ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)

  • 早川書房
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (711ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090102

感想・レビュー・書評

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  • 四半世紀以上前に、たぶん『長いお別れ』を読んだ。
    そのときは、「なんてカッコいい」と思った。
    同時期に読んでいた司馬遼太郎『竜馬がゆく』も吉川英二『三国志』も「カッコいい」と感じていた時代だ。

    今、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』を読んで、少し印象が追加された。
    それは「カッコいい」とは少し違う、郷愁を呼び起こす古紙のような匂い……。
    ひょっとしたら『グレート・ギャツビー』同様、訳者村上春樹色が強いことからかもしれない(いや、村上春樹がフィッツジェラルドやチャンドラー色が強いのかも、嫌いではないけど)。

    訳者村上春樹の力の入った“あとがき”は、ホントにこの本に「ゾッコン」であることが伝わってくる。
    「主人公マーロウは“仮説・記号”、感情を排除し、三人称でありながら視点の一貫性をもたせる」……わかるようなわからないような。
    そういえば、村上春樹訳『グレート・ギャツビー』の語り手も、モーム『月と六ペンス』や夏目漱石『こころ』の「私」も、「感情を排除した記号であること」といわれれば、なんとなくわかったようなきにもなる。

    探偵フィリップ・マーロウ
    今の時代では少々「ウザイ」やつだけどやっぱりカッコよく、
    頭の中の日本語吹き替えは森山周一郎(紅の豚ポルコ・ロッソ)でいっぱいになる。
    ジーナの店で「ギムレット」を飲みながら「飛べねぇ豚はただの豚よ」……やっぱりただの記号じゃないね……。

  • 妻を殺し、自らも命を絶った友人の痕跡を辿り、私立探偵が裏社会を駆け巡る。レイモンド・チャンドラーの小説。村上春樹訳。

    物語の内容は、金も、権力も、何一つ持たない探偵フィリップ・マーロウが、金や暴力に屈することのない頑なな意思と、誰よりも優れたユーモアを武器にして、巨大な国家権力や、やくざ者、そして鼻持ちならない金持ち連中に立ち向かっていくというもの。

    深いヒューマンドラマがあるわけでも、伏線の張り巡らされたサスペンスがあるわけでもないのだが、およそ全てにおいて自分より上の立場にある人間を相手に独特のユーモアのみを武器にして口八丁で一点突破していく様は痛快の一言で本当に面白い。思わず読みながら薄ら笑いが漏れてしまった。

    何も持っていない小さな存在であるマーロウが、目の前にどんな大金を積まれても意思を曲げず、暴力にも屈しない。シニカルなユーモアばかり言いながら行き当たりばったりを繰り返す彼の行動の根本を支えているのは"誇り"であり、自分は自分である、という自信なのか。どんなに苦しい酷い状況でも自分の芯を曲げず、タフで居続けるマーロウは最高にかっこよかった。

    また、あとがきで本人も書いているが、村上春樹がこの小説を愛し、多大な影響を受けていたことが読んでいるとよくわかる。とくに僕が春樹作品の中で最も好きな小説でもある『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』への影響は顕著で、その意味でも楽しんで読むことができた。

  • あんなに分厚い本だったのに、読むことができた
    あんだけ一生懸命事件に向き合ったマーロウは最後の結末でどこか悲しそうだった

  • じっくり味わうことを求められる文章。物語の先が気になるのに、飛ばしていくことができない。冗長に感じてもいいほど、たっぷりとした描写なのに、味わわずにはいられない。そして、人物の感情が分からないので、誰にも同調できない分、その世界のそばに立っているような不思議な感覚。人の感情は普段でも推測でしかないから。
    時間がある時、もう一回、丁寧に読み返してみたい。

  • 初めに読んだときには、筋を追っただけであまり感じる部分はなかったが、2、3年経って改めて読んでみると、村上春樹の新作を読むような新鮮さを感じた。

  • 私にとって、2冊目のチャンドラー。 内田樹先生や高橋源一郎さんの書籍藪ログの中で紹介されていた小説である。 しかも、村上春樹訳。  おもしろくないはずがない! 村上春樹さん ご自身は、高校生の時この訳本を読まれたとのこと。 私は48歳で初めて読んだ、英国で良くうけた、米国のミステリー?小説。  マーロウのかっこよさ。何を考えてるかわかんないところ。男臭さ。ぐぐっと引き込まれる描写! ストーリーもすごいけど、 この、描写の鋭さ!時代背景は無論ずれるのだが、現代でも通用する、米国資本主義の背景がよくわかる!50年前をうまく現代に取り込んで、 2009年出版 ってのも、ハッキリ意識されてる本ですね。
    もう、名言が多くて、本の中に折り目が5ヶ所もあるかな!! 
    ハーラン・ポッターとフィリップマーロウのやりとり。(村上さんの言う社会批判の例だね → でも 的を射てるからね)
    最後の当たり: 「さよならを言った、・・・・・・・・・ 
     フランス人はこのような場にふさわしいひとことを持っている。フランス人というのはいかなるときも場にふさわしいひとことを持っており、どれもがうまくつぼにはまる。
     さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。」

    村上さんの長編の後書きを読みつつ、次は、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」を、読まなきゃ!

    ストーリーが無い レビューでした!! カッコいい男 マーロウに乾杯!
    ギムレットも飲まなきゃ!

  • 素晴らしかった。
    ハードボイルドは食わず嫌いだった。
    とりあえず、チャンドラーの文庫になっている分をぜんぶ買った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ぜんぶ買った。 」
      思い切りましたね!
      村上春樹訳が出て「リトル・シスター」「さよなら、愛しい人」「ロング・グッドバイ」(旧訳のタイトルは...
      「ぜんぶ買った。 」
      思い切りましたね!
      村上春樹訳が出て「リトル・シスター」「さよなら、愛しい人」「ロング・グッドバイ」(旧訳のタイトルは省略)は訳が2種類出てますが、両方とも買われたのですか?(昨年12月に単行本が出た「大いなる眠り」も何れ文庫化されるでしょう)。
      あっ短編集は早川書房、東京創元社から4冊ずつ出てます。
      2013/02/19
  • 名誉は、蟹のように横歩きはしない。とか言うし、どいつもこいつもいちいち気取ってる。でも、かっこいいのかな?わからんが、寂しい、切ない、読了感。

  • 色々な意味で出会えて良かった作品。文章の流れや台詞の言い回しは読んでいてとても気持ちが良かった。主人公のマーロウがやたらと屈折した性格や考え方だったのも個人的にはツボ。あとがきで語られるチャンドラーの人となりにも凄く共感出来たので、いつか他の作品も読んでみようと思う。

  • 初チャンドラーだったが、かなり読み応えがあった。フィリップ・マーロウがカッコよすぎ。文体や言い回し、比喩もいちいちカッコよくて、堪能しながら読めた。春樹さんが影響を受けているのがよく分かった。他のチャンドラー作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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