悪童日記 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
3.99
  • (292)
  • (181)
  • (273)
  • (7)
  • (5)
本棚登録 : 1287
感想 : 241
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152077042

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第二次世界大戦時下のナチスドイツ影響下のハンガリー田舎町が舞台。
    タイトル通り、10歳前後の双子の悪童━もうホントに悪童!盗み恐喝、殺人まで!なんでもアリの2人━が自分たちの正義・ルールの中でしたたかに生き抜くお話。悪いのは戦争。この子たちは何も悪くないんだと思う。

    悪童たちが書く日記形式であり、また全ての感情表現を削って、事実のみを淡々と書いてるので、東欧の難しい世情をこちらも滅入ることなく読み進められる。

    おばあちゃんもお母さんもお父さんも死んでしまった(殺してしまった)。双子の2人はこれからどう生き抜いていくのだろう。続編を読むのが待ち遠しい。

  • 第二次世界大戦のハンガリーが舞台(と思われる).疎開のため田舎町に住む意地悪で不潔な祖母に預けられた双子.知恵を生かしてしたたかに成長していく.淡々とした語り口がよい.

  • “「ぼくたちには、懺悔することなんて何もありません」
    「お前たち、それは間違っているよ。あのような犯罪はとても重くて、この先、引きずっていけるものではない。懺悔すれば、お前たちの胸の内も軽くなるというものだ。神様は、心から罪を悔いる者なら誰でも、お赦しくださるのだから」
    ぼくらは言う。
    「ぼくたち、何ひとつ悔いていません。悔いることなんか、何もないんです」”[P.174]

  • 20代の時に一度読み、20年後に再読。

    昔読んだときは、兄弟の逞しさが眩しく、震えが来る程衝撃的だった。

    今読むと、兄弟の現実への適応力が現実離れしている様に感じ、途中で醒めてしまった。

    読む年齢によって感想が変わってくるのでは。

  • 「双子の子供」の冷徹な考えや刺激的な景色の断片をまとめて、戦時の異常さを描く。

    子供二人の同人格ぶりや自覚の持ち方や知識の飲み込み方が、状況を飲み込んでいく得体の知れない怪物のようで、あまりに現実離れしすぎてないかと思いました。
    物語から考えて、戦時を見つめる目の役割が強すぎないかと。

    衝撃的であり面白いというのはわかりますが、周りの人々の欲のむき出た場面ばかり描写されるのも自分の趣味とは違いました。

  • あとがきや帯に書かれているように、ブラックユーモア(実は「黒い」というより「白い」ユーモア)、凍ったユーモアに貫かれた物語。
    一人称複数形といういびつな視点がさらに世界観を深遠にする。
    単なる戦争文学ではない。

  • 戦争の激化に伴い、双子は祖母の家に預けられる。
    ケチで不潔、粗暴な彼女の元で
    双子は悲観にくれることなく
    自身の鍛錬にいそしみ、労働を覚え、生き延びていく。

    この作品内に個々の感情は吐露されることなく、
    淡々と、発せられた言葉、行動がつづられている。
    双子は鍛錬を通して、絶対的な精神の強さ、冷酷さを得る。

    歪んだ性の描写、不潔な暮らし、戦争がもたらした破壊、死、
    歴史的事実に基づく社会の揺らぎ
    あらゆるインパクトのある題材を用いながら
    冷徹な文章を貫くことで、奇妙で薄暗い人々の陰、残虐性を感じた。

    双子の名前すら明かされることなく、どちらの発言、行動なのかも
    明言されることはない。
    個々を没することで一心同体となり、超越したものとなる。

    神を信じない、というスタンスの作品を近頃読むことが多い。
    どの作品でも、自分自身の鍛錬がより必要になり、
    ストイックに生きていくことを選ぶ。
    神に頼ることなく自分に課していく。
    死に物狂いに精錬されたものは強い。

  • ハンガリーの話でした。感情が動かされない話ですが、読み止まらないものがあります。

  • なんというか…
    すごい本だとは思います。
    が、多分に実験的で、それに気づくまで時間がかかったせいもあり、文章がどうにも…
    でも帯もいけないと思うの。
    「読書界に感動の渦」だとか「非常の現実を鮮烈に描く」だとか。
    そりゃね、あんな書き方だとは思わんだろうよ。


    特に双子が一個体のように書かれているっていうのが大きかった。
    双子だって、本来は一人ひとり独立した存在のはずなのに…っていうのが描かれるのは次の巻からのようなので続きをさっさと探してみたいと思います。

    読む人によって、だいぶ印象が違うんじゃないかと思った。
    ここに書かれてるのは事実だけだから、それに付随する感情って言うのは、その事実を目の前にした時の自分自身の感情っていうのがベースになるわけだから。

  • 怖くて不気味な世界のなかに主人公の子供たちの優しさを文脈から必死に拾って読んでいた。双子のタフさ、したたかさ、子供にはどうすることもできない(戦争、差別、etc)打開できない残酷な状況の中で驚くべき方法で生きる術を実践していく双子。衝撃なシーンもあってなんともいえない無常感。

著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

アゴタ・クリストフの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アゴタ クリスト...
三島由紀夫
ポール・オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×