- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152088376
感想・レビュー・書評
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アイルランドのとある地主一族の没落を、その最後の生き残りである主人公が語る。
じゃがいも飢饉が出てくるから、1840年代あたりだろうか。その国、その時代を知るわけでもない私でも、バーチウッドの屋敷を見たことがあるかのように、その土地の自然や気候を知っているかのように、情景が目の前に浮かんできた。
生まれ育った屋敷での暮らし、サーカス団と共に各地を巡る日々、そして辿り着く一族の秘密。
色々な出来事や驚愕することもあるのだけど派手さはなく、でも不思議と惹きつけられて読むのを止められない。
時代の分かれ目から逃れるように戻った屋敷で、様々なことを理解した主人公が一気に歳をとったように感じられた。彼の彷徨はほんの一年程度だろうに。
読み終えてから最初に戻れば、家を出る前までのバーチウッドが遠い過去のように思えて、哀愁が漂っていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2007-07-00
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不思議な感触の本。舞台はアイルランドみたいだけれど、それとははっきりとはわかならい。私のせいか。ともかく、ビルドゥングスロマンであり、幻想文学っぽくもある。そりゃ、佐藤亜紀も訳すよねといったところか。
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恐ろしい家族
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語り手である「私」は、語り手という役割をもって、語られる中にいる私自身の歴史の外、視野の外まで含んで物語を進めていく。読み手である私はいくつもの謎を含んだままの断片を拾い集めて物語を追っていく。幻を見ていくみたいにして。最後まで読み終わり、もう一度はじめから読み返す。すると、語り手である「私」と同じ時制といくつかの記憶を持った読み手の中に、物語が立ち上がってくる。その体験がすごい。文体は誰も耳を貸さなくなった酔っ払いのもののように、虚構と真実めいたものが同時にあるような。絢爛としていて冷静で自虐的で美しいです。アイルランドという土地を思います。
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暗い・・・なんて暗いんだ。
まあ、アイリッシュらしいといえばらしいのだけど。
ブッカー賞作家の作品。
「死によってしか和らげられない不幸は、はじめのうちこそロマンチックにみえるだろう」
↓↓(同情・共感)
馬鹿さ加減に気づき
↓↓(苛立ちと憤懣)
嫌悪と区別のつかない哀れみ
う〜ん、こういうパターンって多いかも。
短絡的にやさしく振る舞うのはやめましょ。
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すごいすごい! 最後まで読み終わったらはじめを読み返してみるべき。文体も(たぶん訳も)いろいろ意識してるなーこれ。すごく練られた小説ですよ。
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佐藤亜紀ほか翻訳。ということで購入。いつ読もうかなーvっと。
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●文体や邪悪さ加減は違うけど、没落した一族やら怪しいサーカス団やらの扱いに、なんだか最近のいしいしんじ作品を連想しました。こっちまで腐臭が漂ってきそうなほど絢爛と描くか、可愛らしく書くかの違いじゃないかと思いつつ自分の勘違いかも。むう。 ●訳者あとがきにもあるとおり、最後まで読んでから、もう一度最初に戻るといろいろと腑に落ちます。なるほどねー! 大団円。←や、個々の見解の相違はございましょうが・・・。