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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784152077950
感想・レビュー・書評
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表紙のスーツ姿の女性が、まず実母と重なって…手にとった一冊。こんな色が好きだった母親を想って。
「歪な関係」を抱えた人、特に親と…少なくはないと思うけれど、そんな人には共感する部分が多い作品だと思う。私的な感情を感情的に語りすぎず、適度にクールな点がより「母親」像を浮かび上がらせていると思う。 同じように、母親の異常に気づき、部屋を片付け、施設を探し、入院、他界まで…一年という時間の中で過ぎていった嵐のような昨年を振り返った。
作中の母親と実母とが重なる部分が多く、特に認知症を発症してからの様子が手に取るようにわかるため、切なくて思わず涙。
個としての輪郭が無くなっても、やはり親と子としての情愛は残るもの。時間が経てば経つほどに、確執の記憶はより澄んだ思い出へと変化するもの。
人の愚かしいところでもあり、救いでもあると改めて感じた。
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死んだ母のりんかくをなぞるただそれだけなのに叙情が浮かび上がってくるのはなぜだろう
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母親が亡くなった後、記憶を頼りに書かれた母親の姿、回顧。ノルマンディの小さな村に生まれ育ち、貧しい中で常に上を目指して精力的に生きて来た母親と、大学に行き、いわゆる”社会的階級”の壁を乗り越えた娘。
認知症になって施設に入った母親を、複雑な思いで見守る娘の気持ちが率直に書かれている。ボーヴォワールの「老い」と同時並行で読んでいるからか、なおさら「老いる」ことの”自然”と、哀しさを感じた。 -
母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って怖くなった。
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エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
フランスは(?)こんなにも階級がかっつりしているんだなあと思いつつ、このような小説は果たして今の世代に当てはまるのだろうか、将来もこういった”階級”の小説、階級を超えようとする営みはあるのだろうか、なんてふと思った。この本で描かれているような、工場勤めの労働者階級と、大学を出て知識人と、という形はもう少し違う形で、存在するのだろうなあ…そういうものを可視化する小説(狭間にいるからこそ書けるもの)を、どこかで目にするんだろうか。もう少し透明な色な気もするんだけど、そうでもないのだろうか。
というのは話の本筋の一つだけれど、『ある女』を読むと、父親の方の『場所』も読んでみたいと思う。
「この本は伝記ではないし、もちろん小説でもない。おそらく文学と社会学と歴史の間に位置する何かだと思う」
これは彼女の母の物語であり、アニー・エルノーの物語であり、そして娘の物語だった。私も自分の母の物語をいつか紡ぐことになるのだろうか。
そういったことをつらつら読みながら、静謐なフランスの雰囲気に囲まれる本だった。良かった。 -
図書館でオススメされていたので、なんとなく読んでみたら、おもしろかった。3年後にはどんな話だったか忘れてるけど、おもしろかったなあ、と覚えている、そういう種類の本だった。
作者自身の母の死を通して、ひとりの女性の人生を語っている。階級、母と娘それぞれの気持ち、死までの生活が、つらつらと続いていて、すきだった。 -
「シモーヌ・ド・ボーヴォワールに一週間先だって死んだ」著者自身の母親の生涯を描いたもの。貧しい家庭に育ち、勤勉に働いて、一人娘を立派に教育し、出身階層よりも上昇させたこの母親がたくましく仕事(食料品店とカフェの経営)をこなし、老いては娘夫婦と同居して中流階級にも適応していく。そんな才気あふれる母親が次第に老い、重度の痴呆症状になる様子は切ない。
80年代当時のフランスの介護事情や、葬儀までの段取りがリアルに描かれていることも興味深かった。
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