FBI心理分析官: 異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152078469

作品紹介・あらすじ

1978年1月23日月曜の夜、カリフォルニア州サクラメント郊外で若い女性の惨殺死体が発見された。全身をめった切りにされ、内臓を取りだされ、口に排泄物を詰めこまれた遺体のそばには、犯人が被害者の血液を入れて飲んだと思われるヨーグルトの空き容器がころがっていた。あまりに奇怪な事件に捜査は難航し、やがて第二の犠牲者が…。当時、FBI行動科学課の特別捜査官だった著者レスラーは、心理学的プロファイリング(人物素描)と呼ばれる捜査技術を用いて犯人逮捕に乗りだした。これは、連続殺人犯の動機や行動パターンを精神科医の協力のもとに推理し、犯人像を割り出す方法である。プロファイリング技術を完成させるために、レスラーは長年にわたって各地の刑務所を訪れ、百人以上の凶悪犯を面接調査した。被害者の体の一部を噛み切る殺人鬼、バラバラにした死体で性行為にふける倒錯者-。彼らを駆り立てるのは何か?異常殺人者たちの心理を追い、著者自らが捜査にたずさわったアメリカの猟奇殺人事件の細部と、その心理分析的犯人割り出しのプロセスを克明に再現する衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ※※残虐な描写があるため、苦手な人は注意※※


    【感想】
    本書は、アメリカで起きた犯罪のうち、特に犯人に異常行動が見られた「フェティシズム的犯罪(主に性犯罪絡み)」の捜査方法を取り上げた一冊だ。筆者のロバート・K・レスラーは元FBI捜査官で、「シリアルキラー」という言葉の生みの親である。レスラーは今まで100人を超す凶悪犯と面会しており、そこで得た情報をFBIや司法省の捜査情報として分析し犯人特定のために活用する、という枠組みを作り上げた張本人だ。

    冒頭、凶悪犯罪の一例として取り上げられるのは、1978年にテリー・ウォリンが殺された事件だ。
    被害者のテリー・ウォリンは胸からへそまでナイフで切り裂かれ、その傷口から腸の一部がはみだしていた。いくつかの臓器は体腔から取り出され、切り刻まれていた。左の乳房に刺し傷があり、刺したあと傷口の中でナイフの切っ先を動かしたものと思われた。被害者の口には動物の排泄物が詰めこまれていた。さらに、犯人が被害者の血液をヨーグルトの空き容器に入れ、それを飲んだ形跡があった。

    何ともおぞましい、明らかな異常行動である。
    このように常軌を逸した犯罪から犯人像を特定できるのか、と思うかもしれないが、プロファイリングは可能だ。

    当時、行動科学課では、殺人犯は二つのタイプに分類できるという考えが生まれていた。ある程度筋道の通った行動を示すタイプと、通常の基準から見てまるで論理的でない行動をとるタイプだ。つまり「秩序型」と「無秩序型」の犯罪者だ。
    秩序型の犯人の最大の特徴は、犯行を計画することである。秩序型の犯人は、被害者をコントロールするために策略を用いたり、だましたりすることが多い。この型の犯人は口がうまく、犯行を犯すのに都合のよい状況にうまく被害者を誘いこめるだけの、高い知能を持っている。
    一方、無秩序型殺人犯の行動には、論理が欠如している。犯人がつかまって自分なりに犯行を説明しないかぎり、彼がなぜその被害者を選び、その犯行を犯したのかわからないことが多い。

    今回の事件の犯人は、被害者のあとをつけ、秩序だったやりかたで犯行を行ない、自分の身元に関する手がかりを残さないように気をつける、というタイプではない。現場から推測する人物像は「無秩序型」で、重い精神病を患っていることはあきらかだった。
    精神病ということは、犯人は一夜にしてこれほどひどい状態になったわけではない。このような動機無き殺人を犯すまでに病気が進行するには、8年から10年はかかる。妄想型分裂病は思春期に発病することが多く、平均的な発病年齢の15歳に10年を加えると、犯人は20代半ばということになる。
    また、この事件はあきらかにセックス殺人であり、セックス殺人の犯人の大半は、20代と30代の白人男子である。なぜ白人かと言えば、被害者の女性が白人だったからだ。通常、セックス殺人は自分と似た人種を襲う。また、白人の居住区で起こっていることからも犯人が白人である可能性が高い。
    加えて、精神病の患者は痩せ型が多く、自分の外見にも無関心だから、独身に違いない。精神病では大学を続けることもできないが、完全におかしくなる前に、ハイスクールは卒業しているかもしれない。もし職についているとしたら、公園で紙くずを拾うといった、ごく簡単なものだろう。廃疾給付金によって生活している世捨て人のような人間というのが、犯人像に一番近い。
    ここから、
    ・20代半ば~30代の白人男性
    ・痩せ型
    ・独身
    ・学歴は高卒か大学中退
    ・給付金暮らしをして、金に困窮している
    ・精神障害者収容施設に入っていた
    ・今現在も定職についていない
    というプロファイルが得られるのだ。

    ―――――――――――――――――――――――――――――
    このような形で、凶悪犯罪に対する捜査の手法を網羅的に紹介していく。
    やはりその道のプロが書いていることもあり、分析手法は非常に精緻で見事だ。特に、6章の秩序型犯罪者と無秩序型犯罪者の思考や犯行の違いは、凶悪殺人犯の間でも「能力差」がこんなに色濃く出るんだな、と感心してしまった。

    ただし、注意すべき点がある。それは本書が書かれた時代だ。
    本書は1994年、今から約30年前に書かれた本であり、情報が古い。当時としてはこの分析手法が最先端だったのだと思うが、近年ではFBIプロファイリングの精度に疑問が持たれているようだ。本書でも紹介されている秩序型犯罪と無秩序型犯罪者の中間ともいえる「混合型」の数が多すぎて、類型に当てはまらなくなっている。また、プロファイリングの目的である犯人の推定――犯行現場付近の状況や被害者の特徴から、犯人の年齢、職業等を割り当てる――が大変難しく、行ったとしても事実との相関関係が薄いことが判明してきたらしい。

    刑事ドラマのように「犯人の人物像をピタリと当てる」というよりも、様々な犯罪者の殺害方法やその後の足取りのデータを集めて、統計学の観点から捜査を効率化する、というのが現状のプロファイリングの活用方法である。加えて、30年前では精度の低かったDNA鑑定や指紋鑑定といった「科学的捜査」を用い、聞き込み捜査×統計学×科学捜査、というように重層的に犯人の推定を行っている。本書は捜査官の知識やカンに頼る記述が多いが、今ではそうした属人的なスキルに代わってデータ分析がメイン、ということを抑えておこう。
    ―――――――――――――――――――――――――――――

    【メモ】
    犯罪者の家庭は外からは正常に見えても、実際には問題を抱えていることが多い。面接した殺人犯の半数は家族に精神病患者がおり、別の半数は両親に犯罪歴があった。70パーセント近くの家族にはアルコール、あるいは麻薬の常用者がいた。そして全員一人残らず子供のときにはなはだしい精神的虐待を受けていた。彼らは成長すると、精神科医の言う「性機能障害者」になった。つまり、他人と合意にもとづく成熟した関係を持つことができないのだ。
    研究によると、誕生から6、7歳ごろまでの子供の生活で最も重要な大人は、母親だ。子供はこの時期に、愛情とは何かを学ぶ。私たちの調査対象者はみな、母親から愛されず、冷たく扱われた無視されて育っていた。ふつうの人間は相手に対する愛情や依存の気持ちを、身体的な接触や優しさによって示すが、殺人犯たちはそれを経験したことがなかった。彼らはお金よりはるかに重要なもの、すなわち愛情を与えられずに大きくなった。

    調査対象者の40パーセントが、子供のときに殴られたり虐待されたと報告している。70パーセント以上が、子供時代に性的に異常な出来事を目撃したか、自分がそれを経験したと語っている。これはふつうの人を対象にした調査で得られる数字の何倍にものぼる。

    ●凶悪犯罪者との面会の際のテクニック
    ・面接の相手に親近感をもってもらうため、必ず手錠を外してもらう
    ・しゃべったことは刑務所側には伝えないと約束する
    ・犯罪者と話すとき、彼らの身の回りの知識を十分に仕入れ、話に興味を持っていると信じてもらう
    ・相手の子供時代やこれまでの人生について聞きたいと話し、徐々に心を開かせていく

  • #3304ー23ー127

  • 凄惨な事件が起こるたびに、一介の市民である私達は、何でこんなことに、、と思い、マスコミは容疑者の親族の周りを嗅ぎ回り、社会や警察に責任者探しを行います。

    著者は凄惨な事件の犯人のインタビュー&現場チェックを重ねてこれらに回答を出しました。
    この本はそんな凄惨な事件を起こす犯人が

    どういう環境要因で
    どういう心理的発達を遂げ
    どういう兆候があるか

    を具体的に記載してあります。

  • 犯罪者には、秩序型と無秩序型があり、秩序型犯罪者は口がうまく人を騙すのが得意、一見魅力があり、人の心理を見抜くのがうまい。

    連続殺人者はいかにもって雰囲気でいてほしい。こんな型があったとは、、、。

  • FBI捜査官は警察の捜査に難癖つけて、イの一番に難事件を解決したがる名探偵殿ってイメージだった 基本デスクワークなんだな

  • 犯罪プロファイリングの手法を広めたFBIの捜査官自らが書いた作品なのでリアル度,詳しさ,分析が素晴らしい。
    色々な映画や小説の元になったような有名なシリアルキラーが数多く登場する。
    実際の死体の写真や生々しい表現などもあり、正直時々気持ち悪くなる場面もある。しかし、そこも含めてリアルで良い。規制せずにリアルに表現することにより伝わることもあると思い知った。

    シリアルキラーはなぜシリアルキラーになるのか?彼らは何を考えているのか?シリアルキラーはどういった人物なのか?という疑問がある方にはおすすめできる作品。

    学者じゃないから、心理学や脳科学などの専門的・複雑な話は出てこず、あくまで経験則とデータ,事実に基づいて分析している姿勢も好き。
    これを導入として、犯罪心理学や脳科学にも興味を持った。

  • ふむ

  • 1890円購入1995-00-00

  • 今観てる海外ドラマで、代表的な連続殺人犯の名前が当たり前のように出てくるので、予備知識を得るため。
    いつものごとく薄目で読む。目をつぶるわけにもいかんのだ。

  • 著者の言った、連続殺人犯を生かし、研究調査する事によって、新たな被害者が増えるのを防ぐ事は、至極真当な事だとは分かるんですが、残された被害者の遺族を考えると、何となくモヤモヤしたものを感じてしまうな。

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