鑑識写真係リタとうるさい幽霊 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2024年6月19日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784151861512

作品紹介・あらすじ

警察所属の写真家リタは霊能力の持ち主だ。事故現場を撮影中、自分は殺されたと主張する被害者の霊に殺人犯への復讐を強いられ……

感想・レビュー・書評

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  • 表紙のイメージと内容紹介から、幽霊が見える鑑識写真係リタが、事件の被害者である幽霊とバディを組んで事件解決に奔走するコミカルなミステリーなのかと思ったら、ガッツリシリアスだし、死体描写はリアルすぎて斜め読みしてしまうほどだったし、先住民差別のような社会問題も絡ませてあって、思っていたものとは違っていた。

    主人公リタの鑑識写真係として仕事をしている最中に、被害者の幽霊たちに付きまとわれるパートと、先住民ナバホ族の血を汲むリタの半生のパートが交互に描かれる構成。
    ナバホ族の人々にとって、死は近づけてはいけないもの。それが故にリタの幽霊が見え会話が出来る能力というのは、ナバホ族の祖母や居留地の人々にとっては気味の悪いものに映ってしまう。
    なのにリタの半生は様々な死との遭遇であり、幽霊たちとの遭遇であった。そんな中で唯一、祖母、母、リタから受け継がれたのがカメラであり写真だった。

    ミステリー要素、つまり事件の犯人としては幽霊たちの一人が指摘したこともあって早い段階で分かってしまうのだが、この幽霊たちが自分が殺されたその怒りと憎しみをリタにぶつけてしまうので、リタの体調も精神も追い詰められ、不可思議なリタの言動も幽霊のせいですとも言えず、休職を余儀なくされてしまう。
    そんな中で、幽霊たちはタイトル通りうるさくつきまとわれ、刑事ではないリタがどう犯人を追い詰めるのかというのが見どころだろうか。

    個人的には、祖母とリタとの絆が良かった。
    また気休め程度にしか感じていなかった、居留地に棲む呪い師ミスター・ビッツィリーが本当はすごい人だと分かったし、大家のミセス・サンティヤネスが小うるさい人ではなくて、優しい人だと分かって良かった。

    全体的には色々盛り込みすぎて、肝心の事件の方が大事件のはずなのにサクッと終わってしまった印象。
    リタの側にも事件の側にも民族的差別が根底にあるというのは、結局アメリカは現代も変わっていないということだろうか。

    訳者あとがきによると、シリーズらしく三部作が予定されているとのこと。ただ続きは読まなくても良いかな。

  • 『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』
    著者 ラモーナ・エマーソン
    訳者 中谷 友紀子

    ようやく読み終えました〜
    終盤にスリル感が押し寄せてきて、疲れました。(面白かったです)笑
    読み応えあります。ただし、生々しいくらいの凄惨な礫死体や事件、事故現場の死者の姿が克明に綴られていますので苦手な方はご注意ください。キツイです。冷静に受け止められるのは、おそらくその描写が“創りもの“ではないからなのかと。著者の経歴に市警や民間会社でカメラマンとして16年間犯罪現場を記録したとあります。

    タイトルと表紙のイラストから、ユーモアな作品なのかな?と勘違い、でも、あながちハズレではないんです。構成も上手いです。幽霊が見えてしまうナバホ族出身のリタ。職業が鑑識写真係と、大丈夫なのかしら?と思ってしまいますよね。第一章から事件は始まっています。

    『訳者のあとがき』を交えながらストーリーをご紹介します。ある日、高速道路の跨道橋から落下した女性の礫死体の幽霊アーマ。アーマの死の真相を探るその物語の合間に、リタの生い立ちの章がはさまれていく。その交互に重なっていく物語が、大きな事件に巻き込まれていくリタの苦悩と疲労に寄り添うように描き上げていきます。
    “緻密でダークな警察小説が展開されるかと思いきや、現れる幽霊たちは恐ろしくも賑やかで、物語はむしろ軽妙に進行していく。謎解きとおかしみと恐怖とスリルが絶妙にブレンドされ、総じてホラー・コメディ・ミステリとでも呼べそうな趣がある。“
    まさに、そんな感じです。笑

    幽霊が見えてしまうなんて、ホント、大変ですね、汗 序盤は淡々と、終盤はスリルやホラー地味た幽霊たち、そして事件の手に汗握る展開に、心臓が疲れました、、、。(事件はネタバレ厳禁で。)
     最終的にリタは自らをナバホ族の守りや付き纏ってきた幽霊たちに守られて穏やかなエンディング?と思いきや、、、続編がありそうな終わり方ですね〜笑 (著者もナバホ族出身とあります。温かみを感じるのはそういった背景にあるのかな〜と。)

    あとがきによると、リタ・トダチーニ・シリーズは三部作が予定されているそうです。
    現場の描写に疲れますが汗、一冊を読み終えるとその読み応えから、次作も気になります。
    リタとおばあちゃん、好きですね〜

    (少し補足しておきますね。)
    自分の死の真相を突き止めて欲しいとリタに付き纏うアーマ。彼女は自分の死因が自殺となると、幼い娘に何も遺してやれないからと、母の愛情が執着させているのですね。執念です。その辺りも切ない事情があります。ただただ、うるさく怖い幽霊という訳ではありませんね。涙

  • キングのペットセメタリーを彷彿させた。今までにないジャンルに興味を持ったが、オカルトっぽくて霊がメインなのか何なのかよくわからない。邦題も、工夫が見当たらない。因みに原題はShutter。カメラ好きで鑑識係になった主人公に相応しく、章毎にカメラの機種名になってる。ミステリー性は低い。

  • Review: ‘Shutter’ by Ramona Emerson – The Tri-City Record
    https://www.tricityrecordnm.com/articles/review-shutter-by-ramona-emerson/

    Kate’s Review: “Shutter” – The Library Ladies
    https://thelibraryladies.com/2022/08/09/kates-review-shutter/

    Ramona Emerson - Soho Press
    https://sohopress.com/authors/ramona-emerson/

    New Books | Ramona Emerson
    https://www.ramonaemersonbooks.com/

    鑑識写真係リタとうるさい幽霊 | 種類,ハヤカワ・ミステリ文庫 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015833/
    ーーーー
    邦題だと怖さを感じないが、、、どうなんだろう?

  • 最初は、鑑識課の写真係のリタの非常に細かな現場の撮影とその解説から始まる。
    その後は、死を恐れるナバホ族の出身のリタ。
    「幽霊が見え、話すことができる」という彼女の能力はナバホ族にとっては受け入れることはできない。その辛い経験と事件の展望が、カメラの種類で各年代、事件の順にフォーカスされる展開が気に入りました。
    リタが撮影を担当した事件展望は主に終盤に進んでいく。押しの強い幽霊に脅されながら、徐々に真相に迫っていく。
    彼女の能力を受け入れてくれる友人や隣人。能力は受け入れなくても支えてくれる祖母やその祖母の友人、押しの強い幽霊に助けてもらいながら、解決していく姿がよく、面白かった。
    リタの考え方が最後に少し変わったため、次作も読んでみたいと感じました。

  • 幼い頃から幽霊が見えてしまうリタ。
    警察の鑑識写真係になったリタに、自分の死の真相を明らかにしてほしい幽霊たちがまとわりつく…というあらすじを読んで、コミカルなものを勝手に想像していたのだけど、幽霊たちとのやりとりがしんどいこと…。
    そりゃそうだ…心残りのある幽霊に小粋なジョーク飛ばす余裕なんかあるはずないわ…。
    リタはネイティブアメリカンのナバホ族で、居留地で育っていて、彼女自身も差別を受けてきている。
    リタを育てた祖母の人生は更に壮絶。
    その部分の作品への描き込み方が素晴らしい。
    対照的に、中心となる事件、特に終盤はちょっと丁寧さに欠けるように思った。
    リタと祖母と二人を案じる周囲の人々は好きなので、続きも訳が出てほしいな!

  • コメディ要素がふんだんに入っているミステリかと思って読み始めたので、読み進めるうちにちょっと肩透かしをくらったかんじです。【2024年9月7日読了】

  • ミステリードラマなどで鑑識のシーンをよく見るが、その中でも写真係を特に意識したことがなかったなあと読みながらしみじみと思った。何時間もかけて遺体や遺留品、事故の痕跡を何百枚、何千枚も撮り続ける仕事は大変なんてものじゃない。まして主人公のリタは更に幽霊が見えてしまう体質なので、霊となった彼らに取り憑かれ振り回されて、時には命も脅かされそうになる。理屈が通らない霊たちはうるさくて怖くて恐ろしいが、リタは逃げ出すことも出来ず、犯人探しをいやいや手伝うはめになる。
    そして同時にナバホ族であるリタの生い立ち、居留地での暮らしが豊かに語られていく。霊が見えてしまうリタと、死者を縁起の悪いものとして捉えるナバホ族の考えが相反することから、家族や周囲は折り合いを見つけるのに苦労はするが、祖母をはじめ家族、友人たちが疲労困憊のリタに最後まで寄り添ってくれる。
    ナバホ族の風習や、カメラの魅力にハマるところは読んでいて楽しく、一方で誰が味方か分からない事件の展開にはハラハラした。リタを主人公とした小説は、3部作の予定との事。ぜひ続きを読みたい!

  • タイトルと少しポップな表紙でもう少し明るいコメディ的な話かと思ったら。がっつりシリアスだった。怖い。
    まぁ殺された幽霊が取り付くんだからそりゃそんな明るい話にはならないのか。

    鑑識撮影の彼女がなんともブラックもブラックな環境で働かされているのもつらいけど、パワハラも酷くてさらにつらい。育っている環境もなかなかにシビア。そりゃあおばあちゃんも心配するよなぁ…。貧乏がさらに物事を悪化させていくというのはどこの国も一緒なのかもしれない。負のスパイラルってどうやったら抜け出せるんだろう。まぁそんな話ではないのですが、そんなことも考えさせられました。

  • ぐらんぱと坊ちゃん孫って独特の関係性あると思うけど、同じようにぐらんまと嬢ちゃん孫も独特の結びつきがあって、それがぐわんぐわん伝わってきて、ばーちゃんに会いたくなる!

    エンディングちょっと力尽きた感あるがしかし、一作目とはびっくり!すごか!

    小説とはいえ随所にナバホ族の独自の信仰、死生観とかが描写されててめっちゃ興味深い!
    やっぱ先住民て例外なくかっけー!

    著者自身が16年間も実際に事故現場とかの映像撮影に携わってたってだけあって、表現がリアルで、遺体とか現場の風景がありありと浮かんでくる!ぐっ!

    三部作予定ー!次作はよ!

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