タッチ

  • 早川書房 (2005年12月2日発売)
3.21
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本棚登録 : 130
感想 : 24
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  • 本 ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152086884

感想・レビュー・書評

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  • 産業事故でたまたま放射能ちりで汚染された主人公。
    それと知らずに妻や近隣に広めてしまい、現れる被曝の症状。吐き気、熱傷、全身衰弱、抜け毛。
    妻はそのタイミングで妊娠がわかるが、会社の隠蔽体質、近隣住民からの無知と偏見による差別や攻撃にさらされ、孤立する。
    この作品が、1968年に書かれたことに驚く。
    ヒロシマもフクシマも知る日本人には特に胸が痛くなる、他人事ではない話。フィクションの形をしたノンフィクション。
    ラストシーンに希望が見えたが、無知は罪と強く感じる。フィクションと思いつつ、実在する今を生きるバーニーとカレン、そしてその子どもたちの幸福を心から願う。とともに「汚い爆弾」の根絶を願う。

  • 本書は理不尽な災難に苦悩する人間の心の葛藤を描いている、とカテゴリーに分類するのは簡単だけど葛藤が作品の中でどこまでも居座られてしまうと、読み手は苦しくてたまらない。(わたしも苦しみました)それでも読ませてしまうのは、人はどんなふうに心を使うのか、というキイスの好奇心に乗っかってしまうからなのかなと思う。

    放射能による健康被害、不妊と妊娠、無知と偏見、喜びと不安、テーマは重いけど、光のあるラストでほっとします。

  • 被曝した夫婦が、子どもを出産するかどうかに葛藤する話かと思っていたが、そこが主題ではなかった。勿論妊娠したことによってカレンの精神が変化した部分はあっただろうけど、やはり主題は、放射能に汚染したことによって壊されてしまう日常。ギリギリ抑え込んでいた凶暴性や、過去のトラウマが決壊して溢れ出てしまうには容易い引き金となる、被曝という事実。追い討ちをかけるような周囲の仕打ち。

    8.6
    8.9
    3.11

    社会全体で議論し続けなければいけないことだと、改めて。

    恐らくタイトルの由来になっている最後のシーンは、とても美しかったです。

  • 惹句を見ると、被曝したカレンが出産すべきか、胎児への影響はどうなのか、が話の焦点みたいな印象を受けるけど、全然違う。そういう話ではないのよ〜、これ。なんでこういうことを書くかなー

  • アルジャーノンのキイっちゃんが こんな作品を書いていたとは知りませんでした・・ この人の作品は・・ 凄い毒と闇を持っているんだよね・・根底には愛だけど。
    放射能を扱ったこの作品に、この時期に出会ったことに何かを感じます。

  • 職場で起きた放射線事故のせいで、放射能汚染された主人公。自分と妻、お腹の子に健康被害があっただけでなく、街に汚染を広げたことで村八分に会う。日常が突然崩れ去る、東日本大震災の恐ろしい現実に比べると所詮作り話だが、通じるところはある。

  • 理不尽な悲劇に見舞われたとき、人は憎む対象を自分ではなく他者に向けることで精神の安らぎを得る

  • 勤め先で放射能事故が起きてしまう。
    主人公はまったく関係なかったはずなのに、
    いつも一緒の車に乗って通勤していた友人が担当していたため、汚染されてしまう。
    それとは知らずに普通に生活していただけなのに、
    あちこちに放射能ちりを広めてしまう結果になる。自分の妻にも。

    彼らを襲ったのは健康被害だけではなく、世間に迫害されてしまった事。

    彼らが悪い訳じゃないのに。
    職場が、それにたまたま友人が担当者だっただけで・・・
    彼らも被害者なのに。

    どうにもならない怒りが多く、いろんな記事に振り回され、
    正確な事を受け入れる事が出来ない人間たちに悲しくなりました。

    自分だったらどうなのだろう。

  • うーん・・・
    内容が重かったのもあり、途中スピードアップして飛ばしつつ読んだところも多い。
    夫婦は何も悪くないのに、目に見えないがゆえにまきこまれていく哀しさ。
    放射能への無知、偏見。わかってはいるけど、人間の心情とか集団心理とかの恐ろしさをつきつけられた気がした。

  • 被爆の見えない恐怖、偏見、差別。何年も前に書かれた作品であり、また、福島の原発事故と規模は違えど、人間の醜さは変わらない(もちろん美しさもあるが)。ほんの少しの差で立場が変わってしまうのに・・・。妊娠した夫婦に降りかかる悲劇と葛藤。そして、胎児の運命は・・・。

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