- Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151824012
作品紹介・あらすじ
数々の怪事件、異様な後味。ブラックユーモアとツイストたっぷりの短篇集が文庫で登場
感想・レビュー・書評
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ロード・ダンセイニといえば、ハヤカワ文庫FT最初期の一冊に、原書のイラストとともに文庫として出された『ペガーナの神々』の印象があまりにも強い。
皮肉っぽく、幻想的なその作風には、いっぺんで魅了されてしまった。
そのロード・ダンセイニが書いたミステリ! そんなものがあったとは……。
手に取ってみると、まさにこれは上質のミステリであり、名探偵ものであるリンリーとスメザーズものの数編、引退した老刑事リプリーが語る数編、それ以外の短篇から成る。
ミステリ、スパイもの、ハードボイルドまで含まれる豊かな短篇集だけれど、ひとつ共通しているのは、いかにもイギリス紳士らしいたしなみが感じられること。
たとえば、凄惨な事件であっても、それを克明に描写する事はしない。
怖ろしい状況を匂わせるに留め、読者の想像にまかせることで、余計にぞっとする効果を醸し出している。
そういう意味では、ミステリというだけでなく、ホラーともとれるものもある。
また、興味深いのは、西欧人の倫理観(または宗教観)からして、人間として許すべからざる犯罪が幾つか含まれていること。
西欧のミステリ全体を見ても、これをとりあげているものはそれほどないように思う。
それは何かといえば、ずばり、カニバリズムである。
つまり、ロード・ダンセイニにとって、最も恐るべき犯罪とは、血まみれのスプラッタでもなければ、シリアルキラーでもなく、「人倫にもとるもの」だったのではないだろうか。そしてそれこそが、イギリス紳士というものなのだろうか。 -
「奇妙な味」は表題作だけなんだね。
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すごーく面白かった。さらりと上品に書いてあるけど、結構猟奇的事件の話多いです。奇妙で怖い話が26編も入っているので、大変お買い得。
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トリックの解明は割とあっさりしているし、毎回きっちり犯人が捕まるわけではないので、なんとなく全体的に意地悪い感じのするミステリ集だな…と思った。だからこそリアリティーがあるとも感じ、慣れてくるとキツめのブラックジョークみたいで苦笑いしてしまった。『二壜の調味料』『疑惑の殺人』『新しい名人』のオチの着け方が好き。
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探偵リンリーとスメザーズの活躍する短編と、それ以外の短編からなる短編集です。表題作の「二壜の調味料」の結末が強烈すぎて、他の短編が霞んでいる感じでした。
全体は古風な推理小説な雰囲気ですが、時にSF風味なのが面白かったです。「二壜の調味料」以外では、「ラウンド・ポンドの海賊」と「新しい名人」が面白かったです。 -
調味料のセールスマンであるスメザーズの同居人、頭脳明晰の青年リンリーの探偵ミステリ。若い娘の家に男がやって来て同棲を始めたがある日娘の姿が見えなくなった。男が殺したと思われるが死体はどこに消えたのか。男は庭の木を全て切り倒し薪にし始めた。しかし薪は使わずに積み上げてある。さらにスメザーズから2壜も調味料を買ってくれた。これらは何を意味してるのか、という有名な表題作。リンリーものをはじめ、ラストでニヤリとさせられる奇妙な味の短編ばかり26篇。アイデア一発で書かれたものばかり、70年前の小説だし有名な話だから、びっくりするほどの衝撃はないけれど、読んでおくべき名作短編集
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シャーロック風でした
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「奇妙な味」初挑戦。どれも30ページ程度で、ものによっては10ページもないのに満足度高い。
リンリーのシリーズの語り口が好き。「スメザーズと申します」がだんだん恋しくなってくる。よく読んでみると全然犯人が逮捕されないのに驚き。割と野放し。あとナムヌモってなんなんだ。
『二壜の調味料』死体が見つからない理由は検討がつくけど、木を切った理由はさっぱり分からなかったので衝撃を受けた。あんな単純なことで。最後の一文に鳥肌。
リンリーものじゃなくても面白い。クスッとしたりゾッとしたり。 -
表題作はラスト一行で「えっあ、そういう感じ??」ってなった。
そういえば、モルグ街の殺人を読んだ時もこれと同じ様な反応をした気がする。
ただ真相が分かってから読み直すと、なるほどねーと納得できる。
なぜ男は木を斬り倒し積み上げる作業をそれぞれ1週間続けたのか。
その理由がある意味衝撃的。
全26篇収録されており、全体的に真相を明示しないところが奇妙な味っぽくていい。
あとはもうナムヌモが気になって気になって仕方ないな。