さよなら、愛しい人

  • 早川書房
3.80
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本棚登録 : 576
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090232

作品紹介・あらすじ

刑務所から出所したばかりの大男、へら鹿(ムース)マロイは、八年前に別れた恋人ヴェルマを探しに黒人街の酒場にやってきた。しかし、そこで激情に駆られ殺人を犯してしまう。偶然、現場に居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらましたマロイと女を探して紫煙たちこめる夜の酒場をさまよう。狂おしいほど一途な愛を待ち受ける哀しい結末とは?読書界に旋風を巻き起こした『ロング・グッドバイ』につづき、チャンドラーの代表作『さらば愛しき女よ』を村上春樹が新訳した話題作。

感想・レビュー・書評

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  • えー『さよなら、愛しい人』〜??

    ここは『さらば愛しき女よ』でしょ、やつぱり
    女と書いてひとと読ませるのがかっこいいんじゃん!
    わかってないな〜
    (どう表現するかは訳者の自由だと思うがね)
    いやいや、「さよなら」のところだって絶対「さらば」の方がハードな表現でしょ!
    (おいおい、まさか「愛しい女」の方はボイルドな表現とでも言うつもりじゃあるまいね)
    うぐっ
    (君はボイルドの意味をちゃんとわかってるのかね)
    そのくらいわかってるよ!「茹でた」だろ!
    (それでは「愛しい女」は茹でた表現ということだ、なるほど確かにかっこいいw)
    うぐぐっ
    ていうかさっきからお前は誰なんだ
    (私か?そうだな君の「良心」とでも言っておこうか)
    ふん、良心にしてはずいぶんな言い草じゃないか
    (まあ所詮は君の「良心」だからな、致し方あるまい)
    いちいち気にさわる奴
    (それに題名が気に入らないなら清水俊二さん訳の方を読めば良かっただけでは?)
    しょうがないだろ、『ロング・グッドバイ』も村上春樹さん訳で読み始めちゃったんだから
    (おやおや確か図書館には『プレイバック』と合わせて3冊並んでいたはずだが)
    それがなんだって言うんだ
    (つまり最初からこの題名だとわかってて村上春樹さん訳を読み始めたということだよ)
    うぐぐぐっ
    (良心に従って言わせてもらえば、このタイトルについての君の意見はただのいんねんということだ)
    うるさい!細かいこと言うな!もう消えてしまえ!
    (おー怖い、それでは退散することにしよう)
    やっと行ったか…『さよなら、鬱陶しい人』!

    さて『さよなら、愛しい人』です
    (前置きが長すぎw)

    う〜ん、やっぱりフィリップ・マーロウは好きになれないなぁ…
    偏屈な皮肉屋で余計なことに首を突っ込み掻き回して、ただ死体を増やしてるだけの男なんじゃなかろうか
    そう感じてしまうんよね

    そして物語は常にマーロウの視点で書かれているので素晴らしい文章力、表現力で書かれた情景描写や人物描写が必ずマーロウというフィルターを通すことになり、それが鼻につくんだよね
    マーロウを好きになれれば素晴らしい表現で終わってくれるんだろうけど無理でした
    しかも先に読んだ『ロング・グッドバイ』より若いマーロウなので、より尖っててとっつきにくいのよ

    最後のちょっと救いのある終わり方は良かったんだけどね〜
    さあいよいよ次は『プレイバック』です
    マーロウが好きになれないまま終わるのか?
    それとも大逆転はあるのか?
    結果はいかに?!

  • 関係のないような出来事が、人物が、結末に繋がっていく。

    赤毛の恋人、ヴェルマを探す大男のマロイ。
    不可解な用心棒の依頼をするマリオット。
    そして、事件現場に現れた好奇心旺盛な美女アン。

    推理をする描写がないもんだから、一体なにを根拠に無茶をしているのかわからずハラハラ。
    怪しげな心霊相談の館に招かれたり。麻薬を打たれたり。賭博船に乗り込んだり。

    いついかなるときもタフでスマートなマーロウにしびれます。(あ、ベッドの角に足をぶつける場面には思わず笑ったなぁ)

    それから、相棒(と言っていいのか)たちとのやりとりも愉快でした。
    小綺麗で、真面目くさっているランドール警部補しかり。ベイ・シティーのヘミングウェイしかり。忘れちゃいけない、親切な元警官のレッドも!

    ハードボイルドってこういうことなんだろうな!

  • レイモンド・チャンドラーの名作、“さらば愛しき女よ”の村上春樹訳です。

    村上春樹の文章の原点がここにあると思います。
    文章のリズム、フィリップ・マーロウの皮肉な言い回し。
    ありのままにタフに立ち回るマーロウの生き方。

    読者はマーロウの魅力に引き込まれていくけれど、ストーリーの最後には、本当の主人公はマーロウでも、マーロウが追い続けた“殺人犯”マロイでも、マロイが探し求めた“愛しい女”でもなく、小説を通してずっとひっそりと存在し続けた、(実際にはほんの少ししか記述されていない)一人の男である…のかも知れない、その不思議な余韻が読後に残ります。

  • 「長いお別れ」とか「百年の孤独」とかと同じく、初めて読んだときの状態に戻って読んでみたいと思う作品のひとつです。とはいいつつ、「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」と中身がいつもごっちゃ混ぜになってしまっている作品でもあります。

    この小説が心に残るのは、単にミステリー小説ということではなく主人公マーロウのシニカルさ、ひいてはシニカルにならざるをえないチャンドラー自身の身持ちのありようにあると思います。

    さて、いつもマーロウを思い描いて読むとき、マーロウのイメージを誰にして読むべきか?!それを考えるのですが、今回、やっとその回答を得たような気がします。どうも最近の俳優だといい男すぎるのが多い、かつ、いい人っぽく見える人ばっかり。そうなるとマーロウだってやってられねえやと投げ出したくなるんじゃないか?そう思うと、いちばんしっくりくるのはジョン・グッドマン!「なんか文句あるか?」そう凄まれたら、いいえと答えるしかありません。というわけで今回、私の頭の中ではマーロウはずーっとジョン・グッドマンで再生されてました。

  • 小粋な会話と洒落た表現。チャンドラーが良いのか、村上が上手いのか。恐らくその両方なのだろう…。村上は翻訳だけしてくれたら…。

  • 面白かった、面白かったけど、あまりに話の展開が見えなくて、たくさんの登場人物の誰を覚えておいてたくさん起こる事件の何を覚えておくべきか分からないので、低脳には大変でした‥‥これだからミステリが苦手だったorz
    だけど本当に文を読むこと自体が楽し過ぎる読書で、読み出せばすぐに夢中になりました。
    こんな色彩豊かな文はなかなかお目にかかれません。楽しかった。

  • 一つ一つの台詞。一つ一つの情景描写。
    全てが完璧だ。
    探偵小説の名作中の名作。

    清水俊二訳こそ、オンリーワンだと思っていたが。
    村上訳だって、なかなかじゃないか。
    本物というのは、間違いなくこういう作品のことを言うのだろう。

    学生時代に初めて読んだと時から、フィリップ・マーロウに憧れた。
    彼のような男になりたいと思った。
    いい大人になった今、少しでも彼に近づけたのだろうか??
    金がなくても粋がっているところくらいか。汗

  •  全体的に淡々としていながらも、その情景はあふれるような美しい表現の連続。そして登場して来る人物達の姿もくっきりと浮かび上がるような描写、読んでいると色を感じ、音も聞こえ、匂いさえ嗅げるような気がします。
     そしてフィリップ・マーロウは予想に反してやっつけられる(?)事が多く、はじめは「あれ?」なんて思ってしまったけど、彼は決してひるんでいないかった。倒されても立ちあがってはまた倒されるが、絶対に諦めない。でも意思が強いようで弱い自分と戦っていることも多くて、そこも意外でした。

     しかしその中に渋さを感じないと思っていたら、訳をした村上さん自身が、この作品では30代くらいの彼をイメージしたらしく、あとがきを読んで納得でした。
     人物描写もこれだけ細かく描かれていながら、当前だけど全てが彼目線なので、マーロウ自身がどんな容姿なのかは、ぼんやりとしか伝わってこないところもいい。おかげで彼の容姿についても、かなり想像力をかき立てられました。
     そして、私にはもちろんな事ですが、事件も最後までどうなるのかわからなかった。
     名作とはいっても、約70年前に出版された本なので、楽しめるかどうか、とても心配だったけれど村上春樹訳だったからでしょうか、とても読み易くて楽しめました。

  • ハードボイルドかと思いきや、切ない

  • 題名が、なんで『さらば愛しき~』じゃなくて『さよなら、愛しい人』になったのか、最後まで読んでわかった。
    マーロウがかっこいいとは思わないけど、終わりのほうに出てくるレッドはいい!主役より脇役の人物造形がおもしろい。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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