海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
3.63
  • (22)
  • (25)
  • (35)
  • (4)
  • (4)
本棚登録 : 185
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152084187

作品紹介・あらすじ

「あの年の夏祭りの夜、浜から来た少年カムロミと恋に落ちたわたしは、1年後の再会という儚い約束を交わしました。なぜなら浜の1年は、こちらの100年にあたるのですから」-場所によって時間の進行が異なる世界での哀しくも奇妙な恋を描いた表題作、円筒形世界における少年の成長物語「時計の中のレンズ」など、冷徹な論理と奔放な想像力が生みだす驚愕の異世界七景。日本ホラー小説大賞受賞作家による初のSF短篇集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「海を見る人」がSFマガジン読者賞を受賞したとのことで、読んでみた。

    本格ミステリならぬハードSFというジャンルらしい。
    設定の細かいところは理解することを放棄して読んでた。
    つながってる話なのかと思ったら、似てる世界観もあるけど、てんでばらばらの短編集だった。

    表題の「海を見る人」は童話のような印象。
    「時計の中のレンズ」は最初に読んだので、設定が新鮮だった。須弥山って仏教に出てくるやつだよね。

    「独裁者の掟」は比較的分かりやすい話だった。
    「キャッシュ」は現代でもありそうな状況というか近未来的な話。

    「門」は時間を超えて戻ってくる感じは古典的SFっぽい。

  • SF短編集。小林泰三さんだし頑張って読んでみよう、と思ったけれど。ううむ、やはり厳しいなあ。物理音痴の私にはおそらく半分も理解できなかった気がします。でも物語のエッセンスというか、そういうものは存分に感じられたような気も。
    お気に入りは「キャッシュ」。ミステリ的な読み心地もあったし、これはだいたい理解できた……ような気が。とりあえずコンピュータで見る「キャッシュ」という言葉の意味が理解できたような気がするので、勉強になったかな。
    表題作「海を見る人」も印象的。リリカルで美しい物語。ただし時間の法則だとかは本当にざっくりとしかわからないけれど。雰囲気だけ味わえるだけでもいいのかな。

  • 古書購入
    SFからしばらく離れていたゼロ年代作品

  • SF。短編集。
    綺麗な泰三さん。純粋な本格SF。
    難しめの内容だが、ストーリー自体が面白いので、SF設定を理解できなくても楽しめる。
    「独裁者の掟」ミステリ的技巧。
    「天獄と地国」映画『サカサマのパテマ』を思い出す。
    「キャッシュ」仮想現実&ハードボイルド。
    以上3作が好み。他の作品も高水準。

  •  砂時計のような円筒世界や、天地が逆転した世界など、想像を思うまま巡らした世界観がとても魅力的だった。
     物理学は苦手なので、そういった面では楽しみきれなかったのが残念だけど、科学と物語とがバランスよく絡み合っていて、分からないところがあっても苦にならなかった。

     それぞれの短篇ごとに迎える別れの場面はほろ苦いが、最後の一篇によって別れと出会いが結びつけられるところが気持ちいい。読み終わってもまだしばらくこの不思議な感覚に浸っていたくなる。

  • SF短編集。電卓片手に読んでも大丈夫な科学考証とあとがきに。

  • “「ところで、あなたのその外見はどの程度本当のあなたを反映しているの?」アリスは穴の開くほど俺の顔を見つめた。
    少し照れる。
    「俺の外見は君からどう見える?」
    「そうね」アリスは頬に人差し指を当てた。ーーと言っても、俺からそう見えるだけだが。「絵に描いたような探偵ね」
    「だったら、OKだ。この外見は宣伝も兼ねている」
    「ということは真実のあなたとはかけ離れているってこと?」
    「それも秘密さ」俺はアリスにウィンクしてみせた。「それで、依頼内容は?」
    「『世界』の崩壊を食い止めること」アリスはにこやかに言った。
    「すまない。もう一度言ってみてくれ。『世界』の崩壊を食い止めるとか、聞こえたが……」
    「その通りよ。このままでいくと、遠からず『世界』の機能は麻痺してしまうわ」”[P.160_キャッシュ]

    「時計の中のレンズ」
    「独裁者の起きて」
    「天国と地国」
    「キャッシュ」
    「母と子と渦を旋る冒険」
    「海を見る人」
    「門」

    ちょっと難しめのSF。
    「キャッシュ」が一番好きかも。

    “「別々の方向に脱出するから、基地に帰るのはばらばらになるわ」コミュニケータから艦長の声がする。
    「でも、必ず帰るだろ」
    「ええ。わたしたちが最初にデートした場所覚えてる?」
    「ああ。でもデートじゃなくて、尋問だったよ」
    「どっちが先についても、あの席で待ってることにしない?冒険談を聞かせてあげるわ。その代わり、苺ミルフィーユぐらいは奢ってよね」
    苺ミルフィーユって何だよ?と言おうとした瞬間、転送された。
    僕の乗った救命艇は宇宙空間のど真ん中にぽつんと浮かんでいた。遥か彼方には、『門』の姿が見えた。そして、『門』を背景に突然明るい輝点が現れ、すぐに暗くなった。”[P.335_門]

  • ごりごり理詰めのボーイ・ミーツ・ガール。仮想現実内で探偵稼業を営む男のプチハードボイルドSF「キャッシュ」が好き。

  •  良かった! とにかくファンタスティック! 小林作品は当たりはずれが、私にとっては大きいのだが、今回は大当たりかな。

     オープニングの「時計の中のレンズ」はイマイチ。世界観がわかりづらい。次の「独裁者の掟」はなかなか良い。この流れ好きだなぁ。

     そして既読の原作「天獄と地国」はやはり原作も理解しづらくマイナスポイント。

     次の作品「キャッシュ」が仮想現実ものとしては驚きの出来。これがこの作品中最高作品だと思う。閉鎖宇宙船で乗組員の退屈を回避するための仮想現実システムが崩壊に向けて進んでいる。それはなぜか、その解決方法はなにか。仮想から現実へと仮想で向かうさまなどがすばらしいし、あっと驚くエンディングもさえている。

     次の「母と子と渦を旋る冒険」の意味がわからん。そして既読の(竜の卵を思わせる)「海を見る人」はまぁまぁの感じ。

     そしてラストの「門」がまたまた衝撃的に良い。バクスター(もちろん時間的無限大)色が少しするとともに、前半の「独裁者の掟」の香りも残る。途中で筋が読めてくるんだが、とのかくラスト数行のくど過ぎず、かといってあっさりしすぎないギリギリの筆致が最高である。

     今回の短編集ではみっつも面白いものがあった。これは収穫だ。やはりSFはいいなぁ。次もSFにしようっと!

  • ハードSFの短編集です。
    次回予告のような幕間もあります。
    非常に面白かったです。
    複雑で高度な科学ネタが入っていますが、あとがきにも書いてあるように「高度な科学は魔法と変わらない」ということで、読むのに科学知識は無くても大丈夫です。
    気に入ったのは「門」「母と子と渦を旋る物語」です。
    特に「門」の最後にはやられたって感じでした。
    過去も未来も原因も結果も結局は堂堂巡りになってしまうというところが面白かった。
    最後の宇宙船への攻撃は、ある程度予測済みでしたが、艦長があれだとは…。
    いや~、やっぱり面白い!
    この人のホラーも面白いけど、SFも凄くいい!

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小林泰三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×