天国でまた会おう(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

制作 : 平岡 敦 
  • 早川書房
3.42
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  • (56)
  • (64)
  • (8)
  • (7)
本棚登録 : 570
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151814518

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦から心身に傷を負って生還した、対照的な二人の青年。しかし世間の風は冷たく……

感想・レビュー・書評

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  • 「その女アレックス」が有名なピエール・ルメートル。
    他の作品も含めて、日本の出版界にも旋風を巻き起こしたといっていいでしょう。
    「アレックス」の2年後のこれがまた、フランスで最高の文学賞である、ゴンクール賞を受賞した作品。
    奔流のようにあふれ出る才能を堪能できます☆

    第一次大戦中の1918年から話は始まります。
    真面目で平凡なアルベールは、上官のプラデル大尉の非道なやり方をたまたま目撃してしまいます。
    戦場の混乱に乗じてプラデルに生き埋めにされかかったところを仲間のエドゥアールに助けられますが、エドゥアールはこれで顔を半ば失う大怪我。
    裕福な家の出のエドゥアールは変わり果てた姿を見せたくないと家族に連絡を取ることを拒否し、アルベールが面倒を見ることになります。

    一方、かっての上官プラデル大尉は、貴族の末裔で、ハンサム。
    エドゥアールの実家を訪ね、なんと姉と結婚してしまいます。
    しかも、戦死者の鎮魂のための事業で、大儲けしようという。
    それを知ったエドゥアールは、復讐を考え‥?

    救いのないような状況ですが、話はテンポよくどんどん進み、人生の皮肉をユーモアで包んで、いかにもフランス的なエスプリが溢れんばかり。
    天才肌で手に負えない子供だったエドゥアールを親はもてあましていたのですが、戦死したと知らされてから、父性愛に目覚めていくことに。
    二人の下宿先の女の子がエドゥアールのために可愛いマスクを考案してくれるところなど、なんとも微笑ましい。
    これだけの作品は~なかなか読めないですよね。
    面白かったです!

  • ミステリーランキングでことごとく1位を取った『その女アレックス』を読んで驚かされ、遡って訳出された前作『悲しみのイレーヌ』を読んだときもアレックスで事件の結果はバレているにも拘らず予想もしなかった展開に度肝を抜かれたルメートルがミステリから離れて書いた小説、しかもゴンクール賞というフランスで最も権威のある文学賞を取った作品ということで図書室で借りてきました。舞台は第一次世界大戦の終わりから終戦後のフランス。戦争とその後の混乱を商機としてのし上がろうとする没落した貴族プラデルと、プラデルの部隊で部下だったアルベール(ちょっとぼんやりした田舎育ちの気のいい青年)とエドゥアール(上流階級出身だが父親と確執のある青年)の三者の数奇な人生が描かれます。ジョン・アーヴィングを好きな人は、好きなのではないでしょうか。独特の世界観に浸りながら、夢中になって読みました。あえて欲を言えば、マドレーヌとルイーズについてももっと書き込んで欲しかったです。

  • 上巻、読了。
    ミステリーのルメートルではなく、純文学のルメートル。
    モーパッサンの古典を読んでいるような展開の見えない小説。でも、先がきになる。
    アルベールとエドゥアールの行きつく先は?
    そしてドルネー=プラデルとの決着はどうなるのだろう。

  • 悲惨な戦争を潜り抜けた戦友たちが主人公となり物語を繰り広げ、そこに戦争を経て肥え太った元兵士も絡んでくる…といった図式から、オールスンの「アルファベット・ハウス」が髣髴された。

    「その女アレックス」で一躍我が国では有名になったピエール・ルメートルの作で、ミステリー仕立てではないが、行く末が気になって焦れてくる巧みな筆運びはさすが。
    生々しい負傷の描写などをぼかさず、直截的に書き切るあたりも、"らしい"。

    作中世界がとにかく濃厚で、読者は知らないうちにそこにどっぷりと引き込まれてしまっているので、カウントしてみると僅か1年余りのスパンの物語なのだが、なんだか長大な大河作品を味わったような気にもなる。

    優しさ、弱さ、狡猾、悲哀、怒り、誇り、孤独、家族、愛情、理不尽…、戦争とその後の世相という舞台をギミックにして、"人間"というものを巧く浮き彫りにしている小説だと思う。

  •  売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。

     しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に巻き起こることになる。

     『その女アレックス』が世界に席巻するルメートルのブームの発端となったにせよ、今、読む機会を与えられた過去の作品はすべて圧倒されるストーリーテリングを感じさせられる筆力に満ちたものであることは間違いない。

     そうした翻訳ブームの中で実は地味ながらも『その女アレックス』の二年後の作品として改めて瞠目されるべき作品が、実は本作なのである。早川書房としてはとても鮮度のよい作品に眼をつけたというところなのだ。しかもこの作品、フランス最高のゴングール賞受賞作。いわば日本でいえば直木賞ならぬ純文学系の頂点である芥川賞に比肩する大きな賞なのである。ピエール・ルメートルは、実は直木賞も芥川賞も行ける作家であったということである。

     しかし本書に向かい合ってみて、過去作品の見せる大どんでん返しやトリック、ツイストなどのミステリー的要素はないものの、その表現手法に接してみると、いかにもルメートル世界ではあるのだ。全然違う作品なのかな、と思いきや、その語り口、題材としての目の付けどころ、登場人物が陥る異常心理、意外な宿命とその結末といった小説的面白さは、日本の芥川賞にはまず見られることのない大衆娯楽小説としての楽しさが満載なのである。

     フランスのおおらかさというようなものを感じさせる受賞であり、それに応える壇上のルメートルの妙技はやはり相変わらず見ものである。ミステリーではなく、むしろ冒険小説のジャンルに切り込んだルメートルの作品は、どことなくジャプリゾの『長い日曜日』を思い起こさせる。

     戦争の残酷と、戦争を食い物にする戦争犯罪者。そしてそれらをある時は真摯に、ある時はイロニック(皮肉)に料理する名シェフのような文章(包丁)と味付けの冴え。日本の純文学では考えられないフランス純文学大賞の面白さ、という切り口だけでも改めて楽しみたいエンターテインメント・クライム・スリラーであり、壮大な復讐劇としてのビルディングス・ロマンとも言える大作をご賞味あれ。

  • フランスの作家ですが、日本ではミステリー作家として有名なようです。私は初めて彼の小説を読みました。

    あとがきで知ったのですが、題名は第一次世界大戦で敵前逃亡の汚名で、見せしめとして銃殺された兵士が妻に宛てた最期の手紙の中の言葉、とのことです。

    著者自身が言うように、戦争で人生を踏みにじまれた若者たちへのオマージュがこの作品の基調にあります。一方で主人公のエドウアール、アルベールによる社会への反抗が結末で達成され、主要な登場人物それぞれの物語が決着を迎えるところ、活劇のクライマックスのような高揚感を感じました。

    ”どんな問題にも結末は必要だ。それが、人生の定めだろう。耐え難い悲劇だろうと、馬鹿馬鹿しい喜劇だろうと、いつかは決着をつけねばならない。” という一節がとても印象に残りました。

  • あの、「悲しみのイレーヌ」で有名な著者の作品。

    うーん。「悲しみのイレーヌ」は、非常に衝撃的な作品だったけど、こちらはどうか。紙面ぎっしりと文字が配置されているページもあったりするので、読み進むのには、少し力がいる。また、内容的にも、すこし入り組んでいるので、そういう意味でも力がいる。

    上巻では、テンポが良いとは言い難い。下巻で、どう巻き返すか。

  •  魅力的なタイトルの戦争小説だと思って読んだら全然違った。物語の発端は独仏戦争の前線なのだがそこでの若者たちと上官との宿命的な事件と人間関係を引きずって舞台は戦後のパリへ移る。その上官であったプラデルは悪辣な手腕で成り上がり、片や戦争で重傷を負った兵士エドゥアールとアルベールは逼塞した貧しい暮らしを送る。そこからはじまるコン・ゲーム。物語はあれよあれよという間に流れ出し、予測不能のカタストロフへなだれ込む。エドゥアールの父への過剰な葛藤がなければ、そして致命的な負傷を押して家に帰ってさえいれば、何ごともなかったろうにと思ってしまう。しかしエドゥアールの実家ペリクール家に取り入るプラデルとはどこかで衝突する宿命になっていたのだろうし、であればこの結末はそう悪いものではないのかもしれない。が、それにしても父と子の運命の糸が劇的に交わる最終章は悲痛だ。どこかで見たような頑固な役人メルランの厳正な摘発と、身から出た錆で周りの誰彼にも見放されたプラデルの哀れな末路は痛快だが、それをエドゥアールもアルベールもついに知らずじまいなところが残念でならない。

  • 「天国でまた会おう」ピエール・ルメートル
    言わずと知れた「その女アレックス」の作者です。物語は、1918年の西部戦線、イケメンだけど超ずる賢い上官ブラデルの悪事に気づいたアルベールは、逆にブラデルに戦場で生き埋めにされてしまう。その窮地を救ったエドゥアールは、その代償として顔や身体に生涯消えぬ大怪我を負ってしまう。その1年後、過去と決別するため名前を捨てたエドゥアールと、そんな彼を献身的に支えるアルベールは、パリの安アパートでひっそりと暮らしていた。しかし、憎き上官ブラデルは、なんとエドゥアールの姉と結婚し、汚ない手口で実業家として成功していた…。
    不器用だけど実直なアルベールと父親との確執で名門の家を捨てたエドゥアールとの関係が、置かれてる厳しい状況の中でも時に微笑ましく感じることがある。エドゥアールの提案で一発逆転を狙う二人を応援しつつ、なんとかブラデルを懲らしめられないかと思いながら読み進む。あれっ⁈、いつの間にか物語に惹き込まれて、典型的な小市民アルベールと薬中毒エドゥアールの二人に感情移入していることに驚く。前半の展開がやや重く、頻繁に変わる語り手に読みにくさを感じるものの、後半部のスリリングな展開はなかなかのもの。アレックスが二転三転する意外性で読者を楽しませるのに対し、物語の構成、展開、登場人物の作り込みで読ませる本作の方が王道であるのは間違いない。読み終わってみて、このタイトルに納得です(^o^)

  • 読者の浅はかな予想を翻弄するかのごとく展開した「その女アレックス」とは趣を変え、本書は第一次世界大戦の戦場における場面からじっくりとした語り口で惹きつける。上官の私欲による愚かな惨劇の被害者となった二人の若者が辿る運命が重い。

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