脳はあり合わせの材料から生まれた: それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ

  • 早川書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089977

感想・レビュー・書評

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  •  人の脳は合理的に出来ているのではなく、昔からあるものを何とか流用して動いているクルージーなシロモノだという主旨の本。
     いかにダメなところがあるのかをわかりやすく説明してくれる。

     例えば「口に割り箸を挟むと楽しくなる」とか「いい気分の時には寛大になる」とか、「直前に見た(問題に関係ない)事柄が、問題に対して大きな影響を持つ」などだ。本文はより分かりやすく面白いのでオススメ。
     以前に読んだ「不合理だからすべてうまくいく」と似たような内容なんだけど、「不合理〜」はそれでも脳の可能性を信じている感があるが、この本は「ダメだけどやっていこうぜ」とも言える調子で読みやすい。

     なんで合理的じゃないのかってのは、この本に書いてあるんだけど、IT業界に例えてみるならば。
     「プログラムやシステムを最初から作り直したいけど、お金(時間)がないし、作り直したらトラブル起きるかもしれないから、今のものを直しなおし使う」って感じなのかなーと。
     脳がエラーを起こし安いとしたら、チェック機能を心がけるしかないんだろうな。

    「報酬が少ないほうが幸せだと認識しやすい(=自分がつらいことの言い訳をする)」とか他人事じゃない(笑)

     いろいろなことを考えるきっかけになり、実に読んでいる間、面白かったです。また読みたい。

  • Kluge

  • クルージ=「無様な設計だが効率的に働くシステム」をキーワードに人体はその進化過程に於いて、論理的・合理的に形成されたのではなく環境の変化に合わせて臨機応変的に進化してきたのだということが良く分かる。

    つくづく、人間は心身共に完璧ではないのだ。
    読み進めるうちに多くの人々が進化論を信じていない聖書原理主義の国=アメリカというのを意識させられる。

    豊富な事例に加え語り口も優しいので、進化論、脳医学の専門書のようなとっつき難さは排除されている。

    反面もう少し踏み込みたいと言う人には物足りないかもしれない。

    そういう意味で入門書といってよいだろう。

  • 脳の「テキトーさ」に焦点を当てている。呼びかけるような文章で読みやすいが、内容としてはほんの少し専門的。

  • 脳の進化について興味があって、タイトルが面白そうだったので、読んでみた。

    けど、内容はちょっとタイトルと違う感じで、脳というよりも、心についての本だった。

    ということで、原題を確認すると、"Kluge: The haphazard construction of the human mind"ということで、まさにそういう本である。

    つまり、進化論を踏まえた心理学の本ですね。

    この手の本は、他にも読んだことがあるし、行動経済学などの議論とも通じるところがあって、全く、驚きの話しが書いてある訳ではない。

    が、それなりに楽しく読めた。

    ある意味、自分にとっては、脳や心、人間の意思決定が進化の偶然のプロセスでできていて、さまざまなバイアスをもち、限定合理的であることは、あたり前の前提条件みたいなものである。

    程度の差はあって、多くの日本人にとっては、ヘーと感心することはあっても、この本が主張することは、知識として、受け入れる事に抵抗はないのではないだろうか。

    一方、この本が、ある意味、仮想敵としているのは、創造論、インテリジェント・デザイン論である。

    脳や心は、多くの場合、うまく働くのだが、あらかじめデザインされていたとしたらあり得ない過ちを置かす事があり、それはランダムな進化プロセスの結果と考えなければ、説明できない、という主張がたびたび繰り返される。

    というところに、アメリカは、なんだかんだいって「神の国」なんだなー、と思った。

  • 脳科学の本かと思いきや進化心理学の分類みたいです。でもNHKのオイコノミヤで取り上げるような経済学の面もあったりで興味深い。
    人間てつくづく生き物として変なんだと思う。

  • 面白い!この本を読んでいると、自分の理解がなんなのかわからなくなります。これをまた違う日に読むとどう違う理解をするのか楽しみになります。

  • クルージとは、「エレガントにはほど遠く無様であるにもかかわらず、驚くほど効果的な問題解決方法」というほどの意味だ。要するに脳は進化の過程でありあわせの材料を用いて漸進的に進化してきたため、ときどき驚くような認知エラーを起こすというのが本書の主張。

    タイトルから生物学的な脳神経進化論の話かと思っていたが、蓋をあけると行動経済学の方面に近い著作だった。

    ダニエル・カーネマンのシステム1、システム2を、反射型、熟慮型と言い換えているが、行動心理学の各種の実験で明らかになった事実を積み重ねることで脳の不完全さをあぶりだしている。われわれの記憶も、選択も、幸福も、そのために作られたものでないものを使って何とかやっているのだ。

    著者は最後によりよく進歩するための提案として以下の13項目を挙げている。

    (1) 可能な限り代案をさぐる
    (2) 問いを書き直そう
    (3) 相関が必ず因果関係を意味するとは限らないと心得る
    (4) サンプル数を忘れない
    (5) 自分が衝動的であることを見越してあらかじめ計画を立てる
    (6) 目的を設定するだけでなく、予備案も準備する
    (7) 疲れているときや、気が散っているときんは、できれば重要な決断はくださない
    (8) つねに代償に対する利益を見定める
    (9) あなたの選択は抜き打ちチェックをうけるものと心得る
    (10) 自分と距離を置く
    (11) 印象深いもの、個人的なもの、逸話には用心する
    (12) どちらかに決める
    (13) 理性的であるように努める

    ......
    それこそ、13も覚えてられないのが脳の限界なんだけど。

  • 文章のくくりが長すぎて、読みづらい。編集の問題か?

    一度読んでいたのに印象なく2度目。やはり、余計な文章がいただけない。外国のこのような科学分野の本は、文章を立派なものに見せようとして内容がわかりにくい独りよがりな文章が多くいただけない。

  • 脳の進化を通じて、生物の進化についても学ぶことができる本だと思います。

    また、「進化の慣性」のような表現が出てくるのですが、生物の進化をうまくたとえた表現だと思います。

    この本を読んで、「自分の脳(思考)だけが混乱しているわけではない」ということを改めて確認できました。
    ただ、それに甘えているわけにもいかないので、混乱していることを前提に、うまく活動していかないといけないですね。

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