ムハマド・ユヌス自伝 貧困なき世界をめざす銀行家

  • 早川書房 (1998年9月30日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152081896

感想・レビュー・書評

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  • 2006年ノーベル平和賞を受賞した銀行家の自伝。

    貧困に苦しんでいる人々に無償援助するのではなく、
    無担保少額融資することで自立させ、世界中の貧困層を救った。

    内容は濃く、分厚い本ですが、文体が読みやすく、
    著者の独自のユーモアが随所にちりばめられてあるので、一気に読めます。

    おすすめです。

  • 今日一気に読み上げました。
    いつか読もうと思ってた本です。

    「単純な答えを複雑なものにしているのは私たちの傲慢さだけ」
    今ある制度を前提に考えることが習慣になってしまってる自分にとってはガツンとくる言葉でした。
    借入も収入認定する生活保護とは相容れないなと思ったのですがその発想が単純なことを複雑にしてるんやなと
    自立のために借入してるなら公に認められる借入と考えたら良いんですよね
    マイクロクレジットは日本にもあり得るのかなと思いました。

    「貧困とは人間の心と身体を麻痺させてしまう病気」
    自分が貧困のループにはまり込んでしまうとそこから逃れることを諦めたり生活保護で安心してしまうとそこから出れなくなったり
    麻痺するっで本質やなと思います。

    「私たちが貧しい人々すべてを対象とせず個人の質によって選別しているのは不公平だと批判する人もいる」
    マイクロクレジットの特徴は誰にでも貸すのではなくて借り手を選別するというところやなと思います。
    本気が見えないと貸さない。
    ここは困窮の理由を問わない生活保護とは違うところです。

    正直なところ生活保護制度は自立という人のやる気を見せる場面で本当に役だってるのか疑問のある制度です。
    やっぱり僕はベーシックインカムの方に分があるように思います。

  • もうそろそろ読み終わるが、本書は単純な貧困問題だけでなく、社会システムのあり方、個々人の人間の幸せとは、そして自分の人生自身についても深く考えざるをえない傑作だ。

    決して施しではない。施しはむしろマイナス。ローンという自己責任で完結するからこそ生まれるもの。

    生きる環境を整える、そしてローンの債務者に生きる意欲や自信をつけさせ、そして生きる希望と幸せを債務者自身が実感し、見出していく姿。

    自分の力で生きることが、世の中の役に立っている、誰かの役に立っていることに直結している。お客様からお金をもらうということはそういうことだ。お客様がお金を払って自分が用意したモノ・サービスを受けるということは、お金を払うだけの価値をお客様が見出したからこそ。

    つまり人(お客様でも雇用主からでもいい)からお金をもらうということはそういうもの。人間が幸せになるとは、人の役に立ち、それが実感できることではないか。自分が生きる社会の中で自分の存在価値が実感できることだと私は思う。

    本書を読みながら、マイクロクレジットの広がりをみると(発展途上国も先進国も)、これは人類共通の価値観なのかもしれないと、自分が半世紀近く生きてきて初めて知った。

    2段書きで読む量は大量ですが、マイクロクレジットに興味がなくても、是非読むに値する本だと思います。

  • グラミン銀行の創始者で有名なムハマド ユヌス氏 の自伝。
    銀行なのにノーベル平和賞を取れるグラミン銀行を立ち上げただけでも凄いのに、バングラデシュの独立のため亡命政権の立役者の一人だったりと予想を超える華麗すぎる経歴の方でした。

    自伝の中で底辺で生活している人たちへの無償の援助は無駄である。なぜなら援助している人の満足だけでもらった人が一日生き延びる効果しか無いという点では説得力のある実例を何度も出していた。日本でもいろいろ話題になるODAについても国を長い列車に例えてODAが先頭部分で引っ張っても国の上位の人たちへの直接支援になってしまい底辺の人の部分には計測可能な形で効果が出てこない点を疑問として挙げていました。

    グラミン銀行(マイクロファイナンス)の仕組みについては自伝より詳しい本がたくさん出ているようなので気にいった箇所をメモ。経済投資する先の相手を明確にする(底辺から何%のひとまでに投資する)。予想リターンを明確にする(所得の伸びの目標を何%にするか)。この辺は個人の目標設定と共通する項目も多いが、経済投資では支援したい人より情報を持っている上位の層が潤ってしまう。

    グラミン銀行の仕組みを理論的に高めただけではバングラデシュ全域だけでなく世界中にグラミンの仕組みを広げることは難しい。ユヌス氏が行った政治的な駆け引きの記述も多くあった。レベルが高すぎて参考にならない気もするが、譲っていいこと行けないことについての説明も丁寧に書かれていた。

    この本を見るとグラミン銀行(マイクロファイナンス)が魔法のツールでこれをやっとけばOKという気持ちにってしまったので読み終わった後、騙されては行けないと課題があるのかネットで簡単に調べてもさすがに魔法のツールではないが高金利とか多重債務などの運用的な問題くらいで現在でも貧困緩和と事業収益の両方を追求する理想的なワークフローとして認識されているようだ。

  • 世界中のいろんな偉い人たちからたくさん反論されても決して屈せずに人を信用することで貧困から救う仕組みを作り上げたユヌス。理想論だと思ってしまいそうだけど、本当にこれが実現できているということに驚くし、感動せざるを得ない。施しでは自ら生きる力を失う。自分で未来を切り開いて行くことができるという自信を持つことが大切なのだ。

  • 施しを求めて暮らしている物乞いに、金を渡すことは、現実の問題から私たち自身を遠ざける一つの方法で、自らは、良い行いを貧しい人々と分け合うことで良い気分になれたとしても、本当の問題を放置しているだけだと著者は言います。
    経済学の教授であった著者が貧しい人々の生活を変えるために、世界からの支援が人々に届かない課題も理解しながら取り組んできたプロジェクトは勉強になりました。

    貧しかったバングラディシュで一番貧しい底辺25%の女性を対象にしたマイクロクレジットは、人々に自信と誇りを持たせるプロジェクトです。

  • 第18回OBPビブリオバトル「インド」で発表された本です。
    2017.10.25

  • ■公式よりもコンセプトが重要。
    事業も同じかも。そういう前振りだったのか。グラミンによる貧困撲滅の話に終始していて、方法論はほとんど語られていなかったかも。
    ■行動力
    コンセプトの話と被るかもだが、やるべきことを決めてやり方は後で考えるという行動指針が一貫している。バングラデシュ独立前の支援団体を作るときもこの行動指針だった。
    世界銀行職員やコンサルタントへの批判もこの行動指針から発生していると考えると筋が通る。動きもせんと本で読んだだけの理論ばっかり振りかざしやがって、、、みたいな。
    ■客との接点
    効率の話ではなく、とにかく向き合う。ビジネスとして成立するかどこまで考えてたか不明だが、とにかく客にあっていたっぽい。
    ■事業アイデアはシンプルに
    難しく考える必要は一切ない。花屋で花を売る、美味しいソースを作って売る、ただそれだけ。やれ!的な。経済学者の誤りとして、労働を雇用者視点でしか考えていないという指摘が面白かった。日本人だけの話かと思っていたが、少なくとも90年代後半のバングラデシュでも同じ状態だったらしい、

  • グラミン銀行を創設し、貧困無き世界を目指した企業家、そしてバンカーの自伝。大人数家族に生まれ、母が精神病で病む中、家族で協力し、そして父のリードもあって貧しくも豊かに暮らしていた幼少期。1971年にバングラディッシュが独立戦争に勝利、荒廃した国となって何とか独立したバングラを再建しようと誓っていた。
    コーランの教えで女性は一人で外出できない。グラミン銀行は女性をターゲットにした。また、信頼を軸にすることで、クレジットをとる=相手を信用できるという構図で融資システムを組んだことも特筆すべきポイントだろう。銀行がやってきたことの逆をやったという言葉がそれを物語る。顧客が銀行のオフィスに来る、グラミンは顧客の元へいく。貸借対照表と損益計算書で信用力を分析する銀行と、どこまで貧しいかを説明するだけのグラミン。働くことを始めてみる、その後押しを、ちょっとだけの融資でやっていく。誇り高きバンカーの夢。

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