- Amazon.co.jp ・本 (692ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152088352
作品紹介・あらすじ
わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった…。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。
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「わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった…。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。」
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ナチス政権下のドイツ。死神が世界を俯瞰で見ている中、ふと一人の女の子に目が留まる。彼女は母親と弟とともに列車に乗っていたが、途中で弟が死んでしまったのだ。死神はその後二度彼女に出会うことになる。
女の子の名前はリーゼル。弟を弔った彼女は、母親と別れて里親の元で暮らし始める。
おだやかでやさしいお父さんのハンス。口が悪くて人使いの荒いお母さんのローザ。ローザにどなりつけられてばかりのリーゼルだが、二人は二人なりに彼女を愛してくれる。近所に住むルディとは親友になり、彼女は新しい町で貧しいながらもたくましく生きていく。
リーゼルが初めて本を盗んだのは、墓堀り人が落としていった『墓堀り人の手引書』。里子に出される前はほとんど字が読めず、学校の授業についていけなかったリーゼルは、本を教材としてハンスに読み書きを教わる。
彼女が次に盗んだ本は、ヒトラーの誕生日に「不要な」ものを燃やす焚火の中から拾い出した『肩をすくめる』。その行動を町長夫人に見られてしまい、不安な時を過ごすリーゼルだったが、町長夫人がリーゼルにしたことは、亡き息子の思い出の詰まった図書室を彼女に開放することだった。
三度目の盗みは、町長の家から盗んだ『口笛吹き』。図書室で夢中になってこの本を読んでいたリーゼルだが、町長の家から受けていた洗濯の仕事がいよいよ発注されなくなり、代わりに差し出されたこの本をどうしても受け取ることができなかったのだ。
彼女は本を読むだけではなく、つらい時、うれしい時に自分の言葉で気持ちを表すことを知っていく。本を読む、気持ちを綴る、これらの行為が彼女の人生の中で文字通り「心身ともに」彼女自身や周りの人々を救うことになる。
本書は第二次世界大戦のナチス統治下のドイツでの話であり、ユダヤ人の迫害や空襲、大勢の死といったハードな内容が各所で描かれる。それにもかかわらず、不思議とおとぎ話を読んでいるような気分になるのは、本書がリーゼルの手記を拾った死神目線の語りになっているからだろう。
また、死神らしく、合間合間にこの人は亡くなりますよ、と事前予告するので、読者は彼らの死を覚悟しながら読むことができ、物語の衝撃をある程度緩和してくれる。
本書は大人向けに書かれた小説だが、著者がこれまで児童文学を中心に書いてきたこともあり、子供にも手に取ってもらえるような配慮がなされているのだろう。
700頁近くの分厚い本だが、本を愛する人には勇気を与えてくれる物語。 -
わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった……。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。
原題:The book thief
(2005年) -
4.1/422
内容(「BOOK」データベースより)
『わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった…。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。』
原書名:『The Book Thief』
著者:マークース・ズーサック (Markus Zusak)
訳者:入江 真佐子
出版社 : 早川書房
ペーパーバック : 692ページ
メモ:
一生のうちに読むべき100冊(Amazon.com)「100 Books to Read in a Lifetime」 -
翻訳の文章に慣れることが出来ず、なかなか物語の世界へ入れなかった。翻訳のせいと言うよりも、元の文章がこんな感じだったのだろう。
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<「おやすみ、本泥棒」
リーゼルが本泥棒と呼ばれたのはこのときが最初だった。この呼名がひどく気に入ったことを彼女は隠すことができなかった。わたしたちがすでに知っているように、彼女はこれ以前にも本を盗んできた。だが1941年の10月下旬、それが正式なものになった。その夜、リーゼル・メミンガーは名実ともに本泥棒になったのだ。P365>
この物語の語り手は死神だ。
人の死も戦争も死神の望みではない。この時代は、戦争という上司に「ほらもっと働け働け」と言われているようなものなんだ。わたしが誰に似ているかって?ちょっと本をめくる手を止めて鏡を見てみるといい。
死神は人々の最期の目を見る。その周りの人々を見る。人の歩んだ人生を、その考えを、そして人間の辿ってきた歴史を見る。
そう、死神であるわたしは人間に取り憑かれているのだ。
そして私の手元にある1冊の本。私はこの本の持ち主の人生を知っている。いつかわたしが彼女を迎えに行くときに彼女と話をしたいと思った。美しさとむごたらしさについて。同じ物事や言葉であっても醜くも輝かしくもなるのはなぜなのか。
ミュンヘン郊外の夫妻の元に里子として預けられる電車の中で、9歳のリーゼル・メミンガーの6歳の弟のヴェルナーが死んだ。
ヴェルナーが埋葬された墓地の雪の上に墓掘り人が落とした本、「墓掘り人の手引書」。これが彼女の最初の本泥棒だった。字を読めない彼女が欲しかったのは、本ではなく、突然目の前で死んだ弟と、もう会いに来ない母との繋がりだったのだ。
リーゼルが知らない父は、共産主義者だと言われていた。母はリーゼルとヴェルナーを里子に出して守ろうとしたのだ。
里親は、ペンキ職人兼アコーディオン弾きのハンス・フーバーマン、四六時中悪態をついている妻のローザ・フーバーマン夫妻だ。
隣の家のシュタイナー家は6人の子供がいて、リーゼルと同じ年のルディ・シュタイナーとは親友になった。その友情は、肩を組み合い「うすのろ」「大ばか者!」と言い合ったり、腹をすかせて一緒に泥棒をしたり、気に入らない相手と殴り合いの大喧嘩をしたりするようなものだが、10歳の少年少女なら親愛の情だろう。
<ルディは全身を黒く塗り、世界を打ち負かしたいかれた少年だった。
リーゼルは言葉を持たない本泥棒だった。
だが、わたしの言うことを信じてほしい。言葉は彼女のほうに向かってやってくる途中だったのだ。
そして言葉がやってきたとき、リーゼルはそれを雲のように両手にしっかりと捕まえ、雲から雨が生まれるようにそれをぎゅっと絞り出すことになる。P100>
ハンス父さんは、破壊されたユダヤ人の家に修復のペンキを塗ったことでナチスへの入党を却下されていた。彼は第一次世界大戦で共に戦って自分の代わりに死んだユダヤ人兵士のエリック・ヴァンデンブルグのことを忘れられなかったのだ。そしてエリックの妻から彼が遺したアコーディオンを譲り受けた。
穏やかなハンス父さんは、リーゼルが盗んだ本を読むために読み書きを教える。そしてリーゼルはゆっくり、ゆっくりと文字を覚えてゆく。
こうして文字は、書物は、リーゼルが生きるための拠り所となった。
洗濯婦のローザ母さんは、一瞬でも黙らずに悪態をつき続けリーゼルへの鉄拳制裁も行うのだが、彼女はそれでも情が深くハンスとリーゼルと心から愛していた。
そしてローザの洗濯の客である町長夫人は、リーゼルが本が好きだと知り、彼女を書斎に案内する。大量の本!息も留まるような空間!
しかしナチス党によるユダヤ人迫害、そしてヨーロッパ諸国との戦争も激化するばかりだ。
ハンスとローザの仕事はどんどん減ってゆく。
そして1940年、エリック・ヴァンデンの息子、マックス・ヴァンデンブルクが訪ねてくる。
「あなたはまだアコーディオンを弾きますか?」
マックスのその問いは、「あなたはユダヤ人である僕を助けてくれますか?」という問いだった。
そしてハンスとローザは地下室にユダヤ人青年のマックスを匿うのだった。
<「あたしはこの人が死ぬのを見るためにこの家に引き受けたんじゃないよ。わかったね?」P393>
ユダヤ人青年のマックスは、本来戦う性質だった。
子供時代は仲間とのボクシングに明け暮れた。
父の死後引き取ってくれた叔父さんが病で死を受け入れた姿を見て、「自分は死を受け入れたりはしない。戦う。踏ん張る意思を持ち続ける」と誓った。
<「死神が俺を捕まえに来たら、やつの顔にパンチをお見舞いしてやる」少年は誓った。
個人的にはわたしはこのような態度がひどく気に入っている。このような愚かな勇ましさが。P236>
そんなマックスは、母やいとこたちを危険に残し、自分を匿ってくれた親友のヴィクターを危険にさらしてハンスを頼って旅をしてきた。
<生きるためだ。
生きていかなければならないのだ。
その代償は後ろめたさと恥の意識だ。P262>
ハンスとローザとリーゼルは交代で地下室のマックスのもとを訪れて世話をした。
リーゼルはマックスに本を読む。1年以上も外を見られないマックスには言葉も大事な栄養だったのだ。
リーゼルとマックスは二人で地下室の壁にペンキで言葉を書く。マックスはリーゼルから毎日の天気を聞き、焦がれる思いで太陽とそれに向かってロープを渡る自分たちを描く。
そしてマックスは、リーゼルに手作りの本を送った。
「うちの地下室にユダヤ人がいます」
これは決して誰にも話してはいけない秘密だった。リーゼルは親友のルディにもそれを黙り通した。
ルディはまるで天からもらったバカさ加減を試すかのように、自分を破壊するように、盗みを行いナチス青少年の党でも反骨精神を示す。
もちろん親友のリーゼルはいつも一緒だった。肩を組み悪態を付き合い、ともに盗みを重ねて行った。
ユダヤ人が強制収容に送られる行進が続く。ある時ハンスは、とっさに倒れたユダヤ人にパンを差し出した。感謝の眼差しを送るユダヤ人とハンスはともに兵士で鞭で打たれる。だがそれよりももっと痛恨のミスを犯してしまった。もともとユダヤ人贔屓と目をつけられていたハンスのこの行為はナチス党員から疑われるに違いない。きっとゲシュタルトが家に来る。地下室で匿っているマックスが見つかってしまう!
ハンスとローザは、マックスを守るために家から出すしかなかった。
だがゲシュタポは家に来なかった。
その代わりにハンスに召集令状が届いた。
ルディの父親、アレックス・シュタイナーにも召集令状が届いた。
シュタイナー夫妻は、ルディを純粋なナチス親衛隊を育てるための学校に入れることを拒否していた。
困っているユダヤ人を助けたり、自分の息子を危険から守ろうとした父親は戦争に行くしかなかったのだ。
残されたリーゼルは、ユダヤ人収容者達の行列があると必ず見に行った。
マックスはいる?少なくとも生きている?私はここにいると伝えたい。
ユダヤ人たちに彼女は伝えたかった。私はあなた達の一人を地下室に匿っていた!一緒に地下室で絵を書いた!一緒に地下室で雪だるまを作った!彼が病気のときは、枕元でずっと話をしていた!
リーゼルとルディは、ユダヤ人が通る道にちぎったパンをおいておいた。
目をつけられるって?ハンス父さんにはできたじゃない。兵士に捕まるって?逃げればいいじゃないか。
<まもなく兵士とユダヤ人たちがやってきた。
木の陰でリーゼルはルディを見つめていた。果実を盗んでいた彼がパンを人に与えるだなんて、よくこれだけ変わったものだ。(…略…)ルディのお腹が鳴るのが聞こえた。それなのに彼は人々にパンを与えているのだ。
これがドイツだろうか?
これがナチス・ドイツなのだろうか?P552>
リーゼルたちの住むミュンヘン郊外の町にも空襲が行われた。
近所の人達が逃げ込む防空壕にリーゼルは本を持っていった。
最初は自分のためだけに読んでいたその声は、やがて防空壕唯一の声となる。
人々は、生きるよすがとして13歳の少女の朗読に聞き入っていたのだ。
それからは防空壕に籠もるたびにリーゼルは本を朗読した。
リーゼルの朗読は、息子が死んで依頼図書室を閉じ心を閉じていた町長夫人の歩みを蘇らせ、ローザ母さんの罵り合い友達のフラウ・ホルツアプフェルも息子が戦争に取られた心の支えとして物語を望むようになる。
13歳の少女にとって世界は残酷だった。
わたしはいったい何度さよならをいわなければならないの?もうなにも望むのはいや。彼らが無事に生きていますようにって祈りたくない。だってこの世界は彼らに値しないもの。
あまりの絶望と腹立ちに、リーゼルは1冊の本をばらばらにした。どうして言葉などというものが存在するのだろう?それがなければ総統も囚人もなかったのに。言葉を殺してしまわないと彼女は壊れてしまっただろう。大好きで、かつ憎んでいる言葉というものが。
本を読んできたリーゼルは、かつてマックスがいた地下室で、自分の物語を書くことにした。
今まで入ってきた言葉たちを今度は出すのだ。
<『本泥棒』
わたしは言葉を憎み、言葉を愛してきた。
その言葉を正しく使えていればいいのだけれど。P659より抜粋>
死神であるわたしは、人の魂を集めながら人の眼差しを見て、周りの人々をみて、彼らの人生をみる。その中にはわたしの気を晴らしてくれるような話もある。わたしはそんな話を記憶に留めようとしている。
わたしは人間に取り憑かれている。
リーゼルの話はそんな話の中の一つだ。
<本泥棒。
よかったら私と一緒に来てほしい。あなたに物語を聞かせよう。
いいものを見せてあげる。(P20)> -
わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった…。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。
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「よかったらわたしと一緒に来てほしい。あなたに物語を聞かせよう。
いいものを見せてあげる」
そんな死神の誘い文句で始まる圧巻の長編大作。
舞台はナチス政権化のドイツ。
正気を保つのも容易ではない時代の波の中で、盗んだ一冊の本から言葉を学び、言葉に魅せられ、言葉の可能性を信じて生きた少女の物語。
主人公の少女・リーゼルは、養子先に向かう汽車の中で6歳の弟を亡くす。
母と別れ、新しい家族の仲間入りを果たすがそう順調にはいかない。
口は悪いが心根の温かい養母ローザ。
養父はペンキ塗りとアコーディオン弾きで日銭を稼ぐハンス。
彼の手ほどきで少しずつ文字を覚えていく。教室は地下室で黒板は壁。
リーゼルは全くの文盲だったのだ。
テキストになったのは、弟の墓所で拾った「墓堀り人の手引書」。
ここにクラスメイトや近隣の人々、町長夫人、家族で匿ったユダヤ人の青年・マックスなどが加わり、リーゼルは愛と信頼を学んでいく。
と書くのは簡単だが、ことはそう上手く運ばない。
理不尽な死と別れ、空襲警報におびえ、貧困はいつもつきまとう。
そしてリーゼルは、奪われたものを奪い返すように本泥棒を繰り返す。
二度目はあの悪名高い「焚書」の山から。あるいは町長宅の図書室から。
いつも傍らにいたのは淡い初恋の相手・ルディだった。
死神がいつも話の先を提示するので心の準備は出来ているはずなのに、たびたび胸が引き裂かれそうな場面が登場する。
どの人もみなひと癖もふた癖もあるのに、たまらなく愛おしい。
「ねえ、キスしてくれる?」
いつもリーゼルにねだっていたルディ。
早くそうすれば良かった。いつもひとは、失ってから気が付く。
本のおかげで命を救われたリーゼルも、一度は本を憎みさえした。
1943年夏「言葉なんか何の役に立つのか」と嘆きながら、マックスから贈られた本を散り散りに破り捨てた。彼女が養父母の家にいたのは、実質4年間しかなかったのだ。
残酷きわまりない世界も、死神の眼から見ることで深い奥行きをもたらしている。
淡々とした語り口は、応援するでもなく批判するわけでもない。
それでも最後に「私は人間にとりつかれている」と語る。
リーゼルの生き方に死神までが魅了されていた。
1975年生まれという著者はYA小説の作家さん。
構成力の素晴らしさと、人間を見つめる眼差しの豊かさに最大級の賛辞を送りたい。
終盤に向けて涙がとめどもなく流れた。
どんなに言葉を尽くしても、読後の気持ちは伝えられそうもない。
生きているうちに、もう一度読みたい本だ。
高らかに反戦を掲げ、本と文字と言葉を全力をあげて肯定する本。
すべての方にお薦めです。-
夜型さん♪
リストには入っていなかったように思います。
でも夜型さんがご存じだったということが偶然でも嬉しいな!
レビュー数55という...夜型さん♪
リストには入っていなかったように思います。
でも夜型さんがご存じだったということが偶然でも嬉しいな!
レビュー数55というと、私が読む本としてはかなり多い方です。
もっと多くなってくれると良いですよね。
フィクションであることを忘れるほど、心に訴える作品でした。
寒暖差が激しいですね。
もう一枚着込みます(*^^*)2021/01/17 -
nejidonさんこんにちは。
nejidonさん本棚からこちらの本を手に取りました。
全く知りませんでしたが、レビュー数がかなり多いし...nejidonさんこんにちは。
nejidonさん本棚からこちらの本を手に取りました。
全く知りませんでしたが、レビュー数がかなり多いし映画化もされている有名作品だったんですね。
過酷な状況ですが、登場人物たちはかなり逞しく、ときには罵詈雑言や拳を使ってでも生き抜こうとする姿勢が良かったです。
やはり言葉、書物の場面は印象的な物が多いですね。
別の本でも、一人きりで閉じこもった人間が壁に言葉を書き連ねてゆくという場面があったのですが、人間は言葉を出さないと生きていけないのでしょうかね。
しかしこれ児童書(ヤングアダルト)扱いですか…。この分量と重いテーマに苦しい状況ですが、たしかに同年代の青少年たちにとって同感できるかもしれませんね。
これからもよろしくおねがいします。2021/02/14 -
淳水堂さん♪
読まれたようでとても嬉しいです!
ありがとうございます!
「本にまつわる本」の中では小説がどうしても少ないのですよ。
...淳水堂さん♪
読まれたようでとても嬉しいです!
ありがとうございます!
「本にまつわる本」の中では小説がどうしても少ないのですよ。
そうでなくても少ないんですけど(笑)
たまたま読んだこの本が感動作でホッとしました。
たまに読んで外れるともうガックリですもんね。そういうのはレビューも載せません(+_+)
私は映画の方から先に入りました。
そちらも良かったのですが、淳水堂さんの言われる通り細かな部分の描写では本に敵いません。
ページ数の多さも忘れるくらい、読みふけってしまいませんでした?
お返事を書いていると、またぞろ読みたくなりました。ああ困った。。。
これからも読み応えのある良書に出会っていきたいですね。
2021/02/14
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この作品を手にしたのは二〇一八年一二月の暮れ、ネットで本を物色していた時、面白そうなタイトルがヒットしたので購入した。当時読んでいたのはマリアVスナイダーの『毒見師イレーナ』だった。
実際に頁を開いて少しだけ読んで内容を確認し本を閉じた。
何だか魅力的な本の予感がして、取り敢えず本棚に入れた。他にも読みたい本が満載していたにもかかわらず、にんまりと所有することが出来た喜びに心が弾んだ。その後、ずいぶん積読になっていたのは、自宅の建替えのため、仮住居に居たから、本が行方不明になっていたのです。理由はともあれ、今頃になって読了することが出来た喜びは一入です。
物語は第一次世界大戦、ヒトラー政権下のドイツで、イギリス・フランスが宣戦布告、強硬路線でドイツの政治を掌握し押進め、国民の九割がナチ党を指示していたと本書に書いていたが本当にそうなのかは不明だと思う。彼は、反共産主義と反ユダヤ主義を主張していたのだ。
冒頭語り部は、死神であることを明かしておもしろい設定だ。その時代の小説なら、なんとなく作品の雰囲気が読めた。しかし、さらっとネット上を検索してみると「泣ける小説」「悲しい小説」というカテゴリーに入っていたように思うが、その手の作品なら途中で頁を閉じる覚悟はありました。
読了後、前述した「泣ける小説・悲しい…」云々のカテゴリーから外して頂きたいと思う。心に「悲しい」より「苦しい」という思いが伸し掛かったからだ。本当に悲痛な惨状を目の当たりにした時に、泣けるかというと、泣ける方もいらっしゃるが、僕は絶句しました。
著者の両親はドイツとオーストリアからオーストラリアに移住し、幼い頃から大戦の話を聞かされていたが、本人はヤングアダルト向けの小説家である。図書の分類で、児童書と一般書の中間にあるものだそうです。
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。主人公は、九歳の女の子リーゼル・メミンガーと弟のはずだった。父は行方不明、母は共産主義者で、里子に出され移動中の列車の中、弟のヴェルナーが目を開いたまま鼻から血を流し死んだ。途中下車して弟を葬った。その時に拾った本が、一番目に盗んだ本です。そして里親に引き取られることになる。
里親の母は、ローザといい口汚く罵る癖があるけれど本当は優しい母である。父はハンス・フーバーマン、目は銀色、ちょっとおちゃめな性格。本業は、煙草が好きなペンキ屋でアコーディオンを演奏できる愛すべき人だった。
リーゼルは、なかなか家庭には慣れなかったが、初日の夜から就寝中の午前二時頃、うなされおねしょをして目が覚めた。ハンスは静かにリーゼルの寝室に行き、ベッドに座って泣いていた横に座り肩を優しく抱き、気が済むまで慰め色々な話をしたのです。やがて心を開き父さんを頼るようになります。ハンスはリーゼルが本を抱いて寝ていたのに気づき、タイトルを見て驚きます。『墓掘り人の手引書』だった。
リーゼルにタイトルを見せて何と書いているのか知っているかと問うたが知らなかった。彼女は、字が読めないし書くことも出来ない。リーゼルにとってこの本は、弟の形見として持っていただけで、その本に弟の写真を挟んでいたのだ。学校に通うようになり、自宅の隣に住むルディ・シュタイナーという男の子と友達になったが、学校での自己紹介で先生から自分の名前を黒板に書くように言われ、書くことが出来なかったため多くの生徒に虐められた。
ある夜リーゼルは、この本に何が書いているのと聞いた。ハンスは、「お父さんも、あまり得意じゃない」と言い、一緒にこの本を読もうと提案して二人三脚で勉強しハンスは、地下室に勉強部屋を作り、壁にペンキを塗り字が書き込めるようにしてアルファベットの暗唱から始めたのです。リーゼルの実力は、メキメキと向上し次第に本の言葉を覚えることに魅力を感じ大好きになります。ルディとは親友になりました。それからの里親との関係や、子供達とのエピソードは、決して陰気な話ではありません。寧ろ戦時下という状況にありながら子供達は、毎日を楽しく懸命に生きている様子は微笑ましく感じます。リーゼルの平凡な日常が煌めいてさえいるのです。ただ最終の章は悲惨、死神は非情だが、心ある語りをしているのは救いがある。
物語の後半に効いてくる言葉は、「ルディはリーゼルに警告した。『リーゼル、いつかお前は死ぬほどおれにキスしたいと思うようになるからな!』」でしょうか。
実におもしろい。