ブルー・ヘヴン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ホ 12-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151779015

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  • MWA(アメリカ推理小説作家協会またはアメリカ探偵作家クラブ)賞・最優秀長編賞受賞作。
    田舎町で思いがけない大事件が起きる。

    12歳の少女アニーと弟のウィリアムは、森で殺人現場を目撃してしまう。
    しかも、男達に気づかれ、後を追われることに。
    母のモニカは一人で子供達を育てている女性だったが‥

    一方、ジェス・ロウリンズは、牧場を経営している初老の男性。
    妻には出て行かれ、一人息子には事情があり、牧場は経営が破綻して、監督を雇う金もなくなっていた。
    銀行家のジムは学生時代にはロデオに出ていて、モニカの亡き父にロデオを習って行動を共にしていたため、モニカのことを何かと気に掛けていた。
    ジムは頑固だが信頼できるジェスのこともよく知っていて、何とか伝統ある牧場を守る手だてがないか考えようとしていた。

    二人の子供は帰らず、行方不明事件として捜査が始まる。
    アイダホ州には警察を退職した警官が200人以上住んでいた。都会と違って治安が良くて地価も安く、アウトドアスポーツを楽しめる環境を求めてのことだ。
    ロサンジェルス市警ではノース・アイダホのことを『ブルー・ヘヴン』と呼んでいるというほど。
    慣れない保安官ケアリーに、数人の退職警官らがこういう事には詳しいからと援助を申し出て、ドリーム・チームが結成される。
    ところが、その警官こそが…

    折しも、競馬場の売上金が強奪された事件を追って、ヴィアトロという男も町にやってくる。
    8年もたっているが、強奪された金は見つからないまま。担当した未解決事件にいまだ執念を燃やしているのだ。

    冷徹なリーダー、力の強い大男、適度に地元に溶け込もうとしている者、一家で腰を落ち着けている者も。
    悪巧みをする連中にも個性があります。

    子供達は、ジェスの牧場の納屋に逃げ込んでいた。
    警戒してはいてもまだまだ無邪気な子供達との出会いもいきいきと描かれます。
    ジェスは真相に近づくにつれて、逆に子供らの誘拐犯という疑いを掛けられそうになる。
    病気を抱えた息子との再会や、哀切な人間模様も。
    孤高の牧場主が、暴力に慣れた悪党らといかに戦うか…?!

    いい人と悪い人がかなりはっきり分かれています。
    でも、いい人にも弱点はある。
    女性達もそれぞれはっきり描き分けられていて魅力的。
    誰がどこでどう動いて、それがまた…?はらはらドキドキ、スリル満点。
    テンポの良い筆致で、内容の割には重すぎない読み心地。
    面白かった!でも…泣かされます。
    2007年の作品。2008年翻訳発行。映画化されるそう。

    著者はワイオミング生まれ。妻と国際観光マーケティング会社を経営。ロデオ関係の理事も。
    デビュー作で史上初の4冠(アンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞、ガムシュー賞)。

    [最近、デビュー作から読み始めているので、再アップしました☆]

  • 老牧場主や地元のカントリーマン、都会からの移住者。

    起きる殺人事件、巻き込まれる子供たち。
    手に汗握る展開。
    最高だ!

  • アイダホ州北部の田舎町で、幼い姉と弟が殺人事件を目撃してしまい、犯人たちから追われる話。退職警察官が多く移り住んでくる町で、殺人を犯したグループも元警察官で、このグループは過去にも強盗事件を犯していた。子供たちを捜索するふりをしながら追っていく犯人と、過去の事件絡みで犯人たちを追う元刑事の捜査と、子供たちをかくまう老牧場主のそれぞれが同時進行していき、ぐいぐい読ませる。
    最初から犯人がわかっているのだが、結末までどうなってしまうのかハラハラさせられた。やっぱりこの作者の作品は読みやすくておもしろくて安心して読める印象がある。

  • 殺人事件を目撃してしまった姉弟の物語。殺人者は元警官。保安官を見方にして姉弟を始末しようとする。警察が敵になってしまう。ここに牧場主が敢然と立ち向かう。これがかっこいい。イメージはクリントイーストウッド。
    一気に読んでしまった。映画を見終わった感じだ。

  • 都会から引退した警官がやってきて住むという郊外の町で、ある日幼い姉妹が男が仲間から撃たれるのを目撃してしまい追われる身に。犯人はLAから移住してきた元警官たち。動機を隠してうまくたちまわりボランティアとして捜査に参加して、身を隠す子供たちを先に見つけて口封じをしようとします。姉妹は経営破綻した昔気質の農場主に匿ってもらうのですが、、、。ページターナーという言い方がありますがまさにそんな感じであっという間に読了。面白かったです。でも銃の考え方はやはり共感できず、人がバンバン死にすぎる傾向も同じ。ランズデールだと気にならないのにこの人の作品では妙に気になるのは銃を正義のように使うのが一般市民だからでしょうか。もう少し読んでみます。

  •  もう、ただただ面白い。読み始めたら、あっという間に小説世界に惹き込まれた。550ページの大長編も、なんのその。気付けば、ラストシーンの余韻に浸っていた。ストーリーもいたってシンプル。正と悪の構図もはっきりしていて、わかりやすい。内容(「BOOK」データベースより)アイダホ州北部の小さな町。12歳のアニーと弟のウィリアムは森で殺人事件を目撃してしまう。犯人はロサンジェルス市警の元警官四人で、保安官への協力を装い二人の口封じを画策する。途方に暮れた姉弟が逃げ込んだ先は、人手に渡る寸前の寂れた牧場だった。老牧場主のジェスは幼い二人を匿い、官憲を味方につけた犯人一味との対決を決意するが……雄大な自然を舞台に、男の矜持を賭けた闘いを描く、新たなサスペンスの傑作それなのに、評価としては星を3つしか付けられない。それは、サスペンス小説としては「ハラハラ・ドキドキ度」が低いから。戦慄がはしるといったところがない。テンポはよいのだが、起伏に欠けるし、思慮にも欠ける。もちろん、緊迫感や切迫感がないわけではない。ただ、予想外にさらっと書かれているのである。捻りが足りないこともあるかもしれない。ミステリではないので巧妙なトリックまでは期待しないが、あっと驚くところがもう少しあってもよいのではないか。そして、評価を下げる最大の理由がもうひとつ。ストーリー展開に、大きく首を傾げてしまった所がある。犯人に、目撃者の幼い二人を匿っていることを知られたら、どうするか? 老牧場主のジェスが真っ先にとった行動、そこがどうも腑に落ちなかった。二人の居場所が犯人にばれたかもしれないという不安が生じたら、真っ先に頭に浮かぶのは「一刻も早く、二人を別の場所に移さなければいけない」ということではないだろうか? ところが、ジェスがとった行動は意外にも……。しかし、そんな不満もあったものの、この作品が魅惑的であることには疑問はない。アイダホ州北部の田舎町の、親から引き継いだ牧場に愛情を注ぐ無骨な男。そんな男の良心と矜持。この作品の読みどころは、むしろそこにあるのだから。哀しいエンディングにも、様々な思いが駆け巡った。

  • 「アイダホ州北部の小さな町。12歳のアニーと弟のウィリアムは森で殺人事件を目撃してしまう。犯人はロスアンジェルス市警の元警官四人で、保安官への協力を装い二人の口封じを画策する。途方に暮れた姉弟が逃げ込んだ先は、人手に渡る寸前の寂れた牧場だった。老牧場主のジェスは幼い二人を匿い、官憲を味方につけた犯人一味との対決を決意するが・・・・雄大な自然を舞台に、男の矜持を賭けた闘いを描く、新たなサスペンスの傑作」以上、裏表紙の梗概より。いやぁ、牧場主ジェスがとにかくかっこいいです。アイダホ州の大自然の中で繰り広げられるのは、現代版西部劇。おすすめ。全く舞台も、設定も違いますが、少しだけ映画「刑事ジョン・ブック/目撃者」を思い出しました。

  •  ワイオミングの高地を舞台にした猟区管理官ジョー・ピケットのシリーズで売り出したC・J・ボックスは、最初から気に入って追いかけている作家である。ネイチャー派のミステリというのはあまりないと思うが、この作家に限ってはあくまでもアメリカ北西部の大自然を舞台にした物語が似合う。元牧場職員、釣りガイド、編集者などを経ているだけに、作者の顔が作中に見え隠れするような作風でもある。

     ジョーのシリーズは講談社文庫で継続中だが、ハヤカワはノン・シリーズである本作の翻訳権を獲得したのだろう。シリーズの翻訳の遅さを嘲笑う勢いで、翻訳小説をメインとするハヤカワは売れっ子作家ボックスの早期翻訳を遂げたと言っていい。最初はシリーズの順番が変わるなど版元変更による読者的被害を想定していたのだが、そうでなかった。ノン・シリーズならば、スピード翻訳はむしろ大歓迎である。

     映画『小さな目撃者』『目撃者 刑事ジョン・ブック』『グロリア』などに共通するのは、子供たちが殺人を目撃し、犯人を知ってしまったことに端を発する巻き込まれミステリであるが、本書はその流れである。ノース・アイダホの幼い弟妹が釣りに出かけた先で殺人現場に遭遇し、殺人者たちに狙われるというのがメイン・ストーリー。そして『目撃者 刑事ジョン・ブック』や『グロリア』『依頼人』では、そうした幼い目撃者を助けようとする者たちにも焦点が当てられる。ジョン・ブックは職業としての刑事、『依頼人』はスーザン・サランドン演じる女弁護士であるから関係上はまだしも、グロリアはあばずれ女であり社会の落伍者的存在であった。シャロン・ストーンのリメイクはともかくジーナ・ローランズは本当にあの時代、あの世相に対し闘いを挑む逞しさで、なみいる男たちを圧倒してみせたほどの歴史的ヒロイン像でさえあったと思う。

     C・J・ボックスの世界で、子供たちを救い出すのは、もちろんあばずれ女ではない。カウボーイである。それも時代遅れの、初老の、落ちぶれた、経営的に行き詰っており、人生の最後に孤独だけを抱きかかえて生きている、名誉と誇りと誠実だけが売り物の、博物館にしか存在していないような正統派カウボーイなのである。もちろんぼくが想像した配役はクリント・イーストウッドであり、その配役で読み進んで頂いても、全く問題はないと思う。

     一方で子供たちを取り巻く町の住民たちは、何とそれぞれに大小の問題を抱え、間違った生き方を選択してきたのだろうと思わざるを得ない。地方で生活するからこそ、貧困の代わりに誠実を売り飛ばし、金銭を獲得しようとする。そのために失う若き日の純心の大きさに、歳を取ってから後悔する人々の多さが、目立つ。

     地方に暮らしながら都会の経済原理に苦しむ姿はジョー・ピケットのシリーズでも取り上げられる背景テーマであり、犯罪の動機を形成する地勢的原理でもあるのだが、本書では、とりわけ、LAあたりからセカンド・ライフを作ろうと移住してくる元警察官たちの引退生活が大きな事件の形成に関わってきてしまう。老後の生活に求めるのが自然であるのか平穏であるのか、あるいは現役時代には求められなかった重労働の大小としての褒章生活であるのか。

     人間の原理である、欲望と自省、信条と変節、といった葛藤を抱える人々が一握りの悪玉によって狂わされてしまった多くの時。その代償が、こんな平和で美しい土地にもたらされた犯罪の犠牲者たちであり、逃げる子供たちであるのだ。ボックスの悲痛な願いが髄所に込められたネイチャー派本格ハードボイルド、いや、むしろウェスタンとやはり呼んでおきたい力作が登場した。一気読みの面白さと密度の高さに関しては、予め約束してしまえる一冊である。

  • 時は止まっていない・・・
    すべてがいつまでも今までどおりではない…
    少しずつ、でも確実に変わっていく
    アイダホの大自然に囲まれた小さな町ブルー・ヘブン。
    その名も、大都会からこの町への移住者の増加とともに生まれた、
    町への美しい愛称…

    この町で生きることを愛して移り住んでくる人たちに紛れて、
    大都会の悪が密かに持ち込まれる。
    やがてそれは森の中で起きたひとつの殺人事件へ…

    時代に流されそうな老年のカウボーイ。
    悲しみの中で母親としての自分を再び見出す美しい女。
    誰も信じられなくなった傷ついた心を抱える姉弟。
    過去の事件に区切りをつけようと町を訪れる元警官の男。
    町の発展に貢献しながらも心に陰を宿して生きる銀行家の男。
    社会の不条理からいつしか影の犯罪者へと身を崩していったロス市警の警官たち。

    小さな町でのわずか3日間…
    それぞれが思惑を抱きながらの極限を経験する。

    厚みのある本ですが読み出したら止まらない物語…
    映画を見ているような…と言ってもいいですが、
    だからといって、映画のノベライズのような薄い表現でもなく、
    腕の良い映画のエディターが、
    実に子気味よく切り結んで創り上げた作品を見ているような感覚です。
    そして面白い小説だと、率直に人にも薦められる本です。

    この老年のカウボーイ、彼の名はジェス・ロウリンズ。
    ジェスという名前が実にしっくりきています。
    だからといって、凄腕のヒーローを描いたものでもない…
    登場人物の誰もがこの3日間に生き方をこれでもかと試され、
    恐れと不安に苛まれながらも自分自身の蒔いたものを刈り取る…

    実際に映画化されるんだとか…
    著者のHPにはジェスの適役としてのアンケートなどもあるようですが、
    お好みの俳優をあれこれ当てはめて楽しんでみるのも一興です。

  • 文庫本で。
    確かに一気読み西部劇。

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