青い眼がほしい (トニ・モリスン・コレクション)

  • 早川書房
3.67
  • (8)
  • (17)
  • (16)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 147
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152078551

作品紹介・あらすじ

黒人の少女クローディアが語る、ある友だちの悲劇-。マリゴールドの花が咲かなかった秋、クローディアの友だち、青い目にあこがれていたピコーラはみごもった。妊娠させたのはピコーラの父親。そこに至るまでの黒人社会の男たちと女たち、大人たちと子供たちの物語を、野性的な魅惑にみちた筆で描く。白人のさだめた価値観を問い直した、記念すべきデビュー作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 父親にレイプされて妊娠した黒人の少女。
    彼女の両親がこれまで生活してきた環境も劣悪で、いつも貧困だった。
    彼らが黒人ではなかったら、青い眼を持っていたら、もし容姿が醜くなければ、と考えながら読んだ。

    この小説は必ずしも「白人に虐げられる黒人」を描いているわけではない。
    黒人にもいい人とわるい人がいる。白人だって同じ。
    ただ、”白い肌と青い眼を人形は可愛い”のに、縮れ毛と黒い肌を持って生まれた子どもは醜い人生を送ることになる”と決められてしまっていることが悲しいことであり、悲劇なんだと思う。

    貧乏な環境で育ってきた貧乏な親が子どもを産み、その子どもも貧乏で悲しい想いをする。どんな人種もそんな想いをするべきではない。

    そして、2020年現在も人種差別(人種間の差)は根強く存在していて、卑劣な暴力が命を奪っていく。

    昔、悲しい想いをする人がいた。
    現在も同じように悲しい想いをする人がいる。
    では未来はどうなる?

    負の遺産を次の世代に背負わせるべきじゃない。
    青い眼が無くても、悲しい想いをする必要はない。

  • 西加奈子さんがお好きな本として挙げていたので読んでみた。
    主人公の少女だけでなく、周りを取り巻く身勝手な大人たちのルーツまでが丁寧に描かれている。
    日本の片田舎で育った身としては、共感や気づきを得るには難しく遠い国の話としてしか理解できないけれど、何が美の概念を作るのか、また心身が崩壊するほど簡単に操作され得るのかは痛いほど伝わってくる。

  • 内容に対してよりも、装丁として何かもっと工夫の余地が

  • 青い眼がほしい (TONI MORRISON COLLECTION)

  • 西加奈子さんがトニ・モリスンをベタ褒めしていたので。

    題材が重い…というかどうしても嫌悪感を覚える。
    まあ一旦そこは横に置いておいて…

    白人に押し付けられた価値観の下
    屈辱と劣等感を味わって生きる黒人社会。
    その中で青い眼が欲しいと願う少女ピコーラ。
    皆が可愛いと言う金髪碧眼を破壊した少女クローディア。

    著者はあとがきで自分の美しさを受け入れないことに対して
    何かを言おうとしたと書いていた。
    きっとクローディアがトニ・モリスンなのであろう。
    社会の価値観に反撥し闘える女性。
    1970年当時この考え方は黒人女性の啓蒙を後押しするものだったと思う。
    それに対し押し付けられた価値観に甘んじている象徴のピコーラ。
    だからって彼女に嫌悪感覚えるような悲劇をもたらすのはあんまりだわ!って正直最初は思った…
    とはいえ同胞に眼を覚ますように強く訴えるのには
    インパクトある内容が必要だったのかも。
    つまりそこまで強く訴えなければ変えていけない世の中だったのかもしれないと
    感想をまとめている時に思い当った。

  • 青い眼がほしい。

    世の中がかわいい、とするもの。青い眼をした肌が白いベビードール。
    それを素直にこれが正解だと鵜呑みにせずに、自分には理解できないが世間が「かわいい」とするその秘密を探りたいと人形をバラバラにする主人公の姿は、とても人間的で実直だ。

    あの子がかわいいということが正しいとすれば、わたしは可愛くない。
    どんなに努力しても絶対的に到達することができない、違う次元に立っていることを世の中がさも当たり前の事実として突きつけてくるような感覚。地獄だと思う。自尊心を踏みにじられる想いに口の中が苦くなる。みんなちがって、みんないいはずなのに。

    彼女はなぜ、自分の持っている美しさがわからなかったのか。
    根本的に自分を変えたいと、何の疑いもなく願ったのか。

    黒人の少女が主人公の話で人種差別が多く描かれているが、お涙頂戴ではなくとにかく淡々と語られていることで、自分とは関係ない「ある黒人少女の可哀想な物語」ではなく、とても客観的に眺めることができた。余計な演出がないからこそ、じわじわと苦しさが残る。誰も極悪人ではなく普遍的であり、その状況に陥ったら自分がどの立場になり得ると思うと背筋が伸びる。

    外国の作品は、日本語への訳に違和感を持ってしまいどうも入り込めないことが多いが、この本は、何度も読み返してしまうほど美しい表現が沢山あった。
    丁寧に味わいながら読みたい本。

    ———————————————————————
     外に出ると、ピコーラは説明しがたい恥かしさが引いていくのを感じる。

     たんぽぽ。たんぽぽに向かって愛情が矢のように飛びだしていく。しかし、たんぽぽは彼女のほうを見もせず、愛に報いてくれようともしない。彼女は考える。「たんぽぽは醜い。雑草なんだから」。その新発見に気を取られて、ピコーラは歩道の割れ目につまずく。怒りが心の中でうごめき、目をさます。それが口をあけ、口の熱い仔犬のように、恥にまみれた傷口を丹念になめてくれる。
     怒りのほうがましだ。怒りには生きている感じがあるから。現実と存在感。価値の自覚。怒りは、すばらしい感情の湧出だ。彼女の思いは、ミスター・ヤコボウスキーの眼と、痰がからまった声に戻る。怒りは持続せず、仔犬はあまりにも簡単に満腹してしまう。のどの渇きはあまりにもあっけなく鎮まり、仔犬は眠る。すると、ふたたび恥かしさが湧き上がり、その泥で濁った小川が眼のなかに浸みこんでくる。涙が出ないようにするには、どうすればいいのだろう?

  • 少女の切な願いが痛かった

    2009/02/14

  • Searching for the BEAUTY<海外編>:2
    黒人女性作家が贈る「美と生」

  • It's worth reading!!
    と色んな人に伝えたくなった本。

    日本の生活ではなかなか馴染みのない、肌の色による人種差別のお話。


    だけど、実際の私たちの生活の中には、
    無意識的に、もしくは意識していないふりをしながら
    様々な差別の心や、集団に対する優劣をつけた態度が存在していると思う。

    その”ふとした”態度や観念が、
    人の生活や人生にここまで大きく影響してしまうんだなぁと思うと、やるせなくなります。

    でも、「そこに目を背けては、改善はないんだよなぁ」と自分に言い聞かせながら本を読み進めました。


    翻訳本は苦手ですが、日本語に違和感を感じず、でも英語的な表現・思想も感じられて、読みやすいと感じました。

    さすがは、ノーベル平和賞受賞者の著者です。
    本当に、一読の価値ありです。

  • 「青い眼」を欲しがっている黒人少女ピコーラ。
    彼女の友達のクローディア視点で物語は語られる。
    黄色い肌と黒い眼を持ち生まれて30年にも満たないワタシがこの物語に移入するには幼すぎる。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1931-2019。アメリカ合衆国の作家。小説に、『青い眼がほしい』(1970)、『スーラ』(1973)、『ビラヴド』(1987)、『ジャズ』(1992)、『ホーム』(2012)など。彼女の長編小説はすべて日本語に翻訳されている。絵本に、スレイド・モリスンとの共著『子どもたちに自由を!』(1999、長田弘訳、みすず書房、2002)『どっちの勝ち?』(2007、鵜殿えりか・小泉泉訳、みすず書房、2020)、『いじわるな人たちの本』(2002)、『ピーナッツバター・ファッジ』(2009)、『小さい雲と風の女神』(2010)、『カメかウサギか』(2010)、『ほんをひらいて』(2014、さくまゆみこ訳、ほるぷ出版、2014)など。写真絵本『忘れないで――学校統合への道』(2004)はモリスンの単著。ノーベル文学賞(1993)のほかに、全米批評家協会賞、ピュリツァー賞、大統領自由勲章など数々の賞を受賞。プリンストン大学などで教鞭をとった。

「2020年 『どっちの勝ち?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

トニ・モリスンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フォークナー
川上 未映子
J. オースティ...
村上 春樹
サン=テグジュペ...
村上 春樹
ポール・オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×