素数たちの孤独

  • 早川書房 (2009年7月11日発売)
3.60
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感想 : 45
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090539

感想・レビュー・書評

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  • 他の誰よりも近く、けれど指先があとわずか届かない二人の十年以上を描いた作品。
    周囲の人々も丁寧に描かれていて、それが二人の輪郭をより浮かび上がらせる。
    共感する人物はいなかったが、安易な同化を拒む硬質の空気がまた独特で良い。

  • 読み終えるのに随分と時間が掛かってしまった。
    「孤独」と「素数」を用いたタイトルの通り、
    誰のことも理解できないし、誰にも理解されない孤独な話。

    思ったより数学的な話ではなかったけれども、
    孤独に対する描写は良かった。非常に孤独だった。
    マッティアの方の孤独は何となく想像がつくけど、
    アリーチェみたいな孤独のタイプもあるんだなと一考。

    最後の終わり方は、読み終わると悲しいんだけれど、まぁそれ以外の終わり方なんてありえないだろうな・・・という個人的には納得の結末。
    素数は素数以外になり得ない、孤独との共生ってとこかな。


    ちなみに、「あなたには分からない」という言葉に対する最適解は
    「そうだね、でも近くにいますよ」だそうです。本書とは全く関係ないですが。


  • あゝ彼らは双子素数。偶数がひとつ間にいるのも偶然を装う運命的な縁で探し続ければ何兆何億かの先に見つけられるのも絶望のない未来。ミケーラとマッティアはアリーチェを引き寄せた。個性が優しく慮り永遠へと連続する希望が素敵。

  • タイトルに惹かれて選択しましたが、数学的な風味はあまり感じませんでした。
    一方、時間軸に沿って場面をジャンプしていく展開は読みやすく、場面間の時間について想像させられるところも気持ち良く読めました。

  • イタリアでのベストセラー。
    日本の小説に慣れすぎた結果、全てを描かずに読者の想像力に任せて展開していく流れが新鮮だった。読者のレベルが高度なのか、こういう書き方が主流なのか、、翻訳小説をもっと読んで楽しみたいと思えた!
    誰も幸せになれなかったように見えるけど、当事者たちは自分の大切なものを譲らずに生きていて満足できている気がする。

  • 素数たちの孤独 パオロ・ジョルダーノ

    子供の頃の事故で片足切断した少女と、同じく子供の頃ある事件が起こり、その後自傷してしまう数学の天才の少年2人が高校で出会って惹かれ合う。しょっちゅう一緒にいたはずの2人が大人になって別れ別れになり…何年後かにあることが起こり再び会う。そして…


    まず子供の頃に起ったことが、読んでいてザラザラした気持ちになって、読むのやめようかと思ったんだけれど、ある人のオススメでもあり、読み進める。その後は次々読み進められ、ラストはこうなるか〜と思ったけど、まあ納得の終わり方かなぁ。
    その前どうしてこういうことするかな。ということもありますが、イタリア人だし、ちょっとわかりませんね。

    ところで、このタイトルは、主人公の男性が数学の天才みたいな子で、大学の卒論で素数の研究をする。その彼が"双子素数"という、隣り合った2つの素数(間に偶数をひとつはさむ)のペアは自分と彼女と同じだと。その数が、
    2760889966649
    2760889966651 であると仮定し計算し始め…って、桁多すぎる

  • こちらは最初に出た大きめのソフトカバー版(別にepi文庫判もあります)

  •  イタリアの最高峰、ストレーガ賞受賞作品。

     名作の気配を漂わせていました。文章に品を感じ、ふたりの男女に影を感じます。
    明るい前向きな主人公よりも、影があり人に言いづらい背景を持つこのふたりの方が、現実としてあり得るなと思わせる物語。

     暗く、夜の川面の表面を覗きこむ勇気を持って―

  •  イタリア最高峰のストレーガ賞をこのデビュー作で受賞しており、さらに著者は素粒子物理学の研究者という異色な作品。超絶怒涛のエンタメだった。グイグイ読ませられてしまうイタリアの一大恋愛叙情詩である一方で、孤独という言葉がこれほどまでに優しく残酷に響く小説もなかなかないと思う。原作しかり翻訳も素晴らしいからなのか、読んでいる場面の映像がガンガン浮かんできてページをめくる手が止まらなかった。なんといっても冒頭、2人が負う心の傷に関する描写が圧巻…ミステリー小説のような引きの強さが心をつかんで離さず一気に物語に引き込まれる。マッティアとアリーチェの2人が、子どもから大人になるまでの人生が交互に描かれていく構成で2人とも心の傷が深く他者とのコミュニケーションがうまくいかない中、ストラグルしながら懸命に生きる姿が辛くもあり美しくもあり。思春期に孤独な期間を少しでも過ごしたことがあるなら見覚えがある風景かもしれない。
    数学がメインの話に絡んでくることはなかったものの「自分以外の公約数が存在しない」「素数は偶数が間に入り隣り合うことはない」という素数の持つ性質が物語のテーマにバッチリ当てはまっている。読み終わった後、上記の素数の性質を思い出しながら物語を反芻すると走馬灯のように様々な場面が頭の中を駆け巡った。
    あと「結果の重み」という言葉が印象的だった。これは「あらゆる行為を取り返しのつかぬ決定的なものとして考えてしまう」というアリーチェの癖。「結果の重み」に人生が支配されてしまうと前を向こうとしても次のステージに進めず停滞してしまう。それでも引きずりながら生きていかねばならない、人生はときにビターなものだと思えるラストがシビれた。

  • 天才的な数学の才能を持つマッティアには、発達に障害のある妹がいた。自分が故意に妹を置き去りにしたことで、妹は行方不明となり結局見つからなかった。自分の行動を隠し、自傷を続けるマッティアは、その行動ゆえに転校を繰り返す。
    アリーチェは、父親に無理矢理入れられたスキー学校で事故に遭い片足を引きずるようになる。そして拒食症を隠しながら過ごす学校にマッティアが転校してくる。それぞれに生きずらさを感じている二人は、密やかに見つめあうようになる。

    思春期の出会いから、大学、社会人になる二人を、それぞれの視線で描く。なんと危なっかしく、救いに背を向ける二人のこれからに、大きな不安と小さな希望を感じさせて終わる。
    その不安感と自立して行くであろう二人の生き方が、「素数」なのだ。

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