キス・キス (異色作家短編集)

  • 早川書房
3.67
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本棚登録 : 233
レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152086747

作品紹介・あらすじ

予期せぬ出来事が日常の扉を開きあなたをさり気なく訪れる。

感想・レビュー・書評

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  • 児童書作家でも知られるダールの短編集。
    ブラックユーモア満載のお話揃いですヽ(*´∀`)ノ

  • ロアルド・ダールの軽妙さは寝しなに聞く物語の愉しさのような感慨を呼び覚ます。そしてまた星新一のショートショート(そう言えばそんな言葉を最近はめっきり聞かなくなったけれど)を読んでいた頃の愉しさも呼び起こす。一つ読んでしまうと次から次へと幾つも幾つも読まずには居られなくなる愉しさでもある。中毒症状のようなものだ。そんな愉しさにふと耽りそうになる。子供の頃はそんな風にしてただなんとなく楽しんでいたっけな、と。けれど、今は少し警戒感のようなものも同時に頭をもたげる。その愉しさの根源は世の中に対して斜に構えずには居られないシニカルなものの見方と気付いているから。

    シニカルなものの見方は中毒のような効果がある。一旦そういう見方に染まってしまうと後戻りはできない。教師の言うこと聞かなくなって学ランの釦をわざと外すようになる。胴着と袴で竹刀を抱えて浜辺を走る青年を理解できなくなる。人間なんてららららららららと歌うことに酔いしれるようになる。果ては盗んだバイクで走り出す(こんな例えばかりだと歳が知れるが)。シニカルな視線は真面目な人のやることをすべからく揶揄する心が生み出す怪物だ。

    けれどロアルド・ダールの軽妙さが描き出すのは、シニカルさとは反対の(関係ない話だが、真逆という言葉がどうも好きになれないのは、それを連呼していた人がいまひとつ好きではなかったせいなんだろう)真っ直ぐに信じた道を突き進むような人ばかり。表の顔で追従笑いをしながら心の裏で舌を出すような人は余り出てこない。ドリフターズやコント55号のお笑いが人を馬鹿にした笑いではなかったように、ロアルド・ダールの可笑しみは真面目な人が真面目に働くことによってどうしようもなく引き起こされてしまう悲劇的な喜劇を、少しばかり大袈裟に描いたものなのだと理解する。笑いながら読み進め、ついでに自分自身も笑い飛ばしたくなってくる。そうすると、ぐるっと回って汗臭い胴着を着て面や胴や小手を着けて大声を出しまくっていた自分が、案外好きになる。

    でもちょっと待って、と、ロアルド・ダールは言うに違いない。その真面目さがどんな悲劇を生み出しかねないのか、少し考えて欲しい、と。例えば、原理主義は究極の真面目さだとも言えると思うが、最近は何かと批判の対象になりがちだ。けれども本当は主義主張が悪いのではなく、それを他者に強制することが問題な筈だ。ところが人は自分が是とするものを他人にとっても良いものであると考えがち。竹刀を振り回していた頃の自分もそうであったように。そこにロアルド・ダールの目線はあると思う。

    そんなことを考えていたら、谷川俊太郎の「真面目な顔つき」を思い出した。真面目なひとが真面目に歩いていたら悲しいし、泣いていたら可笑しいし、謝っていたら腹が立つ。けれど真面目な人は真面目に人を殺す、それは恐ろしい。やっぱり世の中多少シニカルな位でちょうどいいのかも知れないね。

  •  なんだかざわざわする短篇集。

     「女主人」は読んでると不安になる。
     実際は剥製が趣味のちょっと変なおばちゃんかもしれないけど。

     一番気に入ったのは「天国への登り道」。
     妻の困る様子を見て楽しむ夫は自業自得な気がします。
     妻が戸口で耳をすませるところの描写が良かった。

     「暴君エドワード」も面白かった。
     最後、夫の手のひっかき傷がイバラのせい、というのは言い訳だったのかそうでないのか。

  • 異色作家短編集の一冊目。
    怪奇、ブラックユーモア、次のページが気になる展開の上手さ。どれも一級品だと思う。
    最高に面白かった。

    図書館にて。

  • 異色作家短篇集の1巻です。
    ダールのブラックなユーモアが素晴らしい話ばかりです。
    この本を読んで、改めてダールが好きだと思いました。
    「女主人」は結末の黒さに思わず震えてしまいました。
    「ウィリアムとメアリイ」もなかなかに黒い展開です。
    「牧師のたのしみ」はオチが素晴らしいです。
    せっかく高額な箪笥を二束三文で手に入れたのに牧師も箪笥も可哀相な結末です。
    この結末には思わずニヤリとしてしまいますね。
    まさにブラックユーモアです。
    どの話もとても楽しめます。

  • 映画化された怪作「チャーリーとチョコレート工場」など、特に児童文学で有名なイギリスの作家・ダールの短篇集。

    素朴なユーモアストーリーと見せかけて、毒と恐怖をほんのり混ぜてくる所が素晴らしい。幼少期からこんな人のこんな話ばっかり読んでりゃ、そりゃイギリスジョークもバリバリになるわな。感想を読んで興味を惹かれた方は、ぜひお子様に読み聞かせていただきたい。

    1.女主人
    下宿を探しにやってきた小さな町で学生の少年が出会った女主人。台帳に書かれた失踪者の名前と動物たちの剥製が嫌な展開を想起させるが、想起させるところで終わりの掌編。

    2.ウィリアムとメアリイ
    難病で死んだウィリアムが妻メアリイに残した手紙には、脳を取り出し生き長らえる実験に参画するまでの経緯が記されていた…。脳だけになった夫を前に、抑圧され続けた妻の歓喜が溢れるラストは、自分が「どちら側」にいると思っているかで感想が変わる。自分がウィリアムの立場なら発狂モンだなー。

    3.天国への登り道
    「待ち合わせ時間に間に合うか」を必要以上に気にする神経過敏の妻に対し、主人が嫌がらせを働く話。読みきったときにタイトルの皮肉に気づく。この作者は本当に亭主への意地が悪いな。

    4.牧師のたのしみ
    こち亀ばりのベタなコント。田舎で掘り出し物の骨董品を買い叩き高値で売りさばく男がど田舎のボロ屋で見かけた極上のアンティーク箪笥。朴訥フェイスな住人と口八丁で何とか購入契約を結ぶが…。主人公の灰化シーン直前で物語を打ち切る構成がクール。

    5.ビクスビイ婦人と大佐のコート
    大佐との不倫を楽しんでいた妻が、手切れにと貰ったミンクの高級コートを我が物とするため四苦八苦する、これまたジョーク心満載のいいコント。「アメリカは、女性が恵まれている国である。」から始まる、アメリカ人男性の悲哀を淡々と語る冒頭のシークエンスが最高。この話は夫勝利エンドだが、それも基本的には「酒場で男同士で語られる空虚な慰め話」であると釘を刺されているのが辛すぎる。

    6.ローヤル・ジェリィ
    ミルクを飲まない赤ちゃんに、養蜂研究が趣味の夫が与えたものとは…。今じゃすっかり有名なローヤルゼリーだけど、調べたら栄養補助食品としての効果を裏付ける科学的研究は発表されていないらしい。へー。そもそも赤ちゃんにハチミツ与えちゃダメ、ってのも、当時はあまり知られてなかったのかなぁ。現代だとそっちへのツッコミが入って物語趣旨へのノイズになっちゃうんで、さすがに「賞味期限切れ」の物語かなぁ。

    7.ジョージイ・ポーギイ
    超奥手な若神父(でもムッツリ)の苦闘。シュールなオチより、彼の幼少期のトラウマ「お母さんから授かった性教育でウサギの出産を見てたら母ウサギが生まれたての子ウサギを食べちゃって絶叫」のハイレベルさが際立っている。そりゃ心折れるよ。

    8.誕生と破局
    「ある男」が産まれた直後の病室を切り取った数ページの掌編だが、実在人物である「ある男」の正体が明らかになるシーンは戦慄。

    9.暴君エドワード
    迷いネコの前世が大作曲家のリストだと言い張るプッツン嫁と、そのネコを火にくべるプッツン夫とのやりとり。これまた「貴方はどっちに感情移入できる?」が試される。

    10.豚
    不条理ノワールの傑作にして、グリム童話の新作として子供に読ませたいけど読ませたら絶対ヤバい大問題作。くっだらない事故により生後数日で両親を失ったレキシントンは、田舎に住む超ベジタリアンの叔母の元で料理の才能を開花させていく。彼女の死後都会に出たレキシントンはレストランで初めて豚を食し…。それまでの写実的な展開から一変、ラストの不条理さはぶっ飛び過ぎて何度もページを読み返してしまうほど。

    11.ほしぶどう作戦
    領主の禁猟区で雉を大量ゲットするべく、冴えない2人組が一大作戦に挑む。干しぶどうを使ったこの作戦、実際に効果ってあるのかなー。

  • ささいな出来事から物語を構築していく小説家の力量に感服

  • 「女主人」「ウィリアムとメアリイ」「天国への登り道」「牧師のたのしみ」
    「ビクスビイ夫人と大佐のコート」「ローヤルゼリー」
    「ジョージイ・ポーギイ」「誕生と破局―真実の物語」
    「暴君エドワード」「豚」「ほしぶどう作戦」

    友達からのススメで読みました。
    エレベーターのある家に住んでいる夫婦の話がコワ面白かった。
    あとローヤルゼリーも単純だけど怖い。

  • 児童文学だけでなく、短編も秀逸。

  • ロアルド・ダールは、19年前の1990年11月23日に74歳で亡くなったイギリスの小説家・脚本家ですが、そもそも彼と最初に接触したのが、筒井康隆を通してのブラックユーモア経由だったのか、『チキ・チキ・バン・バン』や『007は二度死ぬ』などの映画の原作や映画化された『チャーリーとチョコレート工場』(原作「チョコレート工場の秘密」)からだったのか、それともサン・テグジュペリ好きが高じてのパイロット関連だったのか、奇妙な味のサキに味を占めてのアナロジーからだったのか、いったいどこからなのか、今となってはまったく藪の中です。

    『あなたに似た人』や『魔女がいっぱい』もそうですが、そんなにしょっちゅうというのではなく、何か一冊を読んで満足してお腹いっぱいになって、でもそれで終わることなく、しばらくしてまた違う著作を読みたくなって、読むとまた異なる顔が見えて充二分に満たされるという奇妙な存在です。

    この本は、あの開高健が訳した全11編で、翻訳のことはよくわかりませんが、ひょっとして名訳の気もしますが、ロアルド・ダールの毒はことさら過激なものではなく、チクリと刺されてあとからもジーンと響いてくる感じの心地よいものです。


    この感想へのコメント
    1.のほほん堂 (2009/11/23)
    薔薇★魑魅魍魎さん、こんにちは。
    ロアルド・ダール、『チョコレート工場の秘密』と他に数作しか読んでいないと思います。
    こんな短編集が出ているのですね。機会があれば読んでみたいと思います。
    感想、ありがとうございました。
    2.薔薇★魑魅魍魎 (2009/11/25)
    コメントありがとうございました。またぜひお越しくださいませ。
    そういえば『チョコレート・・』は、映画の方をまだ見ていませんでした、DVDあるのに。近々見ようと思います。

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著者プロフィール

ロアルド・ダール(Roald Dahl)
1916年9月13日 - 1990年11月23日
イギリス・ウェールズのカーディフにて、ノルウェー移民の両親のもとに生まれた。第二次大戦中にイギリス空軍エースパイロットとして活躍するが、事故で重傷を負う。その時代の逸話をもとに、作家デビュー。ブラックユーモアあふれる短編小説、児童文学の書き手となった。
代表作に、『チョコレート工場の秘密』。ティム・バートン監督にジョニー・デップ主演で『チャーリーとチョコレート工場』として映画化された。他にも『父さんギツネバンザイ』などがあり、『ファンタスティック Mr.FOX』として映画化された。

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