月が昇らなかった夜に

  • 早川書房 (2010年5月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784152091307

みんなの感想まとめ

失われた仏典を求めるフランス人女性の物語は、愛と自己探求の深い旅を描いています。彼女は愛する人のために、言葉を捨てるほどの強さを持ち、仏典を通じて自らの人生の道を見出していきます。物語は、長文で描かれ...

感想・レビュー・書評

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  • とても叙情的で、ずっと忘れられない作品。
    清朝末期に発狂したラストエンペラー・溥儀が空の上から破り捨てたことで失われた仏典に運命を囚われた、野菜売りの中国人青年とフランス人留学生の女性の物語。

    失われたはずの仏典は、彼が生まれるずっと前から、青年やその家族の属性と中国共産党の悪習がぶつかる度に、何度も彼の運命を転がし続けます。
    1978年に北京の片隅で恋を育んでいた彼らは、ある悲劇的な事件により1年足らずで唐突な別離を迎えますが、彼らは、それぞれの形で”運命”の失われた仏典を見つけようと、世界を巡ります。

    彼らの人生が漸く再び交錯したと思った矢先に、彼の人生に纏わる切ない真相とともに見つかる仏典は、彼らの11年の狂気の努力を水泡に帰すようでもあり、一筋の希望の光のようでもありますが、その結末は書かれないままで、女性の沈鬱ともいえる語り口とあいまって、強い余韻を残します。

    本作は、フランス在住の中国人作家兼・映画監督であるダイ・シージエによる小説。

    この作品は、読む前は単純に恋愛小説かなと思っていました。
    けれど読み終わると、著者自身の、祖国・中国への想いを表した小説でもあるなと思いました。
    (ダイは10代後半から数年間、文化大革命による下放政策(都市部の若者を強制的に農村に送って肉体労働をさせながら思想教育し、共産党に従わせる政策)を体験しています。)

    そのため、中国共産党の持つ権威や悪習への嫌悪などがあっても、なお捨てきれない祖国への郷愁のようなものが作品全体からにじみ出ています。

    けれど、そんな著者や物語の歴史的な背景を知らずとも充分に心に残る、もの悲しくも本当に叙情的な、とても魅力的な作品です。

    私がダイ・シージエを知ったきっかけは、彼が自身の小説「バルザックと小さな中国のお針子」を映画化した「小さな中国のお針子」を大学の図書館で借りて観たことでした。

    こちらの映画、ほろ苦くて悲しくて寂しい気持ちになるけれど、ノスタルジックで心に残るとても良質な作品です。
    興味のある方は是非観てみて下さい。

    ダイ・シージエの文体は少しクセがあって時々読みづらいので、正直、映画から入って、彼の世界観が好みかどうかを確認するのがおすすめです。
    ただし、ハッピーエンドが好きな人には向かないと思いますので、そこだけはご了承を。
    (主人公が幸せになれないフランス映画などが大丈夫な人は大丈夫です。)

  • 「中国のお針子とバルザック」とは続編ではなく関連本と言った方が正しい。とにかく長いセンテンスで量が多い。ディティール描写が多いので読むのは正直大変。文革?現代あたりの中国を描いた作品。二分されたいにしえの言語で書かれた経典をめぐる話。読み通せば通したなりに腑に落ちるので読んで損はしない。

  • ある巻物を巡る迷宮のような物語。
    途中から主語を見失うような文章に苦しみながら読んだが、
    果たして期待するほど壮大な迷宮ではなかった。
    溥儀と巻物の段がいちばんわくわくする。

  • 長い間積ん読だった本。就寝前にぴったり。

  • 何も考えずに『ダヴィンチコード』のようなものが読みたくて手に取ったのだが、その意味では失敗。「聖遺物をめぐるミステリー」的な宣伝のしかたは良くないと思う。前後する記憶、迷宮をさまようような筋立ては、題材は紫禁城と仏典の謎であっても、謎解きではなく心の糸をたぐりよせる物語。そもそも、仏教において「聖杯伝説」というのはどういう観点なんだろう?

    頁をめくってしばらく、主人公の性別が分からなかったのは、わたしの頭がおかしいのか、訳出が合わなかったのか……。

  • 訳者あとがきによると、原文の文体を意識して、わざと切れ目の少ない、長ったらしい訳文にしたということですが、これがわかりづらさを助長していると感じます。それに、そもそも何が言いたかった作品なのかが理解できませんでした。これがこの作家の作風なのでしょうか? 結局、歴史の謎解きでもなければ、主人公の冒険譚でも成長譚でもなく、どう表現したらよいのかわからない作品だった、というのが正直なところです。

  • たぶん、ゆったりとした時間の中で味わう本なのでしょう。

  • パリ在住の中国人映画監督であるダイ・シージェの新作。オシャレな装丁と題名に惹かれて手に取ったが、なかなか難解。フランス語オリジナル版からの翻訳ということで、歴代皇帝などの中国語名表記や地名など、翻訳者の苦労は如何ばかりかと思いながら読了。(あとがきの中で「台湾語版」が役立ったと書いてあって何とか納得) 中国歴代皇帝の手を経ながら数奇な運命をたどる聖なる仏典。最後に手にしていたのは中国最後の皇帝・溥儀。古代語で書かれた仏典の翻訳にとり憑かれてしまっていた溥儀だが、満州国設立のために日本軍の手によって半ば拉致されるように満洲へ向かう途上で、経典を真っ二つに切り裂き、空から放り投げたという。そして、その行方は?

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