ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
4.05
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本棚登録 : 1459
レビュー : 253
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089922

作品紹介・あらすじ

「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」-御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に"しなければならない"ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した-。それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監察機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは"人類"の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語-。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

感想・レビュー・書評

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  • SFでオススメは、と検索すると、必ず出てくる作品。
    信じられないくらい、わたしの大好きなところを突いている。
    残念なのは、これが遺作ということ。
    デビュー作はまだ予約が回ってこないので読めていないが、この作品がこれほどど真ん中に来るのだから、間違いなく楽しめるものだろう。
    思考を制御するという発想は、『ターミナル・エクスペリメント』を思い出させ、双曲線は『逆転世界』を思い出させた。
    やっぱり好きだな、SF。大好きだ。

  • 『虐殺器官』よりやや取っ付き難かった。
    2作品の世界観はまるで別だが、セット読みの方がベター。
    http://blogs.yahoo.co.jp/rrqnn187/13687163.html

  • 「虐殺器官」はどうも難解な部分があったのですが、
    こちらはとにかく面白くて、夢中になって読みました。
    何だろう、この虚無感…

    体内にインストールされたWatchMeによって、
    一切の病気がなくなり健康的な体を手に入れた人類。
    たばこや酒等の嗜好品は疎まれるようになり、
    有害なものは全てブロックされる。

    誰もが健康で幸福、周りが互いを気遣う世界。
    一見ユートピアのように見えるけれども、その世界に反抗する少女達がいた。
    (ミァハにトァン、この作品アニメ化されるそうだけど
    声優さん大変だろうなぁと思った。笑)

    「ハーモニー」というタイトル、
    ミァハが目指す世界の事に気付くと恐ろしくなってしまった。
    人間にとって何が幸福なのか。
    健康で争いがない世界?
    自由意思が尊重されるような世界?悶々と考えてしまう……

    この作品を作者は病に蝕まれながら書き上げたのか…
    一体どんな思いで、とやるせない気持ちになりました。

  • 主題としては興味深かった。
    けれどこれは未完成作品だ。

    物語の初頭、主人公たちは少女だった。
    それが重要だったはずだ。
    しかしそれが物語の最後に回収されていない。
    物語通りの結末の後、【社会】の枠に加入してない子供らが残る。そこに不満が残って☆二つ。

  • 鳥肌たった~。
    装丁の可愛さに油断したらいけません、
    思わず声に出してスゴイッと言ってしまうくらいのインパクト。
    虐殺器官よりこっちだな。

  • これが遺作となってしまった。

    大傑作である。これ以上なにも言うことはない。

  • なんにしても、度を超すのはやっぱりよくないんじゃないか。

    感想を一言で言うと、こうかな。

    健康も平和も友愛も、それが欠けてるからほしいのかな。手に入れたら
    こわしたくなるのかな。

    虐殺器官に似て、終盤の意識喪失云々のくだりがどうも具体的にイメージ
    できないところが消化不良。意識のない人間ってロボットとか人造人間とか
    と並ぶ存在になるってことか?

    最近の臓器移植法案のニュースを見ていて、この作品中の「リソース」と言葉が
    浮かぶ。「君の臓器で人が助かるというのに提供を拒否するなんて…」と
    顰蹙を買うような世界は案外すぐちかくにあるような気がする。

  • 「持久力という点では本が一番頑丈よ」
    「持久力、って何の」
    「孤独の持久力」
    本好きなら共感できる言葉。肉体的にも精神的にも健康であることを義務付けられる社会も息苦しいが、紙の本がデッドメディアになった世界って、最悪のディストピア。
    TVの健康番組とか観ると病気になることは罪悪のように思えて、ここに描かれた社会は決してあり得なくはないのかも。
    〈社会にフィットできることのできない魂〉〈病を求め、傷を求め、苦痛を求める子供のたましい〉
    2008年に出された本の言葉が、2020年控えてこんなに響くとは。

  • 「公共性」がテクノロジー依存になったとき、少女は大人になれるのか?

    大人になれないまま世界の命運を握ってしまった女の子の“とてもプライベートな”物語。尊い。

  • ほとんどの病気が克服された医療社会,それに反発し自殺を試みる少女たちと生き延びて13年後チェチェンの停戦監視団に女戦士となった主人公.最後の方死んだはずのミャハが出てくるのがもう一つピンとこない.

  • 最後の未読長編だったから大事に読もうと思ったのに、途中で止められなくて一気読み。etml の存在理由を理解して虚無感に襲われるのと同時に、これがバッドエンドだって簡単に断ぜられなくて心がざわざわする。紡がれたかもしれないこの先の物語を思うと悲しい。

  • ・「虐殺器官」の後日譚。平和になった世界。そこはハーモニーが取れたように見える世界。「自分を律することの大半は、いまや外注に出されているのだ」。そんな世界に馴染めない女子高生の視点から語られる世界の異常性。物語はそこから始まる。日本SF大賞だけでなく、アメリカでP.K.ディック賞まで取った作品。

    ・一見ユートピアに見えるディストピアということで、ウォルター・テヴィスの「モッキンバード」というSF作品を思い出させる箇所も散見される。だが、「モッキンバード」のような暖かく血の通った人間復権が描かれることはない。「虐殺器官」が救いのない物語だったのに対して、本作は、救いを求めてたどり着いたところが、とんでもなく救いのない世界(と言うか「救い」という概念を必要としない世界)だったという物語。何とも言えぬ後味の悪い読後感。これ、中学ぐらいで読んでたらトラウマになってたかも知れない。

    ・秘密を知り、トリガーを引き得る存在となった主人公が、そのトリガーを引く必然性がイマイチ伝わってこない。実はそのことが、「虐殺器官」と「ハーモニー」で自分が最も戦慄した部分かも知れない。「何で、君は世界を破滅させると分かってるトリガーを引いちゃってるの?」という感じ。

    ・本書は、初めて電子書籍で読んでみた(iPad版のKindle)。ページを繰る感覚や、以前のページに戻ってちょっと確認する、というのがやりづらい。あまり気にせずにマーカーをつけたり、挿入したコメントを後から一覧的に見ることができるのは便利。

    2013/02/21(木)追記
     「救い」を求めて行き着いたのが「救い」が意味を持たない場所。これはもしかしたら、作者が自らの死と対峙せざるを得ない状況の中で、その苦しみや恐怖をじっと見つめたからこそ出てきた想念だったのかも知れないということに気付いた。ちなみに、本作は作者が34歳という若さで亡くなった2009年の翌年、発表された。

  • 物語は楽しむべきだ、という気持ちがあって、作者やそのバックボーンは気にしないと気持ちもあるんだけど、この作品、著者は別になってしまう。

    泣きそうにもなった。

  • 「全国ビブリオバトル四国地区予選会」
    (2016年10月15日/図書館1階ラーニングコモンズ)

    http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=215002696

  • 6:HTMLのタグの知識がない方も楽しめるのかが微妙なところですが、とても面白かったです。いまの健康志向になにか違和感を覚える身としては、怖いような、羨ましいような、不思議な気分でした。そして、ものすごく想像の余地のあるラスト。</harmony>というタイトル。(半角で入力するとタグ扱いされてしまうようだったので一部全角)
    考え出すと止まりませんが、ミァハの悲しみと怒りと憎しみ、それを生み出した「世界」(生府)と終焉、そんなことを考えてるとやっぱり怖い。でも大好き。

  • 心身の健康をスキャンする機械が体に埋め込まれている世界。

  • 2017年6月18日に紹介されました!

  •  おそらく『虐殺器官』後の世界ー。
    つながっているな、と思った。


     優しさは、対価としての優しさを要求する。

     教師の、親の、周囲すべての気遣いが、わたしを静かに窒息させている。


     という文が、物語の最初の方にあった。
    今の時代少なくとも日本の風潮としては、似た閉塞感が既にあると思った。
    その先の、もっと先の果てにあるものー。
    自由と引き換えに得る、倫理に縛られ優しさを強要される、一見争いのない平和な世界。
    不気味すぎて、怖ろしすぎる。

     超高度医療により病はほぼ消滅し、健康を維持するために身体に害となるものがほとんど禁止され、システムに身体を監視される世界。自らのものではない、社会のために存在する身体。そんな世界で、何を目指して楽しみとして生きていけばいいのだろう。

     ストーリーは起伏が少なく、シンプルだった。
    身体と精神性、世界が向かうとある方向性の究極の形。
    読ませるなぁ。世界観は嫌いじゃない。
    この哲学書のような本をもとに、よく映像化できたなと思った。

  • 2017.2再読

  • 政治体制が政府から医療と福祉を第一とする“生府”となった世界。
    病気は基本的に撲滅され、他人への思いやりが最高潮となり、現存する“国”や“政府”の間で戦火が燻っています。
    おそらくは著者の前作「虐殺器官」の後の世界であり、読み進めているうちに関連性を感じました。

  • システムにより、病気にならない世界になった世界の物語。
    発想や設定が面白いと感じました。読んでいて、何のために生きるのか、そもそも生きているとは何なのかを少し考えさせられました。
    近未来的なSFを読みたい時は良い気がします。

  • 2016/12/08 読了
    発想は面白いし、人類の未来の考察としても面白いけれど、エンタメとして、カタルシスを得られるものとしての書物ではないと思った。

    フーコーの関連本をたまたま直前に読んでたから、それっぽい記述が出てきた瞬間は鳥肌が立った笑。

  • 虐殺器官のその後。
    人々はシステムによって常に健康であるよう管理されていた。
    健康を害するからという理由で酒も煙草も禁制品になっていて、それを結構苦労しながら主人公が手に入れてこっそり楽しんでいたりするのがおもしろい。
    そのシステムを逆手に取って主人公の友人ミァハが目指す、だれも意識をもたない世界。調和と恍惚の世界。
    その計画は食い止められないけれど「だけどそれをあなたには、与えない」っていう主人公の台詞がとても好き。
    でも生活に疲れていたり、人が由来の暗いニュースを見聞きすると意識なんて無いほうが幸せなんじゃないかとも思えて、ミァハの思想を否定できなかった。

  • ちょっと、内容について触れる前に、読み始める前から気になっていて、読み終わった後の最初の感想を、まず書きたいのですが。表紙がダサい。せっかく装丁にまで影響を与えられるような内容であるのに。本来であれば、それぞれがそれぞれのミァハを、あるいはトァンを描いて、ともすればそれが本作への反定立ともなるはずが、別にそんなことはなくて、量産型の普通の表紙なのが画竜点睛を欠きます。調べれば、いくつか種類があるようで、白紙の表紙が好みです。
    本作はデストピアものではありますが、それを取り巻く要素は多く、変わった級友との関係性、WatchMeに代表される技術、自由意志と心についてと様々です。その要素が世界の元で混ぜ合わさり、一体となる様がとてもおさまりが良いです。表紙以外ね。読み終わった後に続く余韻のなかで、3回くらい「ハーモニー面白かったなー」と思い返しました。それはとても良い感覚。とても。とても。

  • 真綿で首を絞めるような、優しさに満ちた世界。
    これほどに恐ろしいモノはないと思います。

  • 文中のタグ表記の意味を理解してしんみりします。

    〈null〉わたし〈/null〉

    と書かれた一頁を見て、自分でも予期せず嗚咽が漏れ出してしまいました。
    「ユートピアの臨界点」。

  • 均一にならしてしまえば、差別もないはず。
    批判していることも反転すれば、賞賛される。
    それがこの世界。

  • 〈優しさは、対価としての優しさを要求する〉

    定められた目標が極端で融通が利かないほど、弱い人間はそれを守りやすい。

    だって、正しいことっていうのはいつだって凡庸で、曖昧で、繰り返し検証に耐えうる、つまらないことなんだから。


    財布が使いこなせれば、貯金箱はいらないはずなのにね

  • はっきり言って面白くない。テーマはちょっとは気をひくものだが、ストーリーテーリングがひどすぎる。しかし、世間がもてはやすため読んでみたが、この作家はこの世にはいない、もう読まなくても済む、日本人は死者を持ち上げすぎではないのか。

  • #哲学的ゾンビ問題への、ひとつの問いと回答。英語圏全滅、ぐらいのテンションだった前作の〈大災禍〉で意外なほど人類が生き残っていたように、ハーモニー世界が到来してもまだ、WatchMeに依存していない人類が世界人口の2割はいたはずで。そこに対立は生まれないのか。また、子供が将来WatchMeをインストールしてハーモニー世界に参加するとき、その怯えはどのように扱われるのか(イーガンの「ぼくになることを」のように?/SFマガジン追悼特集で飛浩隆が問うたのはこのことか?/そしてその怯えはもちろん、ぼくの怯えだ)。

    (2009/06/26)

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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