3001年終局への旅 (海外SFノヴェルズ)

  • 早川書房
3.44
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本棚登録 : 114
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152080882

作品紹介・あらすじ

時は31世紀初頭、海王星の軌道付近において、宇宙船ゴライアス号は奇妙な漂流物を発見、回収した。だがそれこそ、はるか一千年前、HALの陰謀によって宇宙船ディスカバリー号から放擲された副長フランク・プールその人であった!やがて地球の軌道都市「スター・シティ」に運ばれ、蘇生させられたプールは、驚嘆すべき科学的進歩にとまどいを隠せなかった-手を触れあうだけでたがいに情報を交換する人びと、とてつもない情報量を瞬時に脳から脳に伝達することも可能なブレインキャップ、慣性場を利用した超高速宇宙エレベーター、高さ三万六千キロの摩天楼最上階の庭園で庭師をつとめる恐竜ラプトル…。だが、こうした驚異を満喫する日々にもやがて終わりが訪れた。ゴライアス号船長から、ガニメデへの旅に誘われたのである。かつて木星の名で知られていた世界には、フランク・プール中佐がやり残した仕事が待っているのだ、そしてかつての僚友デイブ・ボーマンも…。

感想・レビュー・書評

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  • 400万年前アフリカに突如現れた真っ黒なモノリス、その周囲に猿人が集まり、モノリスに触れた1匹が棒切れを空中に放り投げることで、知恵を授かった人類へと進化したことが暗示されていた。有名な'2001年宇宙の旅'の冒頭シーンである。月に進出した人類は、そこに第二のモノリスを発見、木星への探査で巨大なモノリスが出現、宇宙飛行士ボーマンの謎の漂流で幕を閉じる。モヤモヤ感の残る不可解な幕切れ。それから1000年後の3001年、謎の膜が取れるのかと、期待して読み始める。海王星の付近で、2001年に亡くなったはずの宇宙飛行士フランクが、生きた状態で見つかる。1000年の科学技術の進化の様子への描写が続き、2001年に木星が第二の太陽になった後、エウロパに第三のモノリスが出現、人類は近づくことができなかった。フランクは、そこにボーマンを感じ、エウロパに近づくことができる唯一の人類としての自覚のもと、接近を挑んでいく。最大の謎モノリスとは何か。本作の冒頭に解が潜んでいる。荒唐無稽とは言えないほど、宇宙の神秘は計り知れない。

  • 3001年、海王星の軌道付近で宇宙曳船ゴライアス号によって、漂っていたフランク・プールは回収された。地球の軌道都市・スター・シティで千年の時を経て蘇生される。この設定がなんとも興味をそそられる。

    千年後の地球で生活に慣れたころ、プールはゴライアス号の船長に木星の衛星ガニメデへの旅に誘われる。ガニメデには科学研究の小都市ができていた。・・ここで「ガニメデ人は巨人だったんじゃないか」というプールの言葉があり、ニヤリとしてしまう。また途中寄った金星の雲をみて「昔地球には建物を布で覆う芸術家がいた」という言葉もあり、ホーガンにクリスト、クラークは同時代の小説や芸術にも広く関心があったのかとなにか嬉しくなってしまった。

    禁断のエウロパには巨大なモノリスがずっと横たわってあり、そこにボーマンとハルの意識がある。モノリスによって450万光年先にある遥かな高みの生物?から監視されていた地球。そして今地球への警告があったというのだ。それは地球の消滅を意味するかもしれず、阻止のためにとった手段がまたおもしろい。この単行本の表紙がそれを体現している。

    モノリスの監視から解き放たれ、宇宙の旅はひとまず終結をみる。その旅の終わりにプールが感じた事、人生で最も大切なものは「愛」と「死」だ、としめくくっている。

    またクラークの宗教観も垣間みられ、3001年には既存の宗教は無くなっていてひとつに統一され、宗教の歴史を少しの教義の違いのために殺し合ってきたとし、「文明と宗教は並び立たない」「信仰とは真実ではないとわかっているものを信じることである」とテッド・カン博士という登場人物に言わせている

    千年後の地球の設定がおもしろい。人々は言葉ではなく頭で意思疎通ができ、頭にブレイン・キャップというチップ?がはめられ知識はそこに詰められている。死肉!は食べず食物は人工合成。言葉も微妙に変化して地球共通語の「白英語」というのになっている。都市と星」で示された宇宙エレベーターがアフリカ、アジア、アメリカ、太平洋の4本がそびえたち、上方にスター・シティがある。時代の変化へのお世話係りとして2000年から2050年の歴史研究が専門の女性、インドラが付く。20世紀を「痛苦の世紀」と呼んでいる。



    1997発表
    1997.7.31初版発行 図書館

  • これは微妙かも…。途中まではいつもの構成で、最後に大きく話を展開させるのも
    同じではあるのだけど、展開させた先がなんだかしょぼくてがっかり、というか。
    「2001年」から続いてきたオデッセイの最後がこれ?みたいな。
    最後まで読ませることは読ませるのだけど、ちょっと残念。

  • (物語世界上で)1000年もひっぱった割に世の中変わらないなというか、恐らくそれは、晩年に至ってのクラークが、現実の21世紀というものが、20世紀中頃に予測しえた様々な技術的可能性を必ずしも実現していないことを経験した上での、実感なのかも知れないと思った。それもまた、老いたるエンジニアの技術への哀歌とでもいうべきもの。謎は謎のままであるべきと思ったか、言いおおせて何かあると思ったかは不明だが、どんどん卑近なものとなっていくモノリス自体は、それが目的論的な意味づけの上で何であるかは別にして、どうやってインプリメントされたものか(超絶な物理特性を持つハードウエアは別にして)については、呆れるくらいあっけらかんと登場人物の間で納得されていて、故に、これまでの作品とは対照的に、主人公らの思惑通りの結末を迎えちゃいましたねぇ。うーん。そうしないといつまでも終わらないっちゃあ終わらないけど、終わらないってだけなら、たぶん、モノリス(というよりそれが存在してる経緯なり意志)と人間の関係という意味では終わってないしね。そういう意味で、最も「わかりやすい」オデッセイでした。さようならクラーク先生。

  • 正直……んー……というのが素直な感想。

  • The Final Odyssey~千年後に発見されたフランク・プールは,地球の赤道上空の3万6000kmのスターシティで蘇生され,救出したチャンドラーが長を務めるゴライアスで太陽化した木星の衛星・ガニメデから誰も許されなかったエウロパに降り立ち,モノリスに閉じこめられたボーマンとハルと接触する。軌道都市に戻った彼には,ハルマンから重要なメッセージを受け取り,トロイの木馬をハルマンに持ち込むよう依頼する~評判になったのだろうか? 2001年と2010年と,この3001年の間には2061年があるらしいが,読んだのだろうか・・いや読んでいない。それは木星が太陽,ルシファーとなる世界なのだろう。人間ってアクセスしやすければ,新しいテクノロジーに案外簡単に馴染むかも知れないと思った。使うか否かは別として(例えば携帯電話のように)。コンピュータ・ウィルスを使って・・・といのは何処かで聞いた話だが,これがオリジナルか? 宇宙エレベーターは実現しそうな話なのね,よく調べているわ。2001年はキューブリックに持ちかけられた映画とのコラボであったらしい。色々な科学の成果をよく作品に取り入れて,出版されると科学者が読んで・・・という循環が起きている。そうそう,連作だけど,続き物と受け取って欲しくないらしい。あとがきで,HALがIBMを一文字ずつずらしたものであることは否定しているが,HALの誕生日になって,もうどうでもよくなったらしい。

  • 001.97.9/30.6刷、並、カバスレ、帯無し。

  • 時は31世紀初頭、海王星の軌道付近において、宇宙船ゴライアス号は奇妙な漂流物を発見、回収した。だがそれこそ、はるか一千年前、HALの陰謀によって宇宙船ディスカバリー号から放擲された副長フランク・プールその人であった!やがて地球の軌道都市「スター・シティ」に運ばれ、蘇生させられたプールは、驚嘆すべき科学的進歩にとまどいを隠せなかった―手を触れあうだけでたがいに情報を交換する人びと、とてつもない情報量を瞬時に脳から脳に伝達することも可能なブレインキャップ、慣性場を利用した超高速宇宙エレベーター、高さ三万六千キロの摩天楼最上階の庭園で庭師をつとめる恐竜ラプトル…。だが、こうした驚異を満喫する日々にもやがて終わりが訪れた。ゴライアス号船長から、ガニメデへの旅に誘われたのである。かつて木星の名で知られていた世界には、フランク・プール中佐がやり残した仕事が待っているのだ、そしてかつての僚友デイブ・ボーマンも…。

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