レベル3 (異色作家短篇集 13)

  • 早川書房
3.68
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本棚登録 : 175
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152087584

感想・レビュー・書評

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  • 私はこれまでSF作品で人が時空を超えるのは好奇心が理由だとばかり思っていた。しかし、この世界はそうじゃない。これは逃避の文学だ!考えてみればSFだけでなくファンタジーやその他フィクションだって、いやもっと言えば文学に限らず他の娯楽だって、現実からの逃避にあふれているではないか。ジャック・フィニイはそれをズバリ指摘している。「逃避して何が悪い?文学の中でまでわざわざ厳しい現実を直視して苦痛に喘ぐなんてマゾじゃないの」という人もいるだろうが、私はたぶんマゾ寄りなのでそういう皮肉の効いた作品が好きなのだ。
    「失踪人名簿」に出てくる新天地ヴァーナには、ラジオやテレビ、電話、自動車の類はないそうだ。これどれもズバリ私の嫌いな文明の利器!便利さがうるさく耳障りであることにみんな鈍感になり過ぎている。
    「青春を少々」はO・ヘンリーっぽい。現実でだって物語的な事はいろいろと起こるものだと思う。だから視野を広げるのは大切なことだ。地面やスマホばかり見て歩いていては素敵な出来事には出会えない。上を向いて歩こう。

  • 緊迫感漂うもの、最後にほっとして温かい気分を迎えられるものなど味つけはさまざまだが、収録されているもののほとんどが時間軸を超えたドラマを演出していて、ノスタルジックな香り漂うSF短編集だった。

  • 時間が交錯するときに生まれる物語。過去への憧憬。

    • karatekidtasaさん
      亡父はジャック・フィニイの作品を数多く翻訳しましたが、『失踪人名簿』はそのなかでもわたしが好きなものです。それは恐らく子供のころ、本作に基づ...
      亡父はジャック・フィニイの作品を数多く翻訳しましたが、『失踪人名簿』はそのなかでもわたしが好きなものです。それは恐らく子供のころ、本作に基づいた米テレビドラマ『遊星への片道切符』を父と見たせいでしょう。以来、半世紀近くこの作品を探してきましたが、先日、偶然出くわしました。サイトを添付します。ご参考まで。 https://www.youtube.com/watch?v=bwkEhMn5AZ8&list=WL&index=106
      2023/08/08
    • kmyさん
      karatekidtasaさん
      コメントありがとうございます。
      ブクログも久しぶりに開きました。
      ジャック・フィニィも久しぶりに読み返...
      karatekidtasaさん
      コメントありがとうございます。
      ブクログも久しぶりに開きました。
      ジャック・フィニィも久しぶりに読み返そうと思う機会をくださってありがとうございます。
      YouTubeの方も見たいと思います。
      2023/08/12
    • karatekidtasaさん
      ぜひご覧になってください。原作とはやや設定が異なりますが、メッセージは同じです。
      ぜひご覧になってください。原作とはやや設定が異なりますが、メッセージは同じです。
      2023/08/13
  • 時間を行き来する話が多く、その捉え方が独特だなぁと感じた。でも一番好きだったのは『死人のポケットの中には』。私も同じような経験があるから親近感が湧いた。『失踪人名簿』も好き。「アクメ旅行案内所」本当にありそう(笑)。この本には入っていないけれども『盗まれた街』は読んでみたい。2度目は好きな短編が違うね。

  • 再読:この手(奇妙な味系)の作品は学生時代からの好物。あらためて読んでみてもやはり面白い。
    ジャック・フィニィの他の作品にもみられる懐古趣味は、この作品集にもたっぷり詰まっている。

  • どのお話も不思議な味わいでとても面白かった!

    最初の4編が特に好きでした。
    表題作「レベル3」は、あるはずのない地下3階へ行った男の話。
    ちょっと普通の人間とは違うお隣さん「おかしな隣人」。
    各地で起こる奇怪な現象「こわい」。
    この世界から脱出したい人だけが行ける不思議な場所「失踪人名簿」。

    同じ雑誌を読んでいた男女の恋の話「青春を少々」や、
    ラストの「死人のポケットの中には」も清々しさも印象的です。

    解説が恩田陸さんだったのも嬉しい驚きでした!
    ジャック・フィニイは「盗まれた街」のイメージが強かったのですが、
    こういう柔らかいSFも良いですね。面白かったです。

  • 「ゲイルズバーグ」と同じ、ノスタルジックファンタジー路線。最高でしょう。

  •  原著は1957年のようだ。
     ジャック・フィニイというと、何度も映画化されたSFの名作『盗まれた街』(映画名「光る眼」等)で有名な作家だ。
     この短編集を読んでみると、なかなか語り口は上手い方なのだろう。束の間の幻想を見せてくれるような、ファンタジックなものが多い。タイム・トラベルを扱った話が多いのだが、特に、「あの良かった過去」へと遡行するテーマが繰り返されているのが目立つ。ウンザリするような、あるいは単調すぎる現在から抜け出して、「あの頃」へと逃避する。読者の体験もまた、そのような現実逃避のファンタジーとなる。1957年のアメリカというのは、そんなに「過去への憧憬」が普遍的に漂っていたのだろうか。
     いずれにしても、まあまあ楽しめる、ちょっとしたショートストーリーという感じだった。

  • 話の内容は面白かったが、翻訳の問題か日本語の使われ方の時代的な問題かスムーズに読めなかった。

    昭和57年発行の第四版(黒とオレンジの表紙)を読んだが、最新版を読めばまだ違ったかなぁ…。

    またいつか最新版を手に取ってみようと思う。

  • 青春を少々、は最高!妄想よりも現実で幸せを掴む感じがいいです。写真に撮って持ち歩きたいほど。
    死人のポケットの中には、も日本だったら悲劇で終わるのが人との交わりに帰結するあたり、フィニィのよさというか古き良きアメリカ感があってステキ。

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