色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記

制作 : Oliver Sacks  大庭 紀雄  春日井 晶子 
  • 早川書房
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本棚登録 : 96
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152082251

作品紹介・あらすじ

色覚のない人々の驚くべき視覚生活とは?先天性全色盲、原因不明の神経病-特異な風土病とともに生きる人々の姿を感動の筆致で描く医学エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 孤立した環境で近親婚由来の劣性遺伝である全色盲が際立って多い島へ調査に行ったときのエッセイ。北欧出身の自分も全色盲である学者が同行したら島に伝わる”何故この島には全色盲の人々がいるのか”という神話が後付けで変化したのが実に京極夏彦チックで興味深かった。

  • 色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記

  • 先天性全色盲の人びとが数多く暮らすピンゲラップ島と特異な神経症が多発するグアム島の訪問記のはずだが、一番印象に残ったのは、ソテツに対する著者の愛情だった。「祖先の物語」の参考文献。

  • 限られた地域のみに存在する病気を研究することは、医学に思わぬ発展をもたらすことがある。
    ゆえにそういった地方の病気を研究することには意義がある。
    しかし、そこには大きなエゴがあるのでは無いだろうか。現状と向き合って生活している全色盲の人たちを、無理やり調査することは、その人たちに劣等感を感じさせることにもつながる。
    ゆえに、接し方に気をつけなければいけない。
    ことオリバー先生に関しては、心配は無用であると感じた。現地の人々の生活に入り込み、心を通わせようとする様に大きな優しさを感じることが出来た。

  • オリヴァー・サックス博士による不思議な疾病を抱えた患者たちの生活に寄り添ったエッセイ。
    今回はメラネシアの島々の中で、タイトルにある「色のない島」というように色盲の割合の高いピンゲラップ島と、ポーンペイ島へ、そしてALS等に似た症状であるリティコ・ボティグを風土病として持つグアム島へと訪れた記録です。

    限られた医療設備の中で奇病に取り組む医師、家族や周囲の人々と助け合い生きている罹患者への敬意に溢れる文章は一流のドキュメンタリーだと感じます。
    また、島の持つ豊かでユニークな自然を愛しているが故の生き生きとした描写が、奇病という重いテーマの本書の雰囲気を多少明るくしている気がします。

    グアムのリティコ・ボディグと、色盲の島と、どちらも優れていますが、クヌート・ノルドヴィーという全色盲の神経学者との同伴によって、ピンゲラップ島、ポーンペイ島の旅の描写がより魅力的になっています。
    「自分の知らない世界」があります。

  • 「我々疫学者はこのような隔離された土地を求めているのだ」レナード・カーランド
    1/4が耳が聞こえない島とか、全色盲だらけの島とか、ガリバーになった気分で読んだ。
    隔離された島で、一度ハリケーンで人口が激減したために近親結婚が繰り返され、劣性遺伝であるにもかかわらず、全色盲が12人に1人(キャリアは3人に1人。ちなみにこの島以外だと全色盲は3万人に1人)。
    色が見えない=錐体細胞がない→暗い時用の桿体細胞で見る→明るさに弱い
    夜釣りの漁師になる人が多い(夜はよく見える)
    色がわからないので、色だけで判断せず、全感覚を使う
    全色盲の起源として色々神話があるが、白人の全色盲の人が訪れたことで、この病気は白人が持ち込んだという神話が3日で広まった。

    グアムでは、慢性に進行して何年も寝たきりになったまま治る見込みのない病人であっても、一個の人格として、社会の一員として受け入れられる。

  • 島民に全色盲の割合が非常に多いピンゲラップ島、神経病が風土病として蔓延するグアム島チャモロ人の2つの島を主に巡る話。病気が当たり前として存在し、病気に関しての知識が無くとも対処や共存を日常の中に当たり前に組み込んでいる人々の暮らしが興味深い。東南アジアの島々なので、時折戦時中の日本軍による占領の話等も出てくるためとっかかりやすかった。

  • 植物学者で医者でもある筆者が、世界の島々(特に南太平洋)に遺伝的に孤立した疾病を 植物学者の精細な風土の描写と一緒に、その病気を観察した旅行記です。
    寝苦しい夏、本の描写と重なって不思議な夢を見ます。

  • タイトルだけ見るとまるで全色盲が正常であるような種族の暮らす環境があるのかと思ってしまうが、さにあらず、病原の到来、虐殺による人口減、病因遺伝子の濃縮拡散といった歴史的な経緯が認められる。グアムの風土病で筋萎縮性側索硬化症とパーキンソン病をセットにしたような「リティコ-ボディグ」も同様に、病因として疑われるソテツの食用という伝統と第二次大戦前後の列強による抑圧の歴史が深く関係していることが、現地を旅して多くの患者と面会する著者の目を通じて明らかにされる。特に後者は日本も占領者として業を背負っており、身の縮む思いがする。しばしば幸福の初期条件として「どこの国に生まれたか」ということが言われるけれど、「どんな伝統文化を持った」「何人として」「どこの土地に生まれたか」ということがこれほど後の人生に甚大な影響を及ぼすものかと思わずにいられない。もっとも、好奇心旺盛なサックス氏のこと、関心の対象は土着神経病のみにとどまらず、土地の原生林に茂るシダや環礁に見る海洋生物、島の美しい風景に注がれ、島での暮らしならではの幸福も見逃さない。人の歴史、暮らし、そこに育まれる幸福、それを司る健康、それを揺るがす伝統……人をめぐる様々が渾然と厚みをもって迫る骨太な旅の記録だ。

  • 「レナードの朝」や「妻と帽子を間違えた男」などの著書で知られる脳神経外科医オリバー・サックスの本。ちょっと前の本なんだけど、興味深い。前半は全色盲の島のはなし。通常なら先天性全色盲は10万人に一人の割合のはずなのに、この当時のミクロネシアのピンゲラップ島では、700人余りの島民のうち57人が全色盲であるという。オリバー・サックスは、先天性全色盲であるクヌートという視覚研究者とともに、この島を訪れている。原因としては、島という閉鎖された環境で、台風などにより、人口が減り、近親交配が繰りかえされたため、全色盲の遺伝子をもつ島民が増えていったということらしい。全てが白黒に見えるだけでなく、弱視だったり、遠視だったり、近視だったり、明るいところはまぶしすぎて見えなかったりという障害や見えないために授業がわからず、勉強についていけなかったりということはあるし、とても大変なのはわかるのだけれど、サックス先生が全盲の人たちの夜の漁をとても幻想的に書いているので、全盲の彼らの世界をのぞいてみたい気分になってしまった。また、全盲も大変な問題ではあるのだけれど、ミクロネシアの島々のおかれた現状も問題なのではないかというエピソードがいっぱい。核実験の島や、基地の島。米軍が美しいさんご礁の島を蹂躙している。でも、その島々を過去に日本も支配していたことがあることを恥ずかしながらほとんど知らなかった。その隷属の歴史に日本が加担していたことを知らずにいたことを恥ずかしく思う。今もなお、ミクロネシアには基地の島があり、イラクへの飛行機が飛び立っていく。そして原住民達は詳しい情報も知らされないままに、兵士として、イラクに送り込まれている。悲しくてやるせない話だ。サックスは、原住民に宗教を押し付けること、白人の文化を押し付けることの理不尽さを科学者らしい公平さで描いていて好感が持てる。後半部分は、グアム島の風土病の話。グアム島には、パーキンソン病に似た風土病と、アルツハイマーに似た風土病があり、症状は違うものも、原因はどうも同じらしいことが判明している。ただ、その原因については今現在でもはっきりとは解明していない。原住民であるチャモロが食べている、ソテツの実に含まれる成分がこの病気の原因となっているようなんだけど。このソテツ、毒があるのは、チャモロ達も知っているのだが、旱魃などで、他に食べるものがないので水にさらしたりして、食べ始め、習慣になってしまったらしい。現在は、ソテツが風土病の原因だということが判明してきたため、病気にかかる人も少ないのだとか。グアムといえば、リゾートという頭になっていた私だったので、チャモロの現状や、ゴルフ場を作ることによって生態系が壊されているということなどなど、初めて知ることも多く、自分の無知が恥ずかしかった。ミクロネシアの島々といえばさんご礁、楽園というイメージだったのが、すっかり塗り替えられてしまった。でも、知ることができてよかった。

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