ポリス・アット・ザ・ステーション (ハヤカワ・ミステリ文庫 ショーン・ダフィ)

  • 早川書房 (2022年6月22日発売)
4.24
  • (11)
  • (9)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 106
感想 : 13
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (608ページ) / ISBN・EAN: 9784151833083

作品紹介・あらすじ

クロスボウで射殺された麻薬密売人。事件の裏には北アイルランドを揺るがす秘密があった。ショーンは捜査中、IRAに襲われ……

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • クソ面白い

    もちろんクソ原文ではshitですわな
    クソ作中クソ700回くらいクソクソ言う(ほんとはそんなには言わない)

    ショーンが目出し帽の男とその仲間たちに森の中を歩かされて、自分を埋めるための穴を掘らされた上に、拳銃を向けられる絶体絶命のピンチを迎えるプロローグから物語はスタート

    しかし、ギャリックファーガス署の管内で発生したのは麻薬の密売人が殺されるという北アイルランドでは特段珍しくない事件(それはそれでどうかと)
    唯一珍しいのは兇器がボウガンというところ

    「薬の売人が背中を矢で撃たれて殺された」
    「犯人は地元の法執行機関の手をさんざんに煩わせてる、シャーウッドの森のあの悪党か?」

    クラビーとショーンのこんなのんきなやり取り

    緊迫の場面から一転していつもの二人いや新米刑事のローソンを加えていつもの三人
    事件の捜査はなかなか進展せず、ショーンの恋人ベスと娘エマの日常が描かれていく

    あれれ?このスローペースから、どうやってあの場面に?と思わせながら物語はあくまでのんびり進みます
    でもこののんびりのところもぜんぜん退屈じゃなくてすんごい面白いのよ

    そして、もちろんこののんびりペースは作者の手の内で後々効いてくることばっかり、良く出来てるの

    一気にペースが上がる後半から最後までハラハラさせての、いい感じのラスト
    すんばらしい大傑作でした!

    ショーン・ダフィシリーズ
    もっと読まれてもいいと思うんだけどなぁ〜
    ノワールはやっぱり一般受けしないのかなぁ〜

    ★5じゃクソ足りない!

    • 土瓶さん
      ひまわりめろんさん、こんばんは~^^
      これってノワール?
      警察小説ではないの?
      ひまわりめろんさん、こんばんは~^^
      これってノワール?
      警察小説ではないの?
      2022/12/02
    • ひまわりめろんさん
      主人公ショーン・ダフィは北アイルランドのギャリックファーガス署の警部補で警察官です
      だからなのか日本では警察小説として紹介されてます…が!
      ...
      主人公ショーン・ダフィは北アイルランドのギャリックファーガス署の警部補で警察官です
      だからなのか日本では警察小説として紹介されてます…が!
      ノワールです
      完全なるノワールです
      警察小説としての要素も多いのは多いですが、これを警察小説として売り出そうとしてるところに物悲しさを感じる今日この頃です
      胸を張ってノワールとして売ってほしい(ノД`)
      2022/12/02
  •  ショーン・ダフィのシリーズも6作目を数える。宗教対立と内戦下の北アイルランド、キャリックファーガスの田舎警察を舞台にした毎作のストーリーも凄いが、プロテスタントとカトリックの対立、政治思想の対立で分裂する世界一危険な国家に生きる状況を背景にして、この主人公の個性を描出する作家の書きっぷりも凄い。

     それでいながらこのシリーズでは食っていけなくなり、ウーバーの運転手で生活を凌いできたという現実の作家の生活っぷりも信じ難い。でも『ザ・チェーン連鎖誘拐』という独立作品で作家に戻った。その作品も実に出来が良い。これだけの作家が食っていけなくなる国というのは何なのだろうか。

     さて、本書。そしてダフィー。彼は、「くそ」を連発する乱暴なセリフの裏で、家に帰りつくと、ショパンのレコードに耳を傾けながら、レビ・ストロースの『悲しき熱帯』を読むというインテリゲンチャである。

     車底に爆弾がないことを必ず確認してBMWに乗る。車内では古いブルースやロックをかける。新しい音楽傾向にはげんなりしている。そのくせ音楽が凄く好きで、おまけに評論家なみに詳しい。そんな暇がありそうにない多忙な日々であれ、いつも音楽を、しかもレコードに針を落として聴いている。大抵いつも。

     それがショーン・ダフィ。乱暴でワイルドなイメージはあっても腕利きの殺人課刑事。多感で感情の浮き沈みが激しいが、とにかくインテリなのだ。音楽、文学、美術なんでもござれ。

     そのダフィが、拉致され捕縛され原始林の中を処刑場所に向かって曳かれてゆくシーンのこの本は始まる。のっけからクリフハンガー状況。そして物語は遡って始まる。

     そもそものスタート地点となるのは、クロスボウでの殺人という珍しい事件。捜査シーン。なぜクロスボウなのか? しかも異様な殺人現場。警察官が引き上げてしまっており、多くの見物人に荒らされている。死体の上には煙草の灰さえ落ちている殺人現場。鑑識もまだ来ていない。何時間も放置されている死体。そんな殺人現場はミステリー作品で見たこともないが、ダフィの時代には存在するのだ。

     殺されたのは麻薬密売人。その妻は拘留中。小さなきっかけに見えるが、物語は末広がりにスケールを増してゆく。

     ダフィの一人称による語りで展開するこのシリーズだが、そのリズム、テンポがいつもながら乗り乗りなので、多少分厚い本書でも苦には感じない。乗せられてしまう作品。ダフィの音楽性やリズム感は、きっと作者の内にあるものなのだろう。そして1980年代。北アイルランドが燃えていた時代。IRA対アルスター警察の内戦状態と言えた時代。テロリストがプロとして食っていけた時代。その時代の文化である音楽や文学を語りながらの捜査こそがダフィという主人公の個性である。

     前半は、ダフィの現在の生活っぷりと乱れた捜査陣系の立て直し。後半はアクション、またアクション。ジャック・ヒギンズの世界に舞い降りた新しい才能。それがエイドリアン・マッキンティだ。この後、彼と言う作家がどうなってゆくか心配だが、このシリーズは次の三作までが予定されており、その一作目、他に単独作品も今年同時に上梓されている。その合間は作品が発表されていないので多分ウーバー。

     苦労の中で書き続けて欲しい。この作家の才能は確かなものなのだから。

  • キャリックファーガスの団地で麻薬密売人の男が射殺された。自警団の犯行として捜査が行われるが、ショーン・ダフィ警部補は、事件がそう単純なものではないことを直感する。事件当夜に被害者と会っていた不審な男、何かを隠す被害者の妻……。さらに捜査中、ショーンは何者かに命を狙われてしまう。そして事件は北アイルランドの闇へとつながっていき――。

    シリーズ第6作。守るべき家族のために、仲間と共にダフィ警部補が奔走する。一筋縄では終わらないのが、作者の真骨頂。

    しかし、定価が1800円超え。どうしたものか。ポケミスも高くなったし。

  • シリーズを通して血で血を洗う政治闘争と腐敗した警察権力とに挟まれた絶望的な状況に置かれてきた主人公が遂に自分のみならず家族や友人までも失いかねない窮地に追い込まれる中で、果たして事件を解明し状況を好転させることができるのだろうか。三部作の中締めにふさわしいラストが待っている。

    引用 〜 悲劇と幸運と】銃で撃たれなきゃならないとしたら、ベルファストは最高の場所のひとつだ。二十年の紛争の末、何千という暗殺未遂と銃による制裁の末、ベルファストは世界有数の銃創外科医を多数輩出してきた。

  • 今回ショーン•ダフィに大きな変化が起きた。娘が誕生し父親となったのだ。大切な家族や仲間を守る気持ちが強くなったように思える。
    今作の事件は麻薬密売人の殺害だ。縄張りを犯された過激派の仕業と誰もが思う中、ダフィと部下のクラビー、ローソンのチームは矛盾点に納得できず根気良く捜査を続ける。それが事件の背後にいた大物の存在を暴く事に繋がるのだが、とにかくこの3人のチームワークが最高。もちろんここぞという時のダフィの勘の冴えや行動力もワクワクするけど、地味な聞き込みや書類仕事をコツコツこなした上で真相にたどり着く所に好感が持てる。特にクラビーは、いちいち言うことが深くてしみじみ良い。この先ダフィ達がどうなるのか分からないけど、クラビーには是非活躍して欲しい。

  • 今回も文句なしにすばらしくおもしろい。

    年表と法月倫太郎氏の解説がまたいい。
    成長著しい金剛…じゃなくてローソン笑

    これで終わりじゃないとわかってホッとしました。

  • ショーン・ダフィシリーズ六作目。

    正直に言って、最も衝撃的だったのは「解説」だった。
    このシリーズは三作ごとの三部作、
    つまりあと三作、書かれる予定らしい。

    いやー、もういいでしょ。
    一匹オオカミだったダフィが、
    娘とその母(結婚していないので妻ではない)と住み、
    チームで大事件を解決して、
    都合の良い人事を受け入れさせ、
    半ば引退する予備巡査の道をつかみ取り、
    幸せなラストで自分としてはとても満足していたのに。

    今まで登場していなかった父母が登場したり、
    警察署で体力テストがあってジョギングしたり、
    ダフィが娘のおむつを替えたりと、
    いろいろ面白かったが、
    やはり圧巻はIRAの暗殺部隊に襲われた場面。
    一作目で助けてもらったテロ組織の幹部が、
    また、軽機関銃で追っ払ってくれた。

    その前にIRA実行部隊にハニートラップにかけられたのに、
    そのハニー役だった女性の命を助けるために、
    警察に連絡せず、
    IRAのメンバーの家に行くところは良かった。

    それと、アイルランドとの国境で追い詰めた犯人を、
    撃ち殺すでもなく、逮捕し裁判を受けさせるわけでもなく、
    警察にとって都合よく使うとは、それも面白かった。

  • 〈ショーン・ダフィ〉シリーズ第六弾。麻薬密売人が殺害されダフィたちの捜査が進むにつれて事件の背後にあるものが見えて難しい捜査になっていく。シリーズお馴染みのクラビーとローソン二人の巡査部長とダフィの三人での捜査とその会話が今回も良くてとても良いトリオ。家族ができてダフィも少しずつ変わってきていてそれが今後どうなっていくのかも楽しみだし、今作の結末を経ての次作が待ち遠しい。前作と今作はシリーズの中でも特に読み応えがある作品だと思う。

  • 「この先あと一度でも犯罪捜査課の捜査を邪魔したり、俺の部下に偉そうに命令したりしたら、おまえの家に行って、庭に釣竿と一緒に置いてあるノームをおまえのケツに突っ込み、おまえのくそったれの喉から小さな赤い帽子が出てくるまでぐいぐい押し込んでやる。わかったか?」(74頁)

    悪態や罵りというものには、実は上下の階級がある。
    「くたばってしまえ!」「ぶっ殺すぞ!」
    これは下の下だ。芸がない。
    言った相手が震えあがり、周りの皆も怖がらせるのが、実は中級。
    言った相手が震え上がり、周りの皆が笑ってしまうのが、上級なのだ。
    この点、ショーン・ダフィは最上級と言っていい。
    相手は恐れ、言葉を失い、読者はゲラゲラ笑ってしまう。

    この技能にはかなりの蓄積が要る。
    読んだ本の数、さまざまな知識、ユーモアセンス、リズム感、声量、まわる舌、そして、なにより、言う度胸。

    我らが主人公の啖呵に、我々は胸のすく思いがするが、しかし、ショーン・ダフィ、大丈夫なのか?
    今の君には、大事なガールフレンドと、まだオムツの必要な娘がいるではないか。
    上官に、そんなこと言っていいのかい?
    無事にすむのかい?

    だいたいこのショーン・ダフィという男は、曲がったことが好かない、無鉄砲に突っ込んでいく、命知らずの男だ。
    色々に好みと理屈があり、それを語りたがる、面倒くさい男だ。
    女性にはなんだか弱く、知的な女性が好みだから、なお、知的に終わりを告げられもする、ちょっと情けない男だ。
    一方、小さな娘のオムツを替え、ミルクを与えてゲップもさせる、できたお父さんでもある。

    シリーズ第6巻のページを開けば、いきなり命の危険な状況である。
    ええ! なにがあったの、ショーン・ダフィ!
    ビックリする間に、時間は少し前に遡り、それまでのあれやこれやが語られる。
    実家ののどかな様子や、現場の大混乱、上司にあれこれ言われ、医者にもあれこれきつく言われ、家に帰ればいざこざがあり・・・・・・

    『五作目は本作よりさらにおもしろく、六作目は五作目よりずっとおもしろくなります』とは、翻訳者の『ガン・ストリート・ガール』での言だが、
    そのとおり、この『ポリス・アット・ザ・ステーション』は面白い。
    ハラハラドキドキ、冷や冷やしみじみ、そして、抱腹絶倒だ。
    あなたも、きっと、楽しめる。

  • シリーズ通してかなり成熟してきた印象。

  • 面白かった!
    ダフィの語りのペースに、慣れてきた
    クラビーのしかめつら、かっこよさそう
    見たい!

全11件中 1 - 11件を表示

エイドリアン・マッキンティの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×