ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
4.04
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本棚登録 : 1617
感想 : 273
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089922

作品紹介・あらすじ

「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」-御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に"しなければならない"ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した-。それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監察機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは"人類"の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語-。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

感想・レビュー・書評

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  • ユートピアは実はディストピアでした系SFってそんな系統があるか知らんけども

    なかなか面白かったです(そしてたぶん読んだことあるな)
    まあやっぱり日本のSFを語りたかったら(まだ語りたいのか!)伊藤計劃さんは押さえておきたいよね

    それにしても知らん間に「SFは取っつきにくくないとダメ」という閣議決定でもされてたんか!と思ってしまうほどの書き出し
    世界の成り立ちを理解するのに物語の半分くらいかかってしまった
    社会や文化、そこに住む人たちの常識みたいなんが腑に落ちて、やっと面白味が生まれてきて時間が流れ始まる感じ
    そこまでは我慢が必要です、そして我慢には信頼が必要で考えてみるとSF好きってドMなのかも
    痛みが喜びに変わるのは信頼関係だと何かで読んだ気がする
    SFを読むって行為は作者と読者の高度な信頼関係の上に成り立つSMプレイなのかも
    (どうしてもSM言いたかっただけのレビューやな)

    • 土瓶さん
      えええええええええええええ!!(´゚д゚`)
      治った???
      そんな、まさか……_| ̄|○

      諦めたらそこで試合終了ですよっ!!
      い...
      えええええええええええええ!!(´゚д゚`)
      治った???
      そんな、まさか……_| ̄|○

      諦めたらそこで試合終了ですよっ!!
      いつまでも居続けてホテルの主となる野望を捨てるんですか。
      平熱なんぞに屈してはいけません。
      さあっ!
      体温計を脇に挟んで前後に擦るのです。
      イチ、ニ、イチ、ニ……。
      あら不思議。これで夢の高熱カムバックです。
      さあっ!! さあっ!!!( ー`дー´)キリッ
      2023/01/24
    • ひまわりめろんさん
      夕方ちょっと熱上がってちょっとピンチだったわ!
      そしてわいの復活を祝福するかのような大雪だわ!
      土瓶許すまじ!(なんで?)
      夕方ちょっと熱上がってちょっとピンチだったわ!
      そしてわいの復活を祝福するかのような大雪だわ!
      土瓶許すまじ!(なんで?)
      2023/01/24
    • 土瓶さん
      ピンチはチャンス!!
      ピンチはチャンス!!
      2023/01/24
  • 伊藤計劃だから難解かな、と身構えたけど、実はそんなことなくて、むしろ読み口は軽くてするする読める。なんせ物語は怒涛のように展開するし、途中途中で挟まれるHTMLのようなプログラム言語が、不思議な世界観を生み出してて没頭できる。
    この小説の舞台は、「大災厄」と呼ばれた核戦争後、健康で幸せな世界の構築のために、人間を大事なリソースとして徹底的に管理している世界。管理されたプログラムに従うことに疑念がなく、プログラムに従わない人、つまり同じ価値観を共有しない人を、やわらかく、でも真綿で首を絞めるように追い詰めていく世界。表面的には、人が傷つくことを極端に忌避する世界。
    主人公のトァンは13年前、そんな世界から逃れるため、友人であるミァハ、キアンと共に自殺をはかるが、カリスマ的な友人ミァハだけが亡くなってしまう。大人となった今は、その世界の管理側にまわっているが、ある時、世界中で一斉に何人もが自らの命を断つ、という事件が起こり、トァンもその場に居合す。その原因を探るべく探索を始めるが、そこには、自分の父親が開発した大きなプログラムの存在があった。また亡くなったはずのミァハの存在も見え隠れし…という物語。

    これは架空の世界であるけど、もうすぐそこに展開するであろう、近い未来の話ではないか、と思える。特にこのコロナで、一気に近づいてきた感がある。自粛警察、マスク警察、健康を守るという大義名分があれば、躊躇わず人を攻撃する人たちを、私たちは現実世界でたくさん見てしまった。だから、この小説の結末はとても恐ろしい。そして哀しい。

    ハーモニー、調和、それは美しいけれど、究極の調和は、何をもたらすか?自分が自分でありたい、と思うことと、自分があるために生じる葛藤や諍いがもたらす苦しみと、どう折り合いをつけるか?きっと多くの宗教も、この狭間で苦しむ人の救済を目指したものだろう。では、この小説の答えは…。
    実は、文章中に挟まれるHTML様のプログラム言語には深い意味が隠されている。最後にその謎が解けたとき、ゾクゾクした。私たちの今いる世界も、この結末に進むだろうか、と。

  • 内容さておきマークアップの構成っていうのが画期的だった。
    全部この方式で良いんじゃないかな?って思うぐらい

  • 誰もが幸福になる為、また平和な世界を築き上げて行くためにに自分の意思を失いそこに向かっていくことが果たして幸せと呼べるのか。大災禍の後の生府台頭により人々を細かく管理しレールを敷きそれぞれの役割を割り当てる。幸福とは何かを考える機会にもなったし人生のゴールとは何か考えさせられた。テクノロジーの発展著しい世界であり又、このコロナ禍に読むことで今後の世界の在り方の可能性の一つとして本書のような時代が来るかもしれないと思わされた。

  • 幸せとは何なのか
    インフラが整い、基本的に衣食住に事欠かなくなった現在において、意識はなぜ存在するのか

    トゥルーマンショーのような世界で、周りの役者(AI)が主人公の幸福度を上げるためだけに振る舞えばそれでいいのか
    そうなった場合の人間の存在意義とは何なのか
    そもそも人間に存在意義があると考えること自体が奢りなのか

  • 前作「虐殺器官」に比べてライトノベル色の強いイメージで敬遠していたが、とんだ見当違いだった。今作も凄惨なのに静謐、とことんハードボイルドな女性主人公もCOOL。生前に病床で執筆された作品とのことで、著者の死生観は巻末インタビュー以上に色濃く反映されている印象。つくづく早逝が惜しまれる。人間が【意思】を持つ以上、感情的な軋轢は回避出来ないが、意思の消失を以てして【幸福】は訪れるのか?ただ【調和】を維持する歯車として【生存】するだけの味気ない人生は想像するだけで酷く虚しい。装丁はシンプルな旧文庫版が好きです。

  • SFでオススメは、と検索すると、必ず出てくる作品。
    信じられないくらい、わたしの大好きなところを突いている。
    残念なのは、これが遺作ということ。
    デビュー作はまだ予約が回ってこないので読めていないが、この作品がこれほどど真ん中に来るのだから、間違いなく楽しめるものだろう。
    思考を制御するという発想は、『ターミナル・エクスペリメント』を思い出させ、双曲線は『逆転世界』を思い出させた。
    やっぱり好きだな、SF。大好きだ。

  • 「虐殺器官」はどうも難解な部分があったのですが、
    こちらはとにかく面白くて、夢中になって読みました。
    何だろう、この虚無感…

    体内にインストールされたWatchMeによって、
    一切の病気がなくなり健康的な体を手に入れた人類。
    たばこや酒等の嗜好品は疎まれるようになり、
    有害なものは全てブロックされる。

    誰もが健康で幸福、周りが互いを気遣う世界。
    一見ユートピアのように見えるけれども、その世界に反抗する少女達がいた。
    (ミァハにトァン、この作品アニメ化されるそうだけど
    声優さん大変だろうなぁと思った。笑)

    「ハーモニー」というタイトル、
    ミァハが目指す世界の事に気付くと恐ろしくなってしまった。
    人間にとって何が幸福なのか。
    健康で争いがない世界?
    自由意思が尊重されるような世界?悶々と考えてしまう……

    この作品を作者は病に蝕まれながら書き上げたのか…
    一体どんな思いで、とやるせない気持ちになりました。

  • 主題としては興味深かった。
    けれどこれは未完成作品だ。

    物語の初頭、主人公たちは少女だった。
    それが重要だったはずだ。
    しかしそれが物語の最後に回収されていない。
    物語通りの結末の後、【社会】の枠に加入してない子供らが残る。そこに不満が残って☆二つ。

  • 鳥肌たった~。
    装丁の可愛さに油断したらいけません、
    思わず声に出してスゴイッと言ってしまうくらいのインパクト。
    虐殺器官よりこっちだな。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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