砲台島 (ハヤカワ・ミステリワールド)

  • 早川書房 (2007年4月24日発売)
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本 ・本 (440ページ) / ISBN・EAN: 9784152088147

感想・レビュー・書評

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  •  太平洋戦争末期、警察官の主人公が、一人の憲兵とともに一連の殺人事件のなぞを追う。みたいな感じ。 三咲さんの作品は本作で2冊目。全体的に暗い感じが三咲らしい。結局、憲兵が米国側のスパイで殺人事件を捜査する振りして、自分の痕跡を消していた。というのは、”オチ”としてどうかな、と思うけど、この時代を背景にした作品は基本的に好き。

  • 三咲光郎 2007年の作品。

    すさまじい物語だった。
    戦時下の憲兵と警察の力関係のことなど、よく知らずに読んだ。
    ラスト80ページは「凄惨」のひとことだ。

    確かにミステリではある。
    が、事件の背景を追えば追うほど、戦時下の日本のありようが読み手に迫ってくる。
    謎を追うことを楽しむミステリとは勝手が違う。
    重いものが胸に渦巻く。
    どんなに読み進めても、憲兵・渡里中尉の恐ろしさが和らぐことはなかった。
    反して、最初は威張り散らして見えた憲兵たちの人間らしさが、
    徐々にじんわり沁みていった。

    主人公の巡査・弘之は、18歳とは思えない冷静さだった。
    命が軽んじられていた時代、赤紙が来れば特攻要員として召集されてしまう。
    あと4日で召集というせっぱつまった命だった。
    だから、ここまで冷静に、なおかつ大胆になれたのか。
    一巡査が、大胆に憲兵にズバズバと切り込んでいくその様、
    ある種、ハリウッド映画のようだと思った。
    地方という特色のせいもあろう。そう解釈したい。

    読み終えて、ざわざわしたものが残った。
    いろいろな読み方ができるだろう。
    食べる手立てをなくした人たちが取った行動について。
    毎日、未曾有の命が爆撃で失われている中、
    殺された憲兵数人の足取りを追う弘之の捜査について…。

  • やっと読み終わりましたが…怒涛の最後。
    最後の最後、そうきましたか。
    渡里中尉より矢萩中尉が個人的に好き(笑)
    まぁなんというか、ミステリー小説なのでうかつに感想が書けませんが、恐ろしい本でした…。
    次々と切られていく玉の緒。この時代の焦土の中に立ってしまった気がしてなりません。
    しばらく現実に戻れなそうです…。

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著者プロフィール

三咲光郎(みさき・みつお)
1959年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業。1993年に『大正暮色』で堺市自由都市文学賞、1998年に『大正四年の狙撃手』でオール讀物新人賞、2001年に『群蝶の空』で松本清張賞、2018年に『奥州ゆきを抄』(岸ノ里玉夫名義)で仙台短編文学賞を受賞。2022年に『空襲の樹』で第1回論創ミステリ大賞を受賞。

「2024年 『娘剣士 守りて候』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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