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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784152002587
感想・レビュー・書評
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生誕100年を迎へたボリス・ヴィアン(1920-1959)の戯曲集であります。ヴィアンの戯曲としては、かつて『屠殺屋入門』といふ痛快な作品を登場させた事があります。いやあ、あれは面白かつた。ヴィアンの生前に上演が実現した唯一のものでした。
従つてこの『帝国の建設者』に収録された作品群は、全て死後の上演といふ事になります。
表題作の「帝国の建設者」は、三幕もの。1959年12月22日、パリのミカエリ座にて初演とあります。死後半年経つて上演された訳ですな。登場人物は「父親」「母親」そして娘の「ゼノビ」、女中の「クリュシュ」、それから「隣りの男」。更に、何だか良く分からないけれど、「シュミュルツ」といふのがゐます。
この一家は、数階建ての家のワンフロアに住んでゐる設定ですが、下から聞えるある種の「音」に怯え、逃げるやうに上の階へ移動するのであります。そして移動する度に、段段狭い家になり、人物が一人づつ消えてゆくのです。階段を下へ降りてはいけないらしい。隣の男の息子(グザヴィエ)は、ゼノビの恋人だつたやうですが、階下へ降りたがつた為に命を落したらしい。そして女中のクリュシュが自ら外へ出て行きます。
次の階へ上ると、更に狭い家になり、娘のゼノビが消えます。そしてまた次の階。母親も階段を登れず(登らず?)、姿が見えなくなります。遂に最上階、部屋も一つだけ、父親一人が残されるのであります。
ところで、「シュミュルツ」といふのは誰か。劇中ではこの名は呼ばれず、ただ家族にとつては忌まはしい存在のやうです。ト書きによると、全身包帯だらけで、ボロ布を纏ひ、片腕を斜めに吊り、もう一方の手には杖。跛で血が滲んでゐて、見るだに悍ましい人物ださうです。父親はじめ家族からは何かと殴られてゐます。わたくしが勘定したところ、第一幕だけで18回(内訳:父親10回、母親と隣の男各3回、クリュシュ2回)も暴力を受けてゐます。平手打ちだつたり、殴られたり、水をかけられたり......
利光哲夫の解説によると、シュミュルツといふ言葉を拵へたのはヴィアンの二度目の妻で、「ドイツ語のシュメルツから来ており、散歩中に人が足で蹴とばす小石のように、一切の不用なもの、邪魔者を表わしているらしい」といふことです。
まあとにかく面白い作品であります。舞台で見てみたいけれど、まあ難しいでせうね。
ほかに一幕ものの「メドゥーサの首」と「最高の職業」。前者では、17年の結婚生活のうち、最初の一年を除く16年間妻に浮気をされ続けた男と、妻の浮気相手の三角関係の話。浮気相手は半年ごとに整形手術で顔を変へ、名前も変へて別人になつてゐたといふ、ホラー的な展開。
後者の「最高の職業」は、報道記者が高名な神父に誇らし気にインタヴューするのですが、得意になる程滑稽な愚かしさを披露する、皮肉めいた作品。
更に「スケッチ」として二編の掌編が収録されてゐます。スケッチとは、日本では「コント」に近いものださうです。「車」といふ作品の、近未来的な交通渋滞を茶化した作品は笑つてしまつた。ヴィアンは、かういふ「スケッチ」を無数に書いてゐたさうで、他のものも読みたくなります。たつた二編だけおまけで付けるのではなく、スケッチだけで一冊出して欲しい喃。
いやいや、ヴィアンの才能の引き出しの多さを実感する一冊であります。デハまた。ご無礼します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
斜め螺旋けいのものへの接近。
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