- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152077042
作品紹介・あらすじ
双子の天才少年がみた非情の現実、戦火のなかで彼らはしたたかに生き抜いた。女性亡命作家、衝撃のデビュー作。東欧からの新しい風。
感想・レビュー・書評
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第二次世界大戦末期、ヨーロッパ、国境沿いの田舎町に疎開した双子の少年「ぼくら」の、日記のように書きとめた作文、計六十余からなる物語。
簡素な文章だからこそ、極限状態の中での残酷さがよりあらわになる。なまなましい事柄もその非情さがあからさまに描かれている。衝撃的だった。
一心同体のぼくらは、壮絶な環境を生き延びる。ラストの展開には驚いた。
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第二次世界大戦時下のナチスドイツ影響下のハンガリー田舎町が舞台。
タイトル通り、10歳前後の双子の悪童━もうホントに悪童!盗み恐喝、殺人まで!なんでもアリの2人━が自分たちの正義・ルールの中でしたたかに生き抜くお話。悪いのは戦争。この子たちは何も悪くないんだと思う。
悪童たちが書く日記形式であり、また全ての感情表現を削って、事実のみを淡々と書いてるので、東欧の難しい世情をこちらも滅入ることなく読み進められる。
おばあちゃんもお母さんもお父さんも死んでしまった(殺してしまった)。双子の2人はこれからどう生き抜いていくのだろう。続編を読むのが待ち遠しい。
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本のリサイクルでタイトルに惹かれて貰ったもの。
日記という語り口調で始まる、美しい双子が祖母の家に疎開先として預けられる話。
優しい祖母といたずらっ子の双子の話かと思っていたら...やられた!
時代や戦争が彼らをそうさせたのか...?魔女のような祖母との共同生活に、知恵と美貌と暴力とあらゆる力をつけて生き抜いて行く双子。
ラストもインパクトありで、お気に入りの1冊。
三部作と知って探し中。映画も観たが、美少年の双子で原作に近いイメージでした。 -
寝る前に読了して、衝撃でしばらく寝付けなくなった小説。その後読めもしない原書まで買ったほど。
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すごい
面白いんだけど、悲しすぎる
今年の最後に物凄い本を読んでしまった
地獄ではない、煉獄なような焦土なのか浄土なのか
双子の少年は悪魔でもなければ、恐らく天使でも無いけれど 美しい天秤のように正確で
あまりにも美しすぎておぞましいのか -
初めましての作家さん。
第二次大戦下、魔女と呼ばれる祖母の元に疎開した双子。
子供が子供の理解力と自分たちが作り上げた基準の中で
祖母の意地悪に耐え、ひもじさに耐え、学び、知恵を身に着け
理不尽を受け入れ、愛情をそぎ落とし、冷静に観察し
自らを鍛え上げ麻痺させ非情に生き抜く様を
余計な感情をそぎ落として淡々と綴られる。
これ3部作とのことですが、絶対に続編を読みたくなるよね?
絶対に全部読んでやる!! -
「髪に受けた愛撫だけは、捨てることができない。」
二人の子供は何もかも捨ててしまう。はじめは殴られた痛みを感じる体の弱さを。そして優しい言葉を感じる心の弱さを。
訓練された軍人のように何も感じず、冷酷に思考し、行動する。心を表現する言葉も「曖昧なもの」を切り捨て、事実だけを記録し、伝達する手段として使用する。
...戦時下で生きるために。
乞食の訓練で受けた施しを二人は捨ててしまうが、「何も与えるものがないから」といって髪を撫でてもらった「事実」と、それを捨てることはできないという「事実」を記録する。そのことをどう思ったかは記録しない。
どう思ったのだろうか。素直に嬉しかったのか、それとも「心を動かされた」ことを疎ましく感じたのか。何も感じなければ書き残す必要もない一文があることで、読み手の想像力がかきたてられる。
...「感情のない双子」から連想される作品として、Monsterのヨハンとアンナや、ブラックラグーンのヘンゼルとグレーテルがあげられていたが、自分はベルセルクのセルピコ(とファルネーゼ。双子ではないが)が浮かんだ。 -
はるか昔、若かりし頃に面白いよ!と友人に勧められて漸く読んだ。
うん。面白い。面白かったんだけど。
何ていうか、これは面白い本。じゃないね。
泣ける本。だね。
これは私が年を取ったから? -
これは、すごい。
感傷を排した文章で語られる物語の現実に圧倒される。とても客観的な文体なのに、あまりに苦しく重くてやりきれない。-
「とても客観的な文体なのに」
ご存知かとは思いますが、この作品は、「ふたりの証拠」「第三の嘘」とで三部作になりますので、全て読まれて、もっと...「とても客観的な文体なのに」
ご存知かとは思いますが、この作品は、「ふたりの証拠」「第三の嘘」とで三部作になりますので、全て読まれて、もっと驚かれるコトをお薦めします。2012/09/11
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贅肉をそぎ落としたような淡々とした文章で、壮絶なことを語り、ぞくりとさせてくれるような作品はもはや珍しいものではないと思うけど、これに比べたらそういうものの多くの底の浅さが見えてしまうほど、まさに「極限に乾いた筆致で読者の胸をえぐる文学」というジャンルでもあればその頂点に君臨してしまうのではないかと思われるアゴタ・クリストフ女史の、一文字たりとも無駄のない小説。「悪童日記」だけでも十分すごいのに、三部作をすべて読み終えてからまたこの一作目を読み返してみると、埋もれていた真実の前に、途方もない孤独を感じさせられてさらに驚愕。
これが十分な教育を受けた事もないままに異国に亡命してきた作者が、母国語ではない言葉で生み出したものだとは…。