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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784152079756
感想・レビュー・書評
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詩的な文章、と単に言うだけでは言い足りない作者独特の言葉たち。
強い情念が込もっているような、何か恐ろしい感じもして、その実直である激しさに圧倒されてしまう。
〈書く〉ことへの並々ならぬ思いを感じた。
私の中では、すべてが現在―という言葉が印象的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
誰か、どうして私がこの人の作品がこんなに好きなのか解説して欲しい。この人の小説は、ヘタな解説したくないです。あっという間に読んでしまって、今2回目を読んでいる。ストーリーはあるけど、それ以外の部分が大事で、そこらへんを上手く味わいたい。今、ついつい感想をあれこれ書いてしまったが、文章に書くとあまりにも薄っぺらくなったので消しちゃった。アゴタ・クリストフの文章はあんなに淡々としているのに、どうしてあれだけ深く重く鮮やかなんだろうか。
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「昨日、心当たりのある風が吹いていた」で始まりながら、物語の中ではほとんど吹かない風。
絶望的で、息苦しい物語。著者は「悪童日記」三部作の続編とはしていませんが、「第三の嘘」に続くものと読むことは可能だと思います。 -
祖国から、家族から、時間から、夢から、書くことから引き裂かれる強烈な痛みを抉り出した物語。
1956年、作者は21歳の頃に、夫とともに生後わずか四カ月の娘を連れて、ハンガリーからオーストリアへと逃れ、スイスはヌーシャテル市、ヴァランジャン村へ移住した。そこは、フランス語圏の土地だった。作者は母語のハンガリー語から引き裂かれた。両親やきょうだい、友人たちにさよならを言うこともできなかった。読者を獲得するため、作者はフランス語で執筆する必要に迫られた。そして1970年代から、後天的に獲得したフランス語で作品を書き始める。
>この言語、フランス語を、私は自分で選んだのではない。たまたま、なりゆきによって、フランス語が私に課せられたのだ。私は、自分が永久に、フランス語を母語とする作家が書くようにはフランス語を書くようにはならないことを知っている。けれども、私は自分にできる最高を目指して書き続けるつもりだ。これは挑戦である。ひとりの文盲者の挑戦なのだ。
これらの経緯を予備知識として頭に入れてから本作を読むと、より鮮烈にトビアスの内面の引き裂かれようが胸に迫ってくる。
作者はヌーテシャルの時計工場で働いていた。なお、父親は小学校教師であり、夫は高校の歴史教師である。
これらは主人公のトビアスと、彼の希求する女性リーヌ(カロリーヌ)に、ほぼそのまま投影されていることが分かる。トビアスとリーヌは作中ではきょうだいであったが、別の次元では同一人物でもあるのだ。
幻想を追い求めるトビアスと、現実的に生きようとするリーヌ。ふたりは亡命先(カロリーヌにとっては、夫の赴任先)で運命的に再開し、ひととき愛を育むが、その愛は決して報われることがない。
こうして、夢と現実は永久に引き裂かれ、祖国と異国は分かたれたままとなる。引き裂かれたものは他にもある。肉体的労働と観念的労働、日々の暮らしと書くこと……
名前について。
カロリーヌのことを、トビアスは自らの理想を仮託してリーヌと呼び続ける。カロリーヌは、彼がトビアスであると分かったあとも、偽名のサンドールと呼び続ける。
互いが互いの本質を見ていないことを端的に表しているが、ここで、作者がフランス風の読み方「アゴタ・クリストフ」としての名が通っていること、つまり本来の「クリシュトーフ・アーゴタ」(ハンガリーでは姓と名の順序が日本と同じ)では呼ばれないことを思い出すと、なんとも切ない。
文体は「悪童日記」をはじめとする双子シリーズとは異なる、詩的かつ抒情的な作風となっている。そのため、双子シリーズに感じられた抜身のナイフのような鋭さは幾分和らいでいるように感じられた。 -
「もちろん、私は死んではいない」で笑いつつも最後のページで救われた気持ちになったのは確かです。第三の嘘を読む前に読んでしまったのですが巻末のはネタバレなのでは...と斜め読み。すぐに包丁持ち出すのはどうかと思うよトビアス。
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なんなんだろうねえ、この
読みやすいわけでもわかりやすいわけでもないのに、
なんか心惹かれてしまう感じ。 -
(1999.12.27読了)(1999.10.08購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
村の娼婦だった母の子として生まれたトビアス。ある事件を契機に名前を変え、戦争孤児を装って国境を越えた彼は、異邦にて工場労働者となる。灰色の作業着を身につけ、来る日も来る日も単調な作業に明け暮れるトビアスのみじめな人生に残された最後の希望は、彼の夢想のなかにだけ存在する女リーヌと出会うこと…。傑作『悪童日記』三部作の著者が、みずからの亡命体験をもとに幻想と不条理を交えて綴る不可能な愛の物語。
☆関連図書(既読)
「悪童日記」アゴタ・クリストフ著・堀茂樹訳、早川書房、1991.01.15
「ふたりの証拠」アゴタ・クリストフ著・堀茂樹訳、早川書房、1991.11.15
「第三の嘘」アゴタ・クリストフ著・堀茂樹訳、早川書房、1992.06.15 -
(再読)
優しさは時として傲慢か。
本から逃げ出したい。 -
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<あらすじ>
祖国から亡命し、時計工場で働く一人の男。彼はリーヌという女性をずっと待っていた。リーヌとは誰か? そもそも実在する人物なのか? ところがある日、いつもの通勤バスに思いがけない女性が乗ってきて彼の人生が動き出す。
<ひとことコメント>
もう一つの国、もう一つの言語、記憶と記録、偽りと真実。クリストフ永遠のテーマ……といったところでしょうか。巻末の来日記念講演テクスト「母語と敵語」は必読!
原題“Hier” ※文庫有り -
あの悪童日記のインパクトをしてのこのクールな文体だったのかなあ。
やっぱり淡々として心地良いけど、前の作品にはちょっと届かない。 -
09/06/02
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書かなくても良かったのに。
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アゴタ・クリストフの描く世界は日常的な世界の中の「特殊」が拡大されていて一癖ある。
それがすき。
やっぱり三部作と重ねて読んでしまう。
間違えでは無いと思う。 -
改めて読み直してから。
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三部作とは主人公も設定も違うけれど、世界観や文体等は地続きに思えました。この作品も全体に流れる暗く乾いた空気が通じるような。お話は、自分の分身を失った人のお話。分身を失い、癒しがたい孤独の中にいる人。ある日、全くの偶然に再会を果たすけれども、上手くいかない。分裂したまま。とにかく、孤独です。
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本の表紙の儚げな雰囲気と相極まり、泣きたくなるような悲しい一冊
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『悪童日記』(同書店で紹介)、『ふたりの証拠』、『第三の嘘』の3部作で、ストイックに主観を排除した一人称で読者を魅了したアゴタ・クリストフの最新作。今回も作者は他人のように冷静な目を持つ一人称で、東西分断によって翻弄された東側の男女の愛について描いており、シニカルな微笑を誘う。小学校6年生のときに読んだ3部作の空恐ろしさがすっかりトラウマになって、最近まで読むのを憚っておりましたよ、貴女の最新作
著者プロフィール
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