。お給料燃やそ、から家燃やそ、に移る歪んだ論理とスピード、そこに至るまでの心理描写の積み重ね。犯罪者視点の物語ってその心理を“わかる”と思うからこそ怖いので、ハイスミスの“わからせる”力はこちらの善悪観に揺さぶりをかけてくる。
    「ヒロイン」のあとが「もうひとつの橋」なのも家族の喪失というモチーフが響き合っているし、これと「野蛮人たち」との2篇は「愛の叫び」「アフトン夫人」「ヒロイン」と対をなすように男性の心理を描いたもの。そして最後は夫婦が共通の不安を抱えて暮らす物語「からっぽの巣箱」にて、繰り返される運命の予兆を感じたイーディスの声にならない悲鳴で幕を閉じる。作品だけでなく作品“集”の構成も完璧だ、ハイスミス。

  • 以前「見知らぬ乗客」だったかな?デビュー作、めずらしく投げ出してしまったが、数年ぶりに手に取ってみて正解でした。きっと自分が成長したのだろう(と思いたい)。
    かたつむりに魅せられた男の奇妙な話とか(なぜかカタツムリの話が二編も入っている。ハイスミスはカタツムリに何か思い入れがあるのだろうか)、日常の延長線上に待ち構えていそうな、夫婦の最悪な結末が描かれている「モビールに艦隊が入港したとき」とか、私が好きな主題のひとつである”いかれた人”たちが描かれている「ヒロイン」「アフトン夫人の優雅な生活」とか。不気味、とは違うんだけど、どこか一本ずれているような世界に酔い続けていられる短編集でした。

  • 8月7日読了。「このミステリーがすごい!」1991年度海外編の第9位の作品。「短編集とは、暗がりで受ける見知らぬ人からのキスのようなもの」とはスティーヴン・キングの弁だが、なるほどこの小説の全身の産毛をさらりと撫でられるような感覚はまさにそれだ。作者自身かたつむりの研究家でもあるようで、かたつむりに関する2編の短編はいずれもぬらぬらとしていて、夢の中を走るようなスロー感があり面白い。(エスカルゴなんて絶対に食べたくなくなるが・・・)コミカルな話・奇妙な話も多いが、全体的に突き放したような冷え冷えするような、酷薄なムードも感じられる。

  • 11の物語からなる短編集。
    映画「PERFECT DAYS」に出てきたことをきっかけに本書に興味を持ち、読んだ。
    11ものストーリがあるので、好みのものとそうでないものがあるから、星を付けるのはなかなか難しい。
    一番良かったのは、最初の「かたつむり観察者」。何とも言えないおどろおどろしさに、読んでいる最中にゾクゾクし、読み終わってからもジワジワと脳裏に残った。
    全体を通して不穏な空気がそこはかとなく感じられるのは彼女の技量であり、らしさなのであろう。

  • 「太陽がいっぱい」で有名なハイスミス。といってその作品は読んだことがないし、映画もまた観たことがない。なんとなく手に取った本作ですが、意外や意外楽しめました。

    とにかく・・・かたつむり!!気持ち悪くって忘れることができないほどのインパクト・・・

  • かたつむりがとにかくきもい。すごい。
    翻訳者の方の功績ももちろんあるだろうが、不快と恐怖と細かな違和感みたいな感情を表現するのがうますぎる。
    めちゃくちゃよかった。

  • ミステリー仕立ての純文学という感じで普段あまり読まないタイプ、というか似てる人があんまいない感じがする。たまにはこういうのも良い。
    『ヒロイン』という短篇が一番印象に残ったなーと思いながら解説を読むと、デビュー作だったらしい。初めて触れる作家だとばかり思ってたけど、映画『太陽がいっぱい』やヒッチコック『見知らぬ乗客』の原作者であったとのこと。改めて観直してみたくなった。

  • かけ違えたボタンみたいな、半開きになってる引き出しみたいな、なんとも言えない気持ち悪さがある。

  • 題名通り、11編を収録した短編集。
    心を壊してしまった人の話や、人が心を壊していってしまう話が多めなので、読後感はあまりよろしくない。

  • 映画「perfectdays」にて取り上げられた本。
    それを機に読む人も多いだろうが、私もその1人。
    映画の中で、「不安を描く天才」と評されていたハイスミスだが、まさにその通りだと感じた。
    人間の根底にある、軸としてある恐怖や狂気を短編で上手く表現している。ハイスミスならではの、含みのあるラストは読者の不安感を拭わせることは無い。

    短編でサクッと読めて、それぞれ違った物語が展開されつつも、全体的なテーマとして不安がある。バッドエンド好きには刺さりそう。

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著者プロフィール

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

「2022年 『水の墓碑銘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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