邪悪な少女たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2014年11月7日発売)
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本 ・本 (592ページ) / ISBN・EAN: 9784151807510

作品紹介・あらすじ

貧しい家に育った11歳のジェイドと裕福な家に育った11歳のベルが犯した罪──4歳の幼女殺し。別々の施設に二人は入り……

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの作家アレックス・マーウッドの長篇ミステリ作品『邪悪な少女たち(原題:The Wicked Girls)』を読みました。
    アレグザンダー・マコール・スミスの『キリンの涙―ミス・ラモツエの事件簿〈2〉』に続きイギリスの作家の作品です。

    -----story-------------
    その夏、絆で結ばれた11歳の少女二人は、4歳の少女を“殺した”―裕福な家で育った名門校の生徒アナベルと、貧困家庭に育ち読み書きできないジェイド。
    境遇の違う彼女たちが偶然友人になり、偶然近隣の少女と遊んだ時に悲劇が起き、二人は別々の矯正施設へ送られた。
    25年後の夏、リゾート地の遊園地で少女が殺された。
    そのことが会うはずのない二人を結びつけ…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞。
    -----------------------

    2012年(平成24年)に刊行された作品です。

    貧しい家に育った11歳のジェイドと裕福な家に育った11歳のベルが犯した罪──4歳の幼女殺し……別々の施設に二人は入り……。

    11歳の少女2人が4歳の少女を殺したという衝撃的な事件を描いたサスペンス……25年後の現在と過去の回想が交互に展開され、2人の運命や心理、そして25年前に起きた4歳の少女が殺された事件と現在の若い女性が次々に殺された事件の真相が徐々に明らかになっていく展開、、、

    2人の少女は、それぞれに過酷な環境に置かれており、友情と依存の間で心が揺れ動いていくのですが……その感情や思考が丁寧に描かれることにより、彼女たちの苦しみや孤独、そして罪悪感に共感することができましたね。

    社会的な問題にも触れられている作品で、少女たちの事件は、メディアや世間の注目を集め、彼女たちを非難や憎悪の対象にしますが、彼女たちの背景や置かれている状況には、家庭の問題や貧困、虐待など、多くの要因が絡んでいるんですよねー 人間の邪悪さだけでなく、善良さや複雑さも感じさせられましたね……真犯人の正体や動機も興味深いものでした、、、

    恵まれた友人をねたんだことはないか? 貧しい友人を無自覚に蔑んだことはないか? 世の中は不公平だと思ったことはないか? 幼い頃は親しかったのに生活に格差が生じたせいで失ってしまった友人はいないか? 自分の人生を振り返りながら、罪と罰、正義と悪、そして許しと和解について考えさせられましたね……単なるミステリに留まらず人間の心の奥深さに触れるとともに、読者に多くの問いかけを残す作品だと感じました。

  • アンバー、なぜホクロ除去しなかったんだ? 家を買うお金があるんだったらその金でホクロ除去と、ついでに整形もした方がよかったんじゃないのかな

     

  • あとがきにイヤミスとあってびっくり。確かに後味は悪いですが、2人の少女の人生を思うとその過酷さ、救いのなさに胸が締め付けられます。とにかく嫌な奴がたくさん出てくる中、2人の絆、最後に出した答えに考えさせられました。重い辛い話なのに、ぐいぐい引き込まれてあっという間に読んでしまった。アンバーの幸せを祈ります。

  • 本を選ぶときに見ていく順番は、まずタイトルが気に入るか、好きな作家さんや興味のある作家さんか敢えての挑戦か、表紙が好みか、裏側のあらすじのようなものに好みの内容が書かれているか、手頃な厚みであるか。
    この本は、最後の厚みがわたしにはやや分厚く、むうと唸りながら棚に戻す手に取る戻すを何度も繰り返し、いい加減怪しい客に見えるんじゃないかとキョロキョロして余計怪しくなりながらレジに向かった思い出のある一冊です。

    11歳の少女ふたりは、4歳の幼女を殺してしまう。
    ひとりは裕福な家庭で育ち、ひとりは貧しい家庭に育つ。
    別々の矯正施設へ送られたふたりは、二度と出会うはずではなかった。しかし、はじめての出会いのように再会も突然やってくる。

    少年犯罪を犯した人間の更生物語などではなく、ふたりの女性が運命に流される物語とでも言えるだろうか。

    タイトルにある邪悪な少女というのは、勿論殺人を犯したふたりの主人公のことだろうが、本当に邪悪なのは誰なのかと思わせる。
    少なくとも主人公のふたりではないはず。
    無責任な親、妹を押し付けた姉、主人公ふたりの周りにいるろくでもない男たち、平気で手のひらを返すひとたち、彼らは何も悪くないのだろうか。

    少女ふたりが殺人を犯すまでの過程が描かれているし、ここが肝腎なところだと思うが少女ふたりの心象描写が甘い気がする。何というか、少女らしくないというか、少女の気持ちが描ききれていないというか。
    矯正施設での描写も殆どなく、もっとそこを描いて欲しかった。
    この事件があって矯正施設での時間があるからこそ、女性となったふたりの運命の残酷さが際立ってくるのだから、ふたりの差異をしっかり描いて欲しい。

    イヤミスというようなことをどこかで読んだが、イヤミスとも違うと思う。
    少女が殺人事件を犯し、成人してからも事件が起きているのでいい気持ちになるはずもないけれど、ドロドロした悪意を主にするイヤミスではないと感じる。

    ラストの好みも別れるところだと思うが、わたしはこのラストに救いを感じた。
    他の手段が取れるならその方が良かったのだが、他の手段を取れないところこそが運命なのだから。

    ここまでページを使いながら女性となったふたりと事件に比重が置いてあるところと、タイトルと内容がそぐわないところ、イヤミスという妙な噂のようなものに惑わされるところが残念だ。

  • 最近読み終えたばかりのせいか、アンバーとカースティに『1Q84』の天吾と青豆を重ねてしまった。決して会ってはいけない二人と、絶対会うべき二人という大きな違いはあるが。子供の頃の出会いが人生を決めたという点では同じだ。この結果、ある意味アンバーは救われたのだろうが、カースティはより深い地獄に堕とされたようだ。

  • 胸糞悪い設定で、胸糞悪い町に起きる胸糞悪い事件をめぐる胸糞悪い人達(あ、でもなぜか犯人だけは普通…)。
    なのに、じゃなくでだからこそか、結末だけが光る。こう来るかー

  • 読後感が悪いわ・・・。
    うーん・・・不幸は不幸を呼ぶのかよっ!
    って救いがない気持ちになるわ。。

  • 30代後半のアンバーとカースティは、少女時代に4歳の幼女を殺害した罪で施設に入っていた。その頃のすべてを隠し名も変えて何とか生きている彼女たちが新たに直面する事態と、過去の事件が交互に語られる。とにかく胸が締め付けられて読むのが辛い。二人の状況も切ないが、彼女等を取り巻く大人の悪意、無関心、薄汚い好奇心に、気分が落ち込む。後書きにほのかな救いがあるとあったが、果たしてそうだろうか。あれを救いと呼ぶのはあまりに残酷過ぎると思う。

  • 厚さにビビりながらも途中で放り出すことなく読了。
    確かに読ませることは読ませる。
    が、こんなに長くなくてもよいのでは、というのが実感。

  • 帯に惹かれて暫く迷っていたが、結局買っている……。
    イヤミスと言われているが(訳者あとがきにもそうあるが)、果たしてこれはイヤミスかと言われると微妙。読後感が悪いものの総称だとすれば当てはまるが、どちらかというと世の中の不条理や無意識の悪意を描いたミステリでは……敢えて分類するなら新手の社会派?
    まぁ、どのジャンルにカテゴライズするかは兎も角、非常に面白いサスペンスだった。過去と現在を行き来する構成、主人公2人が各々名前を2つ持っているということで、最初は登場人物の総数の割に煩雑だと感じるが、慣れてしまえばどうってことはない。
    この作品で上手いのは、主人公2人のうち、1人の過去が露見した後の、周りの変化。この辺りの描き方が『イヤミス』とカテゴライズされた一因なのかもしれないな。ただ、アプローチ的にはイヤミスより社会派と言うべきだとやっぱり思う……。

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