子育ての大誤解: 子どもの性格を決定するものは何か

  • 早川書房
3.53
  • (8)
  • (10)
  • (16)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 149
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152082602

作品紹介・あらすじ

愛情をこめて抱きしめると、優しい子どもになる。寝る前に本を読み聞かせると、子どもは勉強好きになる。離婚は子どもの学業成績を低下させる。体罰は子どもを攻撃的な性格にする。これらはすべて間違いだった!育児のしかたが子どもの性格と将来を決定する-多くの親がこの「子育て神話」を頭から信じこみ、"良い親"を演じようと必死になっている。だが、この子育て神話は、実は学者たちのずさんで恣意的な学説から生まれた、まったく根拠のないものなのだ。古今東西の愉快なエピソードをまじえつつ、心理学・人類学・霊長類学・遺伝学などの最新研究を駆使して、子どもの性格形成の本質に迫る革命的育児論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いわゆる子育て神話はデータも恣意的で間違いが多い
    因果関係と相関関係を混同している。
    親が与えたと考えられている影響のうちのほとんどは遺伝的傾向の発露とも言える。
    遺伝と環境が半々というのが一般論だったが、環境のほとんどは外部環境

    親が子供に影響を及ぼすとされているが、子供の性格も親の行動や態度に影響を及ぼす。

    別の親に育てられた一卵性双生児の研究、同じ親に育てられた養子たちの研究から、成人後の性格に関する家庭環境の影響の低さが分かった。

    明らかに親の関わり方が異なる出生順位による違いについて永らく研究されてきたが、性格に関して確たる証拠は得られていない。

    シンデレラのメタファーとコードスイッチ
    性格や能力は実母から受け継ぎ、継母からの影響は受けなかった。子供ですら場所により適した別の顔を持つことができる。
    幼児もおままごとの際、作家、演出家、主役と脇役を全て同時に演じることができる。
    当然家庭用の顔と仲間内用の顔を持つ。場の影響は大きい。

    子育ての神話のうちの正しい点
    子供に対する親の行動は、親と一緒の時、又は親を連想する時の子供の行動には影響を及ぼすことができる

    親の影響がこれほどまで大きいとされるようになったのはごく最近。
    子供の失敗について責任や罪悪感を感じたり、子供の罪を世間から糾弾されたりと、弊害の方が大きい。

    20世紀前半の母親は子供を甘やかさず大人として扱うことが求められた。20世紀後半の母親は最大限に愛情を表現することが求められた。いずれも、子供の問題は親の育て方の責任とされた。

    自然な子育て、という幻想。社会が違うので同じようにはいかない。
    伝統的な社会では年長の兄弟の権力と責任は大きく喧嘩もない。

    現代は専門家の意見が重要視されるが、それはあくまで特定の文化や社会の仮説の中でしか成り立たない研究。

    親のいない子の研究。仲間や兄弟と心理的なつながりの強かった子は問題なく成長。

    子供は親の言うことより歳の近い仲間や年長の子供の言うことを信用する。
    属する集団の影響が大きく、フィードバックで傾向が強化される。

    看守と囚人、子供と大人。子供は大人を見て学ぶのではなく、うまくやっている子供から学ぶ。

    集団から外れることの悪影響は大きい。男子校や女子校、黒人だけの大学など、均質化した集団の方が成績が良い。
    又は害のない程度に分裂させ競い合わせる。
    最も確実なのは共通の敵を作ることでの一体化。
    教師の仕事は子供たちの集団をなるべくまとめて共通の目標を与えること

    思春期について。
    親が子を愛する理由は、単に小さくてかわいいからと、自分の遺伝子を運んでくれるから。
    この2つを混ぜてしまうことで混乱が起きる。

    思春期の子は親と仲間のどちらの文化を取るかを迫られ、普通は仲間を取る。
    親の文化と仲間の文化が違いすぎるとトラブルに。
    子供時代と思春期に獲得した性格が生涯残る。


    100年前は、妊娠中に読んだ刺激的な本の影響で子供に障害が出るという報告がなされていた。
    現在は親の育て方の間違いが子供に深刻な悪影響をあたえるとされている。
    この子育て神話も間違っている可能性が高い。


    家庭で獲得される知識や経験が仲間集団の中で問題ないもの、同調を強いられないもの、気づかれないものであれば、そのまま持ち続ける。宗教や料理など。

    子供の仲間選びについても、学校や住む地域の選択である程度影響を与えられる。
    10歳ぐらいまでは親が友達を選べるが、それ以降は隠れて付き合うので無理。
    よっぽど悪い集団に属しているとか、いじめられているとかの場合、転居も有効。
    家庭学習のみでは集団での関わりを学べないのでリスクが高い。

    子供に自尊心を与えるのが大事とされるが、家庭で持たされた自尊心の効果は家庭内に留まる。
    広い範囲での自尊心は子供時代の所属集団での地位による。
    親は子供の地位に関してできることは少ないものの、服装や歯列矯正、場合によっては美容整形で子供の外観を整えることができる。子供が集団の中で人と違うということは、あまり有利には働かない。

    親子関係も夫婦関係と同じであり、相手に対する態度で相手自身を変えられるものではないが、将来の二人の関係には影響する。

    親が可愛がらないから子供がなつかないのか、子供が元々気むづかしくてなつかないから親が可愛がれないのか、判断できない。

    育児アドバイザーは子供を平等に愛するように言って、気が咎める親を増やした。
    子育てから喜びと自発性を減らし、努力や義務に変えた。

    子育ては誠実さと努力があれば成功が保証される仕事ではない。
    子供がどう育つかは親の育て方を反映したものではない。
    子供に過度に気をつかう必要はない。
    実際、外の世界はもっと厳しく、子供はそこまで脆くない。

  • 「社会化とは大人が子どもに施すものではなく、子どもたちが自分自身に施すものなのだ。」

    子供の人格形成に家庭の子育ては関係ない、という衝撃的な本。
    兄弟の生まれ順と性格に関係があるという有効な実験結果などない等、家庭と子育ての神話を丹念に潰していく。
    いかに多くのことが無根拠に、しかしまことしやかに語られているのかに唖然とする。
    調査実験の条件やサンプル選出法の罠についても細かく書いてあり、子育てとは別にそちらも面白かった。
    子供の性格を決めるのは、遺伝子と子供時代の集団だという主張に完全に納得はし切れないが、思考が開かれた感じがあり、読んで良かった。

    「子どもには愛情が必要だからと子どもを愛するのではなくて、いとおしいから愛するのだ。」

    この言葉は、現在主流の子育て論に思い切りぶつけたい。
    そうだよ、本末転倒だよ。

  • 良いが、長い。

  • 独特な言い回しで少し読みにくいのが難点。
    子供の性格形成は親ではなく、周りの環境が大きい。

  • 文庫版で完読した
    親の教育は子供にあまりえいきゅを与えない(与えてもすぐに失われる)という内容

  • 子供の性格は、親の関わり方次第。子育ては母親の責任とかいった子育ての常識のようなものがあるが、そんなの誤解、住んでる地域や遊び仲間の影響がとても大きい。みんなが当然だと信じ込んでいることの中には間違いが沢山、というちょっと論争を呼びそうな話。

  • 『言ってはいけない』を読み終え、この本も読む。
    中は、細かい字の2段で腰が引けたが、なかなか興味深い内容。

  • 非常に興味深いテーマであり、視点も考察も面白い。しかし、表現が回りくどくボリュームが多いため、読みきるのに多大なエネルギーを要する。その割に、テーマの広がりに欠けるのが残念。

    首尾一貫して、本著が言いたい事は、子供の成長には、その外部の交友関係が支配因子として影響するという事。そのことをあらゆる事例を用いながら、解き明かすことを試みる。

    しかしここで本著に対し、批判的な考察を加えたい。人間には表層的な心理と潜在意識がある。外部の仲間関係において構築された性格は、表出されるが、モラルや感受性、行動規範や価値基準を根本で支える性格は、実は遺伝と共に、教育がものをいう。つまり仲間関係において、喫煙など悪ぶった態度をとっていても、本能的にはそのような行為に罪悪感を感じる子供もいる。この罪悪感の有無こそが、親の影響と言える。従い、ティーンの頃に影に潜んでいたこの親の影響が、ティーンを過ぎた頃にまた表に出てくるのだ。もちろん表に出てこないこともある。あるいは、悪影響となる事もある。著者が用いた様々な事例は、競争上現れる外観を伴う結果であり、規範や価値といった性格情緒については、評価が極めて難しい。

    ただ言える事は、その人にとって、あらゆる外部の対象物が、影響しないと言う事はありえないということだ。そして年齢問わず、人間というものは社会性を持つため、外部の人に対して自らの人格を形成し保とうとするものなのである。従い、子供がその子供社会に於いて性格を形成する事、その比重が高い事は、至極当然の事なのだ。

  • 子供の社会化は親がするのか?、周りの環境によってなされるのか?今までの常識が覆る良書です。その根拠を類人猿学や移民の子といった実際の環境から得ているので説得力があります。ここでも類人猿学者のフランス・ドゥ・ヴァールが出てくるところにびっくりです。

  • もの凄い大著なので全部は読みきれないけれど、奥さんが後書きから見つけてくれたこの言葉はメモっておく価値ある。

    「子どもには愛情が必要だからと子どもを愛するのではなくて、いとおしいから愛するのだ。彼らとともに過ごせることを楽しもう。自分が教えられることを教えてあげればいいのだ。気を楽に持って。彼らがどう育つかは、あなたの育て方を反映したものではない。彼らを完璧な人間に育て上げることもできなければ、堕落させることもできない。それはあなたが決めることではない。」

    子どもを大人の思い通りに育てようなんて、親のエゴなんだろうなと感じた。もちろん何もしないわけじゃないけれど、肝に銘じておきたいと思う。

  • 性格を決定するのは,遺伝か?環境か?
    この疑問に対する1つの回答。3歳児神話について考えさせられます。

  • 画期的な子育て論。分厚い本だが、その一章一章が、石橋を叩いて渡っていくかのように綿密。

全14件中 1 - 14件を表示

石田理恵の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スティーヴン・D...
村上 春樹
湊 かなえ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×