虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 812
レビュー : 162
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088314

感想・レビュー・書評

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  • 近未来の世界を描いてはいるが、現代の抱える諸問題や社会の構図、技術のトレンドを土台に緻密に構築された描写によって、リアリティとSF的な非現実が同居した独特の雰囲気を持っている。語り口にややくどさを感じる場面もあるが、非現実の舞台設定と事件の構図が徐々にリンクして1つの結末に収斂して行く構図は見事なもので、読み応えがある。読み終えてようやく、著者が敢えてこの舞台設定を選んだ理由が見えて来た。これもまた読み終えてから知ったことだが、著者は本書執筆時点で既に癌に冒されており、その後34歳の若さで夭逝したそうだ。次回作が読めないのが残念である。

  • 暗殺や虐殺などの死にまつわる陰惨な事柄を扱っているが、主人公の内面を探る思索がそれを感じさせない。また、SFの世界観を紡ぐ言葉が丁寧に選ばれているので、仮想の世界がリアルに思い描ける。
    自分の行為に対する許しが欲しい。というのはひとえに安心が得たいという事だろうか?物語の中核を通る文脈はこれに尽きると思う。
    虐殺器官→目や心臓の様に人間に元から備わっているものとしてジョン・ポールがみつけた。それを追うシェパード大尉。ルツィアとの関係。最後まで終わりが見えないミステリー。

    「僕は記録が欲しくてたまらなかった。自分の想像に根拠が欲しかったからじゃない。自分が想像すら出来ていない事を認めるのが怖かったからだ。」「見つめられる事の安堵は、息苦しさの表側に過ぎない。」

  • 銀座シックスの蔦屋書店で特集されていて気になって読みました。今年上半期のナンバー1です。
    10年前に書かれたと知り、クオリティにびっくり。作者がこの2年後に夭折していたことに更にびっくり。生きていれば、大作家になっていたのでは。

  • 映画を観た後に再読しようと思っていたので、手に取った。原作のラストが好きだったから、映画もそのままでやって欲しかった。

  • 上映前に読んでおこうと思ってやっと。

    読み終わり沈痛な面持ちのワイ。
    いや、面白かったです。

    「虐殺器官」のぼんやりとした設定が明かされて、主人公たち軍人が作戦前に施される感情調整および痛覚マスキングの詳細な説明を聞いてるうちに「あれ…?これは…」て思った。思うよね。思うよ。

    だからその先があるんだと思ったのよ。
    ジョン・ポールが虐殺の文法を用いて大量虐殺を生産し続ける理由にものすごく期待するじゃない?


    そこいらのカタルシスがちょっと期待外れというか、もっとこう、あらゆるピースがハマっておおお!みたいな快感があるかなぁと思ったんだけども…インドの悪夢みたいなドンパチがクライマックスになってしまった印象。
    あの辺りの描写はとても惹き込まれる。

    というか、ジョン・ポールさんが心中を語らんでも、主人公が母ちゃんの愛を確認できなくとも、物語として語られるべきことは語られているはずなんだけど、あえてその理由を理由として語ろうとしている部分が蛇足に感じられてしまうのがとてももったいない。
    物語の核になる部分が作者の意図していない部分に発現してる感じ。狙ったとこじゃないとこに顔を出してるというか。
    それの最たるものがルツィアさんかなぁ…キーマンなはずなのに、大事なところで(この人邪魔だわぁ)ってなる。


    近未来テクノロジーの描写は10年前とは思えなくて、ああ確かにこんな感じになっていくんだろうなぁと思ったし、軍事関係の諸々のテクノロジーは攻殻感あって正直ちょっとワクワクしちゃうし、それはそうと9.11後そう間もない時期にこういうお話を作れるのはすごいことだなぁと思う。

    あと結構大事なことなので2回言いました的に同じ表現、同じ文章がよく出てくるけど、これはとても映像的でなかなか好きです。強度が増して、印象が深まる。
    コメディの基本は繰り返しだ、ってのも2回言ってて、それ自体はその通りだけど、この話の内容を鑑みると色々考えちゃって、それはそれでなかなか面白い。

  • 近未来、テロを先導する謎の男を追う米軍特殊部隊と言うメインプロットは面白い。10年近く前に書かれた作品ながらディテールまで描きこまれた様々な近未来のガジェットも良く出来ている。
    しかし、話が長くて退屈。このプロットをテンポよく進めば面白かっただろうが、ここに特殊部隊ということで生殺与奪を繰り返す主人公の死生観が長々と、それも何か所でも出てきてこの思索描写が冗長。
    特に母親との絡みが繰り返され、挙句”罰してほしい”という心理変化など全く表層的な描写で退屈。

    ガジェットが詳しいのも同様で、筋肉組織を使ったポッドなど面白いのだけど、その”筋肉”の説明が延々とあったり…。
    近未来の世界観が確立しているのは十分わかるから、不要な説明は省いた方がずっと面白くなったと思う。
    この2/3程度の長さで十分。しっかりとした編者がいれば「機龍警察」レベルの傑作になったろうに、残念!
    作者は映画が好きなようで、様々な作品・俳優が会話に登場するがすべて現在の実際の作品。
    (ただし、カラス神父が落ちるのは「オーメン」ではなく「エクソシスト」)
    この作品自体をしっかりとした脚本で映画化したら面白くなるだろうけど。主演はジョエル・キーナマン辺りがいいかな?

  • やっと読むことができた早逝の作家『伊藤計劃の虐殺器官』
    1974年東京都生まれ、武蔵野美術大卒
    この作品でデビュー。

    アエラだったか、何かの雑誌の書評欄で、
    有名な売れっ子作家がその文章のうまさに
    仰天したった2年の活動に残念がっていた作家。

    話は9・11以後、
    激化の一途をたどる世界中のテロ行為。
    サラエボにテロ組織の手製核爆弾が落ちたことにより、
    先進国のID管理はますます精密で厳格化する。
    かたや、貧困にあえぐ第三国では内戦状態が激化。

    アメリカでは特殊部隊が国が指定する悪玉を
    密かに抹殺する部隊がますます活躍する。
    ある時、同胞である一人のアメリカ人の殺害が依頼される。

    秩序が失われ、いつ内戦が激化し、その火の粉が
    先進国にも飛び火するのではないかという地域が
    その男が入国ししばらくすると必ず内戦が起こり
    血を血で洗う凄惨な状況に陥るというのだ。
    そこにその男の意図がある確かな証拠が。

    交通事故で脳死の母親の生命維持装置を切るという
    決断をした兵士が、その内面に悩みながら
    淡々と死を与えてゆく様は、近未来の脳活動をも
    科学的操作で、コントロールする国家と
    戦争という悲惨な現実に陥ることを選択する側の
    論理と向き合う。

    細かく散りばめられたエピソードや小道具も
    読む者を飽きさせない臨場感溢れる作品だった。
    映画のジャンルで「戦争もの」はあまり好まない私だが
    そんな私でも息をもつかせぬ内容があった。
    戦争、起こす側の論理、
    それを求めてしまう国民の論理
    何が始めさせてしまうか、
    なぜ止められないのか、
    そんな真理も描かれる。

    現実世界にもあまりに近いそんな作品は
    楽しめる方が多いように感じた。

  • 伊藤計劃を知ったのは小島秀夫がきっかけなのですが、なるほど。確かに仲が良さそうな内容です。メタルギアソリッド2が好きな方は、きっと虐殺器官が好きで、メタルギアソリッド4が好きで、そしてハーモニーが好き、かもしれません。
    刺激的な単語を使用した題名ながら、淡々と語られる世界観とその印象に、題名に覚えるような刺激的な内容は序盤にはありません。むしろ1人称ながら、それほど強い感情を抱かず、一線を引いたような描写は、感情を失いつつある世界とよくなじんでいます。エスキモーは雪の名詞を20通り持つ、ケビン・ベーコン・ゲームなどの雑学が、時おりとってつけたように混ざるのが気になりますが、殺人という1つのテーマが最後まで描かれており、筋の通った作品でした。

  • 何でこの本を選んだんだっけ。たま~にSF読むし、決して嫌いじゃないけど、これは苦手だ。ジェノサイトに小難しい理屈を盛られても何ら同調できん。人間には虐殺を司る器官があり、その器官を活性化させる虐殺文法が存在するそうな。ルツィアもジョンもあっけない。あれもこれも受容できず。

  • 言葉が全てを司る。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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