盗まれた貴婦人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 スペンサー・シリーズ)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151786570

作品紹介・あらすじ

消えた名画の身代金取引の護衛に失敗したスペンサーは、雪辱のために事件の真相を追う

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの作家「ロバート・B・パーカー」のハードボイルド小説『盗まれた貴婦人(原題:Painted Ladies)』を読みました。

    『プロフェッショナル』に続き、「ロバート・B・パーカー」作品… 『初秋』以来、6作連続で「ロバート・B・パーカー」作品ですね。

    -----story-------------
    17世紀の名画『貴婦人と小鳥』が美術館から盗まれ、身代金が要求される。
    事件を内密に処理したい美術館側の意向を受けた美術史教授の「プリンス」が受け渡しに赴く。
    依頼を受けた「スペンサー」は護衛として彼に同行した。
    だが受け渡しは失敗、「プリンス」は「スペンサー」の眼前で命を落としてしまう。
    誇りをかけ、無償での調査を開始する「スペンサー」。
    だが事件の鍵は名画の来歴に潜む闇の奥に存在した。
    サスペンスフルに展開する注目作。
    -----------------------

    私立探偵「スペンサー」を主人公とするシリーズ全39作品のうちの第38作にあたり、2010年(平成22年)に発表された作品です、、、

    名画の盗難、名画を取り戻すための身代金の受け渡しにおける爆殺… 護衛として同行していた「スペンサー」が真相解明に挑むという、サスペンスフルな作品で、「ホーク」を始めとする相棒や助っ人が登場せず、「スペンサー」が独りで事件に立ち向かうという、珍しい展開の作品でした。


    17世紀の名画『貴婦人と小鳥』が美術館から盗まれた… 犯人からは絵に身代金を払えとの要求があり、美術史教授「プリンス」が受け渡しに向かうことになる、、、

    その護衛を務めることになった「スペンサー」だったが、受け渡しは悲惨な失敗に終わった… 身代金受け渡し後、名画が梱包されているはずの箱が爆発し、受け取った「プリンス」は命を落としてしまう。

    「スペンサー」は依頼料を美術館に返し、自らの手で事件に片をつけるべく動き出した… 調査の糸口を探し、美術館の顧問弁護士「モートン・ロイド」、絵の保険を受けていた保険会社の請求担当者「ウィニフレッド・マイナー」、さらに「プリンス」の教え子で「ウィニフレッド・マイナー」の娘「ミッシー・マイナー」らに聞き込みを試みるものの、事件の全容は杳として知れない、、、

    そんな中、「スペンサー」のオフィスを武装した男たちが襲撃する… 間一髪、「スペンサー」が撃退した彼らの腕には、奇妙なことにアウシュヴィッツの強制収容所でユダヤ人捕虜に彫られたものと同じ刺青が……。

    「スペンサー」は調査を進めるうちに、「プリンス」はユダヤ人で本名は「アッシャー・プリンツ」だったことや、「スペンサー」のオフィスを襲撃した二人組がオランダ人の傭兵だったこと等を知る… 盗難された名画『貴婦人と小鳥』を描いた画家はオランダ人の「フランス・ヘルメンゾーン」で、『貴婦人と小鳥』を所有していたオランダの裕福なユダヤ人「ハーツバーグ一家」は第二次世界大戦中の1940年(昭和15年)にナチスのゲシュタポに逮捕され、アウシュヴィッツ収容所に送られ、末息子ひとりを除く全員が死亡したことを知り、オランダ、ユダヤ、ホロコースト、ハーツバーグ、そして美術品が複雑に絡み合った何かが事件の背景にあると推理する、、、

    徐々に真相に近付きつつある「スペンサー」が、再び命を狙われる… 自宅に侵入した何者かにより、ベッドに爆発物を仕掛けられていたのだ。

    間一髪で助かった「スペンサー」だったが、怯むことなく敵と対峙していく… そして、「ハーツバーグ一家」の末裔である「アリエル・ハーツバーグ」が主宰する「ハーツバーグ財団」による名画盗難や、彼らに真贋鑑定で協力していた「プリンス」が仲違いしていた原因、「アリエル」と「ウィニフレッド」・「ミッシー」母子の関係等を突き止め、真犯人を追い込んでいく、、、

    「ハーツバーグ財団」は、ナチスによりユダヤ人から奪われた美術品を回収して正しい保有者に返還するという事業を営んでいたのですが、美術品の回収に資金が必要だったり、どうしても売りたくないという人物の対応で苦慮したりして、誤った方向に進んじゃったんですよね… 成り立ちを考えると、ちょっと哀しい結末になっちゃいましたね。

    これまでに読んだ「スペンサー」シリーズの中では、最もミステリ色が強い印象で、伏線として散りばめられた点と点とが、線としてつながる展開が愉しめました… 「プリンス」も、「アリエル」も、彼らの行いから考えると自業自得かな。




    以下、主な登場人物です。

    「スペンサー」
     私立探偵

    「スーザン・シルヴァマン」
     スペンサーの恋人

    「アシュトン・プリンス」
     ウォルフォード大学教授、司法鑑定コンサルタント

    「ロザリンド・ウェリントン」
     プリンスの妻

    「マーク・リチャーズ」
     ハモンド美術館の館長

    「モートン・ロイド」
     ハモンド美術館の顧問弁護士

    「ウィニフレッド・マイナー」
     <ショーマット保険会社>の請求処理責任者

    「ミッシー」
     ウィニフレッドの娘

    「カール・トラクトマン」
     オランダ・ルネサンス美術館の館長

    「アリエル・ハーツバーグ」
     <ハーツバーグ財団>のメンバー

    「ケイト・クアグリオーシ」
     地方検事補

    「リタ・フィオーレ」
     弁護士

    「エプスタイン」
     FBIボストン支局長

    「ヒーリイ」
     州警察の警部

    「マーティン・クワーク」
     ボストン市警の警部

    「フランク・ベルソン」
     ボストン市警の部長刑事

  • 2020年4月14日。図書館全面休館中のため、訳本を借りられないので、順番を飛ばす。
    1○Walford大学:Spenser Wikiによれば、ボストンの西部にあるcollege townである、WalthamとMedfordから合成したのだろう、と。
    3○Danny Litwhiler:1916年~2011年9月23日。ボストン・ブレーブス(1946~1948)などでプレーし、1シーズン、ノーエラーを記録(1942年)した最初の選手で、グローブの指を縫い合わせた最初の選手。
    6○gambrel roof:形状が将棋の駒に似ていることから、駒形切妻屋根と訳されることもある。
    ○Palladian:ヴェネツィアの建築家アンドレーア・パッラーディオ(1508年-1580年)の設計から派生しヒントを得たヨーロッパの建築様式。中央の窓の上に半円のアーチが載る。
    ○Boston College:1863年創立。ボストンで最も古い大学。
    8○Tina Fey:1970年生まれ。米国の女優、脚本家。主にコメディ分野で活動している。
    10○W. H. Auden:1907~1973。英国出身で米国の詩人。20世紀最大の詩人の一人とみなされている。 wiki。
    ○Auden『Musee des Beaux Arts 』は「About suffering they were never wrong,/The old Masters:」ではじまり、「the torturer's horse/Scratches its innocent behind on a tree.」の一節があり、末尾に「Something amazing, a boy falling out of the sky,/Had somewhere to get to and sailed calmly on. 」とある。
    12○Sarah Louise Palin:1964年~。保守派の政治家。 2006年~2009年までアラスカ州知事。女性で副大統領候補になった二人目。
    14○ロックス:Locke-Ober。ボストンで3番目に古いレストラン。ペーパーバック(Berkley Novel)にはボストンの地図があり、それに記載されている。
    15○fritter:果物・野菜・肉などの薄切りの衣揚げ。
    15○愛は心変わりを見ても変わらず:William Shakespeare『Sonnet 116』:“Let me not to the marriage of true minds /Admit impediments. Love is not love which alters it when alteration finds, or bends with the remover to remove."から。
    ○人間らしいもので、私になじまぬものはない:共和政ローマの劇作家プビリウス・テレンティウス・アフェル(紀元前159年没。英語:Terence)の『自虐者』から。
    ○Whitman:A very attractive and funny guy.
    ○Walt Whitman:1819年~1892年。米国の詩人。ヒューマニスト。米国文学において最も影響力の大きい作家の一人でもあり、しばしば「自由詩の父」と呼ばれる。
    ○Minotaurus:ギリシア神話に登場する牛頭人身の怪物。迷宮(ラビュリントス)の中心に幽閉されていた。
    17○クズリ(Wolverine):食肉目イタチ科。見た目は小さなクマ。大型の獲物を捕らえることがある。
    ○Simon Schama: 1945年生まれ。英国の歴史家。彼の著書『レンブラントの目』には高山宏訳本がある。大きい。厚い。ホークも29作『笑う未亡人』38章で読んでいた。
    20○Grill 23:161 Berkeley St, Boston。
    24○Annie Oakley:1860年~1926年。オハイオ州生まれの女性の射撃名手。
    25○Cavalier boots:膝丈の柔らかい子牛のなめし皮製ブーツ。
    ○splenda:法的に「ゼロカロリー」と表示される人工甘味料。
    27○Harvest Restaurant:44 Brattle Street, Cambridge, MA。
    ○Pernod:フランス原産のアルコール度の高い酒。商品名。
    ○ソローの引用: Henry David Thoreau, Civil Disobedience and Other Essays.
    29○私は、ウィスキーが私から奪うより多くのものをウィスキーから得ている:チャーチルの“I have taken more out of alcohol than alcohol has taken out of me.”のもじり。
    31○Grey Goose:ブランド名。フランス産のウォッカ。
    ○Wienerschnitzel:ウィーン料理の最も有名な料理の1つ。子牛のカツレツ。
    34○努力し、探し……屈しない:Alfred, Lord Tennysonの『Ulysses』:One equal temper of heroic hearts, Made weak by time and fate, but strong in will /To strive, to seek, to find, and not to yield.
    ○ Scottie(Scottish Terrier )、Jack Russell( Terrier):どちらも小型犬。
    ○Frans Hals:1582年ごろ~1666年。17世紀のオランダで活躍した大画家。 オランダのハールレムで活躍し、作品にはハールレムの住人を描いた肖像画が多い。
    35○Viand Coffee Shop:673 Madison Ave, New York, NY。
    ○Christopher Marlowe:~ 1593年。イングランドの劇作家、詩人。シェイクスピアに先がけて、エリザベス朝演劇の基礎を築いた人物の一人。居酒屋で喧嘩になり、マーロウは眉間をナイフで突き刺されて殺された。謀殺とされる。
    41○dinner rolls:ロールパン。
    ○Pinot grigio:白ワイン用ブドウ品種。
    ○ひと晩じゅう野球を見られる/野球は嫌いなの(ハードカバー本):原文はbasketball.文庫本、未見。
    ○Dead Bolt:deadlock。スプリングではなく、ノブまたはキーを回す錠のかんぬき部。
    ○人生の柔らかな手ざわり:the felt surface of life.『Paper Doll』29章でも使われている表現。
    46○Renée Zellweger:1969年生まれ。米国の女優。第92回アカデミー賞主演女優賞ならびに第76回アカデミー賞助演女優賞受賞。2008年にロバート・B・パーカー原作の映画『アパルーサの決闘』に出演。
    48○サマラで会うことになっている:『Appointment in Samarra』。米国人、John O'Hara(1905~1970)の小説。1934年に出版された。1998年にModern Libraryは、20世紀の最高の英語の小説のリスト100で22位にランク付けした。サマラはイラクにある都市で、中世アッバース朝の首都。
    ○Ipswich:おそらくマサチューセッツ州エセックス郡に位置する町の名前。
    ○Paul Revere:1735年~1818年。米国の銀細工師。1680年頃に建てられたリビア邸は、国家歴史的建造物で博物館となっている。
    49○Jalousie window:ルーバー窓。細長い何枚もの板ガラスやアクリル板などを重ね、ブラインドのような構成となっている。主に「あかり採り」の目的で住宅に採用されるが、このルーバー部の角度を変えることで換気ができる。断熱性が非常に悪いため、主に温暖な地域で使われる。wiki.
    50○相手の左にストレートを打つふりをした:原文から察するに「相手の顔面に左ストレートを打つふりをした」。そうでなければ、敵が右腕を上げて防ぐはずがなかろう。
    51○Stormy Weather:1933年に作られた。
    52○Melvin Horace Purvis II :1903~1960年。連邦捜査局(FBI)のエージェント。FBIが「社会の敵ナンバーワン」に指名したジョン・デリンジャー逮捕の陣頭指揮を執った。
    54○ガルヴィン工務店:『昔日(Now and Then)』69章で、「ガルヴィン請負サービス」を訳されているのと同じ会社。この時は、銃撃戦のあったスーザンの家の修繕を行なっている。
    56○Algernon Charles Swinburne:1837年~1909年。ヴィクトリア朝のイングランドの詩人。引用は、The Garden of Proserpineから。
    57○Archibald MacLeish:1892~1982。米国の詩人。モダニズム派。ハーバード大学教授。ピューリツァー賞3回受賞。引用は、Ars Poeticaより。
    63○Noah Webster Jr.:1758年~1843年。米国の辞書編纂者、教育者。ウェブスターの名は辞典を意味する普通名詞のように使われる。
    ○The Death of the Hired Man By Robert Frost。『ドリーム・ガール』その他でも引用された。

  • たまたま訪れた書店で、見つけて購入した。
    巻末のリストでは、スペンサーシリーズの最後から二番目の作品で、訳者も菊池光から加賀山卓朗に変わっている。
    面白いことは面白いが、何か違う感じ。
    大型書店では、もうスペンサーは手に入りにくいかもしれない。

  •  ホークもヴィニィも登場しないので、もしかしたら物足りないかなとも思ったのだが、無駄な心配だった。
     ロバート・B. パーカー氏急逝のニュースを知ってから初めて購入した氏の作品。
     スペンサー・シリーズは来年発売される一冊で終了するそうだ。
     さびしくなるなぁ(氏の意思を継いだ作家が続投するという話もあるようだが、やはりそれは今までのスペンサー・シリーズとは違うものだろうと思う)。

  • 面白かった。R.B.パーカーのスペンサーも残り1冊になった。大事に読もう。

  • スペンサー・シリーズの第三十八作目。

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