テロル

  • 早川書房 (2007年3月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784152088055

感想・レビュー・書評

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  • 思いがけない災難のように降りかかってきたり、寄生虫か何かのように心のなかにとりつくのかもしれない。それを境に、二度と世界は同じように見えなくなる

  •  故郷パレスチナ自治区に帰り、自爆して死んだ妻と自分のルーツをたどっていくアミーンの苦悩が印象的だった。しかし、イスラエルの国土テルアビブとほんの少し距離を隔てただけなのに、パレスチナの荒涼とした光景はすごい。イスラエル対パレスチナの憎悪の応酬もすさまじい。こちらの本が書かれたのが2002年だから、第二次インティファーダの直後といった感じなんだろうか。
     思想と人生は不可分なのだというカドラのマニュフェストのようなものをひしひし感じた。人間の本質的な孤独、というのも胸に迫ってきて、読み終わったあとしばらく放心した。泣いた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「思想と人生は不可分なのだ」。それは幸せなコトなのか、それとも不幸せなコトなのか?きっとどちらでもなく必然なんだろうなぁ、、、

      “カブール...
      「思想と人生は不可分なのだ」。それは幸せなコトなのか、それとも不幸せなコトなのか?きっとどちらでもなく必然なんだろうなぁ、、、

      “カブールの燕たち”は文庫になったら読もうと思っているのですが、果たしていつになることやら。。。
      2012/03/08
    • 尾崎さん
      ですねー。。どんな人生でも思想に縛られて生きているんだなあと実感しました。

      『カブール~』のアフガニスタンの荒廃ぶりもすごく覚えてますっ。...
      ですねー。。どんな人生でも思想に縛られて生きているんだなあと実感しました。

      『カブール~』のアフガニスタンの荒廃ぶりもすごく覚えてますっ。この人の書く極限状態は胃が痛くなりますね~(><)
      2012/03/09
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この人の書く極限状態は胃が痛くなりますね~(><) 」←あーー読むのやめようかな?
      モフセン・マフマルバフの「アフガニスタンの仏像は(タイ...
      「この人の書く極限状態は胃が痛くなりますね~(><) 」←あーー読むのやめようかな?
      モフセン・マフマルバフの「アフガニスタンの仏像は(タイトル省略)」を読んで、彼の国の複雑さに心痛んでます。。。
      2012/03/09
  • アラブ系イスラエル人のアミーンは医師として富と名声を勝ち取り、最愛の妻シヘムと
    幸せな生活を送っていた。

    勤務先の病院の近くで自爆テロが起き、怪我人の処置やアラブ系に対する差別的な検問を
    何度も受けてくたくたになって帰宅したアミーンは、また病院へと呼び戻され、妻の遺体を
    確認するよう告げられた後、テロの実行犯がその妻であったと聞かされる。

    ムスリムとは言え毎日の礼拝も行わない妻が、何不自由ない生活を与えてきた妻が
    まさかイスラム原理主義者だとは毛の先ほども信じられないアミーンは、真実を見つけるため
    エルサレムへ向かう。

    -------
    ヤスミナ・カドラを読むのは、カブールの燕達に続き2冊目。
    テロルの方が、ずいぶんと読みやすい。

    繊細だが硬質な文章が、崩壊していくアミーンの世界を美しく、時には醜悪に書き表している。
    信仰や宗教、民族間の紛争などの社会的な思想断絶と、睦まじいと信じて疑わなかった妻の
    内面を理解していなかったという個人的な断絶を、同じように扱うことで、大きな問題を
    身近に引き寄せてくれる。
    そして、社会的な問題の切り口もあくまで個人的な視点で描き、アミーンの一人称でストーリーが
    勧められていくにも関わらず、対立する二者の信条を平等に書き表す著者の視点も感じとれる。

    フィクションではあるが、非常に生々しく、それでいて緻密に作り上げられたストーリー。
    翻訳も素晴らしく、とても読みやすい。
    ヤスミナ・カドラの他の作品をもっと日本に紹介してもらいたい。

  • テロル

    ハヤカワepiブック・プラネットの「観光」を読んで、アジア的な視点で、タイの庶民の哀楽が心に残ったので、この本を読んでみました。
    全体の印象は、アジアの柔らかい神様、価値観に対してアラブの硬い神様、価値観の違いが際だっていて、アジアの柔らかい神様の価値観が強い竹蔵は、ちょっと食傷気味でした。
    主人公のベドウィン族出身で、イスラエルに帰化して医者をしているアミーンはイスラエルで何の不自由もない暮らしを送っています。そんな中、愛する妻のシヘムは妊婦に変装して爆弾を腹に巻いて、マクドナルドで自爆テロを起こします。何故、シヘムは”カミカゼ”を起こしたのか?アミーンの自暴自虐とも取れる探索の旅が始まります。
    報復のために家をイスラエル軍につぶされるアミーンの一族。そして、さらなる報復のために一身を投じていく人たち。希望のない毎日よりも大儀のための死は幸福か?
    平和ボケしている竹蔵にはピンときていませんが、世界では多くの人が希望のない毎日を送っているかと思うと、なんとも後ろめたい思いを持ってしまいました。

    竹蔵

  • 4.07/141
    内容(「BOOK」データベースより)
    『イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アーミンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。だが、あの自爆テロがすべてを変えた。19名の犠牲者。その中にシヘムがいたのだ。呆然とするアーミンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。「テロの首謀者はあなたの妻だ」妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。なぜ彼女がそんなことを…。アーミンは真相を探るため、妻のルーツを探り、やがて想像を絶する真実に辿りつく。イスラムの夫婦の見えざる亀裂を描き出す、哀しみに満ちた愛の世界。テロが横行する極限下、イスラム社会の至高の愛と究極の絶望を描いた傑作。』


    原書名:『L'Attentat』(英語版『The Attack』)
    著者:ヤスミナ・カドラ (Yasmina Khadra)
    訳者:藤本 優子
    出版社 ‏: ‎早川書房
    単行本 ‏: ‎278ページ

  • ヤスミナ・カドラの小説にハズレはない

  • いつまでも止む事の無い内戦は何故継続しているのか?それは貧困の為や領土拡大の為の戦争ではなく、自由を勝ち取るための戦争だから。そもそも、自由に対する根本的な考えの違いがある。否、考え方などと言う半端なものではなく、信念の違い。「自由とは心の底からの信念なんだ。」
    「これは誰の身に起きてもおかしくない事なんだ。災難の様に降りかかってきたり、寄生虫か何かのように心の中にとりつくのかもしれない。それを境に、二度と世界は同じように見えなくなる。」
    幸福という考え方を根底から揺るがされる物語。良い本に出合えた。

  • 社会・宗教問題、戦闘・テロ・危ない・自分を犠牲に人の命を奪う・信じられない、イスラエルとパレスチナのイメージはそんなものである。ニュースで目にしたり、世界史で知識として学んだかぎり。もっと深く、違う角度から考えてみなければとこの本を読んで気づく。イスラームとしてユダヤとしてあるいはその狭間で生きる人々の声を、どちら側からも聞き取って物語にしたよう。

  • シンプルな本だった。底が浅いとか単純とかではなく、一貫して無駄がないという意味で。

    外科医の主人公は順風満帆な人生を送っている。美しく優しい妻に安定した地位、やりがいのある仕事… だけれど幸せなはずのその妻が体にダイナマイトを巻き付け、子供や家族連れでごった返すハンバーガーショップで自爆する。
    何かの間違いだ、と主人公は思う。何不自由ない生活を送っていた妻が、そんなことをする理由がない。だからイスラム過激派の聖地に踏み込んで真相を知ろうとする。

    結果的には「理由」は存在した。自爆テロをする「理由」は、たぶん諸説あるんだろうけど、この本で書かれていたのは、憎みすぎて、虐げられすぎて、もう何かのために死ぬことにしか存在意義を見出せないという心理だった。
    正直、この考えを提示された当初は実感が沸かないで、「へえ、そうなんだ、でも日本に住んでるしよくわからないなあ~」程度に思ってた。でも読んでるうちにちょっとその心理がわかってしまいそうになって怖かった。

    なんでかっていうと、やっぱり宗教の価値観って、人を誘い込むのが上手いんだな。
    イスラム過激派の人たちは、主人公たちの生活を「黄金の檻」と表現する。金銭に恵まれ、豪華な屋敷で安全に眠る、そんな生活は黄金で囲まれた、一見自由に思えるがそれに囚われて抜け出せない囚人の生活だと。
    これ、ちょっと理解できちゃう。でもそれが怖い。だってこんなの、現在の価値観をひっくり返してしまう考え方だし、今までの生活がまやかしだった! ってなったら、それを教えてくれた人や集団が正しいと思って傾倒しちゃいそう。
    それを糸口として、アラブ系の親族への愛着、それを簡単に蹂躙する軍や政府、そういったエピソードを重ねられて、圧倒的に大きなものに対する、反抗心や絶望、憎しみが、少しだけ理解できるようになる。

    読み終わって、自爆テロの心理は少しだけ分かる。(分かるというのはおこがましいのかもしれないけど。)でもそれを正しいと思ったらやっぱりおかしい。主人公の妻はやっぱりバカだよ。尊厳ある死に方で死ぬ理由はあるかも知れないけど、それに他人を巻き込む理由はなかったんじゃないの。
    だから自爆テロの「理由」は詭弁だ、と思う。けど、それは私が自分の現在の価値観を守りたいための自己弁護かも、とか同時に考える。それに、何もかも破壊してやりたいと思うほどの憎しみは、戦争をしない日本で生きてる自分にはわからないものだし…
    はっきりとした線で区切られていたテロに対する理解と不理解が、読んでいる途中で混ざっちゃう。内容はシンプルで一途なのに影響力のある本だった。

  • アラブとイスラエルの根深い対立を改めて思い知らされた。
    言葉で聞いて知っている、ニュース映像を見て知っている、そう思っていたこの殺伐さがこの本を読んだことで当事者の心情から知ることが出来た。
    何てリアルなフィクションなのだろう。

    イスラエル国籍を取得し外科医として幸福に暮らすベドウィン族の主人公は妻が自爆テロの実行犯になってから全てが一変してしまう。満ち足りた生活を送っていた妻をテロに駆り立てたものを知るために破滅へと突き進む。
    アラブにはアラブの正義と主張があり、イスラエルにも同様のものがある。相容れない二つの民族の主張の間で生きることの難しさ、問題の根深さは自分では完全に理解することは出来ないのだろうけれど、この本で少しは分かることが出来たのではなかろうか…と思いたい。

  • 重い話だった。

    実は自分の妻がテロ行為をしてしまったことより、不貞を働いたかもしれないことが気になっていた?

    「夢を見すぎる人は、生きている者のことを忘れてしまう」

    「今までの人生で、愛と新鮮な水とわずかばかりのものと希望さえあれば生きていけるとわかっているが、恥辱を受けた場合は決して無傷でいられない」
    「自尊心を踏みつけにされると、それがきっかけとなってとんでもない惨事が引き起こされる。尊厳をもてるだけけの力の裏付けがなく、自分は無力だと自覚させられたときはなおさらだ。憎しみを知る手雨の最高の学び舎はまさにここだ」

    何がヘシムを駆り立てたのか。民族が受けてしまった恥辱とは関係のない世界に自分がいることに気づいてしまったからか。
    一度受けた恥辱はもうぬぐうことができないのか。

  • 田舎に帰省してたはずの結婚相手が、全然関係ない場所で事故にあって死んでしまってたら…残された方の驚きはそれだけでも相当なものだが、この作品ではさらに、彼女が自爆テロの実行犯だったら?というダメ押しがつく。

    自暴自棄になりながらも主人公は、彼女が生前に発していたなんらかのサインを探し求め、残された手がかりに片っ端から挑みまくる。その姿が実に痛々しいのだが、なぜか他人事とは切って捨てられないような臨場感というか真実味がある。

    中東紛争もの、イスラムものとして遠ざけたり身構えたりせずに、日本の我々にも起こりうる夫婦間の物語として受け止めてみたい。著者や訳者の狙いからは外れるもしれないけれど。

  • 埋めることのできない断絶。読後、虚無感が漂う。

  • 「仲むつまじく暮らしていた妻が自爆テロの犯人だった」。
    この設定からかなり心を掴まれるが、読み出すとさらに面白く、
    一気に引き込まれてしまった。
    しかもフィクションでありながら、
    どうしようもない現実も突きつけられる。
    また、硬派な話だが訳がとても読みやすいのも良い。
    訳者の藤本優子さんが「良い本は面白いと思わせると同時に、世界の見方すら変える」といった
    ことを書かれているが、まさにそう。
    価値観に揺さぶりをかけてくるものすごい本。

  • なぜだか英語版で読んだ(もとはフランス語)。そのせいですごく時間がかかった。4年前ぐらいに買ったのかな…

    愛する人や家族を置いて、そこに爆弾を抱えて、出掛けて帰ってこない人、は本の中だけでなくて存在する。狂気に駆られたわけではなく、洗脳されたわけでもなく、自分の意思で。
    読みながら何度も自分のお腹をさすった。わたしはここに爆弾を抱えて、死ににいくようなことを一度も考えたことなんてない。わたしは恵まれていて幸せだから。日本は平和だから。理由はたくさんある。本でもこんな気持ちつらい。つらいよ。

  •  自爆テロはなぜ止まないのか?
     自らの命をなげうってまで、果たすべき目的などあるのだろうか。彼らはなぜ、生きて享受できる幸福や歓びよりも、テロという、しかも自爆という名の自死と殺人の途を選ぶのだろう。

     それらは私にとっての解けない謎である。多くの日本人、欧米人、もちろん米大統領にとっても理解できない謎である。

     先日BS・NHK週刊ブックレビューで紹介されていたこの本を手に取ったのはその謎を解きたかったからだ。
     「なぜ妻は自爆したのか?」と帯には副題が記されている。

     主人公はイスラエルで成功した外科医。だが彼はユダヤ人ではなく、敬虔ではないがイスラム教徒であり、砂漠の民ベドウィン族の出身。
     
     名誉も富も手にし順風に思える日常の中で主人公が唐突に直面した、「妻が自爆テロ犯」という衝撃。そして、「あの家内がなぜ」との問いを追求し、どんどん危険なゾーンへと主人公は入り込んでいってしまう。

     なぜなんだという思いに衝き動かされ、成功してゆく過程で脱ぎ捨て、捨て置いてきた信仰や貧しい暮らし、部族社会を、あたかも時の流れを遡るかのように辿っていく。
     亡命アルジェリア人である著者:ヤスミナ・カドラの表現もストーリーも見事である。読む者は、主人公と一緒に死の恐怖を味わい、目を背けたくなる現実を追体験させられる。
     そして、最後には・・・

     この本に心を揺り動かされた者の務めとして、詳細をここで語ることはできない。
     ただ、同じ疑問を抱く多くの人はこの本を読むべきである。

     「答え」は読むことの中にある、かもしれない。

  • フィクションでありながら、現実のパレスチナとイスラエルの姿がそこにはあるような気がする作品。
    著者のヤスミナ・カドラは、元アルジェリア軍人で現在はフランス在住。

  • イスラエルに帰化したアラブ系の医師とその奥さんはとても幸せだったはずなのに...ある日突然、自分の奥さんが自爆テロで死んだ。という衝撃から始まる物語。

  • [ 内容 ]
    イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アーミンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。
    だが、あの自爆テロがすべてを変えた。
    19名の犠牲者。
    その中にシヘムがいたのだ。
    呆然とするアーミンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。
    「テロの首謀者はあなたの妻だ」妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。
    なぜ彼女がそんなことを…。
    アーミンは真相を探るため、妻のルーツを探り、やがて想像を絶する真実に辿りつく。
    イスラムの夫婦の見えざる亀裂を描き出す、哀しみに満ちた愛の世界。
    テロが横行する極限下、イスラム社会の至高の愛と究極の絶望を描いた傑作。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • この小説の主人公は、アラブ系イスラエル人の敏腕外科医、Amine。
    満員のレストランで、起こった自爆テロの被害者を治療して、クタクタになって帰宅した Amineは、警察庁のお偉方の友人のNaveedから、「至急、病院へ戻って来る様に」との電話を受ける。 
    病院へ着いた、Amineを待っていたのは、爆発の影響で、ぼろぼろになった変わり果てた妻、Shiemの遺体だった。
    そして、Amine は、 Naveedから、レストランで起こった自爆テロ事件の犯人は、妊婦に変装し、マタニティードレスの下に隠した爆弾を爆破させた彼の妻、Shiemだと、伝えられる。

    アラブ系でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、社会的地位と、財産があり、愛する妻と幸せな日々を送っていた主人公とその妻のShiem。
    やさしくて、慎み深く、なによりも自分を強く愛していたと信じていた妻が、『KAMIKAZE』と呼ばれる自爆テロを起こした事が、どうしても信じられないAmineは、ユダヤ系イスラエル人の同僚であるKimの助けを借りて、Shiemの死の謎を解明しようとする・・・


    この本を読み終わって、とっさに頭に浮かんだ言葉は「 Trop fort ! Poignant ! 」

    私は、これまでに、パレスチナ問題について、書かれた記事や、テレビのルポは、数え切れない程読んだり見たりしました、又、この地方へ旅行へ行った人の話を聞いたりもしましたが、この本を読んで、「もしかしたら。今まで私は、何も理解していなかったのではないか」と、愕然とした思いを味わいました。

    フィクションという形を持って、パレスチナ・イスラエルの紛争と一緒に生きていかねばならない運命に生まれた、パレスチナ人たちが直面している現実を出来るだけ忠実に伝えようとし、それに成功した作品だと思います。

    貧しいアラブ系の家庭の出身でありながら、完全にイスラエル社会に溶け込み、イスラム原理主義者を完全に否定している主人公。彼は、自爆テロを賞賛する、imam に対して、次のように叫びます。
    <BLOCKQUOTE>
    「Tu oses me s&ocirc;uler avec tes histoire de braboure et de dignit&eacute; lorsque tu restes dans ton coin en envoyant des femmes et des gamins au charbon?
    D&eacute;trempe-toi: nous vivons bien sur la m&ecirc;me plan&egrave;te, mon fr&egrave;re, sauf que nous ne logeons pas &agrave; la m&ecirc;me enseigne.
    Tu as choisi de tuer, j'ai chosi de suver. Ce qui est l'ennemi pour toi, pour moi est un patient.」

    女や子供達を、地獄に送っておきながら、自分はぬくぬくとしているお前が、勇気や尊厳を語る事で、ずうずうしくも、俺を陶酔させようとするつもりか。
    勘違いしないでもらいたい。俺たちは、同じ惑星に住んでいる、ただ、違った生き方を選んだだけだ。
    お前は殺す事を選び、俺は治療する事を選んだ。お前にとっての敵は、俺にとっては患者だ。
    </BLOCKQUOTE>
    そんな、考えを持っているAmineを中心に、

    彼の妻が自爆テロを犯したにも係わらず、Amineに変わらない友情を示し続けるユダヤ人のKim、と Naveed、

    ナチスのユダヤ人収容所にいたことのあるKimの父親、

    常にテロ恐怖に脅えて暮らしているがゆえ、テロ行為にかかわるものに対し激しい憎悪を抱く人々、

    そして、イスラム原理主義に傾倒せずにはいられない立場に追い込まれてしまった者たち、

    彼ら生き方と考え方が、グサグサと、胸に突き刺さるナイフのように、頁をめくるにつれ、読む者の心に刻み込まれてゆきます。

    最後に、Amineがたどり着いた結論は、どうやったら解くことができるのか誰にも分らない、現在のパレスチナ・イスラエルの紛争の行方を暗示しているようで、暗い気持ちになりました。

    著者がアルジェリア人であり、主人公がアラブ系という事もあり、この作品、少々、パレスチナ寄りになっている事は、否めません。
    ですが、「中立」を第一に考えて、行われた報道では伝える事が難しい、パレスチナ人が生きている現実を読者に伝えるのに成功しているのも、否めない事実です。

    パレスチナ自治評議会選挙でハマスが勝利を収めたのは、納得できませんが、どうして、パレスチナ人たちがハマスを選んだのか、この小説を読んでみて、少しですが、理解できた様な気がしました。

    Yasmina KHADRA こと、Mohammed MOULESSEHOUL の様な文才が持たない私は、どんなに言葉を尽くしても、うまく、この本を読んだ後感じた思いを伝えることは出来そうにありません。

    「とにかく、読んでみてください」 

    この本を読み終わった後は、どんな本を読んでも、物足りなく感じてしまい、困っています。

    このレヴューは、「L'attentat」についてブログで書いたものです。
    http://lireenfete.blog27.fc2.com/blog-entry-69.html

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