55 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2019年12月19日発売)
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本 ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784151839511

作品紹介・あらすじ

田舎の警察署に連続殺人鬼から逃げだしたという血まみれの男が駆け込んできた。55番目の犠牲者になるところだったというが……

感想・レビュー・書評

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  • 殺人鬼によって山小屋に監禁され「おまえが55番になる」と脅され殺されそうになったところを命からがら逃げ出してきたという男が、オーストラリア西部の小さな警察署にやってきた。
    だがまもなく車を盗もうとして捕らえられた男がまた、先の男と全く同じ、先の男と立場を入れ替えた話をし始めた。
    一体どっちが殺人鬼でどっちが被害者なのか。

    …という面白そうな設定、シリアルキラーというキーワード、ここ最近オーストラリアを舞台にした作品をいくつか読んだこともあり、興味をそそられたのだが。

    なんだろう、ちっとも面白くならない。
    辺鄙な田舎町の警察署に突如起きた連続殺人鬼という大事件に本部から警察官が送り込まれるのだが、それが主人公の巡査部長・チャンドラーとはなんだか因縁のあるらしき警部補・ミッチ。
    このミッチが何かとチャンドラーを上から目線で抑えつけ、指揮系統も何もかも(仕事以外もという意味で)奪っていく悪役なのだが、チャンドラーもまた自分本位で動くところがあって、それがこの小さな警察署ではこれまではそれで良かったのかも知れないが、大きな事件となればそうは行かないし、しかも度々容疑者を逃亡させ(未遂も含め)ているという失態を犯している。これはミッチも同様なのだが。

    で、結局どっちが本当の殺人鬼なのよ、とそれを調べてほしいのだが、二人の過去を洗うなりすればいいものをそこはなかなか進まず、ミッチによる二人の取り調べが続く。そしてそんな中、裁判も始まってまた逃亡…ストレス!

    途中途中で10年前の、行方不明の青年を捜索する若きチャンドラーとミッチのシーンが挟まれる。
    これが本編と関わりがあるのか。

    終盤になってようやくどちらが殺人鬼なのかという手がかかりが掴めてくる。が、またここでチャンドラー暴走!
    そしてミッチもまた…。
    性格の悪さはどうでもいいが、仕事はしっかりしてくれよ、と思うのだ。

    殺人の動機については理解出来なくもない。
    シリアルキラーなりの理屈、他の人間には全く分からないというものではなくてそれなりに同情できる点もある。勿論だからといって無関係の人間を殺していいということには全くならないのだが。
    なのでそのミステリーの点についてはある程度は納得出来た。

    ただ、このラスト!
    因縁が巡り巡って…というのは分かるが、結局何なんだ!
    勿論こういうラストは技法としてアリとは思うが、ここで? 何も解決してないし。なんの余韻もないし、なんの想像も妄想も出来ないし。
    でもこの文体の感じだとあまり想像したくないラストなんだろうな。

    他のレビュアーさんの厳しいレビューもよく分かる。
    ハヤカワの洋物は当たり外れが結構あって、だからこそ特捜部Qシリーズみたいな掘り出し物にも当たる楽しさがあるのだけど、今回は残念でした。

  • ジェイムズ・デラーギー『55』ハヤカワ文庫。

    そんな結末ってありか。刺激的なテーマで始まったミステリーは二転三転し、2つの意味で愕然とさせる結末へと辿り着く。

    オーストラリア西部の警察署に土埃と血にまみれた状態で駆け込んで来た謎の男は連続殺人犯から命からがら逃れて来たと主張する。その後に警察署に駆け込んで来た男も、自分も55番目の犠牲者になる前に連続殺人犯から逃れて来たと主張する。

    全く理解出来ない事件の背景と救いの無い結末とその結末をきっちり描かない著者の情けなさ。最近のハヤカワが発掘する新人作家はハズレが多く、なかなか次作まで辿り着かないように思う。

    本体価格1,160円
    ★★★

  • 忘年会に向かう途中
    本屋で、買いたいものが置いておらず
    ガッカリしつつ新刊コーナーで手に取った本。

    警察署に「54人殺したヒースという男に監禁されて55番目の被害者になりかけた」と言うボロボロの格好をした男(ゲイブリエル)が、転がり込んでくる。そのあと更にもう一の男(ヒース)が警察に連れてこられ、ゲイブリエルと全く同じ内容を話し始め、ゲイブリエルに殺されそうになったと証言する。
    ヒースとゲイブリエルのどちらかが嘘をついている…と、言うありそうだけど面白そうな
    概要…雰囲気の良い表紙…
    帯のアオリ…

    同じく、ハヤカワ書房の「マンハッタンの狙撃手」の感想を書いてる方で「NV(ハヤカワノベルズ)と書かれている本は…」とあったが、やはりNVには用心すべきですね…

    海外小説で千円近く払ってハズレるのは、小遣い制サラリーマンの私にはかなり痛い…
    「ザ・ラストワン」「不屈の弾道」「エル」これまでも散々な目に何度もあってきた…

    でも、新しい作家で「当たり」を見つけたときの喜びがあって、ついつい買ってしまうこの習性(悪癖)…
    ブクログを見てると欲しい本が大量に増えたり、欲しかった本でも感想を見て読むのをやめたりと色々メリットデメリットがあるのだが、基本的に「他社の批評が悪くても、何が悪かったのか?を考えながら読んで楽しむ」と言う方針でいこうとは思っている。ほぼ供養。

    今回の流れ
    「購入→その次の日にブクログで低評価→むしろ気になって読む」と言う順番だった。

    裏表紙のあらすじにあるような状況が整理されるまで読んでみた時点で、雲行きが怪しい。
    読む時間があるのに、読みたいと思えない…
    だが、ラストまでは読むぞ…

    (以下、読了後)

    ラスト付近、読むペースが加速した
    そのあとの減速も意味のあるものだった…
    だがコレは…感想書きづらい!

    事故に巻き込まれたような読書体験だった…
    何重にも救いようがない。
    「重みの無いグレーンス警部」って
    言ってもバチが当たらないと思う。

    • ikezawaさん
      読んで数日経ってるが
      まだラストを思い出す。
      読んで数日経ってるが
      まだラストを思い出す。
      2020/01/20
  • 「55」という数字が、被害者の数らしいというあらすじからの憶測を元に読み始めた。シリアル・キラーは大好物なので(笑​

    序盤の展開は至ってシンプル。ふたりの容疑者(=自称被害者)は、相手こそが殺人鬼だと言い張り、しかもふたりともあからさまに挙動が怪しい。振り回される捜査チームだが、チームリーダーの幼馴染のキャリア刑事が合流したことで、さらに捜査は迷走。小さな火種をあちこちにばらまきながら展開するストーリーは面白いが、刑事同士の確執シーンがわかり過ぎのやり過ぎで若干辟易した。​

    サスペンスとしては秀作だと思う。真犯人の予測は可能だが、そこに至るドラマと、謎解きのプロセスがとても興味深かった。全体的には好きな系統の作者なのだが、ベタな回想やエピソードでいい雰囲気を壊してる気もする。賛否両論必至のラストもどうなんだろ。機会があれば次回作も読んでみたいですね。​

  • そこでやめたら駄目だ。

  • 購入して読み出す前に、ここに登録している他の人のコメントを参照した。あまりの評価の悪さにガッカリして、これでは読むのをやめようか、とさえ思った。しかし読みはじめると、そんな心配は杞憂であった。犯人と被害者が、時をおいて、それぞれ自分が被害者だと警察に現る。それだけでも結構独創的ではないか。他の評者は舞台がオーストラリアという文学的過疎地だということに惑わされたのかも知れない。因みに、作者は北アイルランド人だ。この人もアイルランド人の饒舌さを受け継いでいて、物語はどんどん進行する。登場人物の人物描写も適切で、幼なじみの現在の地位による確執も面白い。終末近くになって、二人の容疑者の一方の仮面が剥がれていく過程も、それほど不自然でもない。結末は、ハッピーエンドとも正反対とも受け取れるが、その解釈は読者に任されているのだろう。

  • 何ひとついいところのない話。
    ストーリーもメタ的な意味でも、とにかく救いが何もない。キャラクターはみな不快で、展開は最初から最後まで救えない。元妻や元親友もさりながら、2度も3度も容疑者に逃げられる主人公、おまえも充分不快だから。部下のニックや娘のサラへの対応もまずいし、能なしとしか思えない。
    フィクションのキャラクターの無能さって、だいたいはそういうキャラ付けや演出であって、ガチでイライラさせられたのは「人形は指をさす」(ダニエル・コール)以来。
    そして、そんな話を我慢して読んだあげくのラストがあれだ。最悪などという言葉でもぬるい、もはや「論外」である。
    思うにこの作者、己の力量も省みず、とびっきりの巧者にしか許されない禁じ手をやりすぎなのだ。まずは基本を完璧に習得してからにしろと言いたい。

    2019/12/30読了

  • 後半失速からの…

  • 2人の男が互いにシリアルキラーの「55」番目の被害者になりかけ、お互いを犯人だと主張していて、どちらが犯人かを捜査していく・・という話。このあらすじを読んで、色んな糸口を辿って捜査・推理を進めていくかんじかなと思ったけど、なんだか推理のシーンというか、ミステリーっぽさはあまりなく、かといって警察物という組織だったかんじがなく(主人公と同僚の結びつきが感じられない)、それでいて主人公がパッとしない。そして本編と並行して過去の失踪事件の話が進められていくのだけど、この何が、というか誰が本編とつながりがあるのか初っ端から大体予想がついてしまう。
    主人公の嫌悪する幼なじみの警部補がヒールとしてずっと出てくるのだけど、この人がほんとに胸糞悪くてイライラしてくる。かといって主人公も好きになれるわけじゃない。警察署のもともとの同僚の描写もうすくて、好きになれるキャラが一人も出てこない。あまり今まで登場人物を重視してこなかったけど、登場人物の中でいい人が全然いない、というかここまでイライラさせる人物揃いだとストーリーさしおいてあんまり楽しめなくなるんだなというのを実感して、人物描写って大事だなと思いました。冒頭から、幼なじみの刑事が嫌なやつなんですよ!ほんとうんざりだわ(実際その通りだと後でわかるんだけど)って一方的な主人公の被害者妄想(?)を押し付けられ、読者おいてけぼりっていうか、なんかシリーズものの途中で前提情報を読者が知ってて当然って感じなんですよね。
    たしかにページターナーではあるんだけど、イヤミスではないのにどこにも救いがないし、設定自体はとても魅力的で期待値が高かっただけにがっかりです。

  • あらすじからイメージしたお話とはちょっと違ってたのだけれど、読みやすかったし後半は引き込まれた。ただ終わりが全くイメージできない…どうなったのこれ。こういう終わり好きだけど…もう少しどっちかなんとなくわかる感じだといいな。どっちでも取れてしまうから、じゃないほうだったのかもしれないと思うと沈む…

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