特別料理 (異色作家短篇集 11)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152087416

感想・レビュー・書評

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  • 同じシリーズのスタージョン『一角獣・多角獣』を先に読んだので、
    何となく比べてしまうのだけど、
    どちらも狂気とブラックユーモアに満ちていながら、
    エリンの方が裏表がないというか、陰に籠もった感じがしないというか、
    変な言い方だが、朗らかな印象を受けた。

    ■特別料理(The Specialty of House)
     読者は多分ほとんど、物語の裏で行われていることに簡単に見当がつくのだが、
     わかっているけれど軽妙な語りに引き込まれてニヤニヤしながら堪能してしまうはず。
     事情を察していない登場人物を前に、
     作者と読者がこっそり共犯関係を結んでいるような、後ろめたくも愉快な気分を味わえる。
     やみつきになる薄いスープっていうのは、もしかして塩分濃度が……(以下自主規制)

    ■お先棒かつぎ(The Cat's-Paw)
     原題(猫の足)は「ダシ(手先)に使われる人」の意で、そのまんま「先棒担ぎ」。
     途中(オチが確定するまで)の印象はポール・オースター『幽霊たち』に似ていた。
     もちろん、こちらの方がずっと古い作品なのだけど。

    ■クリスマス・イヴの凶事(Death on Christmas Eve)
     同じことをずーっと繰り返してるんですね、ハァ(溜め息)
     まあ、近くにいると狂気は伝染するっていうから……。

    ■アプルビー氏の乱れなき世界(The Orderly World of Mr.Appleby)
     完膚なきまでの秩序(笑)
     主人公のアプルビーという名は否応なくリンゴを連想させるが、
     辞書を引いたら"apple-pie order"なる「秩序整然」という意味の言葉を発見。

    ■好敵手(Fool's Mate)
     原題はチェスの「フールズメイト」(バカ詰み)で、初心者が陥りがちな自滅パターン。
     現代では練習用ソフトを使うって手があるので、こんな展開にはならないよなぁ。

    ■君にそっくり(The Best of Everything)
     オチは想定の範囲内……でも面白い。

    ■壁をへだてた目撃者(The Betrayers)
     原題だけで何やら見当がついてしまうんだけど、それでも面白い。

    ■パーティーの夜(The House Party)
     無間地獄(笑)

    ■専用列車(Briker's Special)
     これもオチには見当がついちゃうけど、読ませるなぁぁって感じ。

    ■決断の時(The Moment of Decision)
     こいつは見事なリドル・ストーリー!
     後半のポオ風(?)な息詰まるサスペンス感もよかった。

  • かのエラリイ・クイーン氏が序文を捧げている本巻。
    表題作の特別料理のほか、9作。意外な結末あり、リドルストーリーものあり、ショートミステリーならではの色とりどりな作品集です。
    実は、序文での賛美があまりに凄かったので、「特別料理」を読んだ時、結末を先読みして勝手に「奇想天外な結末ってほどでも?」などと途中、小首を傾げて読んでおりました。
    もし、残念ながら私と同じ感覚になった方は、是非山本一力さんの解説をお読み下さい。改めて鳥肌が立つはずです。

  • 文学

  • 装丁が素敵。
    表題作は”注文の多い料理店”を思い起こさせる結末でそれなりにおもしろかったが、しかしどうにも古風な邦訳が自分にはあまり合わず投了。

  • 奇妙な味わいを堪能。「特別料理」の味わいと言ったら!

  • 表題の「特別料理」を含む10編の短篇集。
    中では特に「好敵手」がお気に入り。

    「特別料理」
    美味な食事を提供するレストラン。なかでもアミルスタン羊と呼ばれる肉を使った料理は絶品だが、何故か不定期にしか提供されない。
    アミルスタン羊の正体は途中で予想がついてしまう。
    「お先棒かつぎ」
    主人公が厚遇で意味不明の仕事を与えられる。しかし雇い主の目的は・・・というミステリにはよくある謎(こちらが先?)だが、ストーリーよりも主人公の真面目過ぎる性格表現がこの小説の真髄だと思う。
    「クリスマス・イブの凶事」
    姉弟が住む家に訪れた弁護士が、亡くなった弟の嫁を巡る姉弟のいがみ合いに巻き込まれる話だが、最後にどんでん返しに近い内容が待っている。
    「アブルビー氏の乱れなき世界」
    自分の妻を遺産目当てに次々と殺害する主人公。その手段は過去のある事件をヒントに考えたものだった。そして7番目の標的があらわれるが、そこには逆に罠が仕掛けられていたというお話。
    最後に皮肉な結末が待っている。
    「好敵手」
    知り合いから譲り受けたチェス駒がきっかけで主人公はチェスに興味を持ちはまり込んでゆくが、妻がうるさく、対戦相手を家に呼ぶことも出来ない。やむなく主人公は一人二役を演じゲームするという方策を編み出した。その方法にさえ妻は不満を持つが主人公は構わずさらに一人二役の深みにはまってゆく。そしてその行き過ぎた結果は。
    いわゆる二重人格物だが、その人格の現れ方や妻に対する隠れた感情を別人格に語らせる手法が面白い。
    「君にそっくり」
    上流社会における同年代の青年にジェラシーと憧れを持つ主人公は、ある日憧れの元上流社会育ちの青年と知り合う。その青年から得た知識は主人公の立ち振る舞いを青年とそっくりに変えてゆく。やっと憧れの社会へ仲間入りが出来るはずだったが・・・。
    同時代に発表されたパトリシア・ハイスミスの「太陽がいっぱい」の主人公にイメージが重なる。
    「壁をへだてた目撃者」
    アパートの隣室に住む気になる女性。ある日同居する男との争いで女性は殺されどこかへ運び出された様子。男の正体を探るべく女性の故郷に出向きその過去を探ってゆくが・・・。
    語りは相変わらずうまいが結末が最初から予想できてしまい意外性は無い。
    「パーティーの夜」
    舞台俳優である主人公が気絶から意識を取り戻すところから始まる現実と芝居との境目のない無限ループの世界。
    「専用列車」
    妻の不貞を偶然見つけ主人公は相手の男を交通事故に見せかけ殺害するが、それを知った妻の行動は予想外の物だった。
    「決断の時」
    脱出手品の名人に仕掛けた賭けは自宅地下の牢獄からの制限時間内での脱出だったが、牢獄内から発せられた言葉でジレンマに陥る。

  • 1974年9月30日、改訂初、並、帯付
    2014年12月5日、白子BF

  • 2014年8月5日読了。「特別料理」を提供する奇妙なレストランを描く表題作を読みたくて読んでみたが、まさに上質のコース料理を楽しんだようないい気持ちになった。クラシックな翻訳ミステリの独特の洒落っ気は癖になるな・・・。表題作もそうだが、6人の妻を次々に殺そうとする男の話など、ちょっと「ありえねー」と思わせる設定がこの人の小説の味か。

  • そうか、これがかの有名な「アミルスタン羊」だったのか!

  • 表題作であるエラリークイーンも絶賛したスタンリイ・エリンのデビュー作を含むスタンリイ・エリンの短編集。「特別料理」の中で何か事件が起きるわけでもなく、人が死ぬわけでもなく、結末も大体想像がついているにも関わらず読ませる文章力は、第一行目だけで40回以上も書き直すこともあるという著者ならではか。

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