現場で生まれた100のことば―日本の「ものづくり」を支える職人たちの心意気

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089823

感想・レビュー・書評

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  • 小関さん自らが出会うなかで心に留まった職人たちの言葉を集めたもの。典型的な職人像……つまり、腕はいいけど頑固でちょっと融通利かないみたいな人が言いそうな言葉にも思えるが、それが職人たちの実感なのだろう。
    解説的にそれぞれのことばに関する挿話が書いてあるんだけど、小関さんの誠実さ、真面目さが現れているようで好感。難をいえば、各ことばのそぐそばに解説があるといいのに。20のことばの後に解説がそれも番号で紹介されているので読みにくい。
    書中の写真で初めて小関さんを知ったんだけど、ナイスミドルな感じ。それこそ前述の典型的な職人みたいな風貌を描いていたのでちょっとびっくりした。
    100のことばのうちから、自分の気に留まったものを書き出しておこう。

    技術レベルだけがズバ抜けて向上するなんてことはあり得ないと思うんですね。機械を使う人間そのもの、工場の中の雰囲気、仕事に対する意欲や自信、そういうもの全体が高められてはじめて、いいものが生まれる。それをつくり出すことが、この厳しい時代を生きぬく町工場の条件じゃないでしょうか。
    大木恵嗣さん プレス機械製造 能率機械製作所 江戸川区(p.29)

    家具づくりって、詰将棋に似ていましてね。部材加工ひとつにでも、三手先、四手先と枝分かれしますから、膨大に拡がります。最終的には何千という方法のなかから、先を読んでピックアップできるようにならないといけないんです。
    若い人たちによく言うんです。モチはモチ屋って言うけれど、本当にいいモチをつくるには米づくりから知らなければならないって。
    泉田敦志さん 木工家具製造 カンディハウス 北海道旭川市(p.100)

    ものづくりは、手先が器用に越したことはない。しかし、わたしは手先の器用さに溺れてほんとうの熟練工にはなれなかった人をたくさん見てきた。器用だから目先の仕事は熟すが、大局を変えるような工夫をしない。逆に不器用を自覚して努力する人は、器用さゆえに気付かなかった新しい加工方法を考案したり、新しい道具を工夫したりすることがある。
    小関さんの解説(p.109)

    泣きごとばかり並べてると仕事が逃げていきます。銀行だって、笑顔で行かなけりゃ金を貸してくれませんよ。
    松田貞一さん 機械部品製造 東亜工器 大田区(p.132)

    薩摩では、切子は藩主の手厚い保護のもとで作られ、作品も庶民の手には届きませんでした。だからお抱え主がいなくなれば、いっときは技術もすたれました。
    ところが江戸は、お抱え主がいなかった。だから幕府がなくなっても、技術は残りました。江戸は、民間だったから残ったのです。
    小林英夫さん 江戸切子職人 江戸切子・小林 江東区(p.164)

    空洞化、空洞化と騒ぐけどね、空洞化っていうのは真ん中の柔なところが空洞になることだろう。それなら俺たちは、まわりの枠になって生き残ればいいんだ。
    鈴木信次さん 夫婦二人だけの旋盤屋 大田区(p.172)

  • 会社の企業理念を考える経営者兼職人の弟たちに見せたいと思って読んだ本。でもやっぱり人から勧められて本は読まないんだなぁ。

    「会社を大きくすると人のために働くようになる。俺は自分のために働きたいの。身の丈にあった暮らしができればいいんだよ。」

    これを見るにつけ、弟は 職人>経営者 なんだなと思った。

    「上等な知は、手や体を通して育つ。」

    これは本当にそう思う。体で覚える。

  • モノづくりの現場、町工場で生まれた名言集。
    製造業に携わる上で、
    忘れてはいけない大切な言葉がたくさん載っています。
    ときどき読み返そうと思います。

  • 現場を回ってきた著者の数々の著作の集大成のような名言集。
     
    矛盾するように見えるものがあるのは、立場や状況が違うためだと思った。

    参考文献にあがっている著作を読まないと,深いところはわからないかもしれない。

    著者の活動の索引のような作品だ。

  • 著者自身が旋盤工で、その職業人生や取材の中で出会った職人たちの言葉を紹介している。その言葉と出会った時のエピソードや背景を交えながら解説している。日本のものづくりを支えてきた数々の中小企業、町工場の知恵や心意気に触れ合うことができる1冊。

  • 100209by朝日 -100320-
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    あくなき技術へのこだわり、したたかに不況をくぐり抜ける知恵、そして人生の深い哀歓にじむ、ものづくりの現場が生んだ名言100。ビートたけしと著者の対談つき!
    金型工、刃物鍛冶、世界一の製品をつくる「現代の名工」等々、ものづくりに励む職人たちが手でつかみ、体で覚えた仕事への誇り―みずから旋盤工として50年間働きつづけた著者だから聞けた職人たちの味わい深いことばに、詳しい解説と、町工場を撮りつづけてきた飯田鉄の写真を織り交ぜた名言集。

    「楽しんで働けなければ、職人じゃないですよ」(刃物鍛冶)
    「むずかしい仕事というのは、やればやるだけ技術があがります」(ネジ等製造)
    「腕のよしあしは仕方のないことだが、他人にかばってもらいながら、えへらえへら笑っていられるような男にはなるな」(機械部品製造)
    「夜はぐったりと眠りこけて夢もみないけれど、仕事しながらみんな仲良くやって。だからわたしは昼間夢みてますのや」(縫製)
    「泣きごとばかり並べてると仕事が逃げていきます。銀行だって、笑顔で行かなけりゃ金を貸してくれませんよ」(機械部品製造)

  • 5月3日は1日かけて乃南さんの「鎖」を読んだけど(結構ボリュームがあって文庫本で850ページ以上)、早速、次を読みました。このGW中は積読を速読にしないと、あと8冊もあります(^^;

    ものづくりの現場が生んだ名言100。ビートたけしと著者の対談つきです。なかなか含蓄のある言葉もあるのですが、100はちょっと多いかな。それでも、モノづくりにかける現場の方の心意気が見えていいものです。対談はよかったです。

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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